「NYダウ4万5千ドル台に」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円はパウエル議長の発言を受け、株価も大きく上昇したことで151円23銭まで買われた。ただその後は軟調な動きとなり150円まで売られる。経済指標の内容が利下げ支持を示す。
- ユーロドルは前日と水準が変わらず、1.05を挟んでもみ合い。
- 株式市場では3指数が揃って最高値を更新。パウエル議長の講演内容を好感し、ダウは初の4万5000ドル台を記録。
- 債券も買われ、長期金利は4.18%台に低下。
- 金は続伸し、原油は反落。
11月ADP雇用者数 → 14.6万人
11月ISM非製造業景況指数 → 52.1
11月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値) → 56.1
11月S&Pグローバル総合PMI(改定値) → 54.9
10月耐久財受注 → 0.3%
10月製造業受注 → 53.7
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ドル/円 | 150.00 〜 151.23 |
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ユーロ/ドル | 1.0472 〜 1.0544 |
ユーロ/円 | 157.92 〜 158.62 |
NYダウ | +308.51 → 45,014.04 |
GOLD | +8.30 → 2,676.20ドル |
WTI | −1.40 → 68.54ドル |
米10年国債 | −0.043 → 4.182% |
本日の注目イベント
- 豪 豪10月貿易収支
- 日 中村日銀審議委員、広島金融経済懇談会で講演
- 同記者会見(14:30)
- 独 独10月製造業新規受注
- 欧 ユーロ圏10月小売売上高
- 米 新規失業保険申請件数
- 米 10月貿易収支
- 加 カナダ10月貿易収支
本日のコメント
連日荒っぽい動きを見せているドル円は、昨日のNY朝方には一時151円台まで買われる場面もありましたが、その後は米金利が低下したこともあり、軟調な展開。結局150円台半ばで戻っています。
4日NYで講演を行ったパウエル議長は、米経済の現状について、「著しく良好だ」と述べ、金融政策について「景気を刺激も抑制もしない中立水準に向けて金利を引き下げる上で、当局は慎重になれる余裕がある」との考えを示しました。次期財務長官に指名されているスコット・ベッセント氏については、「承認されれば、他の財務長官と同じような関係を築けると確信している」と述べていました。また、「例えば、経済諮問委員会(CEA)とも、最も重要な財務省とも、同じような全般的な関係、かつ組織的な関係を築くことを十分に期待している」と発言していました。株式市場はこの発言を好感し、主要3指数は大きく買われ、NYダウは初めて4万5000ドルの大台乗せに成功しています。
民間雇用統計である「11月のADP雇用者数」は「14.6万人」と、市場予想の「15.0万人」を下回り、前月に比べ伸びは鈍化したものの、労働市場の底堅さを示した形となりました。なお10月分は、速報値の「23.3万人」から「18.4万人」に下方修正されています。またこの日発表された「11月のISM非製造業景況指数」も市場予想を下回る「52.1」と、3カ月ぶりの低水準でした。この2つの経済指標の結果は18−19日のFOMC会合で、政策金利25bp引き下げに貢献するものと思われますが、まだ大本命の「11月の雇用統計」発表を控えており、確定とは行きません。上記パウエル議長の発言内容も、米株式市場で3指数が揃って最高値を更新したことを考えれば、25bp利下げの確率は高まってきたものと思われます。「見送り」を予想した筆者の見方も、残念ながら修正を余儀なくされています。
それでも、貴重な「援軍」はいました。セントルイス連銀のムサレム総裁は4日NYで、「政策の選択性を維持することが重要だと思われ、現在の経済環境や新たに入手できる情報、見通しの変化を慎重に見極めるためには、利下げペースの減速や一時停止を検討する時期が近づいているのかもしれない」と述べ、早ければ今月にも利下げを一時停止するのが適切かもしれないとの見解を示しました。ムサレム総裁は、現在の金融政策を「適度に景気抑制的」と表現していました。ただ今回のFOMC会合に向け、すでに多くのメンバーが講演等で発言していますが、「政策金利据え置き」に言及したのはムサレム総裁が初めてかと思います。私見ですが、セントルイス連銀は他の連銀と比べると、インフレに対する警戒感が非常に強く、前総裁のブラード氏も、2021年3月から始まった今回のインフレ局面を前に早くから警鐘を鳴らし、早期に政策金利を大幅に引き上げることを主張していました。同氏の慧眼には驚いた記憶があります。これは、セントルイス地区という地域性の問題なのか、あるいは伝統的なものなのかは分かりませんが、歴代総裁がその傾向にあるようです。
ドイツに続き、フランスでも政治的混迷が深まって来ました。フランス国民議会(下院)は4日、バルニエ首相率いる内閣への不信任決議案を賛成多数で可決しました。左派連合に加え、最大議席を持つ極右・国民連合(RN)も支持に回った結果です。年末の予算期限直前で政府が崩壊することとなり、国民生活や金融市場への影響が懸念されます。同国出身のラガルドECB総裁も4日の欧州議会での演説で、「景気は短期的には脆弱な状況が続く可能性が高い。その先については不確実性と下振れリスクが見通しを曇らせている」と警告していました。ユーロの上値は限られると予想しています。
本日のドル円は149円20銭〜151円20銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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12/4 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「政策の選択性を維持することが重要だと思われ、現在の経済環境や新たに入手できる情報、見通しの変化を慎重に見極めるためには、利下げペースの減速や一時停止を検討する時期が近づいているのかもしれない」 | -------- |
12/4 | パウエル・FRB議長 | (米経済の現状について)、「著しく良好だ」、(金融政策について)、「景気を刺激も抑制もしない中立水準に向けて金利を引き下げる上で、当局は慎重になれる余裕がある」、(次期財務長官に指名されているスコット・ベッセント氏については)、「承認されれば、他の財務長官と同じような関係を築けると確信している」、「例えば、経済諮問委員会(CEA)とも、最も重要な財務省とも、同じような全般的な関係、かつ組織的な関係を築くことを十分に期待している」 | 株と債券が買われ、NYダウは初の4万5千ドル台に乗せる。 |
12/4 | デーリー・SF連銀総裁 | 「経済を良好な状態に保つためには、政策の再調整を続けなくてはならない。12月になるか、それよりも後になるのか、それは次回の会合で議論する機会を得られる問いだ。しかし重要なのは、経済に合わせて政策金利を引き下げ続けなくてはならないことだ」 | -------- |
12/4 | クーグラー・FRB理事 | 「経済は最大限の雇用確保と物価安定という2大目標に向けて近年大きく前進し、現在は良好な状態にあると私は見ている。労働市場は堅調を維持し、インフレ率は、途中多少の起伏はあったものの、目標の2%に向けた持続可能な道筋をたどっているように見受けられる」、「FOMCの政策決定にあらかじめ定まった道筋はない。インフレ鈍化の面で達成した前進を、台無しにしかねないリスクや負の供給ショックが到来しないか、私は注意深く監視していく。仕事はまだ終わっていない。 | -------- |
12/2 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「最大限の雇用と物価安定というFOMCの2つの責務に関し、それらを達成する上でのリスクはほぼ均衡が取れている状態にシフトした。従ってわれわれも、経済活動を刺激も抑制もしないスタンスへと金融政策をシフトし始めるべきだ」 | -------- |
12/2 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「インフレと雇用に対するリスクが一段と均衡してきた現在、政策を中立スタンスに移行すべく金利をさらに引き下げる必要があるだろう」、「政策の道筋はデータ次第になる。過去5年間に学んだことがあるとすれば、見通しは依然として極めて不透明だということだ」 | -------- |
12/2 | ウォラー・FRB理事 | 「政策金利据え置きが理にかなうデータが会合前に出る可能性はあるが、現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」 | -------- |
11/29 | 植田・日銀総裁 | 「中央銀行の立場からは、物価・経済見通しに為替レートがどういう影響を与えるのかという点で考えるし、そこをポイントに政策運営をする」、「インフレ率が2%を超えはじめている時に一段の円安になれば、リスクが大きい。場合によっては対応しないといけなくなる」 | ドル円は150円台前半から149円台半ばまで下落。 |
11/20 | クック・FRB理事 | (FRBが担う雇用とインフレの両責務について)、「リスクはおおむね均衡している。金利の方向性は下向きだが、引き下げの幅とタイミングは、これから出て来るデータと経済の見通し次第だ」 | -------- |
11/20 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 「最終的な行先は不確かだが、ある程度の追加緩和は必要だと考える。現行の政策は依然として少なくとも幾らかは景気に抑制的だから」 | -------- |
11/20 | ボウマン・FRB理事 | 「政策金利の引き下げに関して、インフレ目標をなお達成できていない点を認識しつつ、労働市場の動向を注意深く見守りながら、最終地点までどの程度離れているのか正確に判断できるよう慎重に進めたい」、「2023年初頭以降、インフレ抑制でかなりの進展が見られたが、ここ数カ月は進展が停滞しているようだ。また、物価安定目標を達成する前の段階で、政策金利が中立水準に達する、あるいは中立水準を割り込むリスクを排除すべきではない」 | -------- |
11/18 | 植田・日銀総裁 | 「経済や物価の改善に併せて緩和度合いを少しずつ調整していくことが成長を支え、物価安定の目標を持続的・安定的に実現していくことに資する」、(そのタイミングについては)、「先行きの経済・物価・金融情勢次第」とし、「毎回の会合で利用可能なデータや情報などから、経済・物価の現状評価や見通しをアップデートしながら政策判断を行っていく」 | 利上げへの言及がなかったことでドル円は154円台半ばから154円台後半へと上昇。 |
11/14 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「米金融当局は大きな進展を遂げたが、まだ勝利宣言をすることは出来ない」 | -------- |
11/14 | クーグラー・FRB理事 | 「インフレの進展を停滞させる、あるいは再び加速させるリスクが生じれば、政策金利の引き下げを一時停止するのが適切となるだろう。しかし、労働市場が突然減速する場合、政策金利の漸進的な引き下げを継続することが適切だろう」 | -------- |
11/14 | パウエル・FRB議長 | 「最近の経済は目覚ましく良好に推移している。慎重なペースで政策金利を引き下げる余地が生じている」、「経済は、利下げを急ぐ必要性についていかなるシグナルも発していない。労働市場の状況は概ね均衡し、インフレ期待もかなり安定する中で、インフレ率は時に起伏のある道をたどりながらも、2%の目標に向かって引き続き低下していくと予想している。また、経済データが許せば、利下げをゆっくり進めるのが賢明だろう」 | ややタカ派的であったことからドル円は156円41銭まで上昇。 |
11/13 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「インフレは正しい方向に進んでいると考える。その点について自信を持っているが、もう少し様子を見る必要がある。何らかの決定を下す前に、さらに1カ月もしくは6週間のデータを分析しなくてはならない」 | -------- |
11/13 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「終着点に達するまでFOMCはさらに追加利下げを必要とする可能性が高いだろう。しかし、利下げの回数やペースを見極めるのは難しい」 | -------- |
11/13 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「インフレを目標に回帰させ、最大限の雇用を支える上で、金融政策は好位置にある。政策金利を時間とともに中立水準へ漸進的に調整することを通じて、これらの達成を図っている。インフレが2%に向って低下し続けることが前提だ」、「追加利下げを検討する際には、今後入手するデータを思慮深く、かつ辛抱強く検証することが可能だ」 | -------- |
11/12 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | (来月のFOMC会合での利下げ一時停止の可能性について尋ねられ)、「インフレ面で驚くようなことが起こらない限り、見通しが劇的に変わることはないだろう」、「それまでにインフレが予想外の上振れを見せれば、利下げを一時停止する可能性もある。一方で、12月までに労働市場が実際に過熱するとは考えにくく、それほど時間はない」 | -------- |
11/12 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「購買力は高いが価格に敏感な消費者に、より生産的で価値の高い労働力が重なり、経済を良好な方向に導いた。米金融当局は経済が今後どう展開しても適切に対応できる状態にある」、(今後の経済シナリオについては)「1つは、米選挙を巡る不透明感が消え、企業が投資・雇用を再開した場合、金融当局としてインフレの上振れリスクを警戒するシナリオ。2つ目は購買力低下による利幅縮小に対応して企業が人員を削減、その結果として雇用リスクが上昇するシナリオだ」 | -------- |
11/9 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「利下げ幅は、議会と新政権の目先の計画ではなく、生産性と経済成長にかかっている。成長が維持され、今後も構造的に生産性に高い経済成長が続くのであれば、恐らくそれほど大きな利下げには至らないだろう」と、「トランプ時期政権と新議会による政策はインフレを刺激し、最終的に利下げ幅の縮小につながるかどうかを判断するのは時期尚早」 | -------- |
11/7 | パウエル・FRB議長 | 「われわれは時間をかけてより中立的なスタンスへと移行しており、そうした中で今回の政策スタンスのさらなる調整は、経済と労働市場の強さを維持する一助となり、インフレ面でのさらなる進展を今後も可能にするだろう」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。 |
11/7 | FOMC声明文 | 「委員会は雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると考える。経済見通しは不確かで、委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」、「今年に入って以降、労働市場の状況は概ね緩和してきた。失業率は上昇したが、依然として低い水準だ」、「委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことを強くコミットしている」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書