「米11月のCPIは0.3%」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は日銀が来週の会合で利上げを見送る可能性があるとの報道で152円84銭まで上昇。ただ、CPI発表後は売られ、152円を割り込む。
- ユーロドルは小幅に続落し、1.0481まで売られる。
- 株式市場ではグーグルなどのハイテク株が大きく買われ、ナスダック指数が347ポイント上昇。最高値を更新するとともに、初の2万台に乗せる。
- 債券は続落。CPIは予想通りだったが、金利見通しに不透明感が残り、長期金利は4.27%台に上昇。
- 金と原油は続伸。
11月消費者物価指数 → 0.3%
11月財政収支 → −366.8b
******************
ドル/円 | 151.94 〜 152.84 |
---|---|
ユーロ/ドル | 1.0481 〜 1.0537 |
ユーロ/円 | 159.55 〜 160.65 |
NYダウ | −99.27 → 44,148.56 |
GOLD | +38.30 → 2,756.70ドル |
WTI | +1.70 → 70.29ドル |
米10年国債 | +0.045 → 4.271% |
本日の注目イベント
- 豪 豪11月雇用統計
- 欧 ECB政策金利発表
- 欧 ラガルド・ECB総裁記者会見
- 英 英10月鉱工業生産
- 英 英10月貿易収支
- 米 新規失業保険申請件数
- 米 11月生産者物価指数
- 米 7−9月期家計純資産変化
- 加 カナダ10月住宅着工件数
本日のコメント
米国の「11月のCPI」は総合指数も、コア指数も上昇率は市場予想通りでした。総合指数では前月比で「0.3%」、前年同月比では「2.7%」と予想と一致。コア指数でも、前月比は「0.3%」、前年同月比は「3.3%」と予想通りでした。市場はこれで、来週のFOMC会合で25bpの利下げに近づいたと判断したようですが、コア指数の「3.3%」上昇は、インフレ圧力の根強さも示唆され、FRBは来年以降の利下げについてはより慎重に考えることにもなりそうです。コア指数に関して言えば、FRBの物価目標である「2%」には依然として距離があり、ボウマンFRB理事が講演で言及していたように、「現時点において労働市場よりもインフレの方がより大きな懸念だと引き続き見ている」と述べた発言が正当化されそうです。CPIの結果を受け、ドル円は売り買いが錯綜する中、一時152円84銭まで買われる場面もありました。
昨日の夕方4時過ぎ、ブルームバーグは「日銀は利上げを急がず、今月見送りでも物価加速リスクは小さい・・・・関係者」といった見出しの記事を配信しました。記事によると、「関係者は、賃上げコストを物価に転嫁する動きに広がりが見られているが、引き続き物価上昇が加速する状況ではないと日銀はみている。トランプ次期政権の就任を来月1月に控え、具体的政策と世界経済への影響を含めた不確実性は大きく、1月以降に利上げを先送りした場合も大きなコストは伴わないとの認識のようだ」と報じていました。実は筆者も、懇意にしている日銀記者クラブ詰めの知人から連絡をもらい、「12月の会合では利上げ見送りの可能性が高い。ひょっとしたら1月もないのではないか」と、彼は話していました。先の植田総裁の「利上げは近づいた」といった発言とは大きく異なります。ただ植田総裁も、海外、とりわけ米国の経済状況を注視する必要があることには言及していました。
やはり想定外の言動が予想されるトランプ氏の次期政権。政策の「余地」は残しておく必要はあります。仮に今月利上げを実施し、その後トランプ氏の政策で大きく円安に振れたとしたら、介入以外に手立てもなく、直ぐに再利上げというわけにはいきません。ここはトランプ政権が始動し、市場にどのような影響が出るのかを見極めるという判断は理にかなっていると思われます。そのトランプ氏に関連して、FBIのレイ長官が、2027年の任期を待たず、バイデン政権が退陣するタイミングで辞任すると発表しました。レイ長官は2017年6月の第一次トランプ政権時に指名されましたが、ブルームバーグによると、その後トランプ氏と同氏の側近はレイ氏に敵意を示し、自分たちが承認していない措置をFBIが実施したことや、自分たちが望んだ措置をFBIが実施しなかったことについて、同氏を繰り返し非難していたようです。来年の政権発足後も、自分の意に沿わない側近はたとえ重要閣僚であっても切り捨てる人事が、何度か見られると思っています。トランプ氏は本日12日、NY証券取引所(NYSE)を訪れ、取引開始を告げるベルを鳴らすそうです。
カナダ中銀は11日、政策金利を50bp引き下げ3.25%にすることを発表しました。2会合連続の利下げとなります。今回も50bpと大幅な利下げでしたが、一方で、金融緩和のペースを落とす構えであることも示唆しています。政策声明文からは、「一段の利下げを見込んでいる」との文言が削除されており、「今後は、追加利下げの是非について会合ごとに判断していく」と説明していました。
本日のドル円は151円50銭〜153円程度を予想します。
佐藤正和の書籍紹介
![]() これだけ! FXチャート分析 三種の神器 |
![]() チャートがしっかり読めるようになるFX入門 |
What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
---|---|---|---|
12/6 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「米国の雇用情勢に関する一連のデータが不安定だったにもかかわらず、労働市場はおおむね安定しているようだ」、「私には持続可能な完全雇用のように感じられる」 | -------- |
12/6 | デーリー・SF連銀総裁 | 「労働市場は引き続き良い位置にある。雇用が拡大する中、失業者一人につき約1人分の空ポジションがある。つまり、バランスの取れた労働市場と言える」 | -------- |
12/6 | ボウマン・FRB理事 | 「失業率は上昇したものの、歴史的に見れば低い水準だ」、「現時点において労働市場よりもインフレの方がより大きな懸念だと引き続き見ている」、「インフレは高止まりしており、利下げは慎重かつ漸進的に進めたい」 | -------- |
12/4 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「政策の選択性を維持することが重要だと思われ、現在の経済環境や新たに入手できる情報、見通しの変化を慎重に見極めるためには、利下げペースの減速や一時停止を検討する時期が近づいているのかもしれない」 | -------- |
12/4 | パウエル・FRB議長 | (米経済の現状について)、「著しく良好だ」、(金融政策について)、「景気を刺激も抑制もしない中立水準に向けて金利を引き下げる上で、当局は慎重になれる余裕がある」、(次期財務長官に指名されているスコット・ベッセント氏については)、「承認されれば、他の財務長官と同じような関係を築けると確信している」、「例えば、経済諮問委員会(CEA)とも、最も重要な財務省とも、同じような全般的な関係、かつ組織的な関係を築くことを十分に期待している」 | 株と債券が買われ、NYダウは初の4万5千ドル台に乗せる。 |
12/4 | デーリー・SF連銀総裁 | 「経済を良好な状態に保つためには、政策の再調整を続けなくてはならない。12月になるか、それよりも後になるのか、それは次回の会合で議論する機会を得られる問いだ。しかし重要なのは、経済に合わせて政策金利を引き下げ続けなくてはならないことだ」 | -------- |
12/4 | クーグラー・FRB理事 | 「経済は最大限の雇用確保と物価安定という2大目標に向けて近年大きく前進し、現在は良好な状態にあると私は見ている。労働市場は堅調を維持し、インフレ率は、途中多少の起伏はあったものの、目標の2%に向けた持続可能な道筋をたどっているように見受けられる」、「FOMCの政策決定にあらかじめ定まった道筋はない。インフレ鈍化の面で達成した前進を、台無しにしかねないリスクや負の供給ショックが到来しないか、私は注意深く監視していく。仕事はまだ終わっていない。 | -------- |
12/2 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「最大限の雇用と物価安定というFOMCの2つの責務に関し、それらを達成する上でのリスクはほぼ均衡が取れている状態にシフトした。従ってわれわれも、経済活動を刺激も抑制もしないスタンスへと金融政策をシフトし始めるべきだ」 | -------- |
12/2 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「インフレと雇用に対するリスクが一段と均衡してきた現在、政策を中立スタンスに移行すべく金利をさらに引き下げる必要があるだろう」、「政策の道筋はデータ次第になる。過去5年間に学んだことがあるとすれば、見通しは依然として極めて不透明だということだ」 | -------- |
12/2 | ウォラー・FRB理事 | 「政策金利据え置きが理にかなうデータが会合前に出る可能性はあるが、現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」 | -------- |
11/29 | 植田・日銀総裁 | 「中央銀行の立場からは、物価・経済見通しに為替レートがどういう影響を与えるのかという点で考えるし、そこをポイントに政策運営をする」、「インフレ率が2%を超えはじめている時に一段の円安になれば、リスクが大きい。場合によっては対応しないといけなくなる」 | ドル円は150円台前半から149円台半ばまで下落。 |
11/20 | クック・FRB理事 | (FRBが担う雇用とインフレの両責務について)、「リスクはおおむね均衡している。金利の方向性は下向きだが、引き下げの幅とタイミングは、これから出て来るデータと経済の見通し次第だ」 | -------- |
11/20 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 「最終的な行先は不確かだが、ある程度の追加緩和は必要だと考える。現行の政策は依然として少なくとも幾らかは景気に抑制的だから」 | -------- |
11/20 | ボウマン・FRB理事 | 「政策金利の引き下げに関して、インフレ目標をなお達成できていない点を認識しつつ、労働市場の動向を注意深く見守りながら、最終地点までどの程度離れているのか正確に判断できるよう慎重に進めたい」、「2023年初頭以降、インフレ抑制でかなりの進展が見られたが、ここ数カ月は進展が停滞しているようだ。また、物価安定目標を達成する前の段階で、政策金利が中立水準に達する、あるいは中立水準を割り込むリスクを排除すべきではない」 | -------- |
11/18 | 植田・日銀総裁 | 「経済や物価の改善に併せて緩和度合いを少しずつ調整していくことが成長を支え、物価安定の目標を持続的・安定的に実現していくことに資する」、(そのタイミングについては)、「先行きの経済・物価・金融情勢次第」とし、「毎回の会合で利用可能なデータや情報などから、経済・物価の現状評価や見通しをアップデートしながら政策判断を行っていく」 | 利上げへの言及がなかったことでドル円は154円台半ばから154円台後半へと上昇。 |
11/14 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「米金融当局は大きな進展を遂げたが、まだ勝利宣言をすることは出来ない」 | -------- |
11/14 | クーグラー・FRB理事 | 「インフレの進展を停滞させる、あるいは再び加速させるリスクが生じれば、政策金利の引き下げを一時停止するのが適切となるだろう。しかし、労働市場が突然減速する場合、政策金利の漸進的な引き下げを継続することが適切だろう」 | -------- |
11/14 | パウエル・FRB議長 | 「最近の経済は目覚ましく良好に推移している。慎重なペースで政策金利を引き下げる余地が生じている」、「経済は、利下げを急ぐ必要性についていかなるシグナルも発していない。労働市場の状況は概ね均衡し、インフレ期待もかなり安定する中で、インフレ率は時に起伏のある道をたどりながらも、2%の目標に向かって引き続き低下していくと予想している。また、経済データが許せば、利下げをゆっくり進めるのが賢明だろう」 | ややタカ派的であったことからドル円は156円41銭まで上昇。 |
11/13 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「インフレは正しい方向に進んでいると考える。その点について自信を持っているが、もう少し様子を見る必要がある。何らかの決定を下す前に、さらに1カ月もしくは6週間のデータを分析しなくてはならない」 | -------- |
11/13 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「終着点に達するまでFOMCはさらに追加利下げを必要とする可能性が高いだろう。しかし、利下げの回数やペースを見極めるのは難しい」 | -------- |
11/13 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「インフレを目標に回帰させ、最大限の雇用を支える上で、金融政策は好位置にある。政策金利を時間とともに中立水準へ漸進的に調整することを通じて、これらの達成を図っている。インフレが2%に向って低下し続けることが前提だ」、「追加利下げを検討する際には、今後入手するデータを思慮深く、かつ辛抱強く検証することが可能だ」 | -------- |
11/12 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | (来月のFOMC会合での利下げ一時停止の可能性について尋ねられ)、「インフレ面で驚くようなことが起こらない限り、見通しが劇的に変わることはないだろう」、「それまでにインフレが予想外の上振れを見せれば、利下げを一時停止する可能性もある。一方で、12月までに労働市場が実際に過熱するとは考えにくく、それほど時間はない」 | -------- |
11/12 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「購買力は高いが価格に敏感な消費者に、より生産的で価値の高い労働力が重なり、経済を良好な方向に導いた。米金融当局は経済が今後どう展開しても適切に対応できる状態にある」、(今後の経済シナリオについては)「1つは、米選挙を巡る不透明感が消え、企業が投資・雇用を再開した場合、金融当局としてインフレの上振れリスクを警戒するシナリオ。2つ目は購買力低下による利幅縮小に対応して企業が人員を削減、その結果として雇用リスクが上昇するシナリオだ」 | -------- |
11/9 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「利下げ幅は、議会と新政権の目先の計画ではなく、生産性と経済成長にかかっている。成長が維持され、今後も構造的に生産性に高い経済成長が続くのであれば、恐らくそれほど大きな利下げには至らないだろう」と、「トランプ時期政権と新議会による政策はインフレを刺激し、最終的に利下げ幅の縮小につながるかどうかを判断するのは時期尚早」 | -------- |
11/7 | パウエル・FRB議長 | 「われわれは時間をかけてより中立的なスタンスへと移行しており、そうした中で今回の政策スタンスのさらなる調整は、経済と労働市場の強さを維持する一助となり、インフレ面でのさらなる進展を今後も可能にするだろう」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。 |
11/7 | FOMC声明文 | 「委員会は雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると考える。経済見通しは不確かで、委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」、「今年に入って以降、労働市場の状況は概ね緩和してきた。失業率は上昇したが、依然として低い水準だ」、「委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことを強くコミットしている」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書