今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米11月のPPIは予想を上回る」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 11月のPPIを受けドル円は152円69銭まで買われたが、その後失業保険申請件数が増加していたことで反落。151円81銭まで売られ、再び152円台半ばまで上昇する、「往って来い」の展開。
  • ユーロドルは前日よりやや水準を切り下げたが大きな変化はなし。
  • 株式市場では前日、大台の2万に乗せたナスダックも含め、3指数が下落。金利上昇が続き、利益確定の売りが優勢に。
  • 債券は4日続落。長期金利は4.33%台に上昇。
  • 金は大幅に反落し、原油も売られる。
*********************
新規失業保険申請件数 → 24.2万件
11月生産者物価指数 → 0.4%
7−9月期家計純資産変化 → 4766b
*********************
ドル/円 151.81 〜 152.69
ユーロ/ドル 1.0464 〜 1.0521
ユーロ/円 159.07 〜 160.24
NYダウ −234.04 → 43,914.12
GOLD −47.30 → 2,709.40ドル
WTI −0.27 → 70.02ドル
米10年国債 +0.061 → 4.332%

本日の注目イベント

  • 日 12月期日銀短観
  • 欧 ユーロ圏10月鉱工業生産
  • 英 英10月鉱工業生産
  • 英 英10月貿易収支
  • 米 11月輸入物価指数
  • 米 11月輸出物価指数

本日のコメント

米11月の生産者物価指数(PPI)は、市場予想に反して前月比で伸びが加速していました。市場予想は「0.2%」でしたが、結果は「0.4%」でした。また、前年同月比でも「3.0%」と、予想の「2.6%」を上回り、インフレの根強さを物語っていました。ブルームバーグは「卵価格の急騰が影響した。ただ、米金融当局が重視する個人消費支出(PCE)価格の算出に使われる項目は、総じて伸びが抑制された。とはいえ、その先の見通しは不透明のままだ」と分析していました。この発表を受け、利下げ期待の後退からドル円はやや買われましたが、同時に発表された「週間失業保険申請件数」の結果がドル売りにつながりました。

同件数は、前週比1.7万件増加し、「24.2万件」と2カ月ぶりの高水準でした。この時期は年末のホリデーシーズンを控えデータは振れやすくなってはいますが、より変動の少ない「4週移動平均」でも増加していました。また、継続受給者数も3年ぶりの高水準付近で推移しており、これは新たな職を見つけるまでの時間が長期化していることを示唆しており、再び健全な状況に戻ったとされる労働市場にもやや不安が残る結果になりました。ただ、これが来週のFOMC会合での金融政策に影響を与えるほどのものではないとみられます。ただ、それでも同指標を受けたドル円は152円台を割り込み、151円81銭前後まで売られる場面もありました。クリスマスシーズンを控え、市場参加者がややナーバスになっていることが窺えます。

カナダとメキシコに対して25%の関税をかけると宣言したトランプ次期大統領でしたが、専門家によると、計画されているカナダとメキシコ産の原油とガスへの課税は、米製油会社の採算性を悪化させるだけではなく、全米でのガス・電気料金の高騰につながると警告しています。メキシコから自動車などの完成品を減らすことを意図した政策と思えますが、結局ブーメランのように最終的には自国のインフレ高騰にもつながる可能性があります。カナダは、トランプ次期大統領が表明している同国への関税を実際に発動した場合、報復措置としてウランや石油、カリウムといった米国に輸出している主要なコモディティに対して課税することを検討していると、一部メディアが報じています。また、輸出税はカナダにとって最後の手段であって、まずは米国製品に対する報復関税や一部のカナダ製品への輸出規制が実施される可能性が高いとのことのようです。

米CBSが、トランプ次期大統領は中国の習近平国家主席を来月の大統領就任式に招待したと報じていましたが、これに対してCBSは12日、習近平主席が来年1月20日にワシントンで行われるトランプ氏の米大統領就任式に出席しない見通しだと、事情に詳しい関係者からの情報だとして伝えています。CBSによると、中国からは別の高官らが出席する可能性があるとしていました。

今週のドル円は、CPI、PPIの結果を無事通過し、底堅い動きを見せています。最大の要因は米金利の上昇が挙げられます。米10年債は4日続落し、先週末では4.17%台であった長期金利が昨日は4.33%台まで上昇しドル円を支えています。米債券市場関係者の多くが、トランプ次期政権が始動すれば、やはり債券の増発から金利上昇圧力が増すと読んでいるのではないかと、個人的には想像しています。年末が近くなり経済新聞では、専門家による来年の相場見通しもちらほら見られるようになりましたが、予想は大きく割れているのが現状です。トランプ氏が再び政権を司ることから予想が困難なことは当然ですが、個人投資家の皆さんも今から心しておく必要があります。

本日のドル円は151円50銭〜153円30銭程度を予想します。

佐藤正和の書籍紹介

これだけ! FXチャート分析 三種の神器

これだけ! FXチャート分析 三種の神器
著者:佐藤正和
出版社:クロスメディア・パブリッシング

チャートがしっかり読めるようになるFX入門

チャートがしっかり読めるようになるFX入門
著者:佐藤正和
出版社:翔泳社

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
12/6 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「米国の雇用情勢に関する一連のデータが不安定だったにもかかわらず、労働市場はおおむね安定しているようだ」、「私には持続可能な完全雇用のように感じられる」 --------
12/6 デーリー・SF連銀総裁 「労働市場は引き続き良い位置にある。雇用が拡大する中、失業者一人につき約1人分の空ポジションがある。つまり、バランスの取れた労働市場と言える」 --------
12/6 ボウマン・FRB理事 「失業率は上昇したものの、歴史的に見れば低い水準だ」、「現時点において労働市場よりもインフレの方がより大きな懸念だと引き続き見ている」、「インフレは高止まりしており、利下げは慎重かつ漸進的に進めたい」 --------
12/4 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「政策の選択性を維持することが重要だと思われ、現在の経済環境や新たに入手できる情報、見通しの変化を慎重に見極めるためには、利下げペースの減速や一時停止を検討する時期が近づいているのかもしれない」 --------
12/4 パウエル・FRB議長 (米経済の現状について)、「著しく良好だ」、(金融政策について)、「景気を刺激も抑制もしない中立水準に向けて金利を引き下げる上で、当局は慎重になれる余裕がある」、(次期財務長官に指名されているスコット・ベッセント氏については)、「承認されれば、他の財務長官と同じような関係を築けると確信している」、「例えば、経済諮問委員会(CEA)とも、最も重要な財務省とも、同じような全般的な関係、かつ組織的な関係を築くことを十分に期待している」 株と債券が買われ、NYダウは初の4万5千ドル台に乗せる。
12/4 デーリー・SF連銀総裁 「経済を良好な状態に保つためには、政策の再調整を続けなくてはならない。12月になるか、それよりも後になるのか、それは次回の会合で議論する機会を得られる問いだ。しかし重要なのは、経済に合わせて政策金利を引き下げ続けなくてはならないことだ」 --------
12/4 クーグラー・FRB理事 「経済は最大限の雇用確保と物価安定という2大目標に向けて近年大きく前進し、現在は良好な状態にあると私は見ている。労働市場は堅調を維持し、インフレ率は、途中多少の起伏はあったものの、目標の2%に向けた持続可能な道筋をたどっているように見受けられる」、「FOMCの政策決定にあらかじめ定まった道筋はない。インフレ鈍化の面で達成した前進を、台無しにしかねないリスクや負の供給ショックが到来しないか、私は注意深く監視していく。仕事はまだ終わっていない。 --------
12/2 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「最大限の雇用と物価安定というFOMCの2つの責務に関し、それらを達成する上でのリスクはほぼ均衡が取れている状態にシフトした。従ってわれわれも、経済活動を刺激も抑制もしないスタンスへと金融政策をシフトし始めるべきだ」 --------
12/2 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「インフレと雇用に対するリスクが一段と均衡してきた現在、政策を中立スタンスに移行すべく金利をさらに引き下げる必要があるだろう」、「政策の道筋はデータ次第になる。過去5年間に学んだことがあるとすれば、見通しは依然として極めて不透明だということだ」 --------
12/2 ウォラー・FRB理事 「政策金利据え置きが理にかなうデータが会合前に出る可能性はあるが、現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」 --------
11/29 植田・日銀総裁 「中央銀行の立場からは、物価・経済見通しに為替レートがどういう影響を与えるのかという点で考えるし、そこをポイントに政策運営をする」、「インフレ率が2%を超えはじめている時に一段の円安になれば、リスクが大きい。場合によっては対応しないといけなくなる」 ドル円は150円台前半から149円台半ばまで下落。
11/20 クック・FRB理事 (FRBが担う雇用とインフレの両責務について)、「リスクはおおむね均衡している。金利の方向性は下向きだが、引き下げの幅とタイミングは、これから出て来るデータと経済の見通し次第だ」 --------
11/20 コリンズ・ボストン連銀総裁 「最終的な行先は不確かだが、ある程度の追加緩和は必要だと考える。現行の政策は依然として少なくとも幾らかは景気に抑制的だから」 --------
11/20 ボウマン・FRB理事 「政策金利の引き下げに関して、インフレ目標をなお達成できていない点を認識しつつ、労働市場の動向を注意深く見守りながら、最終地点までどの程度離れているのか正確に判断できるよう慎重に進めたい」、「2023年初頭以降、インフレ抑制でかなりの進展が見られたが、ここ数カ月は進展が停滞しているようだ。また、物価安定目標を達成する前の段階で、政策金利が中立水準に達する、あるいは中立水準を割り込むリスクを排除すべきではない」 --------
11/18 植田・日銀総裁 「経済や物価の改善に併せて緩和度合いを少しずつ調整していくことが成長を支え、物価安定の目標を持続的・安定的に実現していくことに資する」、(そのタイミングについては)、「先行きの経済・物価・金融情勢次第」とし、「毎回の会合で利用可能なデータや情報などから、経済・物価の現状評価や見通しをアップデートしながら政策判断を行っていく」 利上げへの言及がなかったことでドル円は154円台半ばから154円台後半へと上昇。
11/14 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米金融当局は大きな進展を遂げたが、まだ勝利宣言をすることは出来ない」 --------
11/14 クーグラー・FRB理事 「インフレの進展を停滞させる、あるいは再び加速させるリスクが生じれば、政策金利の引き下げを一時停止するのが適切となるだろう。しかし、労働市場が突然減速する場合、政策金利の漸進的な引き下げを継続することが適切だろう」 --------
11/14 パウエル・FRB議長 「最近の経済は目覚ましく良好に推移している。慎重なペースで政策金利を引き下げる余地が生じている」、「経済は、利下げを急ぐ必要性についていかなるシグナルも発していない。労働市場の状況は概ね均衡し、インフレ期待もかなり安定する中で、インフレ率は時に起伏のある道をたどりながらも、2%の目標に向かって引き続き低下していくと予想している。また、経済データが許せば、利下げをゆっくり進めるのが賢明だろう」 ややタカ派的であったことからドル円は156円41銭まで上昇。
11/13 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレは正しい方向に進んでいると考える。その点について自信を持っているが、もう少し様子を見る必要がある。何らかの決定を下す前に、さらに1カ月もしくは6週間のデータを分析しなくてはならない」 --------
11/13 ローガン・ダラス連銀総裁 「終着点に達するまでFOMCはさらに追加利下げを必要とする可能性が高いだろう。しかし、利下げの回数やペースを見極めるのは難しい」 --------
11/13 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「インフレを目標に回帰させ、最大限の雇用を支える上で、金融政策は好位置にある。政策金利を時間とともに中立水準へ漸進的に調整することを通じて、これらの達成を図っている。インフレが2%に向って低下し続けることが前提だ」、「追加利下げを検討する際には、今後入手するデータを思慮深く、かつ辛抱強く検証することが可能だ」 --------
11/12 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 (来月のFOMC会合での利下げ一時停止の可能性について尋ねられ)、「インフレ面で驚くようなことが起こらない限り、見通しが劇的に変わることはないだろう」、「それまでにインフレが予想外の上振れを見せれば、利下げを一時停止する可能性もある。一方で、12月までに労働市場が実際に過熱するとは考えにくく、それほど時間はない」 --------
11/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「購買力は高いが価格に敏感な消費者に、より生産的で価値の高い労働力が重なり、経済を良好な方向に導いた。米金融当局は経済が今後どう展開しても適切に対応できる状態にある」、(今後の経済シナリオについては)「1つは、米選挙を巡る不透明感が消え、企業が投資・雇用を再開した場合、金融当局としてインフレの上振れリスクを警戒するシナリオ。2つ目は購買力低下による利幅縮小に対応して企業が人員を削減、その結果として雇用リスクが上昇するシナリオだ」 --------
11/9 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「利下げ幅は、議会と新政権の目先の計画ではなく、生産性と経済成長にかかっている。成長が維持され、今後も構造的に生産性に高い経済成長が続くのであれば、恐らくそれほど大きな利下げには至らないだろう」と、「トランプ時期政権と新議会による政策はインフレを刺激し、最終的に利下げ幅の縮小につながるかどうかを判断するのは時期尚早」 --------
11/7 パウエル・FRB議長 「われわれは時間をかけてより中立的なスタンスへと移行しており、そうした中で今回の政策スタンスのさらなる調整は、経済と労働市場の強さを維持する一助となり、インフレ面でのさらなる進展を今後も可能にするだろう」 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。
11/7 FOMC声明文 「委員会は雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると考える。経済見通しは不確かで、委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」、「今年に入って以降、労働市場の状況は概ね緩和してきた。失業率は上昇したが、依然として低い水準だ」、「委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことを強くコミットしている」 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和