今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円一気に157円台後半まで上昇」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 日銀決定会合での政策金利据え置きは予想されていたものの、市場は円売りを加速させ、植田総裁の会見後も一段と円が売られる。NYでは堅調な経済指標や金利高を背景に157円81銭までドルが買われる。
  • ユーロドルも続落したが、円と比べ下げ幅は小幅。その結果ユーロ円は163円台後半まで上昇。
  • 連日下げが続いていた株式市場では買い戻す動きも見られたものの、金利高の影響もあり上値が重い展開。ダウは11日ぶりに反発したが上げ幅を縮小し、15ドル高で引ける。
  • 債券は続落。長期金利は4.52%台まで上昇し、5月以来の高水準。
  • ドル高が一段と進んだことで金は大幅に売られ6日続落。原油は反落。
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新規失業保険申請件数 → 22.0万件
7−9月GDP(確定値) → 3.1%
12月フィラデルフィア連銀景況指数 → −16.4
11月景気先行指標総合指数 → 0.3%
11月中古住宅販売件数 → 415万件
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ドル/円 156.40 〜 157.81
ユーロ/ドル 1.0355 〜 1.0414
ユーロ/円 162.76 〜 163.80
NYダウ +15.37 → 42,342.24
GOLD −45.20 → 2,608.10ドル
WTI −0.67 → 69.91ドル
米10年国債 +0.048 → 4.526%

本日の注目イベント

  • 日 11月消費者物価指数
  • 独 独11月生産者物価指数
  • 欧 ユーロ圏12月消費者信頼感指数(速報値)
  • 英 英11月小売売上高
  • 米 11月個人所得
  • 米 11月個人支出
  • 米 11月PCEデフレータ(前月比)
  • 米 11月PCEデフレータ(前年比)
  • 米 11月PCEコアデフレータ(前月比)
  • 米 11月PCEコアデフレータ(前年比)
  • 米 12月ミシガン大学消費者マインド(確定値)

本日のコメント

午後3時半から始まった植田総裁の会見を、ブルームバーグが配信したライブ映像で見守りました。総裁が言葉を発するたびに円が大きく売られる展開は、前黒田総裁のそれを彷彿させるものでした。日銀は昨日の午前中に開催した金融政策決定会合で、政策金利を0.25%で据え置くことを決めました。政策金利据え置きは3会合連続となります。この会合では、田村審議委員が0.5%への利上げを提案しましたが、据え置き賛成多数で否決されています。この結果は、個人的な予想とも市場予想ともほぼ一致していました。市場にも「据え置き」はある程度織り込まれていたことから、円安が進むとしても限定的ではないかと考えていましたが、想定以上の円売り圧力でした。NYでは157円81銭まで円売りが進み、およそ5カ月ぶりのドル高水準を付けています。

前日のFOMCでは、25bpの利下げが決められたものの、2025年末の政策金利の水準は前回から上方修正され、引き下げ回数が2回と示唆されたことからドル円は153円台半ばから154円80銭台まで上昇。そして、昨日の政策金利発表前まではややドルの上値が重い展開でしたが、据え置き決定後は155円台に乗せ、NYでは一気に157円台後半までドルが買われました。結局、昨日1日だけで3円以上もドルが買われたことになります。前日のFOMC会合での「タカ派的な内容」と、昨日の日銀の「ハト派的な内容」、つまり「ドル金利は下がらず、円金利は上がらない」ことの帰結とも言えます。会見で特に印象に残ったのが、「今回利上げを見送った理由は何でしょうか?」という核心を突いた記者の質問に対して、総裁の答えは歯切れが悪く、発せられた言葉だけでははっきりとした理由は理解できない状況でした。その後、「トランプ政権の不確実性」や、「春闘に向けたモメンタム」や、さらには「(利上げを判断するには)もうワンノッチ欲しい」といった理由を挙げていました。

FOMCと日銀決定会合を経ても、円高方向への動きは限定的だと予想はしていましたが、正直想定外のドル高円安水準です。とは言っても、まだ155−160円のレンジ内で推移すると思われます。一方でここまで急激に円安が進むと、金融当局には「投機的な動き」と判断され、「口先介入」の口実を与えることにもなります。今日あたり、財務官や財務相からもそのような発言があるかもしれません。「実弾介入」に関しては、160円を超えなければないと予想していますが、それでもこのところの米金利の上昇スピードと、トランプ政権が始動すればさらに金利が上昇する可能性もあることを考えると、予防的な意味合いも含めて160円前にも「実弾介入」がある可能性は排除できません。いずれにしても「危険水域」に入っていることは間違いないと考えます。

米7−9月のGDP確報値は「3.1%」と、改定値の「2.8%」から上方修正されました。個人消費や輸出が堅調だったことが一因でしたが、米国の成長率は他の先進国と比べ、群を抜いていることが確認された形です。またこの日発表された「週間失業保険申請件数」も前の週から2万2000件減少の「22万件」でした。前日の声明文でも、「最近複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している」と述べられていたことを裏付ける結果になっています。ドットチャートが示唆する2025年の政策金利引き下げ見通しが「4回」から「2回」になるのも頷ける気がします。

連邦政府機関閉鎖を回避するためには、本日20日までに債務上限を延長か、撤廃しなければならない問題を巡り、トランプ氏は「政府機関は閉鎖されるだろう。しかし、それはバイデンのせいだ」と述べていましたが19日、トランプ氏と下院共和党は連邦政府機関の閉鎖を回避し、連邦債務上限の上限を2年間停止することで合意したと発表しました。毎年のことですが、これで来年はこの問題で混乱することはなくなりました。

本日のドル円は156円50銭〜158円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
12/18 FOMC声明文 「最近複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。今年の早い時期以降、労働市場の状況はおおむね緩和してきた。失業率は上昇したが低いままだ。インフレは委員会が目指す2%の目標に向けて進展を示したが、依然として幾分高い水準にある。金融政策の適切なスタンスを見極める上で、委員会は今後の情報が経済見通しに与える意義を引き続き監視する。委員会の目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、委員会は必要に応じて金融政策のスタンスを調整する用意がある」 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。
12/18 パウエル・FRB議長 「今回の行動により、われわれは政策金利をピーク時から1ポイント引き下げたことになり、現在の政策スタンスは顕著に景気抑制度合いが弱まった。」、「よって政策金利のさらなる調整を検討する上で、われわれはより慎重になることが可能だ」(ただ)、「政策は依然として有意に景気抑制的であり、委員会は利下げを継続する方向にある」 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。
12/6 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「米国の雇用情勢に関する一連のデータが不安定だったにもかかわらず、労働市場はおおむね安定しているようだ」、「私には持続可能な完全雇用のように感じられる」 --------
12/6 デーリー・SF連銀総裁 「労働市場は引き続き良い位置にある。雇用が拡大する中、失業者一人につき約1人分の空ポジションがある。つまり、バランスの取れた労働市場と言える」 --------
12/6 ボウマン・FRB理事 「失業率は上昇したものの、歴史的に見れば低い水準だ」、「現時点において労働市場よりもインフレの方がより大きな懸念だと引き続き見ている」、「インフレは高止まりしており、利下げは慎重かつ漸進的に進めたい」 --------
12/4 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「政策の選択性を維持することが重要だと思われ、現在の経済環境や新たに入手できる情報、見通しの変化を慎重に見極めるためには、利下げペースの減速や一時停止を検討する時期が近づいているのかもしれない」 --------
12/4 パウエル・FRB議長 (米経済の現状について)、「著しく良好だ」、(金融政策について)、「景気を刺激も抑制もしない中立水準に向けて金利を引き下げる上で、当局は慎重になれる余裕がある」、(次期財務長官に指名されているスコット・ベッセント氏については)、「承認されれば、他の財務長官と同じような関係を築けると確信している」、「例えば、経済諮問委員会(CEA)とも、最も重要な財務省とも、同じような全般的な関係、かつ組織的な関係を築くことを十分に期待している」 株と債券が買われ、NYダウは初の4万5千ドル台に乗せる。
12/4 デーリー・SF連銀総裁 「経済を良好な状態に保つためには、政策の再調整を続けなくてはならない。12月になるか、それよりも後になるのか、それは次回の会合で議論する機会を得られる問いだ。しかし重要なのは、経済に合わせて政策金利を引き下げ続けなくてはならないことだ」 --------
12/4 クーグラー・FRB理事 「経済は最大限の雇用確保と物価安定という2大目標に向けて近年大きく前進し、現在は良好な状態にあると私は見ている。労働市場は堅調を維持し、インフレ率は、途中多少の起伏はあったものの、目標の2%に向けた持続可能な道筋をたどっているように見受けられる」、「FOMCの政策決定にあらかじめ定まった道筋はない。インフレ鈍化の面で達成した前進を、台無しにしかねないリスクや負の供給ショックが到来しないか、私は注意深く監視していく。仕事はまだ終わっていない。 --------
12/2 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「最大限の雇用と物価安定というFOMCの2つの責務に関し、それらを達成する上でのリスクはほぼ均衡が取れている状態にシフトした。従ってわれわれも、経済活動を刺激も抑制もしないスタンスへと金融政策をシフトし始めるべきだ」 --------
12/2 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「インフレと雇用に対するリスクが一段と均衡してきた現在、政策を中立スタンスに移行すべく金利をさらに引き下げる必要があるだろう」、「政策の道筋はデータ次第になる。過去5年間に学んだことがあるとすれば、見通しは依然として極めて不透明だということだ」 --------
12/2 ウォラー・FRB理事 「政策金利据え置きが理にかなうデータが会合前に出る可能性はあるが、現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」 --------
11/29 植田・日銀総裁 「中央銀行の立場からは、物価・経済見通しに為替レートがどういう影響を与えるのかという点で考えるし、そこをポイントに政策運営をする」、「インフレ率が2%を超えはじめている時に一段の円安になれば、リスクが大きい。場合によっては対応しないといけなくなる」 ドル円は150円台前半から149円台半ばまで下落。
11/20 クック・FRB理事 (FRBが担う雇用とインフレの両責務について)、「リスクはおおむね均衡している。金利の方向性は下向きだが、引き下げの幅とタイミングは、これから出て来るデータと経済の見通し次第だ」 --------
11/20 コリンズ・ボストン連銀総裁 「最終的な行先は不確かだが、ある程度の追加緩和は必要だと考える。現行の政策は依然として少なくとも幾らかは景気に抑制的だから」 --------
11/20 ボウマン・FRB理事 「政策金利の引き下げに関して、インフレ目標をなお達成できていない点を認識しつつ、労働市場の動向を注意深く見守りながら、最終地点までどの程度離れているのか正確に判断できるよう慎重に進めたい」、「2023年初頭以降、インフレ抑制でかなりの進展が見られたが、ここ数カ月は進展が停滞しているようだ。また、物価安定目標を達成する前の段階で、政策金利が中立水準に達する、あるいは中立水準を割り込むリスクを排除すべきではない」 --------
11/18 植田・日銀総裁 「経済や物価の改善に併せて緩和度合いを少しずつ調整していくことが成長を支え、物価安定の目標を持続的・安定的に実現していくことに資する」、(そのタイミングについては)、「先行きの経済・物価・金融情勢次第」とし、「毎回の会合で利用可能なデータや情報などから、経済・物価の現状評価や見通しをアップデートしながら政策判断を行っていく」 利上げへの言及がなかったことでドル円は154円台半ばから154円台後半へと上昇。
11/14 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米金融当局は大きな進展を遂げたが、まだ勝利宣言をすることは出来ない」 --------
11/14 クーグラー・FRB理事 「インフレの進展を停滞させる、あるいは再び加速させるリスクが生じれば、政策金利の引き下げを一時停止するのが適切となるだろう。しかし、労働市場が突然減速する場合、政策金利の漸進的な引き下げを継続することが適切だろう」 --------
11/14 パウエル・FRB議長 「最近の経済は目覚ましく良好に推移している。慎重なペースで政策金利を引き下げる余地が生じている」、「経済は、利下げを急ぐ必要性についていかなるシグナルも発していない。労働市場の状況は概ね均衡し、インフレ期待もかなり安定する中で、インフレ率は時に起伏のある道をたどりながらも、2%の目標に向かって引き続き低下していくと予想している。また、経済データが許せば、利下げをゆっくり進めるのが賢明だろう」 ややタカ派的であったことからドル円は156円41銭まで上昇。
11/13 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレは正しい方向に進んでいると考える。その点について自信を持っているが、もう少し様子を見る必要がある。何らかの決定を下す前に、さらに1カ月もしくは6週間のデータを分析しなくてはならない」 --------
11/13 ローガン・ダラス連銀総裁 「終着点に達するまでFOMCはさらに追加利下げを必要とする可能性が高いだろう。しかし、利下げの回数やペースを見極めるのは難しい」 --------
11/13 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「インフレを目標に回帰させ、最大限の雇用を支える上で、金融政策は好位置にある。政策金利を時間とともに中立水準へ漸進的に調整することを通じて、これらの達成を図っている。インフレが2%に向って低下し続けることが前提だ」、「追加利下げを検討する際には、今後入手するデータを思慮深く、かつ辛抱強く検証することが可能だ」 --------
11/12 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 (来月のFOMC会合での利下げ一時停止の可能性について尋ねられ)、「インフレ面で驚くようなことが起こらない限り、見通しが劇的に変わることはないだろう」、「それまでにインフレが予想外の上振れを見せれば、利下げを一時停止する可能性もある。一方で、12月までに労働市場が実際に過熱するとは考えにくく、それほど時間はない」 --------
11/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「購買力は高いが価格に敏感な消費者に、より生産的で価値の高い労働力が重なり、経済を良好な方向に導いた。米金融当局は経済が今後どう展開しても適切に対応できる状態にある」、(今後の経済シナリオについては)「1つは、米選挙を巡る不透明感が消え、企業が投資・雇用を再開した場合、金融当局としてインフレの上振れリスクを警戒するシナリオ。2つ目は購買力低下による利幅縮小に対応して企業が人員を削減、その結果として雇用リスクが上昇するシナリオだ」 --------
11/9 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「利下げ幅は、議会と新政権の目先の計画ではなく、生産性と経済成長にかかっている。成長が維持され、今後も構造的に生産性に高い経済成長が続くのであれば、恐らくそれほど大きな利下げには至らないだろう」と、「トランプ時期政権と新議会による政策はインフレを刺激し、最終的に利下げ幅の縮小につながるかどうかを判断するのは時期尚早」 --------
11/7 パウエル・FRB議長 「われわれは時間をかけてより中立的なスタンスへと移行しており、そうした中で今回の政策スタンスのさらなる調整は、経済と労働市場の強さを維持する一助となり、インフレ面でのさらなる進展を今後も可能にするだろう」 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。
11/7 FOMC声明文 「委員会は雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると考える。経済見通しは不確かで、委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」、「今年に入って以降、労働市場の状況は概ね緩和してきた。失業率は上昇したが、依然として低い水準だ」、「委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことを強くコミットしている」 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和