「植田日銀総裁の講演待ち」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は東京市場で157円40銭まで買われたが、介入警戒感から156円台後半に押し戻される。NYでは再び157円38銭まで上昇。市場参加者が少ない上、本日の植田総裁の講演を控え薄商い。
- ユーロドルも1.04を挟み小動き。
- 株式市場は短縮取引だったにもかかわらず「クリスマスラリー」に沸き、3指数が揃って続伸。ナスダックは2万の大台、S&P500は6千の大台をそれぞれ回復。
- 債券は小幅に売られたがほぼ横ばいと、盛り上がりに欠ける。長期金利は4.59%前後で推移。
- 金と原油は反発。
12月リッチモンド連銀製造業景況指数 → −10
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ドル/円 | 157.07 〜 157.38 |
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ユーロ/ドル | 1.0384 〜 1.0410 |
ユーロ/円 | 163.17 〜 163.63 |
NYダウ | +390.08 → 43,297.03 |
GOLD | +7.31 → 2,635.50ドル |
WTI | +0.86 → 70.10ドル |
米10年国債 | +0.002 → 4.589% |
本日の注目イベント
- 日 10月景気先行指数(CI)(改定値)
- 日 10月景気一致指数(改定値)
- 日 植田日銀総裁講演
- 米他 豪米欧英など、海外市場は休場
本日のコメント
米市場がクリスマスのため株と債券で短縮取引だったことから、為替には大きな動きは見られません。米長期金利はほぼ横ばいでしたが、ドル円は株価が大きく買われたことでやや円が売られ、157円38銭までドルが買われました。株式市場では「クリスマスラリー」が見られ、ダウは390ドル上昇し、他の2指数も大幅高でした。一方、日本株の動きは真逆で、昨日も下落して取引を終えています。ブルームバーグはこの動きを「クリスマス当日の25日はサンタクロースが忙しく、東京株式市場に株高のプレゼントが届くのは1日遅れがちのようだ。日本株のサンタの遅刻癖・・・」と、アイロニカルにコメントしていました。
昨日も加藤財務相から円安をけん制する発言があり、ドル円は157円40銭から156円台後半まで下落する場面がありました。財務相は、「足元では一方的、また急激な動きが見られる。為替市場の動向を憂慮しており、行き過ぎた動きには適切に対応を取りたい」と話していました。足元では「危険水域」に入っていると思われますが、日本の金融当局は「水準ではなく、円安が進むそのスピードを重視している」といった見方もあるようで、来週のクリスマス休暇明けからの動きには注意したいところです。
今月19日のFOMCでは25bpの利下げを決めたものの、ドットチャートでは2025年の利下げ回数が従来の4回から2回になることを示唆し、ドル上昇に弾みを付けました。ただこの会合ではクリーブランド連銀のハマック総裁が利下げには反対票を投じていました。FOMCでの政策決定が一枚岩ではなかったわけですが、さらに記憶にとどめて置きたいのは、その前にもFRB執行部のメンバーからも利下げに対し反対する動きがあったことです。ボウマンFRB理事です。ボウマン理事は、ディスインフレに対して慎重な姿勢を崩しておらず、8月20日の講演では物価上昇率が目標の2%を「不快なほど上回っている」と述べ、「政策金利は漸進的に引き下げるべきだ」と主張していました。この傾向は2025年に入るとさらに強まる可能性があると思われます。FOMCでの投票権は、議長を始めとする執行部は常に有していますが、地区連銀総裁についてはNY連銀総裁以外は1年間の輪番制になっています。2025年には、クリーブランド連銀、サンフランシスコ連銀、リッチモンド連銀、さらにアトランタ連銀の各総裁が外れ、新たに、セントルイス連銀、カンザスシティ連銀、ボストン連銀、そしてシカゴ連銀が投票権を有することになり、FOMCメンバーの間で意見の分散が進むと見られています。
本日は午後12時50分から植田日銀総裁が経団連審議員会で講演を行います。12月の金融政策決定会合で追加利上げ見送りを決めた後の会見では、予想外のハト派的な発言で、一部には1月会合でも利上げが見送られるといった観測も持たれました。現在の市場のコンセンサスも、どちらかと言えば「見送り」に傾いています。この発言を踏襲してくるのか、あるいは自身の発言が円安につながったことを「学習効果」として修正して来るのか注目され、今年最後のラリーの可能性もあります。
本日のドル円は155円50銭から158円程度を予想します。
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本日は、東京市場終了後全ての海外市場が休場のため、レートは動きません。そのため、明日26日(木)の「アナリストレポート」はお休みとさせていただきますのでご承知おき下さい。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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12/20 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「インフレ抑制がさらに進展するまで金利を据え置くべきだと考えた」、「経済活動を緩やかに抑制する程度の高い水準で金利を『当面は』維持すべきだと考えた」 | -------- |
12/20 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「私個人の予測としては、財政や移民といった政策に関する考えをいくらか織り込んだ。これらの要素は経済の先行きを考える上で重要だからだ」「不確実性が著しいことを、ただ強調しておきたい」 | -------- |
12/20 | 三村:財務省財務官 | 「投機的な動きも含め、為替の動きを憂慮している。行き過ぎた動きには適切な対応を取りたいと思っている」 | ドル円はやや円高方向に振れる。 |
12/18 | FOMC声明文 | 「最近複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。今年の早い時期以降、労働市場の状況はおおむね緩和してきた。失業率は上昇したが低いままだ。インフレは委員会が目指す2%の目標に向けて進展を示したが、依然として幾分高い水準にある。金融政策の適切なスタンスを見極める上で、委員会は今後の情報が経済見通しに与える意義を引き続き監視する。委員会の目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、委員会は必要に応じて金融政策のスタンスを調整する用意がある」 | 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。 |
12/18 | パウエル・FRB議長 | 「今回の行動により、われわれは政策金利をピーク時から1ポイント引き下げたことになり、現在の政策スタンスは顕著に景気抑制度合いが弱まった。」、「よって政策金利のさらなる調整を検討する上で、われわれはより慎重になることが可能だ」(ただ)、「政策は依然として有意に景気抑制的であり、委員会は利下げを継続する方向にある」 | 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。 |
12/6 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「米国の雇用情勢に関する一連のデータが不安定だったにもかかわらず、労働市場はおおむね安定しているようだ」、「私には持続可能な完全雇用のように感じられる」 | -------- |
12/6 | デーリー・SF連銀総裁 | 「労働市場は引き続き良い位置にある。雇用が拡大する中、失業者一人につき約1人分の空ポジションがある。つまり、バランスの取れた労働市場と言える」 | -------- |
12/6 | ボウマン・FRB理事 | 「失業率は上昇したものの、歴史的に見れば低い水準だ」、「現時点において労働市場よりもインフレの方がより大きな懸念だと引き続き見ている」、「インフレは高止まりしており、利下げは慎重かつ漸進的に進めたい」 | -------- |
12/4 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「政策の選択性を維持することが重要だと思われ、現在の経済環境や新たに入手できる情報、見通しの変化を慎重に見極めるためには、利下げペースの減速や一時停止を検討する時期が近づいているのかもしれない」 | -------- |
12/4 | パウエル・FRB議長 | (米経済の現状について)、「著しく良好だ」、(金融政策について)、「景気を刺激も抑制もしない中立水準に向けて金利を引き下げる上で、当局は慎重になれる余裕がある」、(次期財務長官に指名されているスコット・ベッセント氏については)、「承認されれば、他の財務長官と同じような関係を築けると確信している」、「例えば、経済諮問委員会(CEA)とも、最も重要な財務省とも、同じような全般的な関係、かつ組織的な関係を築くことを十分に期待している」 | 株と債券が買われ、NYダウは初の4万5千ドル台に乗せる。 |
12/4 | デーリー・SF連銀総裁 | 「経済を良好な状態に保つためには、政策の再調整を続けなくてはならない。12月になるか、それよりも後になるのか、それは次回の会合で議論する機会を得られる問いだ。しかし重要なのは、経済に合わせて政策金利を引き下げ続けなくてはならないことだ」 | -------- |
12/4 | クーグラー・FRB理事 | 「経済は最大限の雇用確保と物価安定という2大目標に向けて近年大きく前進し、現在は良好な状態にあると私は見ている。労働市場は堅調を維持し、インフレ率は、途中多少の起伏はあったものの、目標の2%に向けた持続可能な道筋をたどっているように見受けられる」、「FOMCの政策決定にあらかじめ定まった道筋はない。インフレ鈍化の面で達成した前進を、台無しにしかねないリスクや負の供給ショックが到来しないか、私は注意深く監視していく。仕事はまだ終わっていない。 | -------- |
12/2 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「最大限の雇用と物価安定というFOMCの2つの責務に関し、それらを達成する上でのリスクはほぼ均衡が取れている状態にシフトした。従ってわれわれも、経済活動を刺激も抑制もしないスタンスへと金融政策をシフトし始めるべきだ」 | -------- |
12/2 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「インフレと雇用に対するリスクが一段と均衡してきた現在、政策を中立スタンスに移行すべく金利をさらに引き下げる必要があるだろう」、「政策の道筋はデータ次第になる。過去5年間に学んだことがあるとすれば、見通しは依然として極めて不透明だということだ」 | -------- |
12/2 | ウォラー・FRB理事 | 「政策金利据え置きが理にかなうデータが会合前に出る可能性はあるが、現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」 | -------- |
11/29 | 植田・日銀総裁 | 「中央銀行の立場からは、物価・経済見通しに為替レートがどういう影響を与えるのかという点で考えるし、そこをポイントに政策運営をする」、「インフレ率が2%を超えはじめている時に一段の円安になれば、リスクが大きい。場合によっては対応しないといけなくなる」 | ドル円は150円台前半から149円台半ばまで下落。 |
11/20 | クック・FRB理事 | (FRBが担う雇用とインフレの両責務について)、「リスクはおおむね均衡している。金利の方向性は下向きだが、引き下げの幅とタイミングは、これから出て来るデータと経済の見通し次第だ」 | -------- |
11/20 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 「最終的な行先は不確かだが、ある程度の追加緩和は必要だと考える。現行の政策は依然として少なくとも幾らかは景気に抑制的だから」 | -------- |
11/20 | ボウマン・FRB理事 | 「政策金利の引き下げに関して、インフレ目標をなお達成できていない点を認識しつつ、労働市場の動向を注意深く見守りながら、最終地点までどの程度離れているのか正確に判断できるよう慎重に進めたい」、「2023年初頭以降、インフレ抑制でかなりの進展が見られたが、ここ数カ月は進展が停滞しているようだ。また、物価安定目標を達成する前の段階で、政策金利が中立水準に達する、あるいは中立水準を割り込むリスクを排除すべきではない」 | -------- |
11/18 | 植田・日銀総裁 | 「経済や物価の改善に併せて緩和度合いを少しずつ調整していくことが成長を支え、物価安定の目標を持続的・安定的に実現していくことに資する」、(そのタイミングについては)、「先行きの経済・物価・金融情勢次第」とし、「毎回の会合で利用可能なデータや情報などから、経済・物価の現状評価や見通しをアップデートしながら政策判断を行っていく」 | 利上げへの言及がなかったことでドル円は154円台半ばから154円台後半へと上昇。 |
11/14 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「米金融当局は大きな進展を遂げたが、まだ勝利宣言をすることは出来ない」 | -------- |
11/14 | クーグラー・FRB理事 | 「インフレの進展を停滞させる、あるいは再び加速させるリスクが生じれば、政策金利の引き下げを一時停止するのが適切となるだろう。しかし、労働市場が突然減速する場合、政策金利の漸進的な引き下げを継続することが適切だろう」 | -------- |
11/14 | パウエル・FRB議長 | 「最近の経済は目覚ましく良好に推移している。慎重なペースで政策金利を引き下げる余地が生じている」、「経済は、利下げを急ぐ必要性についていかなるシグナルも発していない。労働市場の状況は概ね均衡し、インフレ期待もかなり安定する中で、インフレ率は時に起伏のある道をたどりながらも、2%の目標に向かって引き続き低下していくと予想している。また、経済データが許せば、利下げをゆっくり進めるのが賢明だろう」 | ややタカ派的であったことからドル円は156円41銭まで上昇。 |
11/13 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「インフレは正しい方向に進んでいると考える。その点について自信を持っているが、もう少し様子を見る必要がある。何らかの決定を下す前に、さらに1カ月もしくは6週間のデータを分析しなくてはならない」 | -------- |
11/13 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「終着点に達するまでFOMCはさらに追加利下げを必要とする可能性が高いだろう。しかし、利下げの回数やペースを見極めるのは難しい」 | -------- |
11/13 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「インフレを目標に回帰させ、最大限の雇用を支える上で、金融政策は好位置にある。政策金利を時間とともに中立水準へ漸進的に調整することを通じて、これらの達成を図っている。インフレが2%に向って低下し続けることが前提だ」、「追加利下げを検討する際には、今後入手するデータを思慮深く、かつ辛抱強く検証することが可能だ」 | -------- |
11/12 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | (来月のFOMC会合での利下げ一時停止の可能性について尋ねられ)、「インフレ面で驚くようなことが起こらない限り、見通しが劇的に変わることはないだろう」、「それまでにインフレが予想外の上振れを見せれば、利下げを一時停止する可能性もある。一方で、12月までに労働市場が実際に過熱するとは考えにくく、それほど時間はない」 | -------- |
11/12 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「購買力は高いが価格に敏感な消費者に、より生産的で価値の高い労働力が重なり、経済を良好な方向に導いた。米金融当局は経済が今後どう展開しても適切に対応できる状態にある」、(今後の経済シナリオについては)「1つは、米選挙を巡る不透明感が消え、企業が投資・雇用を再開した場合、金融当局としてインフレの上振れリスクを警戒するシナリオ。2つ目は購買力低下による利幅縮小に対応して企業が人員を削減、その結果として雇用リスクが上昇するシナリオだ」 | -------- |
11/9 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「利下げ幅は、議会と新政権の目先の計画ではなく、生産性と経済成長にかかっている。成長が維持され、今後も構造的に生産性に高い経済成長が続くのであれば、恐らくそれほど大きな利下げには至らないだろう」と、「トランプ時期政権と新議会による政策はインフレを刺激し、最終的に利下げ幅の縮小につながるかどうかを判断するのは時期尚早」 | -------- |
11/7 | パウエル・FRB議長 | 「われわれは時間をかけてより中立的なスタンスへと移行しており、そうした中で今回の政策スタンスのさらなる調整は、経済と労働市場の強さを維持する一助となり、インフレ面でのさらなる進展を今後も可能にするだろう」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。 |
11/7 | FOMC声明文 | 「委員会は雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると考える。経済見通しは不確かで、委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」、「今年に入って以降、労働市場の状況は概ね緩和してきた。失業率は上昇したが、依然として低い水準だ」、「委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことを強くコミットしている」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書