「ドル円5カ月ぶりに158円台に」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は続伸。NYでは一時158円台に乗せ、158円09銭まで円が売られる。失業保険申請件数が予想を下回っていたことで、円売りが優勢に。
- ユーロドルは引き続き1.04前後でもみ合い。ユーロ円もおよそ1カ月ぶりに164円台後半まで買われる。
- 株式市場はまちまち。午後遅い時間まで3指数は揃ってプラスで推移していたが、引けにかけて売られる。ダウだけが28ドル高で引ける。
- 債券は買われたが限定的。長期金利はやや低下し4.58%台で推移。
- 金は続伸し、原油は小幅に反落。
新規失業保険申請件数 → 21.9万件
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ドル/円 | 157.60 〜 158.09 |
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ユーロ/ドル | 1.0396 〜 1.0430 |
ユーロ/円 | 163.67 〜 164.77 |
NYダウ | +28.77 → 43,325.80 |
GOLD | +18.40 → 2,653.90ドル |
WTI | −0.48 → 69.60ドル |
米10年国債 | +0.006 → 4.583% |
本日の注目イベント
- 日 12月東京都区部消費者物価指数
- 日 11月鉱工業生産
- 米 11月卸売在庫
本日のコメント
クリスマス休暇明けとはいえ、まだ英国や旧英国系の国々では休暇中のなか、ドル円はNYで158円台に乗せ158円09銭と、7月17日以来およそ5カ月ぶりの円安水準を付けました。米国の利下げペースが鈍化する一方、日銀が来年1月の会合でも追加利上げを見送るとの観測が根強いことが背景です。
今週25日(水)に行われた植田総裁の講演では、先の決定会合の会見では予想外の「ハト派」発言でドル円が大きく上昇したこともあり、どの程度「調整」があるのか注目していましたが、結局内容的には変化ありませんでした。総裁は、「経済・物価情勢の改善が続いていけば、それに応じて、政策金利を上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と述べ、具体的なタイミングについては、「今後の経済・物価・金融情勢次第だ」と明言は避けました。さらに総裁は「特に、米国の次期政権の経済政策を巡る不確実性は大きい」と、説明しています。筆者は、トランプ政権が始動し政策が実施されれば、米金利の上昇圧力が増し、それに呼応するかのように円が売られる展開を予想しています。そうなると、為替面から日本の物価にも上昇圧力がかかり、大幅な円安を避けるという意味合いからも、1月会合での追加利上げが実施されるのではと予想しています。この予想は、現時点では市場のコンセンサスとは相容れないかもしれませんが、一部で指摘されているように、「日銀はビハインド・ザ・カーブに陥っている」との評価を払拭する意味からも、1月会合での追加利上げの可能性があるとみていますが、どうでしょう。
FRBによる利下げペースの鈍化も予想されていますが、昨日発表された「週間失業保険申請件数」では、申請件数は減少していましたが、継続受給者数が予想を上回る「191万件人」と、約3年ぶりの高水準でした。これは、失業者が仕事を見つけるまでの期間が長期化していることを示唆しており、失業者の再就職難を示す他のデータと整合しています。先週のFOMC会合後の会見で、パウエル議長が「労働市場は依然として堅調な状態にある」と述べていた言葉とはやや異にしています。ただ現時点では、これが労働市場に黄信号が点滅していることを示唆するものとは判断できませんが、これが仮にそうだとしたら、2025年では2回と示された利下げ回数が再び増えることにつながります。年明け以降も注視して行く必要はありそうです。
日銀は26日、今後も利上げを続けた場合に日銀の収益にどのような影響が出るのかといった試算結果を発表しました。それによると、短期金利を2%まで引き上げた条件下では、2027〜28年度ごろには最大で2兆円規模の最終赤字が発生するが、赤字は短期的との試算でした。ただ現実的には、短期金利が2%まで上昇する金融環境は極めて想像し難く、仮にそこまで短期金利が上昇しているようだと、インフレ率が大幅に上昇していることになります。日本の短期金利が2%を超えたことなど、1990年以降一度もなかったと記憶しています。
本日のドル円は157円〜158円50銭程度を予想します。
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今年最後の「アナリストレポート」になります。筆者にとって2024年の最大のサプライズは「米大統領選でのトランプ氏の勝利」でした。ただ、今冷静に考えてみると、まずバイデン氏ではさすがにあの年齢を考えると、さらに4年間の大統領職務をこなすのは無理だったのかもしれません。また、最後の最後に自身の次男に大統領権限を最大限に利用し「恩赦」を与えたことなど、筆者の中ではバイデン氏に対する評価も相当下がりました。何はともあれ、好き嫌いはあってもこれから4年間、トランプ言動に大きく左右されることになります。合衆国憲法を変えない限り第三次政権はありませんが、次に狙っているのは「ノーベル平和賞」との観測もあります。良いお年を・・・・・。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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12/20 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「インフレ抑制がさらに進展するまで金利を据え置くべきだと考えた」、「経済活動を緩やかに抑制する程度の高い水準で金利を『当面は』維持すべきだと考えた」 | -------- |
12/20 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「私個人の予測としては、財政や移民といった政策に関する考えをいくらか織り込んだ。これらの要素は経済の先行きを考える上で重要だからだ」「不確実性が著しいことを、ただ強調しておきたい」 | -------- |
12/20 | 三村:財務省財務官 | 「投機的な動きも含め、為替の動きを憂慮している。行き過ぎた動きには適切な対応を取りたいと思っている」 | ドル円はやや円高方向に振れる。 |
12/18 | FOMC声明文 | 「最近複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。今年の早い時期以降、労働市場の状況はおおむね緩和してきた。失業率は上昇したが低いままだ。インフレは委員会が目指す2%の目標に向けて進展を示したが、依然として幾分高い水準にある。金融政策の適切なスタンスを見極める上で、委員会は今後の情報が経済見通しに与える意義を引き続き監視する。委員会の目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、委員会は必要に応じて金融政策のスタンスを調整する用意がある」 | 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。 |
12/18 | パウエル・FRB議長 | 「今回の行動により、われわれは政策金利をピーク時から1ポイント引き下げたことになり、現在の政策スタンスは顕著に景気抑制度合いが弱まった。」、「よって政策金利のさらなる調整を検討する上で、われわれはより慎重になることが可能だ」(ただ)、「政策は依然として有意に景気抑制的であり、委員会は利下げを継続する方向にある」 | 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。 |
12/6 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「米国の雇用情勢に関する一連のデータが不安定だったにもかかわらず、労働市場はおおむね安定しているようだ」、「私には持続可能な完全雇用のように感じられる」 | -------- |
12/6 | デーリー・SF連銀総裁 | 「労働市場は引き続き良い位置にある。雇用が拡大する中、失業者一人につき約1人分の空ポジションがある。つまり、バランスの取れた労働市場と言える」 | -------- |
12/6 | ボウマン・FRB理事 | 「失業率は上昇したものの、歴史的に見れば低い水準だ」、「現時点において労働市場よりもインフレの方がより大きな懸念だと引き続き見ている」、「インフレは高止まりしており、利下げは慎重かつ漸進的に進めたい」 | -------- |
12/4 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「政策の選択性を維持することが重要だと思われ、現在の経済環境や新たに入手できる情報、見通しの変化を慎重に見極めるためには、利下げペースの減速や一時停止を検討する時期が近づいているのかもしれない」 | -------- |
12/4 | パウエル・FRB議長 | (米経済の現状について)、「著しく良好だ」、(金融政策について)、「景気を刺激も抑制もしない中立水準に向けて金利を引き下げる上で、当局は慎重になれる余裕がある」、(次期財務長官に指名されているスコット・ベッセント氏については)、「承認されれば、他の財務長官と同じような関係を築けると確信している」、「例えば、経済諮問委員会(CEA)とも、最も重要な財務省とも、同じような全般的な関係、かつ組織的な関係を築くことを十分に期待している」 | 株と債券が買われ、NYダウは初の4万5千ドル台に乗せる。 |
12/4 | デーリー・SF連銀総裁 | 「経済を良好な状態に保つためには、政策の再調整を続けなくてはならない。12月になるか、それよりも後になるのか、それは次回の会合で議論する機会を得られる問いだ。しかし重要なのは、経済に合わせて政策金利を引き下げ続けなくてはならないことだ」 | -------- |
12/4 | クーグラー・FRB理事 | 「経済は最大限の雇用確保と物価安定という2大目標に向けて近年大きく前進し、現在は良好な状態にあると私は見ている。労働市場は堅調を維持し、インフレ率は、途中多少の起伏はあったものの、目標の2%に向けた持続可能な道筋をたどっているように見受けられる」、「FOMCの政策決定にあらかじめ定まった道筋はない。インフレ鈍化の面で達成した前進を、台無しにしかねないリスクや負の供給ショックが到来しないか、私は注意深く監視していく。仕事はまだ終わっていない。 | -------- |
12/2 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「最大限の雇用と物価安定というFOMCの2つの責務に関し、それらを達成する上でのリスクはほぼ均衡が取れている状態にシフトした。従ってわれわれも、経済活動を刺激も抑制もしないスタンスへと金融政策をシフトし始めるべきだ」 | -------- |
12/2 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「インフレと雇用に対するリスクが一段と均衡してきた現在、政策を中立スタンスに移行すべく金利をさらに引き下げる必要があるだろう」、「政策の道筋はデータ次第になる。過去5年間に学んだことがあるとすれば、見通しは依然として極めて不透明だということだ」 | -------- |
12/2 | ウォラー・FRB理事 | 「政策金利据え置きが理にかなうデータが会合前に出る可能性はあるが、現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」 | -------- |
11/29 | 植田・日銀総裁 | 「中央銀行の立場からは、物価・経済見通しに為替レートがどういう影響を与えるのかという点で考えるし、そこをポイントに政策運営をする」、「インフレ率が2%を超えはじめている時に一段の円安になれば、リスクが大きい。場合によっては対応しないといけなくなる」 | ドル円は150円台前半から149円台半ばまで下落。 |
11/20 | クック・FRB理事 | (FRBが担う雇用とインフレの両責務について)、「リスクはおおむね均衡している。金利の方向性は下向きだが、引き下げの幅とタイミングは、これから出て来るデータと経済の見通し次第だ」 | -------- |
11/20 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 「最終的な行先は不確かだが、ある程度の追加緩和は必要だと考える。現行の政策は依然として少なくとも幾らかは景気に抑制的だから」 | -------- |
11/20 | ボウマン・FRB理事 | 「政策金利の引き下げに関して、インフレ目標をなお達成できていない点を認識しつつ、労働市場の動向を注意深く見守りながら、最終地点までどの程度離れているのか正確に判断できるよう慎重に進めたい」、「2023年初頭以降、インフレ抑制でかなりの進展が見られたが、ここ数カ月は進展が停滞しているようだ。また、物価安定目標を達成する前の段階で、政策金利が中立水準に達する、あるいは中立水準を割り込むリスクを排除すべきではない」 | -------- |
11/18 | 植田・日銀総裁 | 「経済や物価の改善に併せて緩和度合いを少しずつ調整していくことが成長を支え、物価安定の目標を持続的・安定的に実現していくことに資する」、(そのタイミングについては)、「先行きの経済・物価・金融情勢次第」とし、「毎回の会合で利用可能なデータや情報などから、経済・物価の現状評価や見通しをアップデートしながら政策判断を行っていく」 | 利上げへの言及がなかったことでドル円は154円台半ばから154円台後半へと上昇。 |
11/14 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「米金融当局は大きな進展を遂げたが、まだ勝利宣言をすることは出来ない」 | -------- |
11/14 | クーグラー・FRB理事 | 「インフレの進展を停滞させる、あるいは再び加速させるリスクが生じれば、政策金利の引き下げを一時停止するのが適切となるだろう。しかし、労働市場が突然減速する場合、政策金利の漸進的な引き下げを継続することが適切だろう」 | -------- |
11/14 | パウエル・FRB議長 | 「最近の経済は目覚ましく良好に推移している。慎重なペースで政策金利を引き下げる余地が生じている」、「経済は、利下げを急ぐ必要性についていかなるシグナルも発していない。労働市場の状況は概ね均衡し、インフレ期待もかなり安定する中で、インフレ率は時に起伏のある道をたどりながらも、2%の目標に向かって引き続き低下していくと予想している。また、経済データが許せば、利下げをゆっくり進めるのが賢明だろう」 | ややタカ派的であったことからドル円は156円41銭まで上昇。 |
11/13 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「インフレは正しい方向に進んでいると考える。その点について自信を持っているが、もう少し様子を見る必要がある。何らかの決定を下す前に、さらに1カ月もしくは6週間のデータを分析しなくてはならない」 | -------- |
11/13 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「終着点に達するまでFOMCはさらに追加利下げを必要とする可能性が高いだろう。しかし、利下げの回数やペースを見極めるのは難しい」 | -------- |
11/13 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「インフレを目標に回帰させ、最大限の雇用を支える上で、金融政策は好位置にある。政策金利を時間とともに中立水準へ漸進的に調整することを通じて、これらの達成を図っている。インフレが2%に向って低下し続けることが前提だ」、「追加利下げを検討する際には、今後入手するデータを思慮深く、かつ辛抱強く検証することが可能だ」 | -------- |
11/12 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | (来月のFOMC会合での利下げ一時停止の可能性について尋ねられ)、「インフレ面で驚くようなことが起こらない限り、見通しが劇的に変わることはないだろう」、「それまでにインフレが予想外の上振れを見せれば、利下げを一時停止する可能性もある。一方で、12月までに労働市場が実際に過熱するとは考えにくく、それほど時間はない」 | -------- |
11/12 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「購買力は高いが価格に敏感な消費者に、より生産的で価値の高い労働力が重なり、経済を良好な方向に導いた。米金融当局は経済が今後どう展開しても適切に対応できる状態にある」、(今後の経済シナリオについては)「1つは、米選挙を巡る不透明感が消え、企業が投資・雇用を再開した場合、金融当局としてインフレの上振れリスクを警戒するシナリオ。2つ目は購買力低下による利幅縮小に対応して企業が人員を削減、その結果として雇用リスクが上昇するシナリオだ」 | -------- |
11/9 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「利下げ幅は、議会と新政権の目先の計画ではなく、生産性と経済成長にかかっている。成長が維持され、今後も構造的に生産性に高い経済成長が続くのであれば、恐らくそれほど大きな利下げには至らないだろう」と、「トランプ時期政権と新議会による政策はインフレを刺激し、最終的に利下げ幅の縮小につながるかどうかを判断するのは時期尚早」 | -------- |
11/7 | パウエル・FRB議長 | 「われわれは時間をかけてより中立的なスタンスへと移行しており、そうした中で今回の政策スタンスのさらなる調整は、経済と労働市場の強さを維持する一助となり、インフレ面でのさらなる進展を今後も可能にするだろう」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。 |
11/7 | FOMC声明文 | 「委員会は雇用とインフレ目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると考える。経済見通しは不確かで、委員会は2つの責務の両サイドに対するリスクに注意を払っている」、「今年に入って以降、労働市場の状況は概ね緩和してきた。失業率は上昇したが、依然として低い水準だ」、「委員会は最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことを強くコミットしている」 | 株と債券が買われ、金利が低下したことで153円台から152円70銭まで下落。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書