今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ユーロドルは大幅下落」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円はISM製造業景況指数が上振れしたことでややドルが買われたものの、小動きでその後下落。午後には再び157円台を回復。
  • ユーロドルは売られ、一時は2022年11月以来となる1.0225まで下落。「ドル高ユーロ安」が加速。
  • 昨年末から下落が続いていた株式市場では3指数が揃って上昇。ダウは339ドル買われ、テスラやアップルなどが上昇をけん引。
  • 債券は小幅に下落。長期金利は4.59%台に上昇。
  • 金は売られ、原油は続伸。
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米 12月ISM製造業景況指数 → 49.3
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ドル/円 156.89 〜 157.47
ユーロ/ドル 1.0225 〜 1.0310
ユーロ/円 161.60 〜 162.21
NYダウ +339.86 → 42,732.13
GOLD −14.30 → 2,654.70ドル
WTI +0.83 → 73.96ドル
米10年国債 +0.037 → 4.596%

本日の注目イベント

  • 独 独12月サービス業PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏12月総合PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏12月サービス業PMI(改定値)
  • 米 12月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値)
  • 米 12月S&Pグローバル総合PMI(改定値)
  • 米 11月製造業受注

本日のコメント

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

長い年末・年始でしたが、この間ドル円は想定外の動きはなく、概ね156円〜158円のレンジ内で推移し、まずはほっとしたところです。今年のテーマは、トランプ氏が大統領に就任し、「アメリカファースト」、「MAGA」を推進する中で、どこまで米国のインフレが再燃するのかという点です。それによって相場が大きく左右されるからです。昨日の米国ではFRB高官が「インフレとの闘いはまだ終わっていない」との考えを示しています。サンフランシスコ連銀のデーリー総裁はパネル討論で、「インフレ率は依然として目標を不快なほど大きく上回っている」と述べ、クーグラーFRB理事もCNBCとのインタビューで、「インフレは、2024年第1四半期に上昇が見られたが、ここにきてまた上昇が見られる」と指摘し、「これが本当に一時的な上昇であって、より永続的なものではないことを確認したい」と述べ、今後もインフレ率について注視していく考えを示しています。

米インフレ率については2022年以降、物価上昇圧力が大幅に緩和されたものの、ここ数カ月はFRBの物価目標である2%に向けて安定的には推移していません。トランプ政権が始動し、公言通り中国などからの輸入品に大幅な関税を賦課すれば、インフレが再燃する可能性が高いと見られます。また、不法移民の大量送還を実施する意向ですが、これも人手不足を招き人件費の高騰から、その上昇部分を価格に転嫁する可能性があり、これもインフレ率の上昇を招きそうです。ジョンソン下院議長は、トランプ次期大統領の一連の優先課題に取り組む野心的な法案を4月中に下院で採決する方針だと、5日のFOXニュースの番組で述べています。議長の言う「優先的な法案」には、「不法移民の大量送還」、「2017年のトランプ減税の延長」、さらには「連邦債務上限の引き上げまたは撤廃」、などが含まれている模様です。特に、連邦債務上限が仮に撤廃されれば、政府機関閉鎖問題はなくなる一方、歳出が青天井になる可能性もあり、トランプ氏にとって今回の4年間が最後の大統領だとすれば、より大胆な政策を実行することも予想されます。FRBにとって「インフレとの闘いは終わっていない」というのも、当然と言えそうです。

年明け3日にはロシアが再びウクライナへの大規模な攻撃を行いましたが、5日にはウクライナ軍がロシア西部で新たな攻撃を行っています。「ロシアは当然の報いを受けている」とウクライナの大統領府は述べていますが、この戦いも、トランプ氏が大統領に就任したら即時に停戦が実現するのか、注目したいところです。ロシアが停戦を受け入れるにはウクライナが相当な領土を明け渡す必要があり、ゼレンスキー大統領がその条件を簡単にのむとも思えません。もっとも、停戦させることが自身のノーベル平和賞受賞への必須条件であるとすれば、トランプ氏は「条件をのまなければ、今後米国はウクライナへの武器の供与はしない」と恫喝することも予想されます。ロシアには北朝鮮兵士も投入されており、戦火はまだ拡大しそうな気配です。

本日のドル円は156円80銭〜158円30銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
1/5 クーグラーFRB理事 「インフレは、2024年第1四半期に上昇が見られたが、ここにきてまた上昇が見られる」、「これが本当に一時的な上昇であって、より永続的なものではないことを確認したい」 --------
1/5 デーリー・SF連銀総裁 「インフレ率は依然として目標を不快なほど大きく上回っている」 --------
12/20 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「インフレ抑制がさらに進展するまで金利を据え置くべきだと考えた」、「経済活動を緩やかに抑制する程度の高い水準で金利を『当面は』維持すべきだと考えた」 --------
12/20 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「私個人の予測としては、財政や移民といった政策に関する考えをいくらか織り込んだ。これらの要素は経済の先行きを考える上で重要だからだ」「不確実性が著しいことを、ただ強調しておきたい」 --------
12/20 三村:財務省財務官 「投機的な動きも含め、為替の動きを憂慮している。行き過ぎた動きには適切な対応を取りたいと思っている」 ドル円はやや円高方向に振れる。
12/18 FOMC声明文 「最近複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。今年の早い時期以降、労働市場の状況はおおむね緩和してきた。失業率は上昇したが低いままだ。インフレは委員会が目指す2%の目標に向けて進展を示したが、依然として幾分高い水準にある。金融政策の適切なスタンスを見極める上で、委員会は今後の情報が経済見通しに与える意義を引き続き監視する。委員会の目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、委員会は必要に応じて金融政策のスタンスを調整する用意がある」 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。
12/18 パウエル・FRB議長 「今回の行動により、われわれは政策金利をピーク時から1ポイント引き下げたことになり、現在の政策スタンスは顕著に景気抑制度合いが弱まった。」、「よって政策金利のさらなる調整を検討する上で、われわれはより慎重になることが可能だ」(ただ)、「政策は依然として有意に景気抑制的であり、委員会は利下げを継続する方向にある」 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。
12/6 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「米国の雇用情勢に関する一連のデータが不安定だったにもかかわらず、労働市場はおおむね安定しているようだ」、「私には持続可能な完全雇用のように感じられる」 --------
12/6 デーリー・SF連銀総裁 「労働市場は引き続き良い位置にある。雇用が拡大する中、失業者一人につき約1人分の空ポジションがある。つまり、バランスの取れた労働市場と言える」 --------
12/6 ボウマン・FRB理事 「失業率は上昇したものの、歴史的に見れば低い水準だ」、「現時点において労働市場よりもインフレの方がより大きな懸念だと引き続き見ている」、「インフレは高止まりしており、利下げは慎重かつ漸進的に進めたい」 --------
12/4 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「政策の選択性を維持することが重要だと思われ、現在の経済環境や新たに入手できる情報、見通しの変化を慎重に見極めるためには、利下げペースの減速や一時停止を検討する時期が近づいているのかもしれない」 --------
12/4 パウエル・FRB議長 (米経済の現状について)、「著しく良好だ」、(金融政策について)、「景気を刺激も抑制もしない中立水準に向けて金利を引き下げる上で、当局は慎重になれる余裕がある」、(次期財務長官に指名されているスコット・ベッセント氏については)、「承認されれば、他の財務長官と同じような関係を築けると確信している」、「例えば、経済諮問委員会(CEA)とも、最も重要な財務省とも、同じような全般的な関係、かつ組織的な関係を築くことを十分に期待している」 株と債券が買われ、NYダウは初の4万5千ドル台に乗せる。
12/4 デーリー・SF連銀総裁 「経済を良好な状態に保つためには、政策の再調整を続けなくてはならない。12月になるか、それよりも後になるのか、それは次回の会合で議論する機会を得られる問いだ。しかし重要なのは、経済に合わせて政策金利を引き下げ続けなくてはならないことだ」 --------
12/4 クーグラー・FRB理事 「経済は最大限の雇用確保と物価安定という2大目標に向けて近年大きく前進し、現在は良好な状態にあると私は見ている。労働市場は堅調を維持し、インフレ率は、途中多少の起伏はあったものの、目標の2%に向けた持続可能な道筋をたどっているように見受けられる」、「FOMCの政策決定にあらかじめ定まった道筋はない。インフレ鈍化の面で達成した前進を、台無しにしかねないリスクや負の供給ショックが到来しないか、私は注意深く監視していく。仕事はまだ終わっていない。 --------
12/2 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「最大限の雇用と物価安定というFOMCの2つの責務に関し、それらを達成する上でのリスクはほぼ均衡が取れている状態にシフトした。従ってわれわれも、経済活動を刺激も抑制もしないスタンスへと金融政策をシフトし始めるべきだ」 --------
12/2 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「インフレと雇用に対するリスクが一段と均衡してきた現在、政策を中立スタンスに移行すべく金利をさらに引き下げる必要があるだろう」、「政策の道筋はデータ次第になる。過去5年間に学んだことがあるとすれば、見通しは依然として極めて不透明だということだ」 --------
12/2 ウォラー・FRB理事 「政策金利据え置きが理にかなうデータが会合前に出る可能性はあるが、現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和