今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円、WP紙報道で一時156円台前半まで売られ」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は朝方、ワシントンポスト(WP)紙の関税を巡る記事で156円25銭まで急落。その後トランプ氏が同報道を否定したことで157円台を回復。
  • WP紙の報道にユーロを買い戻す動きが出て、ユーロドルは1.0437まで上昇する場面も。
  • 株式市場では引き続きハイテク株が買われ、ナスダックは243ポイント高。ダウは売られたものの引けにかけて下げ幅を縮小。
  • 債券は続落し、長期金利は4.63%台に上昇。
  • 金と原油は売られる。
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12月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値) → 56.8
12月S&Pグローバル総合PMI(改定値) → 55.4
11月製造業受注 → −0.4%
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ドル/円 156.25 〜 157.67
ユーロ/ドル 1.0353 〜 1.0437
ユーロ/円 162.52 〜 163.84
NYダウ −25.57 → 42,706.56
GOLD −7.30 → 2,647.40ドル
WTI −0.40 → 73.56ドル
米10年国債 +0.032 → 4.630%

本日の注目イベント

  • 豪 豪11月住宅建設許可件数
  • 中 中国 12月外貨準備高
  • 欧 独休場、英仏半日取引
  • 欧 ユーロ圏11月失業率
  • 欧 ユーロ圏12月消費者物価指数(速報値)
  • 米 11月貿易収支
  • 米 11月雇用動態調査(JOLTS)求人件数
  • 米 12月ISM非製造業景況指数
  • 米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁講演
  • 加 カナダ11月貿易収支

本日のコメント

今月20日に大統領に就任するトランプ氏ですが、同氏が主張する輸入品に対する関税を巡って相場が乱高下し、就任後のトランプ政権の不確実性を象徴するかのような動きを見せています。

ワシントポスト(WP)紙は、トランプ次期大統領が選挙公約に掲げていた米国への輸入品全てに一律の関税を導入する計画について、側近らが範囲を限定することを検討していると報じ、ドル円はNY時間早朝に一時156円25銭まで売られました。WP紙は先に、関税について全ての国に適用されるが、国家および経済安全保障上の懸念がある重要輸入品のみを対象とすることを検討していると報じました。その後トランプ氏はこの報道を否定し、「WP紙の記事は、存在しない匿名の関係者を引用し、私の関税政策が縮小されると誤って報じている。それは間違いだ」と、自身のソーシャルメディアプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」に投稿しました。トランプ氏は選挙戦で、米国に輸入される全てに10%か20%の関税を「一律に」課すと主張していました。報道通りならば、公約内容から大幅に後退することになり、米国のインフレ率の上昇が制限されるとの思惑からドルが売られたものです。トランプ氏はまた、中国の習近平主席に関しても、「中国の習近平国家とは多分うまくやっていけるだろう」と述べ「両者の関係は、双方向的でなければならない」と語っています。ただ一方で、「中国は米国を食い物にしている」、「代表者を通じて習氏と話をしている」とも発言。また、「習氏は強力な人物で、中国で尊敬されているのは確かだが、中国は米国につけ込んでいる」とも述べています。(ブルームバーグ)

日本製鉄は、USスチール買収計画にバイデン大統領が不当介入したとして、複数の訴訟を米裁判所に提起しました。同社は、バイデン氏が自らの政治的目的を達成するために全米鉄鋼労働組合(USW)の支持を得て、法の支配を無視したと主張しています。これに関してトランプ次期大統領は、「関税でUSスチールははるかにもっと稼げるようになり、価値ある企業になる。そうであれば、今身売りを考えるだろうか」と投稿し、「USスチールはかつて世界で最も偉大だった企業であり、先頭に立って偉大さを取り戻す存在になれる」と述べています。日本製鉄は、本日記者会見を開き今回の経緯を説明するようですが、バイデン氏だけではなく、「アメリカファースト」を掲げるトランプ氏も買収には反対しており、司法の判断が待たれます。

カナダのトルドー首相は6日、自由党の党首を辞任すると発表しました。トルドー氏は、新党首が選出されるまでは引き続き首相を務めると説明していますが、9年余り務めた首相の座を退くことになります。トルドー氏は足元では支持率が低迷しており、フリーランド副首相兼財務相がトルドー氏との意見対立から昨年12月に辞任し、「党内からも退陣圧力が一段と強まっていた」(ブルームバーグ)とのことです。G7ではドイツのメルケル氏が退陣し、最古参であったトルドー氏が辞任することで、同様に支持率が低迷しているフランスのマクロン大統領に波及しないかと危惧しています。

本日のドル円は156円80銭〜158円70銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
1/5 クーグラーFRB理事 「インフレは、2024年第1四半期に上昇が見られたが、ここにきてまた上昇が見られる」、「これが本当に一時的な上昇であって、より永続的なものではないことを確認したい」 --------
1/5 デーリー・SF連銀総裁 「インフレ率は依然として目標を不快なほど大きく上回っている」 --------
12/20 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「インフレ抑制がさらに進展するまで金利を据え置くべきだと考えた」、「経済活動を緩やかに抑制する程度の高い水準で金利を『当面は』維持すべきだと考えた」 --------
12/20 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「私個人の予測としては、財政や移民といった政策に関する考えをいくらか織り込んだ。これらの要素は経済の先行きを考える上で重要だからだ」「不確実性が著しいことを、ただ強調しておきたい」 --------
12/20 三村:財務省財務官 「投機的な動きも含め、為替の動きを憂慮している。行き過ぎた動きには適切な対応を取りたいと思っている」 ドル円はやや円高方向に振れる。
12/18 FOMC声明文 「最近複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。今年の早い時期以降、労働市場の状況はおおむね緩和してきた。失業率は上昇したが低いままだ。インフレは委員会が目指す2%の目標に向けて進展を示したが、依然として幾分高い水準にある。金融政策の適切なスタンスを見極める上で、委員会は今後の情報が経済見通しに与える意義を引き続き監視する。委員会の目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、委員会は必要に応じて金融政策のスタンスを調整する用意がある」 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。
12/18 パウエル・FRB議長 「今回の行動により、われわれは政策金利をピーク時から1ポイント引き下げたことになり、現在の政策スタンスは顕著に景気抑制度合いが弱まった。」、「よって政策金利のさらなる調整を検討する上で、われわれはより慎重になることが可能だ」(ただ)、「政策は依然として有意に景気抑制的であり、委員会は利下げを継続する方向にある」 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。
12/6 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「米国の雇用情勢に関する一連のデータが不安定だったにもかかわらず、労働市場はおおむね安定しているようだ」、「私には持続可能な完全雇用のように感じられる」 --------
12/6 デーリー・SF連銀総裁 「労働市場は引き続き良い位置にある。雇用が拡大する中、失業者一人につき約1人分の空ポジションがある。つまり、バランスの取れた労働市場と言える」 --------
12/6 ボウマン・FRB理事 「失業率は上昇したものの、歴史的に見れば低い水準だ」、「現時点において労働市場よりもインフレの方がより大きな懸念だと引き続き見ている」、「インフレは高止まりしており、利下げは慎重かつ漸進的に進めたい」 --------
12/4 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「政策の選択性を維持することが重要だと思われ、現在の経済環境や新たに入手できる情報、見通しの変化を慎重に見極めるためには、利下げペースの減速や一時停止を検討する時期が近づいているのかもしれない」 --------
12/4 パウエル・FRB議長 (米経済の現状について)、「著しく良好だ」、(金融政策について)、「景気を刺激も抑制もしない中立水準に向けて金利を引き下げる上で、当局は慎重になれる余裕がある」、(次期財務長官に指名されているスコット・ベッセント氏については)、「承認されれば、他の財務長官と同じような関係を築けると確信している」、「例えば、経済諮問委員会(CEA)とも、最も重要な財務省とも、同じような全般的な関係、かつ組織的な関係を築くことを十分に期待している」 株と債券が買われ、NYダウは初の4万5千ドル台に乗せる。
12/4 デーリー・SF連銀総裁 「経済を良好な状態に保つためには、政策の再調整を続けなくてはならない。12月になるか、それよりも後になるのか、それは次回の会合で議論する機会を得られる問いだ。しかし重要なのは、経済に合わせて政策金利を引き下げ続けなくてはならないことだ」 --------
12/4 クーグラー・FRB理事 「経済は最大限の雇用確保と物価安定という2大目標に向けて近年大きく前進し、現在は良好な状態にあると私は見ている。労働市場は堅調を維持し、インフレ率は、途中多少の起伏はあったものの、目標の2%に向けた持続可能な道筋をたどっているように見受けられる」、「FOMCの政策決定にあらかじめ定まった道筋はない。インフレ鈍化の面で達成した前進を、台無しにしかねないリスクや負の供給ショックが到来しないか、私は注意深く監視していく。仕事はまだ終わっていない。 --------
12/2 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「最大限の雇用と物価安定というFOMCの2つの責務に関し、それらを達成する上でのリスクはほぼ均衡が取れている状態にシフトした。従ってわれわれも、経済活動を刺激も抑制もしないスタンスへと金融政策をシフトし始めるべきだ」 --------
12/2 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「インフレと雇用に対するリスクが一段と均衡してきた現在、政策を中立スタンスに移行すべく金利をさらに引き下げる必要があるだろう」、「政策の道筋はデータ次第になる。過去5年間に学んだことがあるとすれば、見通しは依然として極めて不透明だということだ」 --------
12/2 ウォラー・FRB理事 「政策金利据え置きが理にかなうデータが会合前に出る可能性はあるが、現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和