「12月ADPは予想を下回る」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- 欧州で158円55銭近辺までドル高が進んだことを受け、ドル円は終始158円台で推移。トランプ次期大統領が「非常事態宣言」を発令するとの報道もドル高に寄与。
- ユーロドルでもドル高が進み、ユーロは再び1.02台後半まで下落。
- 株式市場はまちまち。ダウとS&P500は上昇したが、ナスダックは小幅安。
- 債券はほぼ横ばい。長期金利は4.69%台で推移。20年債利回りは一時、2023年以来となる5%台に乗せる。
- 金は続伸し、原油は反落。
12月ADP雇用者数 → 12.2万人
新規失業保険申請件数 → 20.1万件
11月消費者信用残高 → 7489b
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ドル/円 | 158.14 〜 158.51 |
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ユーロ/ドル | 1.0281 〜 1.0324 |
ユーロ/円 | 162.76 〜 163.51 |
NYダウ | +106.84 → 42,635.20 |
GOLD | +7.00 → 2,672.40ドル |
WTI | −0.93 → 73.32ドル |
米10年国債 | +0.006 → 4.691% |
本日の注目イベント
- 日 日銀支店長会議
- 豪 豪11月貿易収支
- 豪 豪11月小売売上高
- 中 中国12月消費者物価指数
- 中 中国12月生産者物価指数
- 独 独11月貿易収支
- 独 独11月鉱工業生産
- 欧 ユーロ圏11月小売売上高
- 米 株式市場は休場、債券市場は短縮取引(カーター元大統領服喪の日)
- 米 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁講演
- 米 バーキン・リッチモンド連銀総裁講演
本日のコメント
ドル円は前日に日米の市場で記録した158円42銭前後を抜けて上昇したものの、158円55銭止まりでした。米金利の上昇を手掛かりにドル高基調は続いているものの、介入警戒感や、トランプ氏が何を言い出すのか予想できないことが一層不透明感を強めているようです。
米債券市場では20年債の利回りが一時5%台乗せを見せました。インフレ懸念で世界的に金利上昇圧力が増す中、同利回りが5%を抜けるのは2023年以来のこととなります。トランプ次期政権の政策が物価上昇圧力を再燃させ、財政赤字の拡大を招きかねないとの懸念が根底にあります。10年債利回りも4.7%に近づき、5%が視野に入って来ました。5%台乗せは過去10年でほんの数回しかなく、直近では2023年後半に記録しています。それだけに、5%台に乗せるかどうかは、市場参加者が今後のインフレをどのように考えているのかを知る手掛かりになりそうです。イエレン財務長官は8日CNBCとのインタビューで、「統計が予想を上回り、予想外の景気上振れを示せば、金利の今後の道筋は予想よりもやや高くなるだろう」と、堅調な経済指標が債券売りにつながっているとの見方を示していました。日本の債券市場でも、昨日は長期金利が一時1.17%台まで上昇し、およそ13年半ぶりの高水準を付けています。特段これといった理由はなかったようですが、各国に大幅な関税引き上げをちらつかせる「トランプ流恫喝」の矛先が、いずれ日本にも向けられるのではという危機感があるのかもしれません。
昨日のコメントでも触れた、トランプ氏のグリーンランドや、パナマ運河、さらにカナダなどに関する発言は、昨日の夜のNHKの番組でも大きく取り上げられていました。デンマークの首相は「グリーンランドは売りものではない」と一蹴し、パナマ運河ではパナマの外相が否定。さらにカナダを巡っては、辞任を決めたトルドー首相が「カナダの一部たりともアメリカにはわたさない」と、全てが否定されていました。ただ、ここでひるまないのが「トランプ流」です。CNNはトランプ氏が、全面的な関税を導入する法的根拠とするため「国家経済の緊急事態を宣言することを検討している」と報じました。報道によると、トランプ氏はこの宣言により「国際緊急経済権限法(IEEPA)」を利用した新たな関税措置を打ち出すことが可能になる(ブルームバーグ)とのことです。世界で最も堅調で安定した強い経済力を誇る米国が、経済に関する「緊急事態宣言」を発するとすれば、お隣尹大統領の愚行も非難できません。
12月の「ADP雇用者数」は、市場予想を下回り伸びが鈍化していました。民間の雇用統計である雇用者数は「12万2000人」と、8月以来の低水準でした。一方、先週の「新規失業保険申請件数」は前の週よりも減少しており、雇用環境は改善しています。このように労働市場に関する指標はミックスでしたが、本番は明日の「雇用統計」です。現時点での非農業部門雇用者数(NFP)は16.5万人と見込まれています。
本日は四半期に一度開かれる日銀支店長会議があります。会議では地方も含めた景気や賃金の動向が報告されます。植田総裁は先の講演でも「利上げを判断するには、もう1ノッチ欲しい」と繰り返し述べていたこともあり、どのような内容が報告されるのか注目されます。
本日のドル円は157円50銭〜159円程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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1/5 | クーグラーFRB理事 | 「インフレは、2024年第1四半期に上昇が見られたが、ここにきてまた上昇が見られる」、「これが本当に一時的な上昇であって、より永続的なものではないことを確認したい」 | -------- |
1/5 | デーリー・SF連銀総裁 | 「インフレ率は依然として目標を不快なほど大きく上回っている」 | -------- |
12/20 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「インフレ抑制がさらに進展するまで金利を据え置くべきだと考えた」、「経済活動を緩やかに抑制する程度の高い水準で金利を『当面は』維持すべきだと考えた」 | -------- |
12/20 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「私個人の予測としては、財政や移民といった政策に関する考えをいくらか織り込んだ。これらの要素は経済の先行きを考える上で重要だからだ」「不確実性が著しいことを、ただ強調しておきたい」 | -------- |
12/20 | 三村:財務省財務官 | 「投機的な動きも含め、為替の動きを憂慮している。行き過ぎた動きには適切な対応を取りたいと思っている」 | ドル円はやや円高方向に振れる。 |
12/18 | FOMC声明文 | 「最近複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。今年の早い時期以降、労働市場の状況はおおむね緩和してきた。失業率は上昇したが低いままだ。インフレは委員会が目指す2%の目標に向けて進展を示したが、依然として幾分高い水準にある。金融政策の適切なスタンスを見極める上で、委員会は今後の情報が経済見通しに与える意義を引き続き監視する。委員会の目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、委員会は必要に応じて金融政策のスタンスを調整する用意がある」 | 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。 |
12/18 | パウエル・FRB議長 | 「今回の行動により、われわれは政策金利をピーク時から1ポイント引き下げたことになり、現在の政策スタンスは顕著に景気抑制度合いが弱まった。」、「よって政策金利のさらなる調整を検討する上で、われわれはより慎重になることが可能だ」(ただ)、「政策は依然として有意に景気抑制的であり、委員会は利下げを継続する方向にある」 | 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。 |
12/6 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「米国の雇用情勢に関する一連のデータが不安定だったにもかかわらず、労働市場はおおむね安定しているようだ」、「私には持続可能な完全雇用のように感じられる」 | -------- |
12/6 | デーリー・SF連銀総裁 | 「労働市場は引き続き良い位置にある。雇用が拡大する中、失業者一人につき約1人分の空ポジションがある。つまり、バランスの取れた労働市場と言える」 | -------- |
12/6 | ボウマン・FRB理事 | 「失業率は上昇したものの、歴史的に見れば低い水準だ」、「現時点において労働市場よりもインフレの方がより大きな懸念だと引き続き見ている」、「インフレは高止まりしており、利下げは慎重かつ漸進的に進めたい」 | -------- |
12/4 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「政策の選択性を維持することが重要だと思われ、現在の経済環境や新たに入手できる情報、見通しの変化を慎重に見極めるためには、利下げペースの減速や一時停止を検討する時期が近づいているのかもしれない」 | -------- |
12/4 | パウエル・FRB議長 | (米経済の現状について)、「著しく良好だ」、(金融政策について)、「景気を刺激も抑制もしない中立水準に向けて金利を引き下げる上で、当局は慎重になれる余裕がある」、(次期財務長官に指名されているスコット・ベッセント氏については)、「承認されれば、他の財務長官と同じような関係を築けると確信している」、「例えば、経済諮問委員会(CEA)とも、最も重要な財務省とも、同じような全般的な関係、かつ組織的な関係を築くことを十分に期待している」 | 株と債券が買われ、NYダウは初の4万5千ドル台に乗せる。 |
12/4 | デーリー・SF連銀総裁 | 「経済を良好な状態に保つためには、政策の再調整を続けなくてはならない。12月になるか、それよりも後になるのか、それは次回の会合で議論する機会を得られる問いだ。しかし重要なのは、経済に合わせて政策金利を引き下げ続けなくてはならないことだ」 | -------- |
12/4 | クーグラー・FRB理事 | 「経済は最大限の雇用確保と物価安定という2大目標に向けて近年大きく前進し、現在は良好な状態にあると私は見ている。労働市場は堅調を維持し、インフレ率は、途中多少の起伏はあったものの、目標の2%に向けた持続可能な道筋をたどっているように見受けられる」、「FOMCの政策決定にあらかじめ定まった道筋はない。インフレ鈍化の面で達成した前進を、台無しにしかねないリスクや負の供給ショックが到来しないか、私は注意深く監視していく。仕事はまだ終わっていない。 | -------- |
12/2 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「最大限の雇用と物価安定というFOMCの2つの責務に関し、それらを達成する上でのリスクはほぼ均衡が取れている状態にシフトした。従ってわれわれも、経済活動を刺激も抑制もしないスタンスへと金融政策をシフトし始めるべきだ」 | -------- |
12/2 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「インフレと雇用に対するリスクが一段と均衡してきた現在、政策を中立スタンスに移行すべく金利をさらに引き下げる必要があるだろう」、「政策の道筋はデータ次第になる。過去5年間に学んだことがあるとすれば、見通しは依然として極めて不透明だということだ」 | -------- |
12/2 | ウォラー・FRB理事 | 「政策金利据え置きが理にかなうデータが会合前に出る可能性はあるが、現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書