今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「WTI原油価格5カ月ぶりの高水準」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は先週末の雇用統計発表後に158円88銭まで買われたが、その後は上値の重い展開が続く。昨日のNYではポジション調整のドル売りもあり、157円を割り込む。
  • ユーロドルではユーロ安が続き。一時は2022年11月以来となる1.0192まで下落。
  • 株式市場ではナスダックだけが下げ、他の2指数は上昇。S&P500は大きく売られたが、引けにかけては買われプラス圏で取引を終える。
  • 債券は続落。長期金利は一時4.8%台に乗せ、4.77%台まで低下して引ける。
  • 金は5日ぶりに反落、原油は米国がロシアのエネルギー産業に対する新たな制裁を発動したことで79ドル台まで買われる。
ドル/円 156.93 〜 157.81
ユーロ/ドル 1.0192 〜 1.0247
ユーロ/円 160.13 〜 161.36
NYダウ +358.67 → 42,297.12
GOLD −36.40 → 2,678.60ドル
WTI +2.25 → 78.82ドル
米10年国債 +0.019 → 4.778%

本日の注目イベント

  • 豪 豪12月ウエストパック消費者信頼感指数
  • 日 11月国際収支・経常収支
  • 日 12月景気ウオッチャー調査
  • 日 永見野日銀副総裁講演(10:30神奈川県金融経済懇談会)
  • 米 12月生産者物価指数
  • 米  ウィリアムズ・NY連銀総裁、イベント冒頭挨拶
  • 米 シュミッド・カンザスシティー連銀総裁講

本日のコメント

米長期金利が引き続き上昇し、昨日の米債券市場では4.8%台まで上昇しましたが、その割にはドル円の上値は重かったという印象です。158円台では介入警戒感が強いのか、なかなか159円台には乗せません。ドル円と米金利との相関がやや崩れてきたのかもしれません。

先週金曜日には「12月の雇用統計」が発表され、米金利が大きく上昇しました。12月の非農業部門雇用者数(NFP)は「25.6万人」と、市場予想の「16.5万人」を大きく上回りました。さらに失業率も「4.2%」の予想に対して「4.1%」と、依然として米労働市場は堅調なことが確認されています。今月28−29日に行われる今年最初のFOMC会合での利下げの可能性はほぼ消滅していますが、年内の利下げ回数予想も下方修正する動きが続いています。JPモルガンは6月と9月に0.25ポイントの利下げと、これまでの3回予想から下方修正しました。また英バークレーズに至っては、わずか「1回」に下方修正しました。さらにバンク・オブ・アメリカは「利下げのサイクルは終わった」とのレポートを発表しています。

インフレ懸念が強まり、労働市場も堅調な上、1週間後に迫ったトランプ次期政権の政策が不透明です。インフレが再燃するとの予想が多い中、今後どこまでインフレ率が高まるのか読めないことも市場参加者の不安を増幅させています。米株式市場では金利先高観に株式が売られ、昨日は値ごろ感から反発しましたが、NYダウは昨年12月に記録した最高値である4万5014ドルから雇用統計発表後は3000ドル以上も(7.7%)も下げています。米企業の業績は大手ハイテク企業を中心に好調ですが、金利高に弱い株式市場の側面が露呈した格好です。米金利が上昇し、WTI原油価格も5カ月ぶりに79ドル台まで上昇しています。原油をほぼ海外からの輸入に頼っている日本にとって、「金利高というドル高材料」と、「原油高という円安材料」がダブルで発生したことになります。上でも述べたように、足元の動きは158円台から上値の重い展開が続いていますが、何かのきっかけで160円台を回復すれば、円安が一気に進む可能性もありそうです。もっとも、一方で日銀による追加利上げの可能性も残っており、この辺りの攻防が注目されます。本日は10時半に永見野日銀副総裁の講演があり、注目されます。

サリバン米大統領補佐官はブルームバーグとのインタビューで、「バイデン大統領の退任前にイスラエルとイスラム組織ハマスが停戦合意に達する『高い可能性』がある」と述べています。サリバン氏は、「機は熟している。問題は、われわれが一丸となってそれを実現出来るのかどうかだ」と続けています。これが事実だとすれば、1週間以内に停戦が実現することになります。

カナダに対して「25%の関税引き上げ」や、「米国の51番目の州にする」と発言するなど、トランプ氏はカナダに対して揺さぶりをかけていますが、トルドー首相はTV番組で、「次期米政権との貿易戦争を望んではいないが、米国がカナダ製品に関税を課す場合には報復措置を講じざるを得ない」と述べ、同国としては初めて「報復措置(Respond with counter-tariffs)」という言葉を使いました。トルドー氏はすでに辞任を表明しており、3月9日に新しい首相が選出される予定になっています。米商務省の輸出データによると、昨年1−11月のカナダへの輸出額は約3200億ドル(約50兆4000億円)になるそうです。(ブルームバーグ)

ドル円は上値をやや重くしているため、MACDでは1カ月ぶりに「ヒストグラム」がマイナス圏に出現しています。やや短期的なドル下落を示唆していますが、それでもデッドクロスを見せている「マックD」と「シグナル」の両線は、依然としてプラス圏で推移しています。ドルが売られる可能性がありますが、現時点では大きな下げにはならないと見られます。

本日のドル円は156円50銭〜158円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
1/9 ハーカー総裁・フィラデルフィア連銀総裁 「今は休止して、状況の推移を見守るのが適切」、「しばしの現状維持は可能だ。恐らく長期ではない。データがどうなるのか、見極める必要がある」 --------
1/9 ボウマンFRB理事 「インフレ率は2023年に大幅に鈍化したが、24年は進展が停滞したようだ。コアインフレ率は目標である2%の水準をなお不快なほど上回っている。政策については慎重かつ緩やかなアプローチが望ましい」 --------
1/9 コリンズ・ボストン連銀総裁 「時間の経過に伴い、一段の緩和が適切となるだろう。その規模は9月に考えていたよりもいくらか小幅となる可能性がある。じっくりと辛抱強くデータを総合的に評価する。つまり、辛抱強く分析的に見ていくことが、今年の政策を考える上で適切な可能性が高いだろう」 --------
1/5 クーグラーFRB理事 「インフレは、2024年第1四半期に上昇が見られたが、ここにきてまた上昇が見られる」、「これが本当に一時的な上昇であって、より永続的なものではないことを確認したい」 --------
1/5 デーリー・SF連銀総裁 「インフレ率は依然として目標を不快なほど大きく上回っている」 --------
12/20 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「インフレ抑制がさらに進展するまで金利を据え置くべきだと考えた」、「経済活動を緩やかに抑制する程度の高い水準で金利を『当面は』維持すべきだと考えた」 --------
12/20 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「私個人の予測としては、財政や移民といった政策に関する考えをいくらか織り込んだ。これらの要素は経済の先行きを考える上で重要だからだ」「不確実性が著しいことを、ただ強調しておきたい」 --------
12/20 三村:財務省財務官 「投機的な動きも含め、為替の動きを憂慮している。行き過ぎた動きには適切な対応を取りたいと思っている」 ドル円はやや円高方向に振れる。
12/18 FOMC声明文 「最近複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。今年の早い時期以降、労働市場の状況はおおむね緩和してきた。失業率は上昇したが低いままだ。インフレは委員会が目指す2%の目標に向けて進展を示したが、依然として幾分高い水準にある。金融政策の適切なスタンスを見極める上で、委員会は今後の情報が経済見通しに与える意義を引き続き監視する。委員会の目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、委員会は必要に応じて金融政策のスタンスを調整する用意がある」 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。
12/18 パウエル・FRB議長 「今回の行動により、われわれは政策金利をピーク時から1ポイント引き下げたことになり、現在の政策スタンスは顕著に景気抑制度合いが弱まった。」、「よって政策金利のさらなる調整を検討する上で、われわれはより慎重になることが可能だ」(ただ)、「政策は依然として有意に景気抑制的であり、委員会は利下げを継続する方向にある」 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。
12/6 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「米国の雇用情勢に関する一連のデータが不安定だったにもかかわらず、労働市場はおおむね安定しているようだ」、「私には持続可能な完全雇用のように感じられる」 --------
12/6 デーリー・SF連銀総裁 「労働市場は引き続き良い位置にある。雇用が拡大する中、失業者一人につき約1人分の空ポジションがある。つまり、バランスの取れた労働市場と言える」 --------
12/6 ボウマン・FRB理事 「失業率は上昇したものの、歴史的に見れば低い水準だ」、「現時点において労働市場よりもインフレの方がより大きな懸念だと引き続き見ている」、「インフレは高止まりしており、利下げは慎重かつ漸進的に進めたい」 --------
12/4 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「政策の選択性を維持することが重要だと思われ、現在の経済環境や新たに入手できる情報、見通しの変化を慎重に見極めるためには、利下げペースの減速や一時停止を検討する時期が近づいているのかもしれない」 --------
12/4 パウエル・FRB議長 (米経済の現状について)、「著しく良好だ」、(金融政策について)、「景気を刺激も抑制もしない中立水準に向けて金利を引き下げる上で、当局は慎重になれる余裕がある」、(次期財務長官に指名されているスコット・ベッセント氏については)、「承認されれば、他の財務長官と同じような関係を築けると確信している」、「例えば、経済諮問委員会(CEA)とも、最も重要な財務省とも、同じような全般的な関係、かつ組織的な関係を築くことを十分に期待している」 株と債券が買われ、NYダウは初の4万5千ドル台に乗せる。
12/4 デーリー・SF連銀総裁 「経済を良好な状態に保つためには、政策の再調整を続けなくてはならない。12月になるか、それよりも後になるのか、それは次回の会合で議論する機会を得られる問いだ。しかし重要なのは、経済に合わせて政策金利を引き下げ続けなくてはならないことだ」 --------
12/4 クーグラー・FRB理事 「経済は最大限の雇用確保と物価安定という2大目標に向けて近年大きく前進し、現在は良好な状態にあると私は見ている。労働市場は堅調を維持し、インフレ率は、途中多少の起伏はあったものの、目標の2%に向けた持続可能な道筋をたどっているように見受けられる」、「FOMCの政策決定にあらかじめ定まった道筋はない。インフレ鈍化の面で達成した前進を、台無しにしかねないリスクや負の供給ショックが到来しないか、私は注意深く監視していく。仕事はまだ終わっていない。 --------
12/2 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「最大限の雇用と物価安定というFOMCの2つの責務に関し、それらを達成する上でのリスクはほぼ均衡が取れている状態にシフトした。従ってわれわれも、経済活動を刺激も抑制もしないスタンスへと金融政策をシフトし始めるべきだ」 --------
12/2 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「インフレと雇用に対するリスクが一段と均衡してきた現在、政策を中立スタンスに移行すべく金利をさらに引き下げる必要があるだろう」、「政策の道筋はデータ次第になる。過去5年間に学んだことがあるとすれば、見通しは依然として極めて不透明だということだ」 --------
12/2 ウォラー・FRB理事 「政策金利据え置きが理にかなうデータが会合前に出る可能性はあるが、現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和