「米12月のコアCPIは0.2%」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- 12月の米CPI発表を受け、金利が急低下したことでドル円は大幅に下落。一時は155円93銭まで売られ、およそ1カ月ぶりのドル安水準を記録。
- ユーロドルでもユーロは買われたが1.03台半ば止まり。ユーロ円の売りに、ユーロの反発が抑えられた格好。
- 米CPIの鈍化を受け、株式市場では3指数が大きく上昇。ナスダックは466ポイント買われ、S&P500も107ポイント高。
- 債券は急騰。長期金利は4.65%台まで低下。
- ドルが売られたことで金は大幅高。原油も昨年7月以来となる80ドル台に乗せる。
12月消費者物価指数 → 0.4%(前月比)
1月NY連銀製造業景況指数 → −12.6
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ドル/円 | 155.93 〜 157.09 |
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ユーロ/ドル | 1.0257 〜 1.0354 |
ユーロ/円 | 160.77 〜 161.82 |
NYダウ | +703.27 → 43,221.55 |
GOLD | +35.50 → 2,717.80ドル |
WTI | +2.54 → 80.04ドル |
米10年国債 | −0.139 → 4.653% |
本日の注目イベント
- 豪 豪12月雇用統計
- 独 独12月消費者物価指数(改定値)
- 英 英11月鉱工業生産
- 英 英11月貿易収支
- 欧 ユーロ圏11月貿易収支
- 欧 ECB議事録(12月開催分)
- 米 12月小売売上高
- 米 12月輸入物価指数
- 米 12月輸出物価指数
- 米 1月フィラデルフィア連銀景況指数
- 米 新規失業保険申請件数
- 米 1月NAHB住宅市場指数
- 米 決算発表 → バンク・オブ・アメリカ、モルガンスタンレー
本日のコメント
米12月の消費者物価指数(CPI)が発表され、インフレが鈍化していたことで、株と債券が大きく買われました。長期金利が急低下したことでドル円は157円台から一気に155円台後半まで売られています。155円台後半の水準は、およそ1カ月ぶりです。ただこの動きは、昨日の東京時間から兆候は見られました。昨日はちょうどセミナーがあり、その中でチャートを説明する場面もあり、その時にはすでに短期的な売りシグナルが点灯していました。
今回のCPIを見ると、正直その結果よりも「数字を受けた市場の反応」の方に驚きました。12月のCPIは、総合では前月比、前年同月比ともに市場予想と一致していました。コア指数では前月比「0.2%」(市場予想は0.3%)、前年同月比では「3.2%」(市場予想は3.3%)と、インフレ率は鈍化してはいましたが、それほどインパクトのあるものではなかったと思います。市場は、このところインフレ率の高止まりに慣れており、鈍化を示す数字に飛びついたというところでしょう。為替で言えば、円を買い戻すきっかけを探していたということで、軟調な動きが続いていた株式市場でも株を買い戻すきっかけを求めていて、それが今回の数字に反応したものと思われます。個人的には、今回の数字を受け再びFRBが利下げモードに戻るとも思えません。今月の会合での「政策金利据え置き」は動かないものと思えますが、3月会合で利下げを決断するには、少なくともこの傾向が2カ月ほど続き、「引き続きディスインフレは続いている」との確信が必要です。ブルームバーグは記事の中で、「12月のコア指数の伸びが予想を下回ったことで、FOMCは従来考えられていたよりも早く金利を引き下げるのではないかとの期待が再び高まった」と分析していました。
今回のCPIの結果を受け、3人の地区連銀総裁がインフレに対する今後の考えを披露しています。NY連銀のウイリアムズ総裁は、「ディスインフレのプロセスは続いている。しかし、当局の2%目標にはまだ達していない。この目標を持続的な形で達成出来るまでにはさらに時間がかかる」と慎重な姿勢を見せています。リッチモンド連銀のバーキン総裁も、「目標の2%に戻すための最終段階を成功裏に終えるためには、当局は景気抑制的であるべきだとなお考えている」と述べ、金利水準を高めに維持する必要があるとの考えを示しました。ただ、シカゴ連銀のグールズビー総裁は、「インフレ面での改善傾向が続いている。2025年は成長を続けながらソフトランディングが達成できると、引き続き楽観している」と語り、3名の中では最もハト派寄りでした。
バイデン政権の高官が言及していたように、イスラエルとハマスは15日、パレスチナ自治区ガザでの停戦に合意しました。過去1年3カ月で数万人が死亡し、中東全域に混乱をもたらした戦闘は停止し、ハマス側に人質となった33人のイスラエル人の解放と引き換えに、イスラエルもパレスチナ人数百人を釈放するものと見られます。これでイスラエル軍はガザの人口集中地域から撤退することになりますが、これが恒久的な停戦になるのかどうかはまだ不明です。今回の合意は、19日からわずか6週間の停戦にすぎません。これが恒久的な停戦につながればいいと思いますが、まずは停戦で合意できた事を喜びたいと思います。今回の合意には米国を始め、カタールとエジプトの仲介がありました。合意を仲介した米国では、バイデン大統領が「米国の懸命な外交努力の成果だ」と、ホワイトハウスで演説を行い、トランプ氏も「昨年の大統領選での勝利がなければ、停戦は実現しなかった」と述べ、ともに自分の功績だと主張しています。
昨日、日本の債券市場では長期債が売られ、利回りは1.26%台まで上昇しました。筆者は来週の日銀決定会合では、追加利上げに動くとの見方に固執してきましたが、どうやらこの見方が日の目を見そうな気配になってきました。そう考えれば、昨日の東京時間でのドル円の動きも説明が出来ます。今週月曜日に開催された日銀支店長会議でも、「今春闘でも引き続き経営者が昨年並みの賃上げを念頭に置いているとの声が多い」と報告されており、日銀が「利上げを見送る理由」も見つからない印象です。利上げが決定されれば円高材料になりますが、それまである程度ドル円が円高方向に動いていれば、それほど大きな影響はないかもしれません。市場の神経質な動きは、相変わらず続いています。
本日のドル円は155円50銭〜157円50銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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1/15 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | NY連銀のウイリアムズ総裁は、「ディスインフレのプロセスは続いている。しかし、当局の2%目標にはまだ達していない。この目標を持続的な形で達成出来るまでにはさらに時間がかかる」 | -------- |
1/15 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「目標の2%に戻すための最終段階を成功裏に終えるためには、当局は景気抑制的であるべきだとなお考えている」 | -------- |
1/15 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレ面での改善傾向が続いている。2025年は成長を続けながらソフトランディングが達成できると、引き続き楽観している」 | -------- |
1/9 | ハーカー総裁・フィラデルフィア連銀総裁 | 「今は休止して、状況の推移を見守るのが適切」、「しばしの現状維持は可能だ。恐らく長期ではない。データがどうなるのか、見極める必要がある」 | -------- |
1/9 | ボウマンFRB理事 | 「インフレ率は2023年に大幅に鈍化したが、24年は進展が停滞したようだ。コアインフレ率は目標である2%の水準をなお不快なほど上回っている。政策については慎重かつ緩やかなアプローチが望ましい」 | -------- |
1/9 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 「時間の経過に伴い、一段の緩和が適切となるだろう。その規模は9月に考えていたよりもいくらか小幅となる可能性がある。じっくりと辛抱強くデータを総合的に評価する。つまり、辛抱強く分析的に見ていくことが、今年の政策を考える上で適切な可能性が高いだろう」 | -------- |
1/5 | クーグラーFRB理事 | 「インフレは、2024年第1四半期に上昇が見られたが、ここにきてまた上昇が見られる」、「これが本当に一時的な上昇であって、より永続的なものではないことを確認したい」 | -------- |
1/5 | デーリー・SF連銀総裁 | 「インフレ率は依然として目標を不快なほど大きく上回っている」 | -------- |
12/20 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「インフレ抑制がさらに進展するまで金利を据え置くべきだと考えた」、「経済活動を緩やかに抑制する程度の高い水準で金利を『当面は』維持すべきだと考えた」 | -------- |
12/20 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「私個人の予測としては、財政や移民といった政策に関する考えをいくらか織り込んだ。これらの要素は経済の先行きを考える上で重要だからだ」「不確実性が著しいことを、ただ強調しておきたい」 | -------- |
12/20 | 三村:財務省財務官 | 「投機的な動きも含め、為替の動きを憂慮している。行き過ぎた動きには適切な対応を取りたいと思っている」 | ドル円はやや円高方向に振れる。 |
12/18 | FOMC声明文 | 「最近複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。今年の早い時期以降、労働市場の状況はおおむね緩和してきた。失業率は上昇したが低いままだ。インフレは委員会が目指す2%の目標に向けて進展を示したが、依然として幾分高い水準にある。金融政策の適切なスタンスを見極める上で、委員会は今後の情報が経済見通しに与える意義を引き続き監視する。委員会の目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、委員会は必要に応じて金融政策のスタンスを調整する用意がある」 | 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。 |
12/18 | パウエル・FRB議長 | 「今回の行動により、われわれは政策金利をピーク時から1ポイント引き下げたことになり、現在の政策スタンスは顕著に景気抑制度合いが弱まった。」、「よって政策金利のさらなる調整を検討する上で、われわれはより慎重になることが可能だ」(ただ)、「政策は依然として有意に景気抑制的であり、委員会は利下げを継続する方向にある」 | 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。 |
12/6 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「米国の雇用情勢に関する一連のデータが不安定だったにもかかわらず、労働市場はおおむね安定しているようだ」、「私には持続可能な完全雇用のように感じられる」 | -------- |
12/6 | デーリー・SF連銀総裁 | 「労働市場は引き続き良い位置にある。雇用が拡大する中、失業者一人につき約1人分の空ポジションがある。つまり、バランスの取れた労働市場と言える」 | -------- |
12/6 | ボウマン・FRB理事 | 「失業率は上昇したものの、歴史的に見れば低い水準だ」、「現時点において労働市場よりもインフレの方がより大きな懸念だと引き続き見ている」、「インフレは高止まりしており、利下げは慎重かつ漸進的に進めたい」 | -------- |
12/4 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「政策の選択性を維持することが重要だと思われ、現在の経済環境や新たに入手できる情報、見通しの変化を慎重に見極めるためには、利下げペースの減速や一時停止を検討する時期が近づいているのかもしれない」 | -------- |
12/4 | パウエル・FRB議長 | (米経済の現状について)、「著しく良好だ」、(金融政策について)、「景気を刺激も抑制もしない中立水準に向けて金利を引き下げる上で、当局は慎重になれる余裕がある」、(次期財務長官に指名されているスコット・ベッセント氏については)、「承認されれば、他の財務長官と同じような関係を築けると確信している」、「例えば、経済諮問委員会(CEA)とも、最も重要な財務省とも、同じような全般的な関係、かつ組織的な関係を築くことを十分に期待している」 | 株と債券が買われ、NYダウは初の4万5千ドル台に乗せる。 |
12/4 | デーリー・SF連銀総裁 | 「経済を良好な状態に保つためには、政策の再調整を続けなくてはならない。12月になるか、それよりも後になるのか、それは次回の会合で議論する機会を得られる問いだ。しかし重要なのは、経済に合わせて政策金利を引き下げ続けなくてはならないことだ」 | -------- |
12/4 | クーグラー・FRB理事 | 「経済は最大限の雇用確保と物価安定という2大目標に向けて近年大きく前進し、現在は良好な状態にあると私は見ている。労働市場は堅調を維持し、インフレ率は、途中多少の起伏はあったものの、目標の2%に向けた持続可能な道筋をたどっているように見受けられる」、「FOMCの政策決定にあらかじめ定まった道筋はない。インフレ鈍化の面で達成した前進を、台無しにしかねないリスクや負の供給ショックが到来しないか、私は注意深く監視していく。仕事はまだ終わっていない。 | -------- |
12/2 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「最大限の雇用と物価安定というFOMCの2つの責務に関し、それらを達成する上でのリスクはほぼ均衡が取れている状態にシフトした。従ってわれわれも、経済活動を刺激も抑制もしないスタンスへと金融政策をシフトし始めるべきだ」 | -------- |
12/2 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「インフレと雇用に対するリスクが一段と均衡してきた現在、政策を中立スタンスに移行すべく金利をさらに引き下げる必要があるだろう」、「政策の道筋はデータ次第になる。過去5年間に学んだことがあるとすれば、見通しは依然として極めて不透明だということだ」 | -------- |
12/2 | ウォラー・FRB理事 | 「政策金利据え置きが理にかなうデータが会合前に出る可能性はあるが、現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書