「ドル円は反発し156円台に」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- トランプ政権が政策を始動させればインフレの可能性が高まるとの見方から米金利が再び上昇。ドル円は156円71銭まで買われる。
- ユーロドルでは、ユーロを買い戻す動きが活発となり、1.0446まで上昇。
- 株式市場では3指数が大幅続伸。トランプ氏が表明した大型AI投資の余韻がこの日も株価を押し上げる。ナスダックは252ポイント上昇し2万の大台を回復。
- 債券は反落。長期金利は4.61%台に上昇。
- 金は続伸。原油価格は4日続落。
12月景気先行指標総合指数 → −0.1%
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ドル/円 | 155.75 〜 156.71 |
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ユーロ/ドル | 1.0408 〜 1.0446 |
ユーロ/円 | 162.41 〜 163.21 |
NYダウ | +130.92 → 44,156.73 |
GOLD | +11.70 → 2,770.90ドル |
WTI | −0.39 → 75.44ドル |
米10年国債 | +0.035 → 4.611% |
本日の注目イベント
- 日 12月貿易収支
- トルコ トルコ中銀政策金利発表
- 欧 ユーロ圏1月消費者信頼感指数
- 米 新規失業保険申請件数
- 米 トランプ大統領、ダボス会議でオンライン形式の演説
- 米 決算発表 → GE、フリーポート
本日のコメント
「関税(Tariff)程美しい言葉はない」、トランプ大統領はこの言葉の持つ力を余程信仰していると見られます。「関税」を武器に、グリーンランドを手に入れるとまで豪語し、市場は大統領就任日に、どの程度の関税引き上げにトランプ氏が署名するのか、固唾を飲んで見つめていました。結局、カナダとメキシコへの25%引き上げは2月1日に延期され、さらに中国への60%引き上げも、10%にトーンダウンし、これも2月1日になりそうな状況でした。
ただ、昨日トランプ氏は再び「関税」を手に振りかざし、ロシアのプーチン氏にウクライナとの戦争を終えるよう迫りました。トランプ氏は自身が運営するSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿し、「私はロシア人を愛しているし、プーチン氏とも非常に良い関係だ」としながらも、「このばかげた戦争を終えるべきだ。事態はさらに悪くなるだけだ」とした上で、「もしこの取引(Deal)を直ぐに終えないなら、私には他に選択肢はなく、高レベルの税(Taxes)と関税(Tariffs)と制裁(Sanctions)を科す」と迫りました。トランプ氏は大統就任前には「大統領に就任したら、24時間以内にロシアとウクライナの戦争を止めさせることが出来る」と、大見えを切っていましたが、その後は「6カ月以内に止めさせたい。できればもう少し早く・・・」と言葉を濁していましたが、ここに来てやはり「関税」という武器を持ち出しました。「関税」は、確かに時には武器になりますが、本来は自由貿易の敵であって、出来れば世界中で「物々交換」ができる状況が望ましいと思います。ただ、そこに「自国の利益優先」とか「自国の産業を守る」という考え方が出るのは当然ですが、そこに一定のルールを守るための調整をするのが「世界貿易機関」(WTO)です。「関税」という武器を乱用すれば、その先には「貿易戦争」という事態も想定され、結局困るのは一般国民ということになります。この脅しに対して、プーチン氏がどのように反応するのか、注目したいと思います。
トランプ氏が発表した、ソフトバンク・グループなど3社が主導するAIインフラへの1000億ドル(約16兆円)の巨額投資計画について、身内であるイーロン・マスク氏から早くも、その実現性に公式な疑問の声が上がっています。マスク氏は「彼らは実際には資金を持っていない。ソフトバンク・グループが確保しているのは100億ドルを大幅に下回る額だ。信頼できる筋からその情報を得ている」とXに投稿しました。ブルームバーグは「マスク氏の発言は、始動したばかりのトランプ政権内で、亀裂が生じていることを示唆している」と論評しています。また、共同出資会社であるオープンAIのアルトマン氏は、「間違っている。今回の大型投資計画が、マスク氏のAIへの取り組みと競合することになるため、腹をたてているのではないか」との見方を示しています。世界一の大富豪で、その言動もトランプ氏に酷似しているマスク氏・・・さもありなん。「両雄並び立たず」というところでしょうか。第1次トランプ政権でのジョン・ボルトン大統領補佐官を想い出させます。
ドル円は再び156円台後半まで戻って来ました。トランプ大統領が当初述べていたほど「関税」に関して強硬な姿勢を見せてはいないものの、中国には10%、カナダとメキシコへは25%の関税引き上げが2月1日にずれ込むことになりました。加えて、上述のようにロシアへも高関税をちらつかせたことで米金利が上昇し、ドル円を押し上げました。明日は日銀の決定会合も控えています。利上げがほぼ確実なこともあることで、円が大きく売られる地合いではありません。利上げはほぼ織り込み済みですが、それでも植田総裁の発言も不透明なことかから、利上げと米インフレの綱引き状態という形になっています。トランプ氏の言動が為替市場を揺さぶるのは、まだ始まったばかりです。
本日のドル円は155円20銭〜157円20銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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1/16 | ウォラー・FRB理事 | 「昨日発表されたインフレデータは非常に良好な内容だった。こうした数字が続けば、今年前半に利下げが実施され得ると考えるのが妥当だろう」、「このディスインフレ傾向は続き、考えられているより少し早く2%に近づくと、私は楽観している」、「経済活動を促進も抑制もしない中立金利に関する当局者の予想中央値は、今後発表されるデータ次第で年内3−4回の利下げが可能なことを示唆している」、「データが良好でなければ2回に戻ることになる。インフレが根強く続けば1回となる可能性さえある」 | 債券が買われ金利が低下。ドル円は156円台前半から155円05銭まで下落。 |
1/15 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | NY連銀のウイリアムズ総裁は、「ディスインフレのプロセスは続いている。しかし、当局の2%目標にはまだ達していない。この目標を持続的な形で達成出来るまでにはさらに時間がかかる」 | -------- |
1/15 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「目標の2%に戻すための最終段階を成功裏に終えるためには、当局は景気抑制的であるべきだとなお考えている」 | -------- |
1/15 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレ面での改善傾向が続いている。2025年は成長を続けながらソフトランディングが達成できると、引き続き楽観している」 | -------- |
1/9 | ハーカー総裁・フィラデルフィア連銀総裁 | 「今は休止して、状況の推移を見守るのが適切」、「しばしの現状維持は可能だ。恐らく長期ではない。データがどうなるのか、見極める必要がある」 | -------- |
1/9 | ボウマンFRB理事 | 「インフレ率は2023年に大幅に鈍化したが、24年は進展が停滞したようだ。コアインフレ率は目標である2%の水準をなお不快なほど上回っている。政策については慎重かつ緩やかなアプローチが望ましい」 | -------- |
1/9 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 「時間の経過に伴い、一段の緩和が適切となるだろう。その規模は9月に考えていたよりもいくらか小幅となる可能性がある。じっくりと辛抱強くデータを総合的に評価する。つまり、辛抱強く分析的に見ていくことが、今年の政策を考える上で適切な可能性が高いだろう」 | -------- |
1/5 | クーグラーFRB理事 | 「インフレは、2024年第1四半期に上昇が見られたが、ここにきてまた上昇が見られる」、「これが本当に一時的な上昇であって、より永続的なものではないことを確認したい」 | -------- |
1/5 | デーリー・SF連銀総裁 | 「インフレ率は依然として目標を不快なほど大きく上回っている」 | -------- |
12/20 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「インフレ抑制がさらに進展するまで金利を据え置くべきだと考えた」、「経済活動を緩やかに抑制する程度の高い水準で金利を『当面は』維持すべきだと考えた」 | -------- |
12/20 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「私個人の予測としては、財政や移民といった政策に関する考えをいくらか織り込んだ。これらの要素は経済の先行きを考える上で重要だからだ」「不確実性が著しいことを、ただ強調しておきたい」 | -------- |
12/20 | 三村:財務省財務官 | 「投機的な動きも含め、為替の動きを憂慮している。行き過ぎた動きには適切な対応を取りたいと思っている」 | ドル円はやや円高方向に振れる。 |
12/18 | FOMC声明文 | 「最近複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。今年の早い時期以降、労働市場の状況はおおむね緩和してきた。失業率は上昇したが低いままだ。インフレは委員会が目指す2%の目標に向けて進展を示したが、依然として幾分高い水準にある。金融政策の適切なスタンスを見極める上で、委員会は今後の情報が経済見通しに与える意義を引き続き監視する。委員会の目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、委員会は必要に応じて金融政策のスタンスを調整する用意がある」 | 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。 |
12/18 | パウエル・FRB議長 | 「今回の行動により、われわれは政策金利をピーク時から1ポイント引き下げたことになり、現在の政策スタンスは顕著に景気抑制度合いが弱まった。」、「よって政策金利のさらなる調整を検討する上で、われわれはより慎重になることが可能だ」(ただ)、「政策は依然として有意に景気抑制的であり、委員会は利下げを継続する方向にある」 | 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。 |
12/6 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「米国の雇用情勢に関する一連のデータが不安定だったにもかかわらず、労働市場はおおむね安定しているようだ」、「私には持続可能な完全雇用のように感じられる」 | -------- |
12/6 | デーリー・SF連銀総裁 | 「労働市場は引き続き良い位置にある。雇用が拡大する中、失業者一人につき約1人分の空ポジションがある。つまり、バランスの取れた労働市場と言える」 | -------- |
12/6 | ボウマン・FRB理事 | 「失業率は上昇したものの、歴史的に見れば低い水準だ」、「現時点において労働市場よりもインフレの方がより大きな懸念だと引き続き見ている」、「インフレは高止まりしており、利下げは慎重かつ漸進的に進めたい」 | -------- |
12/4 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「政策の選択性を維持することが重要だと思われ、現在の経済環境や新たに入手できる情報、見通しの変化を慎重に見極めるためには、利下げペースの減速や一時停止を検討する時期が近づいているのかもしれない」 | -------- |
12/4 | パウエル・FRB議長 | (米経済の現状について)、「著しく良好だ」、(金融政策について)、「景気を刺激も抑制もしない中立水準に向けて金利を引き下げる上で、当局は慎重になれる余裕がある」、(次期財務長官に指名されているスコット・ベッセント氏については)、「承認されれば、他の財務長官と同じような関係を築けると確信している」、「例えば、経済諮問委員会(CEA)とも、最も重要な財務省とも、同じような全般的な関係、かつ組織的な関係を築くことを十分に期待している」 | 株と債券が買われ、NYダウは初の4万5千ドル台に乗せる。 |
12/4 | デーリー・SF連銀総裁 | 「経済を良好な状態に保つためには、政策の再調整を続けなくてはならない。12月になるか、それよりも後になるのか、それは次回の会合で議論する機会を得られる問いだ。しかし重要なのは、経済に合わせて政策金利を引き下げ続けなくてはならないことだ」 | -------- |
12/4 | クーグラー・FRB理事 | 「経済は最大限の雇用確保と物価安定という2大目標に向けて近年大きく前進し、現在は良好な状態にあると私は見ている。労働市場は堅調を維持し、インフレ率は、途中多少の起伏はあったものの、目標の2%に向けた持続可能な道筋をたどっているように見受けられる」、「FOMCの政策決定にあらかじめ定まった道筋はない。インフレ鈍化の面で達成した前進を、台無しにしかねないリスクや負の供給ショックが到来しないか、私は注意深く監視していく。仕事はまだ終わっていない。 | -------- |
12/2 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「最大限の雇用と物価安定というFOMCの2つの責務に関し、それらを達成する上でのリスクはほぼ均衡が取れている状態にシフトした。従ってわれわれも、経済活動を刺激も抑制もしないスタンスへと金融政策をシフトし始めるべきだ」 | -------- |
12/2 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「インフレと雇用に対するリスクが一段と均衡してきた現在、政策を中立スタンスに移行すべく金利をさらに引き下げる必要があるだろう」、「政策の道筋はデータ次第になる。過去5年間に学んだことがあるとすれば、見通しは依然として極めて不透明だということだ」 | -------- |
12/2 | ウォラー・FRB理事 | 「政策金利据え置きが理にかなうデータが会合前に出る可能性はあるが、現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書