今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「DeepSeekショックで、ナスダック急落」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 欧州市場から下落基調だったドル円はNY勢が入る前には153円70銭辺りまで下落。NYでは米金利が低下し、リスク回避の流れから上値は重く154円台前半で推移。
  • ユーロドルはやや買い戻しが優勢となり、1.0534まで上昇。
  • 株式市場では中国新興AI開発企業の台頭から、ハイテク株が急落。ナスダックは612ポイント下げる。一方ダウは289ドル高と明暗を分ける。
  • 株式市場でナスダック指数が急落したことで債券は買われる。長期金利は4.53%台へと大幅低下。
  • 金は大幅に反落。原油も売られる。
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12月新築住宅販売件数 → 69.8万件
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ドル/円 153.90 〜 154.74
ユーロ/ドル 1.0480 〜 1.0534
ユーロ/円 161.72 〜 162.40
NYダウ +289.33 → 44,713.58
GOLD −40.50 → 2,738.40ドル
WTI −1.49 → 73.17ドル
米10年国債 −0.087 → 4.534%

本日の注目イベント

  • 豪 豪12月NAB企業景況感指数
  • 米 12月耐久財受注
  • 米 11月ケース・シラ−住宅価格指数
  • 米 11月FHFA住宅価格指数
  • 米 1月コンファレンスボード消費者信頼感指数
  • 米 1月リッチモンド連銀製造業景況指数
  • 米 決算発表→ロッキード、ボーイング、スターバックス

本日のコメント

創業1年余りの中国AI新興企業であるDeepSeek(ディープシーク)は、世界トップクラスのチャットボットに匹敵する性能を、その数分の1のコストで実現する画期的なAIモデルを披露しました。ディープシークは、1つのモデルの開発にかかった費用は約560万ドル(約8億6000万円)で、開発期間は約2カ月だったと説明しています。一方、オープンAIやソフトバンク・グループなどが共同で創設したAIインフラ開発プロジェクト「スターゲート」には、5000億ドル(約77兆円)規模の資金を投じると発表しています。その圧倒的な開発費用と時間に「DeepSeekショック」が金融市場に広がりました。ナスダック市場では指数が先週末比612ポイント(3.07%)売られ、半導体株の代表銘柄であるエヌビディアは一時18%安と急落しています。また、エヌビディアは声明で、「DeepSeekは優れたAI技術の進歩」だと表明し、同時に「AIモデルの実行作業には同社製品が依然として多く必要だ」と指摘。「AIの推論作業には膨大な数のエヌビディア製GPUと高性能ネットワークが必要だ」としています。ナスダック市場が「DeepSeekショック」で大きく下げたことからリスク回避の流れが強まり、ドル円は一時153円70銭前後まで売られています。新興企業の「DeepSeek」がどの程度力があるのか、筆者にはわかりませんが、中国勢の台頭は米国にはリスクになると見られます。

前日、コロンビアへの強制移民の送還を巡り、コロンビアへ関税賦課と制裁を表明していたトランプ大統領でしたが、同日遅くにその措置を保留することを決めました。コロンビア政府が、米国から強制送還される国民を受け入れると発表したことへの対応でした。ホワイトハウスは声明で、「コロンビアは、米軍用機などで送還されるコロンビアの不法移民全員を制約なく遅滞なく、無制限に受け入れることを含め、トランプ大統領の全ての条件に同意した」と発表しました。コロンビアでは、石油、金、コーヒー、花卉(かき)が同国の輸出品上位を占めています。(ブルームバーグ)経済規模が小さく、それら輸出品に高関税をかけられると、経済に壊滅的な打撃を与える可能性があることから、コロンビア政府は米国の条件を受け入れたものと思われます。ここでも、トランプ流の「ディール」が成功しています。

ドル円はおよそ1カ月ぶりに153円台まで売られたことで、「日足」チャートでは昨年9月に記録した直近ドルの最安値「139円58銭」を起点とするサポートラインを割り込みました。そして現在は、その下にある一目均衡表の「雲抜け」に挑んでいる状況です。この雲は今朝の時点では「153円17銭」に位置しており、この水準を割り込むと、昨年10月以来の雲割れとなり、短期的には下落が予想されます。また、そうなれば「MACD」でも両線がマイナス圏に突入することになります。チャートの形状からすると、ここら辺りが「分水嶺」と見られ、正念場です。

本日のドル円は153円70銭〜155円70銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
1/23 トランプ大統領 (ダボス会議でのオンライン参加で)「金利の即時引き下げを要求する」、(政策金利に関して、FRB議長の判断に疑問を呈した上で)「議長と適切な時期に話すつもりだ。彼らよりも私の方が金利に関してはるかに詳しく、その判断に当たる主な責任者よりも私の方が熟知しているのは確かだ。私が反対の意見であれば、それを伝える」、(金融当局が自分の主張に耳を傾けると考えるのかとの質問に)「イエス」 ドル円がやや売られ、原油価格は下落。
1/16 ウォラー・FRB理事 「昨日発表されたインフレデータは非常に良好な内容だった。こうした数字が続けば、今年前半に利下げが実施され得ると考えるのが妥当だろう」、「このディスインフレ傾向は続き、考えられているより少し早く2%に近づくと、私は楽観している」、「経済活動を促進も抑制もしない中立金利に関する当局者の予想中央値は、今後発表されるデータ次第で年内3−4回の利下げが可能なことを示唆している」、「データが良好でなければ2回に戻ることになる。インフレが根強く続けば1回となる可能性さえある」 債券が買われ金利が低下。ドル円は156円台前半から155円05銭まで下落。
1/15 ウイリアムズ・NY連銀総裁 NY連銀のウイリアムズ総裁は、「ディスインフレのプロセスは続いている。しかし、当局の2%目標にはまだ達していない。この目標を持続的な形で達成出来るまでにはさらに時間がかかる」 --------
1/15 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「目標の2%に戻すための最終段階を成功裏に終えるためには、当局は景気抑制的であるべきだとなお考えている」 --------
1/15 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ面での改善傾向が続いている。2025年は成長を続けながらソフトランディングが達成できると、引き続き楽観している」 --------
1/9 ハーカー総裁・フィラデルフィア連銀総裁 「今は休止して、状況の推移を見守るのが適切」、「しばしの現状維持は可能だ。恐らく長期ではない。データがどうなるのか、見極める必要がある」 --------
1/9 ボウマンFRB理事 「インフレ率は2023年に大幅に鈍化したが、24年は進展が停滞したようだ。コアインフレ率は目標である2%の水準をなお不快なほど上回っている。政策については慎重かつ緩やかなアプローチが望ましい」 --------
1/9 コリンズ・ボストン連銀総裁 「時間の経過に伴い、一段の緩和が適切となるだろう。その規模は9月に考えていたよりもいくらか小幅となる可能性がある。じっくりと辛抱強くデータを総合的に評価する。つまり、辛抱強く分析的に見ていくことが、今年の政策を考える上で適切な可能性が高いだろう」 --------
1/5 クーグラーFRB理事 「インフレは、2024年第1四半期に上昇が見られたが、ここにきてまた上昇が見られる」、「これが本当に一時的な上昇であって、より永続的なものではないことを確認したい」 --------
1/5 デーリー・SF連銀総裁 「インフレ率は依然として目標を不快なほど大きく上回っている」 --------
12/20 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「インフレ抑制がさらに進展するまで金利を据え置くべきだと考えた」、「経済活動を緩やかに抑制する程度の高い水準で金利を『当面は』維持すべきだと考えた」 --------
12/20 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「私個人の予測としては、財政や移民といった政策に関する考えをいくらか織り込んだ。これらの要素は経済の先行きを考える上で重要だからだ」「不確実性が著しいことを、ただ強調しておきたい」 --------
12/20 三村:財務省財務官 「投機的な動きも含め、為替の動きを憂慮している。行き過ぎた動きには適切な対応を取りたいと思っている」 ドル円はやや円高方向に振れる。
12/18 FOMC声明文 「最近複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。今年の早い時期以降、労働市場の状況はおおむね緩和してきた。失業率は上昇したが低いままだ。インフレは委員会が目指す2%の目標に向けて進展を示したが、依然として幾分高い水準にある。金融政策の適切なスタンスを見極める上で、委員会は今後の情報が経済見通しに与える意義を引き続き監視する。委員会の目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、委員会は必要に応じて金融政策のスタンスを調整する用意がある」 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。
12/18 パウエル・FRB議長 「今回の行動により、われわれは政策金利をピーク時から1ポイント引き下げたことになり、現在の政策スタンスは顕著に景気抑制度合いが弱まった。」、「よって政策金利のさらなる調整を検討する上で、われわれはより慎重になることが可能だ」(ただ)、「政策は依然として有意に景気抑制的であり、委員会は利下げを継続する方向にある」 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。
12/6 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「米国の雇用情勢に関する一連のデータが不安定だったにもかかわらず、労働市場はおおむね安定しているようだ」、「私には持続可能な完全雇用のように感じられる」 --------
12/6 デーリー・SF連銀総裁 「労働市場は引き続き良い位置にある。雇用が拡大する中、失業者一人につき約1人分の空ポジションがある。つまり、バランスの取れた労働市場と言える」 --------
12/6 ボウマン・FRB理事 「失業率は上昇したものの、歴史的に見れば低い水準だ」、「現時点において労働市場よりもインフレの方がより大きな懸念だと引き続き見ている」、「インフレは高止まりしており、利下げは慎重かつ漸進的に進めたい」 --------
12/4 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「政策の選択性を維持することが重要だと思われ、現在の経済環境や新たに入手できる情報、見通しの変化を慎重に見極めるためには、利下げペースの減速や一時停止を検討する時期が近づいているのかもしれない」 --------
12/4 パウエル・FRB議長 (米経済の現状について)、「著しく良好だ」、(金融政策について)、「景気を刺激も抑制もしない中立水準に向けて金利を引き下げる上で、当局は慎重になれる余裕がある」、(次期財務長官に指名されているスコット・ベッセント氏については)、「承認されれば、他の財務長官と同じような関係を築けると確信している」、「例えば、経済諮問委員会(CEA)とも、最も重要な財務省とも、同じような全般的な関係、かつ組織的な関係を築くことを十分に期待している」 株と債券が買われ、NYダウは初の4万5千ドル台に乗せる。
12/4 デーリー・SF連銀総裁 「経済を良好な状態に保つためには、政策の再調整を続けなくてはならない。12月になるか、それよりも後になるのか、それは次回の会合で議論する機会を得られる問いだ。しかし重要なのは、経済に合わせて政策金利を引き下げ続けなくてはならないことだ」 --------
12/4 クーグラー・FRB理事 「経済は最大限の雇用確保と物価安定という2大目標に向けて近年大きく前進し、現在は良好な状態にあると私は見ている。労働市場は堅調を維持し、インフレ率は、途中多少の起伏はあったものの、目標の2%に向けた持続可能な道筋をたどっているように見受けられる」、「FOMCの政策決定にあらかじめ定まった道筋はない。インフレ鈍化の面で達成した前進を、台無しにしかねないリスクや負の供給ショックが到来しないか、私は注意深く監視していく。仕事はまだ終わっていない。 --------
12/2 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「最大限の雇用と物価安定というFOMCの2つの責務に関し、それらを達成する上でのリスクはほぼ均衡が取れている状態にシフトした。従ってわれわれも、経済活動を刺激も抑制もしないスタンスへと金融政策をシフトし始めるべきだ」 --------
12/2 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「インフレと雇用に対するリスクが一段と均衡してきた現在、政策を中立スタンスに移行すべく金利をさらに引き下げる必要があるだろう」、「政策の道筋はデータ次第になる。過去5年間に学んだことがあるとすれば、見通しは依然として極めて不透明だということだ」 --------
12/2 ウォラー・FRB理事 「政策金利据え置きが理にかなうデータが会合前に出る可能性はあるが、現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和