今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ECB、政策金利引き下げ」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 米GDPが予想を下回ったことでドル円は153円79銭まで売られたが、前回同様、153円台では下げ止まる。
  • ユーロドルは引き続き1.04を挟みもみ合い。
  • 株式市場では、3指数が引き際に買われ揃って上昇。堅調な個人消費が追い風に。
  • 債券は買われ、長期金利は4.51%台に低下。
  • 金は大幅に続伸し2800ドル台に。原油も上昇。
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新規失業保険申請件数 → 20.7万件
10−12月GDP(速報値) → 2.3%
12月中古住宅販売成約件数 → −5.5%
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ドル/円 153.79 〜 154.49
ユーロ/ドル 1.0387 〜 1.0468
ユーロ/円 160.11 〜 161.09
NYダウ +168.61 → 44,882.13
GOLD +51.70 → 2,845.20ドル
WTI +0.11 → 72.73ドル
米10年国債 −0.012 → 4.516%

本日の注目イベント

  • 豪 豪第4四半期卸売物価指数
  • 日 12月失業率
  • 日 1月東京都区部消費者物価指数
  • 日 12月鉱工業生産
  • 中 1月財新製造業PMI
  • 独 独1月雇用統計
  • 独 独1月消費者物価指数
  • 米 10−12月労働コスト
  • 米 12月個人所得
  • 米 12月個人支出
  • 米 12月PCEデフレータ(前月比)
  • 米 12月PCEデフレータ(前年比)
  • 米 12月PCEコアデフレータ(前月比)
  • 米 12月PCEコアデフレータ(前年比)
  • 米 1月シカゴ購買部協会景気指数
  • 米 決算発表 → シェブロン、エクソンモービル

本日のコメント

ECBは30日、政策金利である中銀預金金利を25bp引き下げ、2.75%にすることを決めました。これで、昨年6月に金融緩和局面に入ってから5回目となる引き下げとなり、当局目標である2%に手が届くところまで来たと、自信を深めています。

声明では、「ディスインフレプロセスは極めて順調に進行している。基調的なインフレに関するほとんどの指標は、インフレ率が持続的に目標付近で安定することを示唆している」と、2%の物価目標達成に自信を示しつつ、「現在の金融政策は『依然として景気抑制的』だ」としています。ラガルド総裁は会見で、「向かっている方向は明らかで、今回の決定は全会一致だった。確固としたフォワードガイダンスを得たいと考えている向きには、そのようなものは非現実的だと言えよう。現時点では重大な不確実性があるからだ。不確実性は恐らく強まっている」と述べ、トランプ大統領が欧州に課すと見られる関税を意識した発言かと思われます。トランプ氏は欧州商品への関税引き上げをちらつかせてはいますが、今のところまだ具体的には決まっていません。明日から2月ですが、まもなく欧州に対しても具体的に言及してくるとみられます。実際30日にはこれまでの公約通り、2月1日にカナダとメキシコからの輸入品に25%の関税措置を発動すると表明し、署名しました。トランプ氏は、「私は幾つかの理由でカナダとメキシコへの関税を発表する。第1に極めて多くの人々が恐ろしいほど米国に流入している。第2にフェンタニルなどの薬物が流れ込んでいる。第3に貿易赤字の形でカナダとメキシコに多額の補助金を与えている」と説明しています。またトランプ氏はこのほか、30日夜にもカナダからの石油輸入に関税を賦課するかどうかについても価格次第で決めると発言し、WTI原油価格の上昇にもつながっていました。

新しく国務長官に就任したルビオ氏は、グリーンランドを購入するというトランプ大統領の構想について、「冗談ではない」と指摘しています。その理由に、中国がグリーンランドにリソースを配置して米国の国家安全保障を脅かすリスクや、エネルギー輸出における北極航路の重要性を挙げています。「対中強硬派」として知られているルビオ氏ですが、中国にとってはトランプ氏よりも同氏の方が今後手ごわい相手になりそうです。ルビオ氏はまた、トランプ政権はパナマ運河にも関心を寄せていることにも改めて触れていました。

カナダとメキシコに対する関税が25%に引き上げられることが決まり、両国は厳しい立場に立たされることになります。特に、メキシコではトヨタを始め、日本の自動車メーカーが多くの組み立て工場を持っており、そこで生産した完成車を米国に輸出しています。地域的に近いことで、メリットがあるのでしょう。もっともドイツの自動車メーカーも同じ構図ですが、規模が大きく異なります。ブルームバーグによると、2024年1−11月の米国とカナダの貿易額は6990億ドル(約107兆8500億円)、また米国とメキシコの貿易額も、7760億ドルで、25%の関税措置が取られると、両国だけではなく、日本にとっても「対岸の火事」ではありません。また、これは米国内の物価上昇の一因にもなり、今後米国の消費者物価指数(CPI)にどの程度影響を与えるのか注目です。

本日のドル円は153円30銭〜155円30銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
1/30 ラガルド:ECB総裁 「向かっている方向は明らかで、今回の決定は全会一致だった。確固としたフォワードガイダンスを得たいと考えている向きには、そのようなものは非現実的だと言えよう。現時点では重大な不確実性があるからだ。不確実性は恐らく強まっている」 --------
1/30 ECB声明文 「ディスインフレプロセスは極めて順調に進行している。基調的なインフレに関するほとんどの指標は、インフレ率が持続的に目標付近で安定することを示唆している」と2%物価の目標達成に自信を示ししつつ、「現在の金融政策は『依然として景気抑制的』だ」 --------
1/29 パウエル・FRB議長 「金融政策スタンスが景気を抑制する度合いは、以前より大幅に弱まっており、経済は強さを維持していることから、政策スタンスの調整を急ぐ必要はない」、「労働市場が急速に減速したり、インフレが再燃し場合には政策金利を調整する用意がある」、(トランプ政権の政策の行方については)「分からない」 ほとんど影響はなし。
1/29 FOMC声明文 「最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率はここ数カ月、低水準で推移しており、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 ほとんど影響はなし。
1/23 トランプ大統領 (ダボス会議でのオンライン参加で)「金利の即時引き下げを要求する」、(政策金利に関して、FRB議長の判断に疑問を呈した上で)「議長と適切な時期に話すつもりだ。彼らよりも私の方が金利に関してはるかに詳しく、その判断に当たる主な責任者よりも私の方が熟知しているのは確かだ。私が反対の意見であれば、それを伝える」、(金融当局が自分の主張に耳を傾けると考えるのかとの質問に)「イエス」 ドル円がやや売られ、原油価格は下落。
1/16 ウォラー・FRB理事 「昨日発表されたインフレデータは非常に良好な内容だった。こうした数字が続けば、今年前半に利下げが実施され得ると考えるのが妥当だろう」、「このディスインフレ傾向は続き、考えられているより少し早く2%に近づくと、私は楽観している」、「経済活動を促進も抑制もしない中立金利に関する当局者の予想中央値は、今後発表されるデータ次第で年内3−4回の利下げが可能なことを示唆している」、「データが良好でなければ2回に戻ることになる。インフレが根強く続けば1回となる可能性さえある」 債券が買われ金利が低下。ドル円は156円台前半から155円05銭まで下落。
1/15 ウイリアムズ・NY連銀総裁 NY連銀のウイリアムズ総裁は、「ディスインフレのプロセスは続いている。しかし、当局の2%目標にはまだ達していない。この目標を持続的な形で達成出来るまでにはさらに時間がかかる」 --------
1/15 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「目標の2%に戻すための最終段階を成功裏に終えるためには、当局は景気抑制的であるべきだとなお考えている」 --------
1/15 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ面での改善傾向が続いている。2025年は成長を続けながらソフトランディングが達成できると、引き続き楽観している」 --------
1/9 ハーカー総裁・フィラデルフィア連銀総裁 「今は休止して、状況の推移を見守るのが適切」、「しばしの現状維持は可能だ。恐らく長期ではない。データがどうなるのか、見極める必要がある」 --------
1/9 ボウマンFRB理事 「インフレ率は2023年に大幅に鈍化したが、24年は進展が停滞したようだ。コアインフレ率は目標である2%の水準をなお不快なほど上回っている。政策については慎重かつ緩やかなアプローチが望ましい」 --------
1/9 コリンズ・ボストン連銀総裁 「時間の経過に伴い、一段の緩和が適切となるだろう。その規模は9月に考えていたよりもいくらか小幅となる可能性がある。じっくりと辛抱強くデータを総合的に評価する。つまり、辛抱強く分析的に見ていくことが、今年の政策を考える上で適切な可能性が高いだろう」 --------
1/5 クーグラーFRB理事 「インフレは、2024年第1四半期に上昇が見られたが、ここにきてまた上昇が見られる」、「これが本当に一時的な上昇であって、より永続的なものではないことを確認したい」 --------
1/5 デーリー・SF連銀総裁 「インフレ率は依然として目標を不快なほど大きく上回っている」 --------
12/20 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「インフレ抑制がさらに進展するまで金利を据え置くべきだと考えた」、「経済活動を緩やかに抑制する程度の高い水準で金利を『当面は』維持すべきだと考えた」 --------
12/20 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「私個人の予測としては、財政や移民といった政策に関する考えをいくらか織り込んだ。これらの要素は経済の先行きを考える上で重要だからだ」「不確実性が著しいことを、ただ強調しておきたい」 --------
12/20 三村:財務省財務官 「投機的な動きも含め、為替の動きを憂慮している。行き過ぎた動きには適切な対応を取りたいと思っている」 ドル円はやや円高方向に振れる。
12/18 FOMC声明文 「最近複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している。今年の早い時期以降、労働市場の状況はおおむね緩和してきた。失業率は上昇したが低いままだ。インフレは委員会が目指す2%の目標に向けて進展を示したが、依然として幾分高い水準にある。金融政策の適切なスタンスを見極める上で、委員会は今後の情報が経済見通しに与える意義を引き続き監視する。委員会の目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、委員会は必要に応じて金融政策のスタンスを調整する用意がある」 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。
12/18 パウエル・FRB議長 「今回の行動により、われわれは政策金利をピーク時から1ポイント引き下げたことになり、現在の政策スタンスは顕著に景気抑制度合いが弱まった。」、「よって政策金利のさらなる調整を検討する上で、われわれはより慎重になることが可能だ」(ただ)、「政策は依然として有意に景気抑制的であり、委員会は利下げを継続する方向にある」 債券と株が大きく売られ、金利上昇に伴いドル円は153円70銭台から154円台半ばまで買われる。
12/6 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「米国の雇用情勢に関する一連のデータが不安定だったにもかかわらず、労働市場はおおむね安定しているようだ」、「私には持続可能な完全雇用のように感じられる」 --------
12/6 デーリー・SF連銀総裁 「労働市場は引き続き良い位置にある。雇用が拡大する中、失業者一人につき約1人分の空ポジションがある。つまり、バランスの取れた労働市場と言える」 --------
12/6 ボウマン・FRB理事 「失業率は上昇したものの、歴史的に見れば低い水準だ」、「現時点において労働市場よりもインフレの方がより大きな懸念だと引き続き見ている」、「インフレは高止まりしており、利下げは慎重かつ漸進的に進めたい」 --------
12/4 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「政策の選択性を維持することが重要だと思われ、現在の経済環境や新たに入手できる情報、見通しの変化を慎重に見極めるためには、利下げペースの減速や一時停止を検討する時期が近づいているのかもしれない」 --------
12/4 パウエル・FRB議長 (米経済の現状について)、「著しく良好だ」、(金融政策について)、「景気を刺激も抑制もしない中立水準に向けて金利を引き下げる上で、当局は慎重になれる余裕がある」、(次期財務長官に指名されているスコット・ベッセント氏については)、「承認されれば、他の財務長官と同じような関係を築けると確信している」、「例えば、経済諮問委員会(CEA)とも、最も重要な財務省とも、同じような全般的な関係、かつ組織的な関係を築くことを十分に期待している」 株と債券が買われ、NYダウは初の4万5千ドル台に乗せる。
12/4 デーリー・SF連銀総裁 「経済を良好な状態に保つためには、政策の再調整を続けなくてはならない。12月になるか、それよりも後になるのか、それは次回の会合で議論する機会を得られる問いだ。しかし重要なのは、経済に合わせて政策金利を引き下げ続けなくてはならないことだ」 --------
12/4 クーグラー・FRB理事 「経済は最大限の雇用確保と物価安定という2大目標に向けて近年大きく前進し、現在は良好な状態にあると私は見ている。労働市場は堅調を維持し、インフレ率は、途中多少の起伏はあったものの、目標の2%に向けた持続可能な道筋をたどっているように見受けられる」、「FOMCの政策決定にあらかじめ定まった道筋はない。インフレ鈍化の面で達成した前進を、台無しにしかねないリスクや負の供給ショックが到来しないか、私は注意深く監視していく。仕事はまだ終わっていない。 --------
12/2 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「最大限の雇用と物価安定というFOMCの2つの責務に関し、それらを達成する上でのリスクはほぼ均衡が取れている状態にシフトした。従ってわれわれも、経済活動を刺激も抑制もしないスタンスへと金融政策をシフトし始めるべきだ」 --------
12/2 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「インフレと雇用に対するリスクが一段と均衡してきた現在、政策を中立スタンスに移行すべく金利をさらに引き下げる必要があるだろう」、「政策の道筋はデータ次第になる。過去5年間に学んだことがあるとすれば、見通しは依然として極めて不透明だということだ」 --------
12/2 ウォラー・FRB理事 「政策金利据え置きが理にかなうデータが会合前に出る可能性はあるが、現時点で12月会合での政策金利引き下げを支持する方向に傾いている」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和