「ドル円、1カ月ぶりに152円台前半に」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は大幅下落。東京時間に154円台を割り込んだドル円はNYでは米金利が急低下し、経済指標も軟調だったことからドル売りが強まり、152円11銭前後まで下落。
- ユーロドルでもドル安の流れからユーロが買われ、1.0443まで上昇。
- ダウはプラス圏で先行していたものの、ナスダック指数などがマイナス圏で推移。ただ、引けにかけて買われ、結局3指数は続伸。
- 債券は大きく続伸。長期金利は4.42%台まで低下。
- 金は3日続伸し、最高値を更新。原油は続落。
米 1月ADP雇用者数 → 18.3万人
米 12月貿易収支 → −98.4b
米 1月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値) → 52.9
米 1月S&Pグローバル総合PMI(改定値) → 52.7
米 1月ISM非製造業景況指数 → 52.8
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ドル/円 | 152.11 〜 153.21 |
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ユーロ/ドル | 1.0397 〜 1.0443 |
ユーロ/円 | 158.49 〜 159.60 |
NYダウ | +317.24 → 44,873.28 |
GOLD | +17.20 → 2,893.00ドル |
WTI | −1.67 → 71,03ドル |
米10年国債 | −0.090 → 4.420% |
本日の注目イベント
- 豪 豪12月貿易収支
- 日 田村日銀審議委員、長野県金融経済懇談会で講演
- 独 独12月製造業新規受注
- 欧 ユーロ圏12月小売売上高
- 英 BOE金融政策発表
- 米 新規失業保険申請件数
- 米 10−12月労働コスト
- 米 ウォラー・FRB理事講演
- 米 ローガン・ダラス連銀総裁講演
- 米 決算発表 → アマゾン、イーライリリー、マイクロチップ
本日のコメント
ドル円は昨日の東京時間に、日足の「雲」を下抜けし、NYではほぼ1カ月ぶりに152円11銭前後までドルが売られました、米長期金利が大きく下げたことでドル売りが進みましたが、テクニカル的にも「雲」を下抜けしたことで、目先のサポートレベルを切った可能性が高いと見ます。昨日の東京時間の朝方、それまで154円台前半で推移していたドル円が、153円台半ばまで売られ、この時点から何か不穏な雰囲気でした。赤沢経済再生担当相が、「植田日銀総裁の認識と、特に齟齬(そご)はない」と述べ、足元はインフレ状態で、日銀の利上げ継続観測が強まっているとの認識を示したことが「円買い」につながりました。ドル円はすでに強力なサポートラインを割り込み、さらに昨日は「雲抜け」を完成させています。短期的にはドルが売られる展開が予想され、目途としては「週足」から推測して、151円82銭前後と、151円10銭前後、そして大きな節目で、壁でもある「150円」ということになろうかと思います。
新聞テレビで名前のあがらない日はないくらい、連日その言動が伝えられているトランプ大統領ですが、昨日はホワイトハウスでイスラエルのネタニヤフ首相と会談後記者皆会見を行いました。その中でトランプ氏は、「われわれがガザを所有し、それに伴う仕事も行う。われわれが責任を持ち、危険な不発弾の処理やその他の兵器に対応する」と述べました。ネタニヤフ氏は、トランプ氏のこの構想について、「自分自身のものとは異なるアイデアだ。関心を払う価値がある」と、全面的に賛成はしないものの、支持する姿勢を見せていました。ただ、この構想にサウジアラビアは直ぐさま反対の意向を示しています。サウジは、「パレスチナ人の正当な権利の侵害」と表現し、中東各国も同様な認識のようです。ハマスの報道官も、「トランプ氏の直近のコメントは混乱を生み、地域を混乱させるレシピだ」と批判し、トルコも反対を表明しています。イスラエルとハマスは先月19日から「6週間の停戦期間」に入っており、今月末に期限が来ることから、トランプ氏はそれ以降の枠組みを述べたようですが、現実的には簡単ではないようです。テレビ映像を見る限り、街中が破壊され尽くされており、そのインフラの復興だけでも大変な費用と時間がかかりそうです。
昨日もFOMCメンバーの発言がありましたが、おおむね他のメンバーと同様に、トランプ氏の政策の影響を読み切れないことから、しばらくは状況を見守る姿勢を示していました。リッチモンド連銀のバーキン総裁はその上で、「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで、成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」と語っています。また。シカゴ連銀のグールズビー総裁も、「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」と述べていました。聞こえて来る共通のキーワードは、どうやら「不確実性(Uncertainty)」という言葉のようです。
本日は10時半から、田村日銀審議委員が長野県金融経済懇談会で講演を行います。利上げを決めた後の講演ということもあり、注目されています。
本日のドル円は151円80銭〜153円80銭程度を予想します。
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明日(2月7日)の「アナリストレポート」は都合によりお休みとさせていただきます。ご愛読者の皆様にはご不便をおかけいたしますが、ご理解の程宜しくお願い申し上げます。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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2/5 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 | -------- |
2/5 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 | -------- |
2/4 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 | -------- |
2/3 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 | -------- |
2/3 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 | -------- |
1/30 | ラガルド・ECB総裁 | 「向かっている方向は明らかで、今回の決定は全会一致だった。確固としたフォワードガイダンスを得たいと考えている向きには、そのようなものは非現実的だと言えよう。現時点では重大な不確実性があるからだ。不確実性は恐らく強まっている」 | -------- |
1/30 | ECB声明文 | 「ディスインフレプロセスは極めて順調に進行している。基調的なインフレに関するほとんどの指標は、インフレ率が持続的に目標付近で安定することを示唆している」と2%物価の目標達成に自信を示ししつつ、「現在の金融政策は『依然として景気抑制的』だ」 | -------- |
1/29 | パウエル・FRB議長 | 「金融政策スタンスが景気を抑制する度合いは、以前より大幅に弱まっており、経済は強さを維持していることから、政策スタンスの調整を急ぐ必要はない」、「労働市場が急速に減速したり、インフレが再燃し場合には政策金利を調整する用意がある」、(トランプ政権の政策の行方については)「分からない」 | ほとんど影響はなし。 |
1/29 | FOMC声明文 | 「最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率はここ数カ月、低水準で推移しており、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 | ほとんど影響はなし。 |
1/23 | トランプ大統領 | (ダボス会議でのオンライン参加で)「金利の即時引き下げを要求する」、(政策金利に関して、FRB議長の判断に疑問を呈した上で)「議長と適切な時期に話すつもりだ。彼らよりも私の方が金利に関してはるかに詳しく、その判断に当たる主な責任者よりも私の方が熟知しているのは確かだ。私が反対の意見であれば、それを伝える」、(金融当局が自分の主張に耳を傾けると考えるのかとの質問に)「イエス」 | ドル円がやや売られ、原油価格は下落。 |
1/16 | ウォラー・FRB理事 | 「昨日発表されたインフレデータは非常に良好な内容だった。こうした数字が続けば、今年前半に利下げが実施され得ると考えるのが妥当だろう」、「このディスインフレ傾向は続き、考えられているより少し早く2%に近づくと、私は楽観している」、「経済活動を促進も抑制もしない中立金利に関する当局者の予想中央値は、今後発表されるデータ次第で年内3−4回の利下げが可能なことを示唆している」、「データが良好でなければ2回に戻ることになる。インフレが根強く続けば1回となる可能性さえある」 | 債券が買われ金利が低下。ドル円は156円台前半から155円05銭まで下落。 |
1/15 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | NY連銀のウイリアムズ総裁は、「ディスインフレのプロセスは続いている。しかし、当局の2%目標にはまだ達していない。この目標を持続的な形で達成出来るまでにはさらに時間がかかる」 | -------- |
1/15 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「目標の2%に戻すための最終段階を成功裏に終えるためには、当局は景気抑制的であるべきだとなお考えている」 | -------- |
1/15 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレ面での改善傾向が続いている。2025年は成長を続けながらソフトランディングが達成できると、引き続き楽観している」 | -------- |
1/9 | ハーカー総裁・フィラデルフィア連銀総裁 | 「今は休止して、状況の推移を見守るのが適切」、「しばしの現状維持は可能だ。恐らく長期ではない。データがどうなるのか、見極める必要がある」 | -------- |
1/9 | ボウマンFRB理事 | 「インフレ率は2023年に大幅に鈍化したが、24年は進展が停滞したようだ。コアインフレ率は目標である2%の水準をなお不快なほど上回っている。政策については慎重かつ緩やかなアプローチが望ましい」 | -------- |
1/9 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 「時間の経過に伴い、一段の緩和が適切となるだろう。その規模は9月に考えていたよりもいくらか小幅となる可能性がある。じっくりと辛抱強くデータを総合的に評価する。つまり、辛抱強く分析的に見ていくことが、今年の政策を考える上で適切な可能性が高いだろう」 | -------- |
1/5 | クーグラーFRB理事 | 「インフレは、2024年第1四半期に上昇が見られたが、ここにきてまた上昇が見られる」、「これが本当に一時的な上昇であって、より永続的なものではないことを確認したい」 | -------- |
1/5 | デーリー・SF連銀総裁 | 「インフレ率は依然として目標を不快なほど大きく上回っている」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書