今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米1月の雇用統計、賃金が伸びる」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は「1月の雇用統計」の発表を受けて上昇したものの、直ぐに下げに転じ、一時は150円93銭まで下落。失業率や賃金がドル高方向につながったが、株価の大幅下落が円買いにつながる。
  • ユーロドルは1.03台前半まで売られたものの、その後1.04台を回復。
  • 株式市場では3指数が揃って大幅に下落。雇用統計で今後の利下げ観測がやや後退したことや、貿易戦争の激化観測が重石に。
  • 債券は続落。長期金利は4.49%台に上昇。
  • 金と原油は買われる。
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1月失業率 → 4.0%
1月非農業部門雇用者数 → 14.3万人
1月平均時給 (前月比) → 0.5%
1月平均時給 (前年比) → 4.1%
1月労働参加率 → 62.6%
2月ミシガン大学消費者マインド(速報値) → 67.8
12月消費者信用残高 → 40,847b
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ドル/円 150.93 〜 152.42
ユーロ/ドル 1.0305 〜 1.0414
ユーロ/円 155.86 〜 157.68
NYダウ −444.23 → 44,303.40
GOLD +10.90− → 2,887.60ドル
WTI +0.39 → 71,00ドル
米10年国債 +0.060 → 4.495%

本日の注目イベント

  • 日 12月国際収支・経常収支
  • 日 12月貿易統計
  • 日 1月景気ウオッチャー調査
  • 米 1月NY連銀インフレ期待

本日のコメント

石破首相はトランプ大統領との会談で、良好な関係を築き、初めての会談としてはまずまずの成果であったと報じられています。焦点の「関税」については明確な言及はなかったものの、今後日本に対しても「関税」という切り札を切ってくる可能性は否定できないというのが、大方の見方です。首相は、日本製鉄については、「買収」ではなく「投資」だという点を強調し、トランプ氏も一応これに納得していたようにも思えます。また、米一部報道はトランプ氏がロシアのプーチン大統領と電話会談で、ウクライナ戦争について会談を行ったと報じていましたが、ロシア側はこれを否定も肯定もしていません。今朝の報道では、「トランプ氏は10日に全ての鉄鋼とアルミニウム輸入に対して25%の関税を発表すると述べた」と伝えています。また、上記日本製鉄についても、「USスチールの過半数株は取得できない」と語っているとのことです。「買収」ではなくて「投資」だとしても、かつて米国を代表する企業であった同社を手にするのはそう簡単ではないようです。

米1月の雇用統計はまちまちの内容でした。非農業部門雇用者数(NFP)は「14.3万人」と、市場予想の「17万人」には届いていませんでしたが、一方で失業率は「4.0%」と、こちらは市場予想よりも改善していました。

またNFPは、12月分が「25.6万人」から「30.7万人」に、11月分も「21.2万人」から「26.1万人」にそれぞれ上方修正され、これで、直近3カ月平均で見れば「23.7万人」となり、かなり好調な数字になります。さらに賃金も上昇していたことで、今後インフレにつながる可能性もあり、直後にドル円は買われましたが、株価の下落が円買いを促した結果になりました。FRBのクーグラー理事は雇用統計を受けて、「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」と評価しましたが、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」と、他のFOMCメンバーと同様に「不確実性」という言葉を使っていました。

金利先物市場では3月のFOMC会合での利下げ確率が急速に低下し、一時は95%が据え置きを予想するところまで低下しましたが、ドル買いにはつながっていません。米長期金利も上昇しましたが、こちらも株価の大幅下落に打ち消された格好でした。その株価の方は、本日10日から中国に対する新たな関税が発動されることで、貿易戦争の激化観測が高まり大きく下げています。米国は中国から輸入する石炭、LNGなどに最大15%の追加関税を発動し、中国は米国産の80品目に追加関税を課すとしており、さらに追加の報復関税を計画しているようです。カナダとメキシコに対する25%の関税も土壇場で延長されましたが、これも今月末までに何らかの進展がなければ発動されそうです。

ドル円は先週末には150円93銭まで売られ、週足の雲の下限を下回る場面もありましたが、今朝は151円台半ばで推移しています。従って、現時点では雲の下限を抜け切れずに反発している状況です。日米の株価の下落。特に日本株の下げがリスク回避の円買いにつながるケースが多く、今日もこのままでは日経平均株価は下げると見られ、ドル円浮上のきっかけがつかめないかもしれません。

本日のドル円は150円50銭〜152円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
2/7 クーグラー・FRB理事 「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」 --------
2/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 --------
2/5 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 --------
2/4 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 --------
2/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 --------
2/3 コリンズ・ボストン連銀総裁 (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 --------
1/30 ラガルド・ECB総裁 「向かっている方向は明らかで、今回の決定は全会一致だった。確固としたフォワードガイダンスを得たいと考えている向きには、そのようなものは非現実的だと言えよう。現時点では重大な不確実性があるからだ。不確実性は恐らく強まっている」 --------
1/30 ECB声明文 「ディスインフレプロセスは極めて順調に進行している。基調的なインフレに関するほとんどの指標は、インフレ率が持続的に目標付近で安定することを示唆している」と2%物価の目標達成に自信を示ししつつ、「現在の金融政策は『依然として景気抑制的』だ」 --------
1/29 パウエル・FRB議長 「金融政策スタンスが景気を抑制する度合いは、以前より大幅に弱まっており、経済は強さを維持していることから、政策スタンスの調整を急ぐ必要はない」、「労働市場が急速に減速したり、インフレが再燃し場合には政策金利を調整する用意がある」、(トランプ政権の政策の行方については)「分からない」 ほとんど影響はなし。
1/29 FOMC声明文 「最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率はここ数カ月、低水準で推移しており、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 ほとんど影響はなし。
1/23 トランプ大統領 (ダボス会議でのオンライン参加で)「金利の即時引き下げを要求する」、(政策金利に関して、FRB議長の判断に疑問を呈した上で)「議長と適切な時期に話すつもりだ。彼らよりも私の方が金利に関してはるかに詳しく、その判断に当たる主な責任者よりも私の方が熟知しているのは確かだ。私が反対の意見であれば、それを伝える」、(金融当局が自分の主張に耳を傾けると考えるのかとの質問に)「イエス」 ドル円がやや売られ、原油価格は下落。
1/16 ウォラー・FRB理事 「昨日発表されたインフレデータは非常に良好な内容だった。こうした数字が続けば、今年前半に利下げが実施され得ると考えるのが妥当だろう」、「このディスインフレ傾向は続き、考えられているより少し早く2%に近づくと、私は楽観している」、「経済活動を促進も抑制もしない中立金利に関する当局者の予想中央値は、今後発表されるデータ次第で年内3−4回の利下げが可能なことを示唆している」、「データが良好でなければ2回に戻ることになる。インフレが根強く続けば1回となる可能性さえある」 債券が買われ金利が低下。ドル円は156円台前半から155円05銭まで下落。
1/15 ウイリアムズ・NY連銀総裁 NY連銀のウイリアムズ総裁は、「ディスインフレのプロセスは続いている。しかし、当局の2%目標にはまだ達していない。この目標を持続的な形で達成出来るまでにはさらに時間がかかる」 --------
1/15 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「目標の2%に戻すための最終段階を成功裏に終えるためには、当局は景気抑制的であるべきだとなお考えている」 --------
1/15 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ面での改善傾向が続いている。2025年は成長を続けながらソフトランディングが達成できると、引き続き楽観している」 --------
1/9 ハーカー総裁・フィラデルフィア連銀総裁 「今は休止して、状況の推移を見守るのが適切」、「しばしの現状維持は可能だ。恐らく長期ではない。データがどうなるのか、見極める必要がある」 --------
1/9 ボウマンFRB理事 「インフレ率は2023年に大幅に鈍化したが、24年は進展が停滞したようだ。コアインフレ率は目標である2%の水準をなお不快なほど上回っている。政策については慎重かつ緩やかなアプローチが望ましい」 --------
1/9 コリンズ・ボストン連銀総裁 「時間の経過に伴い、一段の緩和が適切となるだろう。その規模は9月に考えていたよりもいくらか小幅となる可能性がある。じっくりと辛抱強くデータを総合的に評価する。つまり、辛抱強く分析的に見ていくことが、今年の政策を考える上で適切な可能性が高いだろう」 --------
1/5 クーグラーFRB理事 「インフレは、2024年第1四半期に上昇が見られたが、ここにきてまた上昇が見られる」、「これが本当に一時的な上昇であって、より永続的なものではないことを確認したい」 --------
1/5 デーリー・SF連銀総裁 「インフレ率は依然として目標を不快なほど大きく上回っている」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和