「米1月の総合CPIは0.5%」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- 東京時間からドルが買われ、153円台半ばで推移していたドル円は、NYではCPIの上振れを受け急騰。一時は154円80銭まで買われる。
- ユーロドルではそれほどドルが買われず、ユーロ円を買う動きが加速。ユーロ円は161円近辺まで上昇。
- 利下げ観測が後退したことで株式市場ではダウが大きく売られる。S&P500は小幅安。ナスダックは小幅高。
- 債券は大きく売られ、長期金利は4.62%台と、昨年12月以来となる高水準に。
- 金と原油は売られる。
1月消費者物価指数 → 0.5%
1月財政収支 → −128.6b
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ドル/円 | 153.29 〜 154.80 |
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ユーロ/ドル | 1.0317 〜 1.0430 |
ユーロ/円 | 158.95 〜 160.97 |
NYダウ | −225.09 → 44,368.56 |
GOLD | −3.90 → 2,928.70ドル |
WTI | −1.95 → 71.37ドル |
米10年国債 | +0.086 → 4.621% |
本日の注目イベント
- 独 独1月消費者物価指数(改定値)
- 欧 ユーロ圏12月鉱工業生産
- 欧 ECB経済報告
- 英 英10−12月期GDP(速報値)
- 英 英12月鉱工業生産
- 英 英12月貿易収支
- 米 1月生産者物価指数
- 米 新規失業保険申請件数
本日のコメント
やはり、サマーズ氏は慧眼の持ち主だったようです。昨日の本欄で、経済学者で元ハーバード大学学長を歴任しているサマーズ元財務長官の言葉を紹介しました。サマーズ氏は、「1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆しは、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っている。ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意をはらわなければならない」と述べ、そして「現在のサイクルでさらなる利下げ余地はない」と断じていました。
米1月の消費者物価指数(CPI)は加速し、FRBが近く追加利下げを実施するのではという期待はさらに遠のいた格好になりました。総合では前月比で「0.5%」(市場予想は0.3%)、前年比で「3.0%」(市場予想は2.9%)。コア指数では前月比が「0.4%」(市場予想0.3%)、前年比では「3.3%」(市場予想3.1%)でした。何れも市場予想を上回り、特に瞬間風速を示す前月比では、2023年8月以来の伸びでした。米労働統計局は、上昇分の30%近くが住居費によるものだと説明していますが、卵の値上がりも指数全体を押し上げていました。
ドル円は昨日の東京時間に153円台を回復し、午後には153円70銭近辺までドルが買われていました。CPI発表を受けてNYでは154円台に乗せ、一時は154円80銭までドル高が進んでいます。1週間かけ150円台後半まで売られたドル円でしたが、およそ2週間ぶりの水準を回復してきました。テクニカルでは、ドル円の下げが速かったことで、「日足」チャートを確認しても意味がない状況でしたが、これで再び「日足」チャートに目を移すことができます。現在、ローソク足は「雲」の中で上昇していますが、一目均衡表の基準線(154円90銭)に上昇を抑えられています。ここを抜け切ると「雲」の上限をテストすることができますが、その水準は現時点では155円62銭近辺です。先ずは、ここを抜け切ることが出来るかどうかに注目したいと思います。
1月のCPI発表を受けて、下院金融委員会での公聴会に出席したパウエル議長は、1月のCPIがほぼ全ての予想を上回ったことを認めつつ、「1つや2つの良好なデータに興奮することはない。1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」と述べ、「インフレに関しては近いところだが、まだ到達はしていない。昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」と述べ、その上で「当面は景気抑制的な政策を維持したい」と、政策金利を高水準のまま維持する考えを示しました。また、この日講演を行ったアトランタ連銀のボスティック総裁も、「より明確に把握できるまでは、金融政策がどこに向かうのか、どのくらいの速度・ペースで進むべきかについて判断を下すことが不可能だ。従ってわれわれは動き出す前に、より多くの情報を入手する必要がある。われわれは十分な情報を得た時点で動くことになるだろう」と話していました。CPIの上振れを受け、株と債券が売られ、金利高に引っ張られる形でドルが買われました。金利先物市場では、次回の利下げ予想が9月から12月に後退し、「年内25bpの利下げが1回にとどまる」との見方が強まってきました。
トランプ大統領は12日、ロシアのプーチン大統領と電話会談を行ない、ウクライナでの戦争を終結させるための協議を開始することで合意したと述べました。トランプ氏は、自身のソーシャルメディア・プラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、プーチン氏と話したことを明らかにし、双方のチームが「すぐに交渉を開始する」と説明しました。また、同日中にウクライナのゼレンスキー大統領に電話をし、「プーチン氏との会談内容を伝える」と述べていました。これで、ウクライナでの戦争終結に向け、確実な一歩を踏み出したと思われます。ただ、この戦争を終結させることで、トランプ氏はウクライナにあるレアメタルを確保したい模様で、これもトランプ流「ディールの一環」であることは明らかです。
本日のドル円は153円20銭〜155円20銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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2/12 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「より明確に把握できるまでは、金融政策がどこに向かうのか、どのくらいの速度・ペースで進むべきかについて判断を下すことが不可能だ。従ってわれわれは動き出す前に、より多くの情報を入手する必要がある。われわれは十分な情報を得た時点で動くことになるだろう」 | -------- |
2/12 | パウエル・FRB議長 | 「1つや2つの良好なデータに興奮することはない。1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」、「インフレに関しては近いところだが、まだ到達はしていない。昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」 | -------- |
2/11 | サマーズ・元財務長官 | 「1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆しは、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っている。ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意をはらわなければならない」、「現在のサイクルでさらなる利下げ余地はない」 | -------- |
2/11 | パウエル・FRB議長 | 「政策スタンスは景気抑制の度合いが以前より顕著に弱まっており、経済は強さを維持している。よって政策スタンスの調整は急ぐ必要はない」、「政策による景気抑制の度合い低下が速過ぎ、ないし行き過ぎとなれば、インフレ面での進展を妨げる可能性がある。一方で遅過ぎ、または少な過ぎであれば、経済活動と雇用を過度に弱めかねない」、(トランプ政権が進めている関税の強化の不透明感が強まっている景気への影響に関しては)、「われわれは2大責務における両面のリスクに注意を払っている。政権はわれわれが直面するリスクと不確実性に対処する上で良い態勢にある」・・・・(上院議会証言で) | -------- |
2/7 | クーグラー・FRB理事 | 「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」 | -------- |
2/5 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 | -------- |
2/5 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 | -------- |
2/4 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 | -------- |
2/3 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 | -------- |
2/3 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 | -------- |
1/30 | ラガルド・ECB総裁 | 「向かっている方向は明らかで、今回の決定は全会一致だった。確固としたフォワードガイダンスを得たいと考えている向きには、そのようなものは非現実的だと言えよう。現時点では重大な不確実性があるからだ。不確実性は恐らく強まっている」 | -------- |
1/30 | ECB声明文 | 「ディスインフレプロセスは極めて順調に進行している。基調的なインフレに関するほとんどの指標は、インフレ率が持続的に目標付近で安定することを示唆している」と2%物価の目標達成に自信を示ししつつ、「現在の金融政策は『依然として景気抑制的』だ」 | -------- |
1/29 | パウエル・FRB議長 | 「金融政策スタンスが景気を抑制する度合いは、以前より大幅に弱まっており、経済は強さを維持していることから、政策スタンスの調整を急ぐ必要はない」、「労働市場が急速に減速したり、インフレが再燃し場合には政策金利を調整する用意がある」、(トランプ政権の政策の行方については)「分からない」 | ほとんど影響はなし。 |
1/29 | FOMC声明文 | 「最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率はここ数カ月、低水準で推移しており、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 | ほとんど影響はなし。 |
1/23 | トランプ大統領 | (ダボス会議でのオンライン参加で)「金利の即時引き下げを要求する」、(政策金利に関して、FRB議長の判断に疑問を呈した上で)「議長と適切な時期に話すつもりだ。彼らよりも私の方が金利に関してはるかに詳しく、その判断に当たる主な責任者よりも私の方が熟知しているのは確かだ。私が反対の意見であれば、それを伝える」、(金融当局が自分の主張に耳を傾けると考えるのかとの質問に)「イエス」 | ドル円がやや売られ、原油価格は下落。 |
1/16 | ウォラー・FRB理事 | 「昨日発表されたインフレデータは非常に良好な内容だった。こうした数字が続けば、今年前半に利下げが実施され得ると考えるのが妥当だろう」、「このディスインフレ傾向は続き、考えられているより少し早く2%に近づくと、私は楽観している」、「経済活動を促進も抑制もしない中立金利に関する当局者の予想中央値は、今後発表されるデータ次第で年内3−4回の利下げが可能なことを示唆している」、「データが良好でなければ2回に戻ることになる。インフレが根強く続けば1回となる可能性さえある」 | 債券が買われ金利が低下。ドル円は156円台前半から155円05銭まで下落。 |
1/15 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | NY連銀のウイリアムズ総裁は、「ディスインフレのプロセスは続いている。しかし、当局の2%目標にはまだ達していない。この目標を持続的な形で達成出来るまでにはさらに時間がかかる」 | -------- |
1/15 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「目標の2%に戻すための最終段階を成功裏に終えるためには、当局は景気抑制的であるべきだとなお考えている」 | -------- |
1/15 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレ面での改善傾向が続いている。2025年は成長を続けながらソフトランディングが達成できると、引き続き楽観している」 | -------- |
1/9 | ハーカー総裁・フィラデルフィア連銀総裁 | 「今は休止して、状況の推移を見守るのが適切」、「しばしの現状維持は可能だ。恐らく長期ではない。データがどうなるのか、見極める必要がある」 | -------- |
1/9 | ボウマンFRB理事 | 「インフレ率は2023年に大幅に鈍化したが、24年は進展が停滞したようだ。コアインフレ率は目標である2%の水準をなお不快なほど上回っている。政策については慎重かつ緩やかなアプローチが望ましい」 | -------- |
1/9 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 「時間の経過に伴い、一段の緩和が適切となるだろう。その規模は9月に考えていたよりもいくらか小幅となる可能性がある。じっくりと辛抱強くデータを総合的に評価する。つまり、辛抱強く分析的に見ていくことが、今年の政策を考える上で適切な可能性が高いだろう」 | -------- |
1/5 | クーグラーFRB理事 | 「インフレは、2024年第1四半期に上昇が見られたが、ここにきてまた上昇が見られる」、「これが本当に一時的な上昇であって、より永続的なものではないことを確認したい」 | -------- |
1/5 | デーリー・SF連銀総裁 | 「インフレ率は依然として目標を不快なほど大きく上回っている」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書