「ナスダックは3週間ぶりに2万の大台を回復」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は売られ、152円03銭まで下落。小売売上高が下振れし、米金利が低下したことでドル売りが優勢に。
- ドルが売られたことでユーロは反発。ユーロドルはおよそ3週間ぶりに1.05台まで上昇。
- 株式市場は軟調な展開の中、ナスダックは81ポイント買われ、2万の大台を回復。
- 債券は買われ、長期金利は4.47%台に低下。
- 金は大幅に反落。原油も3日続落。
1月輸入物価指数 → 0.3%
1月輸出物価指数 → 1.3%
1月小売売上高 → −0.9%
1月鉱工業生産 → 0.5%
1月設備稼働率 → 77.8%
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ドル/円 | 152.03 〜 152.82 |
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ユーロ/ドル | 1.0472 〜 1.0514 |
ユーロ/円 | 159.53 〜 160.26 |
NYダウ | −165.35 → 44,546.08 |
GOLD | −44.70 → 2,900.70ドル |
WTI | −0.55 → 70.74ドル |
米10年国債 | −0.055 → 4.476% |
本日の注目イベント
- 日 10−12月GDP(速報値)
- 日 12月鉱工業生産(確定値)
- 欧 ユーロ圏1月貿易収支
- 米 NY休場(プレジデンツデー)
- 米 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁講演
- 米 ボウマン・FRB理事講演
- 加 カナダ1月住宅着工件数
本日のコメント
先週末にトランプ大統領は「相互関税」法案に署名しましたが、やはりそれには例外はなく、日本も対象のようです。「G7外相会議」に出席するためドイツを訪れている岩屋外相は現地で、米国のルビオ国務長官と意見を交わし、「相互関税や、鉄鋼、アルミニウムへの25%の関税の対象から日本を除外するよう」申し入れましたが、良い返事は得られなかったようです。
この週末にかけて、トランプ氏がウクライナでの戦争を終結させるべく、ロシアのプーチン大統領と電話会談では合意に達し、早ければ今月中にもサウジアラビアで両者が直接会って協議することになっています。ここまでは歓迎されているようですが、EUを抜きに停戦合意に持って行こうとするトランプ氏の行動に、これまでウクライナを全面的に支援してきたEU首脳の間には、異論も出ているようです。マクロン仏大統領は、ドイツのショルツ首相やイギリスのスターマー首相、イタリアのメローニ首相を含む欧州の指導者たちをパリに招き、17日にウクライナと欧州の安全保障全般に関する緊急会議を開くことを発表しました。
また、トランプ・プーチン両氏の停戦協議には前向きな姿勢を見せているゼレンスキー大統領は、米国がパートナーシップ協定の一環としてウクライナのレアアース鉱物へのアクセス権を得るという米国の「合意草案」を拒否しています。「投資と十分な保護が提供されていない」というのが、その理由だとしていますが、ゼレンスキー氏は、「米国案は、われわれの利益を守るものではない。主権国家ウクライナの利益にはならない」と反対しています。これに対してウォルツ米大統領補佐官(国家安全保障担当)は、ロシア侵攻を受けるウクライナを支援してきたことに対して、米国は「見返り」を得てしかるべきだと言明し、その上で、「米国側から提示された鉱物を巡る取引を受け入れることが、ゼンレンスキー氏にとって『非常に賢明な』判断だ」と、やや恫喝にも似た言い方をしていました。この一連の展開も、「ディールの一環」だと認識できます。先週には、米国防長官が、「ウクライナは、2014年以前の状況に戻ると考えるべきではない」と発言し、トランプ氏もFOXニュースとの番組で、「ウクライナはいつかロシア領になるかもしれないし、ならないかもしれない」と述べていました。予想されてはいましたが、今回の歴史的な停戦に向けた取り組は、徐々にロシア側に有利に働いているようです。うがった見方をすれば、トランプ氏は、ロシアに力ずくで戦争を止めさせ、同時にウクライナから貴重な鉱物資源を確保する権利を得、そしてその先には念願である「ノーベル平和賞」受賞を確実にする。そんな考えが見え隠れしているように思えます。
米金利の低下が続き、ドル円は再び「日足の雲」を下抜けし、「週足の雲」に支えられる水準まで下げてきました。ユーロドルでもドル安が進み、ユーロはおよそ3週間ぶりに1.05台を回復してきました。先週は米1月のCPIが予想を上回ったことで、ドル円は154円台後半まで上昇しましたが、ドルの上昇は続かず再び下値を試す動きになっています。トランプ氏の関税を含めた政策が極めて不透明で、市場はその不確実性を消化しきれない状況です。
本日はNY市場が休場ですが、FOMCメンバーの講演も予定されており、引き続き予断を許しません。
本日のドル円は151円20銭〜153円程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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2/12 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「より明確に把握できるまでは、金融政策がどこに向かうのか、どのくらいの速度・ペースで進むべきかについて判断を下すことが不可能だ。従ってわれわれは動き出す前に、より多くの情報を入手する必要がある。われわれは十分な情報を得た時点で動くことになるだろう」 | -------- |
2/12 | パウエル・FRB議長 | 「1つや2つの良好なデータに興奮することはない。1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」、「インフレに関しては近いところだが、まだ到達はしていない。昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」 | -------- |
2/11 | サマーズ・元財務長官 | 「1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆しは、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っている。ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意をはらわなければならない」、「現在のサイクルでさらなる利下げ余地はない」 | -------- |
2/11 | パウエル・FRB議長 | 「政策スタンスは景気抑制の度合いが以前より顕著に弱まっており、経済は強さを維持している。よって政策スタンスの調整は急ぐ必要はない」、「政策による景気抑制の度合い低下が速過ぎ、ないし行き過ぎとなれば、インフレ面での進展を妨げる可能性がある。一方で遅過ぎ、または少な過ぎであれば、経済活動と雇用を過度に弱めかねない」、(トランプ政権が進めている関税の強化の不透明感が強まっている景気への影響に関しては)、「われわれは2大責務における両面のリスクに注意を払っている。政権はわれわれが直面するリスクと不確実性に対処する上で良い態勢にある」・・・・(上院議会証言で) | -------- |
2/7 | クーグラー・FRB理事 | 「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」 | -------- |
2/5 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 | -------- |
2/5 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 | -------- |
2/4 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 | -------- |
2/3 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 | -------- |
2/3 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 | -------- |
1/30 | ラガルド・ECB総裁 | 「向かっている方向は明らかで、今回の決定は全会一致だった。確固としたフォワードガイダンスを得たいと考えている向きには、そのようなものは非現実的だと言えよう。現時点では重大な不確実性があるからだ。不確実性は恐らく強まっている」 | -------- |
1/30 | ECB声明文 | 「ディスインフレプロセスは極めて順調に進行している。基調的なインフレに関するほとんどの指標は、インフレ率が持続的に目標付近で安定することを示唆している」と2%物価の目標達成に自信を示ししつつ、「現在の金融政策は『依然として景気抑制的』だ」 | -------- |
1/29 | パウエル・FRB議長 | 「金融政策スタンスが景気を抑制する度合いは、以前より大幅に弱まっており、経済は強さを維持していることから、政策スタンスの調整を急ぐ必要はない」、「労働市場が急速に減速したり、インフレが再燃し場合には政策金利を調整する用意がある」、(トランプ政権の政策の行方については)「分からない」 | ほとんど影響はなし。 |
1/29 | FOMC声明文 | 「最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率はここ数カ月、低水準で推移しており、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 | ほとんど影響はなし。 |
1/23 | トランプ大統領 | (ダボス会議でのオンライン参加で)「金利の即時引き下げを要求する」、(政策金利に関して、FRB議長の判断に疑問を呈した上で)「議長と適切な時期に話すつもりだ。彼らよりも私の方が金利に関してはるかに詳しく、その判断に当たる主な責任者よりも私の方が熟知しているのは確かだ。私が反対の意見であれば、それを伝える」、(金融当局が自分の主張に耳を傾けると考えるのかとの質問に)「イエス」 | ドル円がやや売られ、原油価格は下落。 |
1/16 | ウォラー・FRB理事 | 「昨日発表されたインフレデータは非常に良好な内容だった。こうした数字が続けば、今年前半に利下げが実施され得ると考えるのが妥当だろう」、「このディスインフレ傾向は続き、考えられているより少し早く2%に近づくと、私は楽観している」、「経済活動を促進も抑制もしない中立金利に関する当局者の予想中央値は、今後発表されるデータ次第で年内3−4回の利下げが可能なことを示唆している」、「データが良好でなければ2回に戻ることになる。インフレが根強く続けば1回となる可能性さえある」 | 債券が買われ金利が低下。ドル円は156円台前半から155円05銭まで下落。 |
1/15 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | NY連銀のウイリアムズ総裁は、「ディスインフレのプロセスは続いている。しかし、当局の2%目標にはまだ達していない。この目標を持続的な形で達成出来るまでにはさらに時間がかかる」 | -------- |
1/15 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「目標の2%に戻すための最終段階を成功裏に終えるためには、当局は景気抑制的であるべきだとなお考えている」 | -------- |
1/15 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレ面での改善傾向が続いている。2025年は成長を続けながらソフトランディングが達成できると、引き続き楽観している」 | -------- |
1/9 | ハーカー総裁・フィラデルフィア連銀総裁 | 「今は休止して、状況の推移を見守るのが適切」、「しばしの現状維持は可能だ。恐らく長期ではない。データがどうなるのか、見極める必要がある」 | -------- |
1/9 | ボウマンFRB理事 | 「インフレ率は2023年に大幅に鈍化したが、24年は進展が停滞したようだ。コアインフレ率は目標である2%の水準をなお不快なほど上回っている。政策については慎重かつ緩やかなアプローチが望ましい」 | -------- |
1/9 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 「時間の経過に伴い、一段の緩和が適切となるだろう。その規模は9月に考えていたよりもいくらか小幅となる可能性がある。じっくりと辛抱強くデータを総合的に評価する。つまり、辛抱強く分析的に見ていくことが、今年の政策を考える上で適切な可能性が高いだろう」 | -------- |
1/5 | クーグラーFRB理事 | 「インフレは、2024年第1四半期に上昇が見られたが、ここにきてまた上昇が見られる」、「これが本当に一時的な上昇であって、より永続的なものではないことを確認したい」 | -------- |
1/5 | デーリー・SF連銀総裁 | 「インフレ率は依然として目標を不快なほど大きく上回っている」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書