今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円引き続き軟調な地合い」

ひと目で分かる昨晩の動き

欧州市場
  • 東京時間でも上値の重かったドル円は、欧州市場では151円32銭前後まで下落。トランプ政権の政策に対する不透明感などが引き続き材料に。
  • ユーロドルは小動き。1.04台半ばから後半で推移。
ドル/円 151.32 〜 151.95
ユーロ/ドル 1.0467 〜 1.0489
ユーロ/円 158.52 〜 159.26
NYダウ ------ → 44,546.08
GOLD ------ → 2,900.70ドル
WTI ------ → 70.74ドル
米10年国債 ------ → 4.476%

本日の注目イベント

  • 豪 RBA、キャッシュターゲット
  • 英 英1月失業率
  • 英 英ILO失業率(10−12月)
  • 英 ベイリー・BOE総裁講演
  • 独 独2月ZEW景況感指数
  • 米 2月NY連銀製造業景況指数
  • 米 2月NAHB住宅市場指数
  • 米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁講演
  • 加 カナダ1月消費者物価指数

本日のコメント

NY市場が「プレジデンツデー」のため休みの中、ドル円はジリジリと値を下げ、欧州市場では151円32銭前後まで売られています。トランプ大統領の関税を含む政策が不透明な上、昨日は、明日19日に宮城県で予定されている「高田日銀審議委員の講演」までも材料にされたようです。同委員は、日銀政策委員の中でも相対的に「タカ派」と見られており、足元ではインフレが進んでいることから、5月1日の日銀金融政策決定会合での追加利上げの可能性が高まるのではないかといった観測が、やや円買いにつながったようです。筆者は現時点では、次回の利上げは、今後余程インフレが加速しない限り、7月会合になると考えています。

EU首脳は緊急にパリに集まり、トランプ政権がロシアのプーチン大統領と自分たちの頭越しに、停戦に向けた交渉を始めようとすることに関して話し合いを行いました。EUとしての具体的な行動は未だに発表されていませんが、引き続き団結してウクライナをサポートしていくものと見られます。一方、停戦に向けた協議には米ロ首脳のみで行うことに関して、トランプ氏は16日、協議にはウクライナのゼレンスキー大統領も関与することになると述べています。フロリダ州での会見で、「彼は関与する。イエスだ」と記者の質問に答えています。ただ、サウジアラビアで行われる予定の米ロ首脳会談にゼレンスキー氏が参加するのかどうかについては触れていませんでした。

フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は17日、政策金利の据え置きを支持する考えを示しました。ハーカー総裁は、「具体的な時間的見通しは約束しないが、インフレは引き続き鈍化傾向にあり、金利は長期的に引き下げられると楽観している」と話しています。また、FRBのボーマン理事も17日アリゾナ州の講演で、「フェデラルファンド(FF)金利をより中立的な政策スタンスに近づけるプロセスは、新たな段階に入った。慎重で段階的なアプローチが好ましいと私が考えるのは、いくつか理由がある。現行政策のスタンスを考慮すると、1年前からの株高による金融環境の緩みが、ディスインフレの進行を遅らせたかもしれないと考えている」と述べました。

両氏とも、現行のFF金利の水準は依然として「景気抑制的」であるとの認識は変わっていません。従って、常識的には今後米金利が低下して行くことになりますが、問題はトランプ政権の関税政策と減税などに伴う財政赤字の拡大で金利上昇圧力がどの程度進むのかという点です。因みに、先週米財務省が発表した「1月の財政収支」は1290億ドル(約19兆5000億円)の赤字でした。これで、2025年度会計年度(2024年10月〜2025年9月)の1月までの累計で米政府の財政赤字は「過去最大」を記録しています。通常このままで行けば、年度末には政府予算が底をつき、連邦政府業務が停止に追い込まれる、いわゆる「財政の壁問題」がクローズアップされますが、トランプ政権と共和党下院は「連邦債務上限を4兆ドル(約606兆円)引き上げる」ことを明らかにしており、金利上昇要因の一つになります。

本日のドル円は150円50銭〜152円30銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
2/17 ハーカー・フィラデルフィア連総裁 「具体的な時間的見通しは約束しないが、インフレは引き続き鈍化傾向にあり、金利は長期的に引き下げられると楽観している --------
2/17 ボーマン・FRB理事 「フェデラルファンド(FF)金利をより中立的な政策スタンスに近づけるプロセスは、新たな段階に入った。慎重で段階的なアプローチが好ましいと私が考えるのは、いくつか理由がある。現行政策のスタンスを考慮すると。1年前からの株高による金融環境の緩みが、ディスインフレの進行を遅らせたかもしれないと考えている」 --------
2/12 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「より明確に把握できるまでは、金融政策がどこに向かうのか、どのくらいの速度・ペースで進むべきかについて判断を下すことが不可能だ。従ってわれわれは動き出す前に、より多くの情報を入手する必要がある。われわれは十分な情報を得た時点で動くことになるだろう」 --------
2/12 パウエル・FRB議長 「1つや2つの良好なデータに興奮することはない。1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」、「インフレに関しては近いところだが、まだ到達はしていない。昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」 --------
2/11 サマーズ・元財務長官 「1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆しは、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っている。ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意をはらわなければならない」、「現在のサイクルでさらなる利下げ余地はない」 --------
2/11 パウエル・FRB議長 「政策スタンスは景気抑制の度合いが以前より顕著に弱まっており、経済は強さを維持している。よって政策スタンスの調整は急ぐ必要はない」、「政策による景気抑制の度合い低下が速過ぎ、ないし行き過ぎとなれば、インフレ面での進展を妨げる可能性がある。一方で遅過ぎ、または少な過ぎであれば、経済活動と雇用を過度に弱めかねない」、(トランプ政権が進めている関税の強化の不透明感が強まっている景気への影響に関しては)、「われわれは2大責務における両面のリスクに注意を払っている。政権はわれわれが直面するリスクと不確実性に対処する上で良い態勢にある」・・・・(上院議会証言で) --------
2/7 クーグラー・FRB理事 「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」 --------
2/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 --------
2/5 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 --------
2/4 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 --------
2/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 --------
2/3 コリンズ・ボストン連銀総裁 (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 --------
1/30 ラガルド・ECB総裁 「向かっている方向は明らかで、今回の決定は全会一致だった。確固としたフォワードガイダンスを得たいと考えている向きには、そのようなものは非現実的だと言えよう。現時点では重大な不確実性があるからだ。不確実性は恐らく強まっている」 --------
1/30 ECB声明文 「ディスインフレプロセスは極めて順調に進行している。基調的なインフレに関するほとんどの指標は、インフレ率が持続的に目標付近で安定することを示唆している」と2%物価の目標達成に自信を示ししつつ、「現在の金融政策は『依然として景気抑制的』だ」 --------
1/29 パウエル・FRB議長 「金融政策スタンスが景気を抑制する度合いは、以前より大幅に弱まっており、経済は強さを維持していることから、政策スタンスの調整を急ぐ必要はない」、「労働市場が急速に減速したり、インフレが再燃し場合には政策金利を調整する用意がある」、(トランプ政権の政策の行方については)「分からない」 ほとんど影響はなし。
1/29 FOMC声明文 「最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率はここ数カ月、低水準で推移しており、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 ほとんど影響はなし。
1/23 トランプ大統領 (ダボス会議でのオンライン参加で)「金利の即時引き下げを要求する」、(政策金利に関して、FRB議長の判断に疑問を呈した上で)「議長と適切な時期に話すつもりだ。彼らよりも私の方が金利に関してはるかに詳しく、その判断に当たる主な責任者よりも私の方が熟知しているのは確かだ。私が反対の意見であれば、それを伝える」、(金融当局が自分の主張に耳を傾けると考えるのかとの質問に)「イエス」 ドル円がやや売られ、原油価格は下落。
1/16 ウォラー・FRB理事 「昨日発表されたインフレデータは非常に良好な内容だった。こうした数字が続けば、今年前半に利下げが実施され得ると考えるのが妥当だろう」、「このディスインフレ傾向は続き、考えられているより少し早く2%に近づくと、私は楽観している」、「経済活動を促進も抑制もしない中立金利に関する当局者の予想中央値は、今後発表されるデータ次第で年内3−4回の利下げが可能なことを示唆している」、「データが良好でなければ2回に戻ることになる。インフレが根強く続けば1回となる可能性さえある」 債券が買われ金利が低下。ドル円は156円台前半から155円05銭まで下落。
1/15 ウイリアムズ・NY連銀総裁 NY連銀のウイリアムズ総裁は、「ディスインフレのプロセスは続いている。しかし、当局の2%目標にはまだ達していない。この目標を持続的な形で達成出来るまでにはさらに時間がかかる」 --------
1/15 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「目標の2%に戻すための最終段階を成功裏に終えるためには、当局は景気抑制的であるべきだとなお考えている」 --------
1/15 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ面での改善傾向が続いている。2025年は成長を続けながらソフトランディングが達成できると、引き続き楽観している」 --------
1/9 ハーカー総裁・フィラデルフィア連銀総裁 「今は休止して、状況の推移を見守るのが適切」、「しばしの現状維持は可能だ。恐らく長期ではない。データがどうなるのか、見極める必要がある」 --------
1/9 ボウマンFRB理事 「インフレ率は2023年に大幅に鈍化したが、24年は進展が停滞したようだ。コアインフレ率は目標である2%の水準をなお不快なほど上回っている。政策については慎重かつ緩やかなアプローチが望ましい」 --------
1/9 コリンズ・ボストン連銀総裁 「時間の経過に伴い、一段の緩和が適切となるだろう。その規模は9月に考えていたよりもいくらか小幅となる可能性がある。じっくりと辛抱強くデータを総合的に評価する。つまり、辛抱強く分析的に見ていくことが、今年の政策を考える上で適切な可能性が高いだろう」 --------
1/5 クーグラーFRB理事 「インフレは、2024年第1四半期に上昇が見られたが、ここにきてまた上昇が見られる」、「これが本当に一時的な上昇であって、より永続的なものではないことを確認したい」 --------
1/5 デーリー・SF連銀総裁 「インフレ率は依然として目標を不快なほど大きく上回っている」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和