今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円、昨年12月6日以来となる149円台半に」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 東京市場で円が急騰した流れを受け、NYではさらに円を買う動きが加速。ドル円は149円40銭まで売られ、約2カ月ぶりの円高を記録。
  • ドル安の流れにユーロも買われ、ユーロドルは1.0503まで上昇する。
  • 株式市場では3指数が売られ、特にダウは450ドル安と大幅に下落。ウォルマートの通期利益見通しが市場のセンチメントを悪化させる。
  • 債券は続伸。長期金利は4.50%台に低下。
  • 金は反発。原油は3日続伸。
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新規失業保険申請件数 → 21.9万件
2月フィラデルフィア連銀景況指数 → 18.1
1月景気先行指標総合指数 → −0.3%
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ドル/円 149.40 〜 150.21
ユーロ/ドル 1.0436 〜 1.0503
ユーロ/円 156.30 〜 157.16
NYダウ −450.94 → 44,176.65
GOLD +20.00 → 2,956.10ドル
WTI +0.32 → 72.57ドル
米10年国債 −0.029 → 4.503%

本日の注目イベント

  • 日 1月消費者物価指数
  • 独 独2月製造業PMI(速報値)
  • 独 独2月サービス業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏2月製造業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏2月サービス業PMI(速報値)
  • 英 英1月小売売上高
  • 英 英2月製造業PMI(速報値)
  • 英 英2月サービス業PMI(速報値)
  • 米 2月S&Pグローバル製造業PMI(速報値)
  • 米 2月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値)
  • 米 2月S&Pグローバル総合業PMI(速報値)
  • 米 2月ミシガン大学消費者マインド(確定値)
  • 米 1月中古住宅販売件数
  • 加 カナダ12月小売売上高

本日のコメント

昨日のコメントの最後で、「今日あたり、日経平均株価が大きく下げるようだと、リスク回避の円買いが入り、ドル円は151円台を割り込み、150円台に入るかもしれません」と書きましたが、懸念は当たりドル円は150円台どころか、149円台半ばまで下げを加速させました。ドルの下落スピードは、いつもの円高に向かうパターンで、想定より早いものでした。ドル円は昨日の午前中に151円台を割り込み、午後に入ると植田日銀総裁が首相官邸で石破首相と会談したとの報道でさらに売られ、150円前後まで下げました。足元では長期金利が上昇していますが、それが話題になったのかとの記者からの質問に総裁は、「今日はそういう話はしていない」と答え、来週開催予定の「G7」や「G20」に出席するタイミングで懇談の機会を持ったと説明していました。NYではドルが一段と売られ、ドル円は149円40銭と、昨年12月6日以来の円高水準までドル安が進みました。これまでも上値は重かったものの、151円台前半では下げ止まる動きでしたが、151円台、さらには節目の「150円の大台」を割り込んだことで、円に対する強気の見方が強まったと思われます。下値のメドですが、この直ぐ下方に一目均衡表の基準線(週足)が149円22銭辺りにあります。先ずはここがサポートで、さらにその下方の148円65銭前後がメドになろうかと考えます。

昨日も触れましたが、マスコミは「トランプ大統領とゼレンスキー大統領に亀裂」と、昨日の夜の番組ではさかんに報じていました。ただ実際問題としては、ウクライナにとって「米国頼み」は外せない選択肢です。トランプ氏もその辺りの事情を十分考えた上でゼンレンスキー氏を「独裁者」とこき下ろし、強気の態度を見せています。ウクライナは今後、米国抜きで欧州が提供できる支援に頼ってロシアと戦い続けるのか、あるいはトランプ氏が結ぶ合意を、いかなる内容であれ受け入れるのかということになります。「トランプ氏は自らへの批判を一切容認しない姿勢で知られ、バンス副大統領は英紙とのインタビューで『公の場でトランプ氏の悪口を言うのは逆効果だ』と、ゼレンスキー氏に警告した」と、日経新聞は報じていました。

セントルイス連銀のムサレム総裁はNYで講演を行い、「インフレ率が2%超にとどまる、ないし上昇するリスクが上方向に傾いているようだ。インフレが停滞するリスクは、労働市場が顕著に軟化するリスクよりも大きい」とし、その上で、「インフレ率が当局目標の2%へと順調に低下してきたことが明確になるまで、やや景気抑制的な金融政策を維持すべきだ」と述べ、これまでのFOMCメンバーの中ではややタカ派的な発言でした。

日本の「1月の消費者物価指数(CPI)」が今朝8時半に発表されました。今回の発表は注目度が高く、今週19日には高田日銀審議委員が講演で、「物価がおおむね見通しにそって推移する下、堅調な設備投資や賃上げ、価格転嫁の継続など前向きな企業行動の持続性が確認されれば、『金融緩和度合いのさらなる調整を進めることが必要だと考えてきた』」と説明。そして、「見通しが実現していけば『一段のギアシフトを進める局面だ』」と強調していました。FRBは労働市場が堅調に推移していることで、よほどインフレ観測が高まらない限り、利下げを継続するとみられる一方、日銀の方では物価上昇が続く可能性があることから利上げ観測が高まっています。1月の総合CPIは「4.0%」(12月は3.6%)で、コアが「3.2%」(12月は3.0%)、コアコアが「2.5%」(12月は2.4%)でした。いずれのも前月よりも上昇していましたが、概ね市場予想通りでした。

本日のドル円は148円50銭〜150円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
2/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「インフレ率が2%超にとどまる、ないし上昇するリスクが上方向に傾いているようだ。インフレが停滞するリスクは、労働市場が顕著に軟化するリスクよりも大きい」とし、その上で、「インフレ率が当局目標の2%へと順調に低下してきたことが明確になるまで、やや景気抑制的な金融政策を維持すべきだ」 --------
2/18 ウォラー・FRB理事 「昨年の場合と同様に、冬季の進展休止が一時的なものならば、一段の緩和策が適切になるだろう。しかし、その時期が明確になるまでは金利据え置きは望ましい」 ドル円は151円台から152円台に乗せる。
2/18 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 インフレ抑制の進展について落胆する理由はないと私は考えている。単に望まれているより長い時間がかかるだけだ」、(トランプ政権の政策の影響について)「時間をかけて判断すべきだ」 --------
2/17 ハーカー・フィラデルフィア連総裁 「具体的な時間的見通しは約束しないが、インフレは引き続き鈍化傾向にあり、金利は長期的に引き下げられると楽観している --------
2/17 ボーマン・FRB理事 「フェデラルファンド(FF)金利をより中立的な政策スタンスに近づけるプロセスは、新たな段階に入った。慎重で段階的なアプローチが好ましいと私が考えるのは、いくつか理由がある。現行政策のスタンスを考慮すると。1年前からの株高による金融環境の緩みが、ディスインフレの進行を遅らせたかもしれないと考えている」 --------
2/12 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「より明確に把握できるまでは、金融政策がどこに向かうのか、どのくらいの速度・ペースで進むべきかについて判断を下すことが不可能だ。従ってわれわれは動き出す前に、より多くの情報を入手する必要がある。われわれは十分な情報を得た時点で動くことになるだろう」 --------
2/12 パウエル・FRB議長 「1つや2つの良好なデータに興奮することはない。1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」、「インフレに関しては近いところだが、まだ到達はしていない。昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」 --------
2/11 サマーズ・元財務長官 「1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆しは、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っている。ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意をはらわなければならない」、「現在のサイクルでさらなる利下げ余地はない」 --------
2/11 パウエル・FRB議長 「政策スタンスは景気抑制の度合いが以前より顕著に弱まっており、経済は強さを維持している。よって政策スタンスの調整は急ぐ必要はない」、「政策による景気抑制の度合い低下が速過ぎ、ないし行き過ぎとなれば、インフレ面での進展を妨げる可能性がある。一方で遅過ぎ、または少な過ぎであれば、経済活動と雇用を過度に弱めかねない」、(トランプ政権が進めている関税の強化の不透明感が強まっている景気への影響に関しては)、「われわれは2大責務における両面のリスクに注意を払っている。政権はわれわれが直面するリスクと不確実性に対処する上で良い態勢にある」・・・・(上院議会証言で) --------
2/7 クーグラー・FRB理事 「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」 --------
2/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 --------
2/5 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 --------
2/4 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 --------
2/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 --------
2/3 コリンズ・ボストン連銀総裁 (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 --------
1/30 ラガルド・ECB総裁 「向かっている方向は明らかで、今回の決定は全会一致だった。確固としたフォワードガイダンスを得たいと考えている向きには、そのようなものは非現実的だと言えよう。現時点では重大な不確実性があるからだ。不確実性は恐らく強まっている」 --------
1/30 ECB声明文 「ディスインフレプロセスは極めて順調に進行している。基調的なインフレに関するほとんどの指標は、インフレ率が持続的に目標付近で安定することを示唆している」と2%物価の目標達成に自信を示ししつつ、「現在の金融政策は『依然として景気抑制的』だ」 --------
1/29 パウエル・FRB議長 「金融政策スタンスが景気を抑制する度合いは、以前より大幅に弱まっており、経済は強さを維持していることから、政策スタンスの調整を急ぐ必要はない」、「労働市場が急速に減速したり、インフレが再燃し場合には政策金利を調整する用意がある」、(トランプ政権の政策の行方については)「分からない」 ほとんど影響はなし。
1/29 FOMC声明文 「最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率はここ数カ月、低水準で推移しており、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 ほとんど影響はなし。
1/23 トランプ大統領 (ダボス会議でのオンライン参加で)「金利の即時引き下げを要求する」、(政策金利に関して、FRB議長の判断に疑問を呈した上で)「議長と適切な時期に話すつもりだ。彼らよりも私の方が金利に関してはるかに詳しく、その判断に当たる主な責任者よりも私の方が熟知しているのは確かだ。私が反対の意見であれば、それを伝える」、(金融当局が自分の主張に耳を傾けると考えるのかとの質問に)「イエス」 ドル円がやや売られ、原油価格は下落。
1/16 ウォラー・FRB理事 「昨日発表されたインフレデータは非常に良好な内容だった。こうした数字が続けば、今年前半に利下げが実施され得ると考えるのが妥当だろう」、「このディスインフレ傾向は続き、考えられているより少し早く2%に近づくと、私は楽観している」、「経済活動を促進も抑制もしない中立金利に関する当局者の予想中央値は、今後発表されるデータ次第で年内3−4回の利下げが可能なことを示唆している」、「データが良好でなければ2回に戻ることになる。インフレが根強く続けば1回となる可能性さえある」 債券が買われ金利が低下。ドル円は156円台前半から155円05銭まで下落。
1/15 ウイリアムズ・NY連銀総裁 NY連銀のウイリアムズ総裁は、「ディスインフレのプロセスは続いている。しかし、当局の2%目標にはまだ達していない。この目標を持続的な形で達成出来るまでにはさらに時間がかかる」 --------
1/15 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「目標の2%に戻すための最終段階を成功裏に終えるためには、当局は景気抑制的であるべきだとなお考えている」 --------
1/15 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ面での改善傾向が続いている。2025年は成長を続けながらソフトランディングが達成できると、引き続き楽観している」 --------
1/9 ハーカー総裁・フィラデルフィア連銀総裁 「今は休止して、状況の推移を見守るのが適切」、「しばしの現状維持は可能だ。恐らく長期ではない。データがどうなるのか、見極める必要がある」 --------
1/9 ボウマンFRB理事 「インフレ率は2023年に大幅に鈍化したが、24年は進展が停滞したようだ。コアインフレ率は目標である2%の水準をなお不快なほど上回っている。政策については慎重かつ緩やかなアプローチが望ましい」 --------
1/9 コリンズ・ボストン連銀総裁 「時間の経過に伴い、一段の緩和が適切となるだろう。その規模は9月に考えていたよりもいくらか小幅となる可能性がある。じっくりと辛抱強くデータを総合的に評価する。つまり、辛抱強く分析的に見ていくことが、今年の政策を考える上で適切な可能性が高いだろう」 --------
1/5 クーグラーFRB理事 「インフレは、2024年第1四半期に上昇が見られたが、ここにきてまた上昇が見られる」、「これが本当に一時的な上昇であって、より永続的なものではないことを確認したい」 --------
1/5 デーリー・SF連銀総裁 「インフレ率は依然として目標を不快なほど大きく上回っている」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和