今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「トランプ関税、3月4日に発動」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は朝方には失業保険申請件数の増加でドルが売られたが、「トランプ関税」の発動報道で150円16銭まで上昇。
  • ユーロドルはドルが買われたことで、1.04台を割り込む。
  • 株式市場は「トランプ関税」で3指数が大幅下落。エヌビディア株が大きく売られたことで、ナスダックは530ポイントの大幅下落。
  • 債券はほぼ横ばい。長期金利は4.26%台で推移。
  • ドルが買われたことで金は大きく下落。原油は反発し70ドルを回復。
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新規失業保険申請件数 → 24.2万件
10−12月GDP(改定値) → 2.3%
1月耐久財受注 → 3.1%
1月中古住宅販売成約件数 → −4.6%
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ドル/円 149.36 〜 150.16
ユーロ/ドル 1.0397 〜 1.0490
ユーロ/円 155.83 〜 156.85
NYダウ −193.62 → 43,239.50
GOLD −34.70 → 2,895.50ドル
WTI +1.73 → 70.35ドル
米10年国債 +0.004 → 4.260%

本日の注目イベント

  • 日 2月東京都区部消費者物価指数
  • 日 1月小売売上高
  • 日 1月鉱工業生産
  • 独 独2月消費者物価指数(速報値)
  • 独 独2月失業率
  • 米 1月個人所得
  • 米 1月個人支出
  • 米 1月PCEデフレータ(前月比)
  • 米 1月PCEデフレータ(前年比)
  • 米 1月PCEコアデフレータ(前月比)
  • 米 1月PCEコアデフレータ(前年比)
  • 米 グールズビー・シカゴ連銀総裁、質疑応答に参加
  • 米 ゼレンスキー大統領訪米。トランプ大統領と会談

本日のコメント

「トランプ関税」が金融市場で猛威を振い、相場の攪乱要因になっています。

前日ホワイトハウスで、カナダとメキシコ、EUに対する関税措置を4月2日に発動すると述べたトランプ大統領は27日、「朝令暮改」よろしく、一転してカナダとメキシコに対する関税は3月4日に発動すると述べました。さらに、中国に対しても追加で10%の関税を課すと、自身のSNSで投稿しました。隣国であるカナダとメキシコからは「容認できない、非常に高い水準で違法薬物がなお流入している」と指摘し、中国に対し、「10プラス10、つまり2度目の10だ」と、大統領執務室で述べていました。この「トランプ関税」発言でインフレの再燃が意識され、ドル円は150円16銭までドル高が進みました。また、株式市場ではほぼ全面安の展開となり、特にナスダック指数は前日比530ポイント(2.78%)の大幅下落で取引を終えています。金利のつかない金(きん)も大きく売られ、2900ドルの大台を割り込みました。ただ、この日ホワイトハウスを訪問して、トランプ氏と会談したスターマー英首相とは貿易協定で合意の可能性が高まり、「貿易協定を締結すれば、英国に対する関税は不要になるだろう」と話しています。

「関税」というカードを振りかざして各国に圧力をかけているトランプ氏ですが、ブルームバーグの委託でハリス・ポールが実施した世論調査では、米消費者からは冷ややかな反応が示されていました。米成人の60%は、「トランプ関税」が物価上昇につながると予想し、44%は関税が米経済に悪影響を及ぼすと答えていました。またトランプ氏に友好的な共和党支持者の間でも、トランプ氏の貿易政策には懐疑的な見方が多く、関税が経済的利益をもたらすとの回答は共和党支持者の約半分にとどまっています。同世論調査は2月6−8日に成人2121人を対象に実施され、誤差の範囲は2.4ポイントとなっていました

今年1月にトランプ氏が大統領に返り咲いたことで、今日もそうですが、本欄でもトランプ氏の言動に触れる機会が極めて多くなりました。その多くの情報はブルームバーグとロイター通信などから得ています。よくテレビなどでも目にする、ホワイトハウスの大統領執務室での会見では、トランプ氏の机のすぐ前に、何人かの記者やカメラマンがいます。その距離の近さに驚くこともありますが、トランプ氏はその会見にも規制をし始めました。ホワイトハウスは26日、トランプ大統領に代表取材できる報道機関を政権側で選ぶことを発表しました。ホワイトハウスには「プール」と呼ばれる代表取材制度があるそうですが、そこには大手の、ブルームバーグ、ロイター通信、そしてAP通信が「常任」として参加していましたが、今回発表された新しい制度では、ロイター通信とAP通信が外れ、従来の3社からは「ブルームバーグ」だけが残りました。3社は共同で、「ホワイトハウスの代表取材制度で常駐の通信社である3社は長年にわたり、大統領に関する正確で公平かつタイムリーな情報を提供してきた。独立した自由な報道機関から、政府に関するニュースにアクセスできることは、民主主義にとって不可欠だ。今回の規制はこの原則を脅かすものだ」と声明を発表しています。

G20で南アフリカを訪問している植田日銀総裁は、関税を含めた米政府の政策などについて、「まだ不確実なところが非常に大きい、多いと認識している」と述べ、「通常の市場の動きを超えて長期金利が急激に上昇するというような例外的な状況では、機動的なオペを打つ、あるいは工夫をするということも考え得る」と、G20会合後の会見で述べています。足元で上昇している長期金利については「経済や物価の情勢に対する市場の見方、あるいは海外金利の動向を反映して変動することは当然想定される」と話しています。

上値の重いドル円でしたが、米国のインフレ再燃が意識され150円台に乗せました。これは想定内ですが、3月から発動される「トランプ関税」が、どの程度インフレに影響を与えるのか、そのデータを実際に確認出来るのはまだ先の話です。本日のドル円は148円80銭〜150円80銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
2/25 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレ率が当局目標の2%に戻りつつあるとの自信を深めるまで、やや景気抑制的な姿勢を維持することが理にかなっている。いんふれとの闘いは長期化していると認識しているが、われわれが断固たる姿勢を維持することが極めて重要だ」 --------
2/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「インフレ率が2%超にとどまる、ないし上昇するリスクが上方向に傾いているようだ。インフレが停滞するリスクは、労働市場が顕著に軟化するリスクよりも大きい」とし、その上で、「インフレ率が当局目標の2%へと順調に低下してきたことが明確になるまで、やや景気抑制的な金融政策を維持すべきだ」 --------
2/18 ウォラー・FRB理事 「昨年の場合と同様に、冬季の進展休止が一時的なものならば、一段の緩和策が適切になるだろう。しかし、その時期が明確になるまでは金利据え置きは望ましい」 ドル円は151円台から152円台に乗せる。
2/18 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 インフレ抑制の進展について落胆する理由はないと私は考えている。単に望まれているより長い時間がかかるだけだ」、(トランプ政権の政策の影響について)「時間をかけて判断すべきだ」 --------
2/17 ハーカー・フィラデルフィア連総裁 「具体的な時間的見通しは約束しないが、インフレは引き続き鈍化傾向にあり、金利は長期的に引き下げられると楽観している --------
2/17 ボーマン・FRB理事 「フェデラルファンド(FF)金利をより中立的な政策スタンスに近づけるプロセスは、新たな段階に入った。慎重で段階的なアプローチが好ましいと私が考えるのは、いくつか理由がある。現行政策のスタンスを考慮すると。1年前からの株高による金融環境の緩みが、ディスインフレの進行を遅らせたかもしれないと考えている」 --------
2/12 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「より明確に把握できるまでは、金融政策がどこに向かうのか、どのくらいの速度・ペースで進むべきかについて判断を下すことが不可能だ。従ってわれわれは動き出す前に、より多くの情報を入手する必要がある。われわれは十分な情報を得た時点で動くことになるだろう」 --------
2/12 パウエル・FRB議長 「1つや2つの良好なデータに興奮することはない。1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」、「インフレに関しては近いところだが、まだ到達はしていない。昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」 --------
2/11 サマーズ・元財務長官 「1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆しは、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っている。ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意をはらわなければならない」、「現在のサイクルでさらなる利下げ余地はない」 --------
2/11 パウエル・FRB議長 「政策スタンスは景気抑制の度合いが以前より顕著に弱まっており、経済は強さを維持している。よって政策スタンスの調整は急ぐ必要はない」、「政策による景気抑制の度合い低下が速過ぎ、ないし行き過ぎとなれば、インフレ面での進展を妨げる可能性がある。一方で遅過ぎ、または少な過ぎであれば、経済活動と雇用を過度に弱めかねない」、(トランプ政権が進めている関税の強化の不透明感が強まっている景気への影響に関しては)、「われわれは2大責務における両面のリスクに注意を払っている。政権はわれわれが直面するリスクと不確実性に対処する上で良い態勢にある」・・・・(上院議会証言で) --------
2/7 クーグラー・FRB理事 「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」 --------
2/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 --------
2/5 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 --------
2/4 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 --------
2/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 --------
2/3 コリンズ・ボストン連銀総裁 (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 --------
1/30 ラガルド・ECB総裁 「向かっている方向は明らかで、今回の決定は全会一致だった。確固としたフォワードガイダンスを得たいと考えている向きには、そのようなものは非現実的だと言えよう。現時点では重大な不確実性があるからだ。不確実性は恐らく強まっている」 --------
1/30 ECB声明文 「ディスインフレプロセスは極めて順調に進行している。基調的なインフレに関するほとんどの指標は、インフレ率が持続的に目標付近で安定することを示唆している」と2%物価の目標達成に自信を示ししつつ、「現在の金融政策は『依然として景気抑制的』だ」 --------
1/29 パウエル・FRB議長 「金融政策スタンスが景気を抑制する度合いは、以前より大幅に弱まっており、経済は強さを維持していることから、政策スタンスの調整を急ぐ必要はない」、「労働市場が急速に減速したり、インフレが再燃し場合には政策金利を調整する用意がある」、(トランプ政権の政策の行方については)「分からない」 ほとんど影響はなし。
1/29 FOMC声明文 「最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率はここ数カ月、低水準で推移しており、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」 ほとんど影響はなし。
1/23 トランプ大統領 (ダボス会議でのオンライン参加で)「金利の即時引き下げを要求する」、(政策金利に関して、FRB議長の判断に疑問を呈した上で)「議長と適切な時期に話すつもりだ。彼らよりも私の方が金利に関してはるかに詳しく、その判断に当たる主な責任者よりも私の方が熟知しているのは確かだ。私が反対の意見であれば、それを伝える」、(金融当局が自分の主張に耳を傾けると考えるのかとの質問に)「イエス」 ドル円がやや売られ、原油価格は下落。
1/16 ウォラー・FRB理事 「昨日発表されたインフレデータは非常に良好な内容だった。こうした数字が続けば、今年前半に利下げが実施され得ると考えるのが妥当だろう」、「このディスインフレ傾向は続き、考えられているより少し早く2%に近づくと、私は楽観している」、「経済活動を促進も抑制もしない中立金利に関する当局者の予想中央値は、今後発表されるデータ次第で年内3−4回の利下げが可能なことを示唆している」、「データが良好でなければ2回に戻ることになる。インフレが根強く続けば1回となる可能性さえある」 債券が買われ金利が低下。ドル円は156円台前半から155円05銭まで下落。
1/15 ウイリアムズ・NY連銀総裁 NY連銀のウイリアムズ総裁は、「ディスインフレのプロセスは続いている。しかし、当局の2%目標にはまだ達していない。この目標を持続的な形で達成出来るまでにはさらに時間がかかる」 --------
1/15 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「目標の2%に戻すための最終段階を成功裏に終えるためには、当局は景気抑制的であるべきだとなお考えている」 --------
1/15 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「インフレ面での改善傾向が続いている。2025年は成長を続けながらソフトランディングが達成できると、引き続き楽観している」 --------
1/9 ハーカー総裁・フィラデルフィア連銀総裁 「今は休止して、状況の推移を見守るのが適切」、「しばしの現状維持は可能だ。恐らく長期ではない。データがどうなるのか、見極める必要がある」 --------
1/9 ボウマンFRB理事 「インフレ率は2023年に大幅に鈍化したが、24年は進展が停滞したようだ。コアインフレ率は目標である2%の水準をなお不快なほど上回っている。政策については慎重かつ緩やかなアプローチが望ましい」 --------
1/9 コリンズ・ボストン連銀総裁 「時間の経過に伴い、一段の緩和が適切となるだろう。その規模は9月に考えていたよりもいくらか小幅となる可能性がある。じっくりと辛抱強くデータを総合的に評価する。つまり、辛抱強く分析的に見ていくことが、今年の政策を考える上で適切な可能性が高いだろう」 --------
1/5 クーグラーFRB理事 「インフレは、2024年第1四半期に上昇が見られたが、ここにきてまた上昇が見られる」、「これが本当に一時的な上昇であって、より永続的なものではないことを確認したい」 --------
1/5 デーリー・SF連銀総裁 「インフレ率は依然として目標を不快なほど大きく上回っている」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和