「トランプ氏、日中の通貨安政策に不満を表明」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は再び反落。トランプ関税が発動されることに加え、トランプ氏が円安政策を批判するような発言を行ったことで、ドル円は149円11銭まで下落。ISM製造業景況指数の下振れも重石に。
- ユーロドルは反発。ドルが売られたことで1.0504まで上昇。
- 株式市場は予定通り「トランプ関税」が実施されることで大幅安。S&P500は104ポイント下げ、今年最大の下落幅を記録。
- 債券は続伸し、長期金利は4.15%台まで低下。
- 金は反発。原油は続落し68ドル台に。
2月ISM製造業景況指数 → 50.3
2月S&Pグローバル製造業PMI(改定値) → 52.7
2月自動車販売台数 → 1600万台
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ドル/円 | 149.11 〜 151.30 |
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ユーロ/ドル | 1.0460 〜 1.0504 |
ユーロ/円 | 157.27 〜 158.47 |
NYダウ | −649.67 → 43,191.24 |
GOLD | +52.80 → 2,901.10ドル |
WTI | −1.39 → 68.37ドル |
米10年国債 | −0.053 → 4.155% |
本日の注目イベント
- 豪 豪10−12月期経常収支
- 豪 豪1月小売売上高
- 豪 RBA、金融政策会合議事要旨公表
- 日 1月失業率
- 欧 ユーロ圏1月失業率
- 米 バーキン・リッチモンド連銀総裁講演
- 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演
- 米 トランプ大統領、議会演説
本日のコメント
為替や債券、株など主要な金融市場を動かすのは、通常は経済指標などの、いわゆる「ファンダメンタルズ」ですが、足下ではそれらよりも「トランプ関税」が相場変動要因の主役を演じています。その前に先ずは、トランプ大統領がホワイトハウスで、「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」と述べ、明確に円安批判をしたわけではないようですが、ドル円はこの発言で円高方向に振れています。
カナダとメキシコに対する25%の関税引き上げについて、トランプ氏は隣国が発動延期の合意をまとめる可能性について問われ、「メキシコもカナダもその余地は全くない」と述べ、「全て準備が整っている。明日発動される」と話しています。4日に発動予定の関税は、年間およそ1兆5000億ドル(約225兆円)相当の輸入品に適用され、トランプ政権下としては最も広範囲に及ぶ措置の一つになります。またこの日トランプ氏は、中国への20%関税措置にも署名し、さらに、4月2日に「外国産農産物への関税」を発動することも明らかにしました。トランプ氏は自身のSNSに、「米国の偉大なる農業従事者にメッセージだ。米国内で販売される大量の農産物を生産する準備をせよ。外国産の製品には4月2日に関税が課せられる。お楽しみに!」と投稿しました。ブルームバーグは、「トランプ氏はどの製品が対象になるのか、あるいは例外があるのか、一段の詳細を示さなかった。この計画がほぼ全ての貿易相手国に、いわゆる『相互関税』を課すという、以前に発表された取り組みの一環になるのかも不明だ」と伝えています。大統領就任前から掲げていた「トランプ関税」がいよいよ実施されることになることで、リスク回避の流れがさらに強まり、株式市場では主要3指数が再び大きく売られました。S&P500は104ポイント下げ、今年最大の下落となっています。債券は買われ長期金利は一時、昨年12月6日以来となる4.14%台まで低下し、ドル売りに拍車をかけています。
異例な形で会談を終えたトランプ氏とゼレンスキー氏でしたが、これが、かえって欧州各国の結束を強める結果になっています。イギリスのスターマー首相の呼びかけた「有志国連合」へは、英、仏だけではなく、独、伊、ポーランド、カナダなど10カ国以上の首脳が参加し、国防費の増額などで一致しました。会議では、(1)ウクライナへの軍事支援の継続と対ロシア制裁の強化(2)和平交渉へのウクライナの参加(3)ロシアの再侵略を防ぐためウクライナの防衛力強化(4)平和を保証する「有志国連合」の創設、といった4項目で合意しました。ゼレンスキー氏は、「トランプ氏が、真の問題解決のために自身を再び招待すれば、会談する用意がある」と述べていましたが、トランプ氏は再びゼレンスキー氏を批判しています。トランプ氏は、「これはゼレンスキー氏による最悪の発言であり、米国はこれ以上我慢することはない!この男は米国の後ろ盾がある限り、平和を望まない」と、こきおろしています。ホワイトハウスで多くのメディアの前で、自身に盾ついたことが余程許せないものと思えます。
ドル円は昨日の「ウィークリー・レポート」でも述べましたが、(参照:3月3日付け今週の予想レンジ)まだドルの上値は重く、148円台半ばが「当面ドルの底値」とは言えません。ただ、この先リスク回避の流れがどこまで続き、米金利がどこまで低下するのか判断できません。トランプ政権の不透明さが読めないからです。まだ就任2カ月です。予想通りですが、この先まだどのような発言をするのか、本人以外誰にも分かりません。トランプ氏を取り巻く側近も、バンス氏のように「イエスマン」で固められており、第一政権時で大統領補佐官だったジョン・ボルトン氏のような人はいないように思えます。
本日のドル円は148円50銭〜150円50銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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3/3 | トランプ大統領 | 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 | ドル円は149円台半ばから下落。 |
2/25 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「インフレ率が当局目標の2%に戻りつつあるとの自信を深めるまで、やや景気抑制的な姿勢を維持することが理にかなっている。いんふれとの闘いは長期化していると認識しているが、われわれが断固たる姿勢を維持することが極めて重要だ」 | -------- |
2/20 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「インフレ率が2%超にとどまる、ないし上昇するリスクが上方向に傾いているようだ。インフレが停滞するリスクは、労働市場が顕著に軟化するリスクよりも大きい」とし、その上で、「インフレ率が当局目標の2%へと順調に低下してきたことが明確になるまで、やや景気抑制的な金融政策を維持すべきだ」 | -------- |
2/18 | ウォラー・FRB理事 | 「昨年の場合と同様に、冬季の進展休止が一時的なものならば、一段の緩和策が適切になるだろう。しかし、その時期が明確になるまでは金利据え置きは望ましい」 | ドル円は151円台から152円台に乗せる。 |
2/18 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | インフレ抑制の進展について落胆する理由はないと私は考えている。単に望まれているより長い時間がかかるだけだ」、(トランプ政権の政策の影響について)「時間をかけて判断すべきだ」 | -------- |
2/17 | ハーカー・フィラデルフィア連総裁 | 「具体的な時間的見通しは約束しないが、インフレは引き続き鈍化傾向にあり、金利は長期的に引き下げられると楽観している | -------- |
2/17 | ボーマン・FRB理事 | 「フェデラルファンド(FF)金利をより中立的な政策スタンスに近づけるプロセスは、新たな段階に入った。慎重で段階的なアプローチが好ましいと私が考えるのは、いくつか理由がある。現行政策のスタンスを考慮すると。1年前からの株高による金融環境の緩みが、ディスインフレの進行を遅らせたかもしれないと考えている」 | -------- |
2/12 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「より明確に把握できるまでは、金融政策がどこに向かうのか、どのくらいの速度・ペースで進むべきかについて判断を下すことが不可能だ。従ってわれわれは動き出す前に、より多くの情報を入手する必要がある。われわれは十分な情報を得た時点で動くことになるだろう」 | -------- |
2/12 | パウエル・FRB議長 | 「1つや2つの良好なデータに興奮することはない。1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」、「インフレに関しては近いところだが、まだ到達はしていない。昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」 | -------- |
2/11 | サマーズ・元財務長官 | 「1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆しは、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っている。ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意をはらわなければならない」、「現在のサイクルでさらなる利下げ余地はない」 | -------- |
2/11 | パウエル・FRB議長 | 「政策スタンスは景気抑制の度合いが以前より顕著に弱まっており、経済は強さを維持している。よって政策スタンスの調整は急ぐ必要はない」、「政策による景気抑制の度合い低下が速過ぎ、ないし行き過ぎとなれば、インフレ面での進展を妨げる可能性がある。一方で遅過ぎ、または少な過ぎであれば、経済活動と雇用を過度に弱めかねない」、(トランプ政権が進めている関税の強化の不透明感が強まっている景気への影響に関しては)、「われわれは2大責務における両面のリスクに注意を払っている。政権はわれわれが直面するリスクと不確実性に対処する上で良い態勢にある」・・・・(上院議会証言で) | -------- |
2/7 | クーグラー・FRB理事 | 「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」 | -------- |
2/5 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 | -------- |
2/5 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 | -------- |
2/4 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 | -------- |
2/3 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 | -------- |
2/3 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書