今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米、カナダなどへの関税軽減か?」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • トランプ関税が発動されたことで、世界景気の下振れ懸念からドル円は148円20銭まで下落、その後米長期金利が上昇したことで149円台まで反発し、引け際に149円87銭まで急上昇。
  • ユーロドルは反発し、年初来高値となる1.0628まで買われる。
  • 株式市場ではトランプ関税の発動で、世界経済に大きな影響が出るとの見方から、この日も3指数が下落。ダウは670ドル下げる。
  • 債券は売られ、長期金利の低下が止まる。長期金利は4.24%台に上昇。
  • 金は続伸し、原油は3日続落。
ドル/円 148.20 〜 149.87
ユーロ/ドル 1.0497 〜 1.0628
ユーロ/円 155.56 〜 158.34
NYダウ −670.25 → 42,520.99
GOLD +19.50 → 2,920.60ドル
WTI −0.11 → 68.26ドル
米10年国債 +0.089 → 4.244%

本日の注目イベント

  • 豪 豪10−12月期GDP
  • 日 内田日銀副総裁、静岡県金融経済懇談会で講演
  • 中 2月財新サービス業PMI
  • 中 2月財新総合PMI
  • 独 独2月サービス業PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏1月卸売物価指数
  • 欧 ユーロ圏2月総合PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏2月サービス業PMI(改定値)
  • 米 2月ADP雇用者数
  • 米 2月ISM非製造業景況指数
  • 米 1月製造業受注
  • 米 1月耐久財受注
  • 米 2月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値)
  • 米 2月S&Pグローバル総合PMI(改定値)
  • 米 ベージュブック(地区連銀経済報告)

本日のコメント

「関税」というカードを振りかざし、貿易相手国を恫喝し続けるトランプ氏。今朝の日経新聞一面の記事は、その7割程が「トランプ関係」で埋められていました。今朝もまた、その「関税」の軽減を巡る報道で、為替が動きました。

米国では4日に「トランプ関税」の発動が決まったことで、今朝6時までは「貿易戦争の火ぶたが切って落とされた」との雰囲気でした。筆者が5時台にチェックしたニュースでも「関税発動」一色でしたが、6時過ぎに席についたとたん、「米国が対カナダなどの関税軽減の可能性」との一報に、ドル円は149円台前半から149円88銭前後まで急上昇しました。ラトニック商務長官がFOXビジネスとのインタビューで、「メキシコ人もカナダ人もきょう一日中私と電話で話し、自分たちがもっとうまくやれると示そうとした。大統領は耳を傾けている。彼は非常に公正で、非常に合理的な人物だからだ」と述べた上で、「大統領は彼らと何とか解決していくと思う。中止にはならないだろう。明日恐らくそれを発表することになるのではないか」と話し、カナダとメキシコに対する関税がここにきて軽減される可能性があることを示唆しました。

米国に対するカナダ、メキシコ、中国の報復関税はすでに報道されていました。カナダは報復措置として4日から、まず300億カナダドルに相当する米国からの輸入品に25%の関税をかけ、オレンジジュース、ウイスキー、二輪車などがその対象になります。さらに21日後に、1250億カナダドル相当の米国製品に25%の関税をかける予定と、カナダ政府が発表していました。また、中国も10日から米国産の小麦やトウモロコシに最大15%の追加関税を課すことを発表しています。そしてメキシコは、対抗措置の詳細を9日に発表することを明らかにしています。無理難題を相手に突き付け、ぎりぎりまで引っ張り最後に譲歩する「トランプ流ディール」に各国が翻弄されている状況と言えます。

「やはり・・・」というべきか、トランプ大統領は3日、ウクライナに対する全ての軍事支援の一時停止を決めました。報道によると、ウクライナ首脳らが平和への誠実なコミットメントを示しているとトランプ大統領が判断するまで、米国は現行のウクライナへの軍事支援を停止する。トランプ大統領がヘグセス国防長官に一時停止の実行を命じたという内容でした。これにより、ウクライナの戦力の弱体化は避けられず、欧州の同盟国が支援を早めることを検討しているようですが、欧州には米国が現在供給している武器やその他の能力などの多くが欠けており、当局者は武器の供給は夏までしか続かない公算が大きいと話しています。ゼレンスキー大統領は「X」への投稿で、トランプ氏との会談について「想定通りには進まなかった。このような結果を遺憾に思う。今こそ正す時が来た。今後の協力とコミュニケーションは建設的なものにしていきたい。私とチームは、トランプ大統領の強力なリーダーシップの下で、永続する平和を実現するために取り組む用意がある」と述べていました。

1980年代、共産主義下のポーランドで民主化運動を率い、ノーベル平和賞を受賞したワレサ元大統領は3日、同国元民主活動家ら40人と連名の書簡を公表しました。ワレサ氏らは、「自由世界の価値を守るため血を流した英雄である、ウクライナ兵にこそ感謝すべきだ。会談中の大統領執務室の雰囲気は秘密警察の尋問や法廷を思い起こさせ、恐怖を感じた」と述べていました。

NY市場の始まる前には148円08銭辺りまで売られたドル円は、今朝方149円97銭まで戻すなど、相変らず荒っぽい動きです。形はどうあれ、トランプ関税が発動されたことで、米景気の下振れ観測も高まってきました。米国ではGDPの7割を個人消費が占めますが、物価高からその個人消費も減速するだろうという見方からです。そのため、年内の利下げ回数も2回から3回にシフトし始めてきました。インフレ懸念は依然として残るものの、それ以上に市場が景気後退に注目し出したという状況です。FRBがどのような判断を下すのか、難しい舵取りを迫られます。

本日は、内田日銀副総裁の講演内容に注目です。ドル円のレンジは148円50銭〜150円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
3/3 トランプ大統領 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 ドル円は149円台半ばから下落。
2/25 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレ率が当局目標の2%に戻りつつあるとの自信を深めるまで、やや景気抑制的な姿勢を維持することが理にかなっている。いんふれとの闘いは長期化していると認識しているが、われわれが断固たる姿勢を維持することが極めて重要だ」 --------
2/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「インフレ率が2%超にとどまる、ないし上昇するリスクが上方向に傾いているようだ。インフレが停滞するリスクは、労働市場が顕著に軟化するリスクよりも大きい」とし、その上で、「インフレ率が当局目標の2%へと順調に低下してきたことが明確になるまで、やや景気抑制的な金融政策を維持すべきだ」 --------
2/18 ウォラー・FRB理事 「昨年の場合と同様に、冬季の進展休止が一時的なものならば、一段の緩和策が適切になるだろう。しかし、その時期が明確になるまでは金利据え置きは望ましい」 ドル円は151円台から152円台に乗せる。
2/18 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 インフレ抑制の進展について落胆する理由はないと私は考えている。単に望まれているより長い時間がかかるだけだ」、(トランプ政権の政策の影響について)「時間をかけて判断すべきだ」 --------
2/17 ハーカー・フィラデルフィア連総裁 「具体的な時間的見通しは約束しないが、インフレは引き続き鈍化傾向にあり、金利は長期的に引き下げられると楽観している --------
2/17 ボーマン・FRB理事 「フェデラルファンド(FF)金利をより中立的な政策スタンスに近づけるプロセスは、新たな段階に入った。慎重で段階的なアプローチが好ましいと私が考えるのは、いくつか理由がある。現行政策のスタンスを考慮すると。1年前からの株高による金融環境の緩みが、ディスインフレの進行を遅らせたかもしれないと考えている」 --------
2/12 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「より明確に把握できるまでは、金融政策がどこに向かうのか、どのくらいの速度・ペースで進むべきかについて判断を下すことが不可能だ。従ってわれわれは動き出す前に、より多くの情報を入手する必要がある。われわれは十分な情報を得た時点で動くことになるだろう」 --------
2/12 パウエル・FRB議長 「1つや2つの良好なデータに興奮することはない。1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」、「インフレに関しては近いところだが、まだ到達はしていない。昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」 --------
2/11 サマーズ・元財務長官 「1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆しは、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っている。ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意をはらわなければならない」、「現在のサイクルでさらなる利下げ余地はない」 --------
2/11 パウエル・FRB議長 「政策スタンスは景気抑制の度合いが以前より顕著に弱まっており、経済は強さを維持している。よって政策スタンスの調整は急ぐ必要はない」、「政策による景気抑制の度合い低下が速過ぎ、ないし行き過ぎとなれば、インフレ面での進展を妨げる可能性がある。一方で遅過ぎ、または少な過ぎであれば、経済活動と雇用を過度に弱めかねない」、(トランプ政権が進めている関税の強化の不透明感が強まっている景気への影響に関しては)、「われわれは2大責務における両面のリスクに注意を払っている。政権はわれわれが直面するリスクと不確実性に対処する上で良い態勢にある」・・・・(上院議会証言で) --------
2/7 クーグラー・FRB理事 「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」 --------
2/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 --------
2/5 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 --------
2/4 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 --------
2/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 --------
2/3 コリンズ・ボストン連銀総裁 (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和