今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円は続落し、146円台半ばへ」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 株価が大きく下げ、金利が低下したことで、ドル円は146円63銭まで続落。ただその後は買い戻され147円台半ばまで上昇したが、徐々に上値を切り下げる展開。
  • ユーロドルの上昇は一服。1.08台半ばを中心にもみ合う。
  • 株式市場では3指数が大幅に反落。ダウは890ドル下げ、ナスダックは一時5%に迫る下げを見せたが、引け値では727ポイント下落で4%安。
  • 債券は買われ、長期金利は4.21%台に低下。
  • 金は続落し、原油は反落。
ドル/円 146.63 〜 147.46
ユーロ/ドル 1.0818 〜 1.0860
ユーロ/円 158.92 〜 159.73
NYダウ −890.01 → 41,911.71
GOLD −14.70 → 2,899.40ドル
WTI −1.01 → 66.03ドル
米10年国債 −0.088 → 4.213%

本日の注目イベント

  • 豪 豪3月ウエストパック消費者信頼感指数
  • 豪 豪2月NAB企業景況感指数
  • 日 10−12月GDP(改定値)
  • 英 英10月小売売上高
  • 欧 グリーンランド総選挙
  • 米 1月雇用動態調査(JOLTS)求人件数

本日のコメント

先週末にパウエル議長が「利下げは急がない」と発言した「パウエル・プット」の効果も、結局「トランプ関税」の前には1日も持たなかったようです。トランプ大統領が、米国の景気後退入りを明確に否定しなかったことや、中国への関税が発動されたことによる「貿易戦争」懸念。さらには政府職員の解雇による景気の悪化などから、昨日のNY株式市場では主要3指数が大きく下げました。ダウは一時1100ドル下げ、ナスダックも5%に迫る下げに見舞われました。引け値では若干戻しましたが、ナスダックは2022年以来の大幅安を記録しています。「リスク回避」から、安全資産の債券は買われ、金利が低下したことでドル円も147円台に戻してはいますが、一時は146円63銭まで売られ、今年のドルの最安値を付けています。WTI原油価格も66ドル台まで下げ、約半年ぶりの安値です。イーロン・マスク氏が所有するテスラ社の株価は一時16%安に沈み、日中の下げとしては2020年9月以来の大幅安でした。

トランプ政権はカナダとメキシコに対して自動車の関税引き上げ適用を1カ月猶予しましたが、9日はそのカナダで、カナダ、英国の両中央銀行総裁を務めたマーク・カーニー氏が次期首相に選出されました。カーニー氏は当選時の挨拶で、トランプ大統領と対決していく姿勢を見せ、「米国はカナダではない。いかなる形でもカナダが米国の一部になることは決してない。この闘いはわれわれが求めたわけではないが、(殴り合いのため)誰かがグローブを投げ捨てれば、カナダ人は常に相手をする用意がある。貿易でもホッケーでもカナダは勝つ」と宣言していました。また実際に、「貿易戦争」も現実味を帯びてきました。カナダのオンタリオ州は米国に電力を輸出していますが、トランプ氏が発動した関税への報復措置として、米国向けの電力価格を25%引き上げることを決めました。オンタリオ州のフォード首相は、「本当のところ、こんなことは望んでいない。米国の人々には申し訳なく思っている」と語り、「責任はただ一人、トランプ大統領にある」と述べています。オンタリオ州は送電線の運営者に、ミネソタ、ミシガン、NYの3州向けの電力全てを対象に1メガワット時当たり10カナダドル(約1020円)の料金上乗せを指示しました。オンタリオ州はこの上乗せ料金による利益については、「同州の労働者や家族、企業を支援するために使用される」と声明を出しています。

「トランプ関税」が徐々に発動され「貿易戦争」のリスクが高まり、リスク回避から円高が進んでいます。個人的にはいずれインフレが現実的となりドルが買われると予想していますが、本当の影響は未知数です。ただ日本サイドから見たら、円高圧力は増しています。昨日10日の日本の債券市場では、10年債がさらに売られ、長期金利は一時1.58%と、2008年10月以来16年半ぶりの高水準を記録しました。この日発表された、毎月勤労統計による所定内給与のうち、一般労働者(パートタイム以外)の伸びが、前年同月比3.1%増と前月から加速し、比較可能な1994年1月以降で最高だったことが材料視されました。これは、追加利上げを目指す日銀にとって好材料となり、市場には追加利上げのタイミングが早まるとの見方もあります。ただ、来週18−19日の決定会合では見送られる可能性が高く、早くても4月会合。また、半年に1回の緩やかな利上げを前提とすれば、6月会合での利上げが依然として有力ではないかと、個人的には予想しています。いま、この状況で利上げを行えば、軟調な日本の株式市場がさらに沈む可能性もあり、利上げには厳しい反応を見せることになります。

ドル円は上値の重い展開が続いており、本日は日経平均が大きく下げるようだと、146円テストの可能性もあるかもしれません。NYでは、「1月雇用動態調査(JOLTS)求人件数」が注目されます。レンジ予想は146−148円程度でしょうか。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
3/7 パウエル・FRB議長 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。
3/3 トランプ大統領 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 ドル円は149円台半ばから下落。
2/25 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレ率が当局目標の2%に戻りつつあるとの自信を深めるまで、やや景気抑制的な姿勢を維持することが理にかなっている。いんふれとの闘いは長期化していると認識しているが、われわれが断固たる姿勢を維持することが極めて重要だ」 --------
2/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「インフレ率が2%超にとどまる、ないし上昇するリスクが上方向に傾いているようだ。インフレが停滞するリスクは、労働市場が顕著に軟化するリスクよりも大きい」とし、その上で、「インフレ率が当局目標の2%へと順調に低下してきたことが明確になるまで、やや景気抑制的な金融政策を維持すべきだ」 --------
2/18 ウォラー・FRB理事 「昨年の場合と同様に、冬季の進展休止が一時的なものならば、一段の緩和策が適切になるだろう。しかし、その時期が明確になるまでは金利据え置きは望ましい」 ドル円は151円台から152円台に乗せる。
2/18 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 インフレ抑制の進展について落胆する理由はないと私は考えている。単に望まれているより長い時間がかかるだけだ」、(トランプ政権の政策の影響について)「時間をかけて判断すべきだ」 --------
2/17 ハーカー・フィラデルフィア連総裁 「具体的な時間的見通しは約束しないが、インフレは引き続き鈍化傾向にあり、金利は長期的に引き下げられると楽観している --------
2/17 ボーマン・FRB理事 「フェデラルファンド(FF)金利をより中立的な政策スタンスに近づけるプロセスは、新たな段階に入った。慎重で段階的なアプローチが好ましいと私が考えるのは、いくつか理由がある。現行政策のスタンスを考慮すると。1年前からの株高による金融環境の緩みが、ディスインフレの進行を遅らせたかもしれないと考えている」 --------
2/12 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「より明確に把握できるまでは、金融政策がどこに向かうのか、どのくらいの速度・ペースで進むべきかについて判断を下すことが不可能だ。従ってわれわれは動き出す前に、より多くの情報を入手する必要がある。われわれは十分な情報を得た時点で動くことになるだろう」 --------
2/12 パウエル・FRB議長 「1つや2つの良好なデータに興奮することはない。1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」、「インフレに関しては近いところだが、まだ到達はしていない。昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」 --------
2/11 サマーズ・元財務長官 「1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆しは、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っている。ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意をはらわなければならない」、「現在のサイクルでさらなる利下げ余地はない」 --------
2/11 パウエル・FRB議長 「政策スタンスは景気抑制の度合いが以前より顕著に弱まっており、経済は強さを維持している。よって政策スタンスの調整は急ぐ必要はない」、「政策による景気抑制の度合い低下が速過ぎ、ないし行き過ぎとなれば、インフレ面での進展を妨げる可能性がある。一方で遅過ぎ、または少な過ぎであれば、経済活動と雇用を過度に弱めかねない」、(トランプ政権が進めている関税の強化の不透明感が強まっている景気への影響に関しては)、「われわれは2大責務における両面のリスクに注意を払っている。政権はわれわれが直面するリスクと不確実性に対処する上で良い態勢にある」・・・・(上院議会証言で) --------
2/7 クーグラー・FRB理事 「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」 --------
2/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 --------
2/5 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 --------
2/4 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 --------
2/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 --------
2/3 コリンズ・ボストン連銀総裁 (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和