今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「金融市場、トランプ氏の発言に翻弄」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は昨日の東京時間に146円55銭まで売られたが、NYでは反発。米金利が上昇したことで148円12銭まで買われた。
  • ユーロドルはさらに続伸し、1.0947まで上昇。
  • 株式市場はウクライナが30日間の停戦を受け入れるとの報道で下げ渋ったものの、3指数は続落。
  • 債券は反落。長期金利は4.28%台に上昇。
  • 金は反発し、原油も買われる。
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1月雇用動態調査(JOLTS)求人件数 → 7740千件
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ドル/円 147.02 〜 148.12
ユーロ/ドル 1.0896 〜 1.0947
ユーロ/円 160.63 〜 161.79
NYダウ −478.23 → 41,433.48
GOLD +21.50 → 2,920.90ドル
WTI +0.22 → 66.25ドル
米10年国債 +0.067 → 4.280%

本日の注目イベント

  • 欧 ラガルド・ECB総裁講演
  • 米 2月消費者物価指数
  • 米 2月財政収支
  • 米 米国の鉄鋼・アルミニウム関税が発効
  • 加 カナダ中銀政策金利発表

本日のコメント

トランプ大統領の発言に翻弄される展開が続いています。トランプ氏は常に思ったことを言葉にするだけではなく、自身のSNSでも投稿しているため、その投稿内容に市場は直ぐに反応しています。トランプ氏自身も、そんなことは百も承知で発信し続けているのでしょう。

昨日の本欄でも触れましたが、カナダは米国への報復措置として、オンタリオ州が米国3州に輸出する電力に25%の関税を課すと発表しました。これに対してトランプ氏は、カナダ産鉄鋼とアルミニウム関税を「50%」に引き上げると直ちに反応。再び「貿易戦争」のリスクが高まったのち、カナダ・オンタリオ州のフォード首相は「貿易戦争は望まない」としつつも、「トランプ氏がカナダに対する措置を撤回しないかぎり、電力価格引き上げについては断固としてゆずらない」と述べています。トランプ氏はその後、同関税は「25%で発動されるだろう」とのメッセージを残していますが極めて流動的で、市場はそのたびに右往左往しているのが現状です。関税とは別にトランプ政権は、外国人を対象に新しい「入国ルール」を準備しており、これによると、30日を超えた米国滞在を計画しているカナダ人は米政府への情報登録と指紋の採取を義務付けられる可能性があると、ブルームバーグは伝えています。

トランプ政権の関税を巡る政策の不確実性を受け、NY株式市場では多くの銘柄が大きく売られています。ダウは昨日も、引けにかけては下げ渋ったものの478ドル下げ、これで昨年12月の4万5014ドルから3581ドル(約8%)下げたことになります。他の主要指数も概ね同様な動きで、NY株は「調整局面に入った」という声も聞かれます。これに対してトランプ氏は「リセッションを全く予想していない。この国は好景気になろう」と話し、株式相場が急落したことを重視しない考えを示しています。言うまでもなく、米国人はわれわれと比べ、多くの人が株式市場へ資金を投入しています。彼らにとって株価の動きは、自身の消費行動にも影響を与えます。今この時点で、トランプ氏の支持率調査を行ったら、恐らく支持率は50%を大きく割り込むのではないかと思います。ドル円は緩やかに上値を切り下げてはいるものの、146−149円のレンジで一進一退の動きになっています。トランプ氏は、いずれ為替水準についても、より明確に言及してくる可能性があると見ています。

ウクライナが11日、米国が提案したロシアとの30日間の停戦を受け入れる用意があると発表しました。サウジアラビアで行われた8時間にも及ぶ協議を終えた後、ウクライナ大統領府が停戦受け入れの共同声明をウェブサイトに掲載しています。米国は今後、この案をロシアのプーチン大統領に提示し、合意を探ることになりますが、プーチン氏は「いかなる和平協議においても、領土と平和維持軍、ウクライナの中立性に関する要求で譲歩するつもりはない」と話しており、同案が受け入れられるのは簡単ではなさそうです。一方ウクライナのゼレンスキー大統領は、「この30日間の停戦中に、われわれはパートナーと共に、確実な平和と永続的な安全の保証に関し、あらゆる項目を準備できるかもしれない」と述べ、さらに「ウクライナは平和への準備はできている。ロシアは戦争を終わらせる用意があるのか、それとも戦争を続けるつもりかを示さなければならない」と続けていました。先ずは30日間の停戦で一歩を踏み出し、さらにこれが恒久的停戦につながればと思います。ボールはロシア側にあります。

本日のドル円は146円80銭〜148円80銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
3/7 パウエル・FRB議長 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。
3/3 トランプ大統領 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 ドル円は149円台半ばから下落。
2/25 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレ率が当局目標の2%に戻りつつあるとの自信を深めるまで、やや景気抑制的な姿勢を維持することが理にかなっている。いんふれとの闘いは長期化していると認識しているが、われわれが断固たる姿勢を維持することが極めて重要だ」 --------
2/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「インフレ率が2%超にとどまる、ないし上昇するリスクが上方向に傾いているようだ。インフレが停滞するリスクは、労働市場が顕著に軟化するリスクよりも大きい」とし、その上で、「インフレ率が当局目標の2%へと順調に低下してきたことが明確になるまで、やや景気抑制的な金融政策を維持すべきだ」 --------
2/18 ウォラー・FRB理事 「昨年の場合と同様に、冬季の進展休止が一時的なものならば、一段の緩和策が適切になるだろう。しかし、その時期が明確になるまでは金利据え置きは望ましい」 ドル円は151円台から152円台に乗せる。
2/18 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 インフレ抑制の進展について落胆する理由はないと私は考えている。単に望まれているより長い時間がかかるだけだ」、(トランプ政権の政策の影響について)「時間をかけて判断すべきだ」 --------
2/17 ハーカー・フィラデルフィア連総裁 「具体的な時間的見通しは約束しないが、インフレは引き続き鈍化傾向にあり、金利は長期的に引き下げられると楽観している --------
2/17 ボーマン・FRB理事 「フェデラルファンド(FF)金利をより中立的な政策スタンスに近づけるプロセスは、新たな段階に入った。慎重で段階的なアプローチが好ましいと私が考えるのは、いくつか理由がある。現行政策のスタンスを考慮すると。1年前からの株高による金融環境の緩みが、ディスインフレの進行を遅らせたかもしれないと考えている」 --------
2/12 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「より明確に把握できるまでは、金融政策がどこに向かうのか、どのくらいの速度・ペースで進むべきかについて判断を下すことが不可能だ。従ってわれわれは動き出す前に、より多くの情報を入手する必要がある。われわれは十分な情報を得た時点で動くことになるだろう」 --------
2/12 パウエル・FRB議長 「1つや2つの良好なデータに興奮することはない。1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」、「インフレに関しては近いところだが、まだ到達はしていない。昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」 --------
2/11 サマーズ・元財務長官 「1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆しは、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っている。ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意をはらわなければならない」、「現在のサイクルでさらなる利下げ余地はない」 --------
2/11 パウエル・FRB議長 「政策スタンスは景気抑制の度合いが以前より顕著に弱まっており、経済は強さを維持している。よって政策スタンスの調整は急ぐ必要はない」、「政策による景気抑制の度合い低下が速過ぎ、ないし行き過ぎとなれば、インフレ面での進展を妨げる可能性がある。一方で遅過ぎ、または少な過ぎであれば、経済活動と雇用を過度に弱めかねない」、(トランプ政権が進めている関税の強化の不透明感が強まっている景気への影響に関しては)、「われわれは2大責務における両面のリスクに注意を払っている。政権はわれわれが直面するリスクと不確実性に対処する上で良い態勢にある」・・・・(上院議会証言で) --------
2/7 クーグラー・FRB理事 「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」 --------
2/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 --------
2/5 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 --------
2/4 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 --------
2/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 --------
2/3 コリンズ・ボストン連銀総裁 (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和