今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米2月のCPIは伸びが鈍化」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 昨日の東京時間朝方、147円台後半で推移していたドル円はNYで大きく買われ、149円20銭まで上昇。「トランプ関税」が発動され、「貿易戦争」が現実的になってきたことで、インフレ懸念も台頭。
  • ユーロドルは前日とほぼ水準を変えず、1.09を挟む展開。
  • 株式市場はCPIの低下を受けて買われたが、ダウは3日続落。他の2指数は反発。
  • 債券は続落し、長期金利は4.31%台に上昇。
  • 金と原油は揃って続伸。
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2月消費者物価指数 → 2.8%(前年同月比)
2月財政収支 → −307.0b
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ドル/円 148.12 〜 149.20
ユーロ/ドル 1.0876 〜 1.0933
ユーロ/円 161.34 〜 162.32
NYダウ −82.25 → 41,350.93
GOLD +25.90 → 2,946.80ドル
WTI +1.43 → 67.68ドル
米10年国債 +0.033 → 4.312%

本日の注目イベント

  • 欧 ユーロ圏1月鉱工業生産
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 2月生産者物価指数

本日のコメント

トランプ大統領は12日から、鉄鋼とアルミニウムの輸入に対する関税に、予定通り25%を適用することを発動しました。これには、例外や適用除外はなく全ての貿易相手国・地域に適用されることになり、欧州や日本、韓国、オーストラリアなどといった同盟国にも適用されます。また、ホワイトハウスのレビット報道官は、米国から日本に輸出する米には700%もの関税がかけられていると主張しました。700%の根拠はあいまいですが、これは不公平だと述べていることから、次のターゲットはこの辺りになるのかもしれません。これに対して、日本では米国からの輸入米には一定量関税ゼロで受け入れる「ミニマムアクセス(最低輸入量)」の仕組みを設けており、年77万トンを上限に国が無税で受け入れており、説明に引用された数字は正確性に欠けると農水省は説明しています。今回の関税引き上げに関して、ブルームバーグは面白い記事を配信していました。「今回大きく異なるのは、提案されている関税が前回対象となった鉄鋼とアルミニウムだけではなく、野球少年が使うアルミ製のバットから、釣り具、ローラースケート、裁縫針など、あらゆるものに最低25%の新たな関税が賦課される。最愛の人とのお別れさえも高額になりそうだ。埋葬用棺桶さえも新しい輸入関税の対象となる」と、ややアイロニーを込めて報じていました。

EUは米関税引き上げに対する対抗措置として、260億ユーロ(約4兆2000億円)相当の米国製品に輸入関税を課す計画を発表しました。EUはまた、最高25%関税を課す農産物および工業製品の追加リストを作成することを目指し、加盟国との協議を直ちに開始することも発表しています。フォンデアライエン欧州委員長は、「本日実施する対抗措置は、強力でありながらも妥当なものだ。地政学的および政治学的な不確実性に満ちた世界において、このような関税によって経済に負担をかけることは、双方にとって利益にならないと確信している」と述べながらも、今後譲歩する余地は残していました。

「米2月の消費者物価指数(CPI)」は、前月比の総合で「0.2%」(前月は0.5%)、コア指数も「0.2%」(前月は0.4%)でした。また前年比では総合で「2.8%」(前月は3.0%)、コアは「3.1%」(前月は3.3%)と、いずれも先月からは伸びが鈍化していました。本来なら、株と債券が大きく買われ、ドルが売られる展開が予想されますが、今回の反応はまちまちで、金利が上昇したことでドル円は149円台に乗せました。もっとも、「トランプ関税」はまだ発動されたばかりで、その影響が出てくるのはこれからです。同時に市場関係者も実際の影響を読み切れてはいないのが実情のようです。ドル円が146円台半ばからわずか1日で3円近くも上昇したことが、その証左です。今朝もすでに、NYの高値から1円程落ちており、荒っぽい動きが続いています。

日銀による追加利上げのタイミングについて、ブルームバーグが4−10日にかけて52人のエコノミストを対象に調査した結果では、現在0.5%程度の政策金利を引き上げる時期は、「7月が48%」で最多でした。次いで「6月が15%」、「5月と9月が13%」で、来週18−19日の会合での引き上げ予想は「ゼロ」でした。筆者も7月利上げを予想しています。昨日、国会の衆議院財務金融委員会での答弁で植田総裁は、長期金利が上昇している背景について、「経済・物価見通しや海外金利動向を反映しているとの市場の見方と、大きな齟齬はない」と答弁していました。

本日のドル円は147円30銭〜149円30銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
3/7 パウエル・FRB議長 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。
3/3 トランプ大統領 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 ドル円は149円台半ばから下落。
2/25 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレ率が当局目標の2%に戻りつつあるとの自信を深めるまで、やや景気抑制的な姿勢を維持することが理にかなっている。いんふれとの闘いは長期化していると認識しているが、われわれが断固たる姿勢を維持することが極めて重要だ」 --------
2/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「インフレ率が2%超にとどまる、ないし上昇するリスクが上方向に傾いているようだ。インフレが停滞するリスクは、労働市場が顕著に軟化するリスクよりも大きい」とし、その上で、「インフレ率が当局目標の2%へと順調に低下してきたことが明確になるまで、やや景気抑制的な金融政策を維持すべきだ」 --------
2/18 ウォラー・FRB理事 「昨年の場合と同様に、冬季の進展休止が一時的なものならば、一段の緩和策が適切になるだろう。しかし、その時期が明確になるまでは金利据え置きは望ましい」 ドル円は151円台から152円台に乗せる。
2/18 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 インフレ抑制の進展について落胆する理由はないと私は考えている。単に望まれているより長い時間がかかるだけだ」、(トランプ政権の政策の影響について)「時間をかけて判断すべきだ」 --------
2/17 ハーカー・フィラデルフィア連総裁 「具体的な時間的見通しは約束しないが、インフレは引き続き鈍化傾向にあり、金利は長期的に引き下げられると楽観している --------
2/17 ボーマン・FRB理事 「フェデラルファンド(FF)金利をより中立的な政策スタンスに近づけるプロセスは、新たな段階に入った。慎重で段階的なアプローチが好ましいと私が考えるのは、いくつか理由がある。現行政策のスタンスを考慮すると。1年前からの株高による金融環境の緩みが、ディスインフレの進行を遅らせたかもしれないと考えている」 --------
2/12 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「より明確に把握できるまでは、金融政策がどこに向かうのか、どのくらいの速度・ペースで進むべきかについて判断を下すことが不可能だ。従ってわれわれは動き出す前に、より多くの情報を入手する必要がある。われわれは十分な情報を得た時点で動くことになるだろう」 --------
2/12 パウエル・FRB議長 「1つや2つの良好なデータに興奮することはない。1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」、「インフレに関しては近いところだが、まだ到達はしていない。昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」 --------
2/11 サマーズ・元財務長官 「1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆しは、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っている。ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意をはらわなければならない」、「現在のサイクルでさらなる利下げ余地はない」 --------
2/11 パウエル・FRB議長 「政策スタンスは景気抑制の度合いが以前より顕著に弱まっており、経済は強さを維持している。よって政策スタンスの調整は急ぐ必要はない」、「政策による景気抑制の度合い低下が速過ぎ、ないし行き過ぎとなれば、インフレ面での進展を妨げる可能性がある。一方で遅過ぎ、または少な過ぎであれば、経済活動と雇用を過度に弱めかねない」、(トランプ政権が進めている関税の強化の不透明感が強まっている景気への影響に関しては)、「われわれは2大責務における両面のリスクに注意を払っている。政権はわれわれが直面するリスクと不確実性に対処する上で良い態勢にある」・・・・(上院議会証言で) --------
2/7 クーグラー・FRB理事 「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」 --------
2/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 --------
2/5 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 --------
2/4 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 --------
2/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 --------
2/3 コリンズ・ボストン連銀総裁 (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和