今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米、EUの報復措置の対抗としてワインなどに200%の関税か?」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は依然として一進一退の展開。148円台で推移するも、米金利の低下に147円42銭まで下げる場面も。
  • ユーロドルは終始1.08台で推移。
  • 株式市場では3指数が揃って大幅続落。貿易戦争の激化にダウは4日続落し、この間の下げ幅も1900ドルに迫る。
  • 債券は反発。長期金利は4.26%台に低下。
  • 金は大幅に続伸し、初の3000ドルに迫る。原油は反落。
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新規失業保険申請件数 → 22.0万件
2月生産者物価指数 → 3.2%(前年同月比)
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ドル/円 147.42 〜 148.35
ユーロ/ドル 1.0823 〜 1.0879
ユーロ/円 160.04 〜 160.99
NYダウ −537.36 → 40,813.57
GOLD +44.50 → 2,991.30ドル
WTI −1.13 → 66.55ドル
米10年国債 −0.044 → 4.268%

本日の注目イベント

  • 独 独2月消費者物価指数(改定値)
  • 英 英1月鉱工業生産
  • 英 英1月貿易収支
  • 米 3月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
  • 米 米つなぎ予算失効期限

本日のコメント

EUは、「トランプ関税」への報復措置として、260億ユーロ(約4兆2000億円)相当の米国製品に輸入関税を課す計画を発表しました。これに対してトランプ大統領は、欧州産のワイン、シャンパン、その他のアルコール飲料に「200%」の関税を課す方針を自身のSNSで明らかにしました。トランプ氏は投稿で、「関税が直ちに撤回されないのであれば、米国は近く、フランス産および他のEU加盟国産の全てのワイン、シャンパン、アルコール製品に200%の関税を賦課する」と表明。「これは米国のワイン、シャンパン業界にとって素晴らしいことだ」と述べています。投稿を受けて、欧州最大のワイン、スピリッツ部門を持つ「LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン株」は売られています。トランプ氏はさらに、「今週導入した鉄鋼とアルミニウム関税を撤回すつもりはない。世界の貿易相手国に対して4月2日にも発動する包括的な報復関税について、譲歩する気もない。われわれは長年、かもにされてきた。もう、かもにはされない」と語っています。

ただ、筆者の認識が正しければ、トランプ氏の述べた「米国のワイン、シャンパン業界にとって・・・」という部分は正しくありません。米国にはナパバレーといった有名なワイン産地があり、そこでは「オーパスワン」などといった高級ワインが生産されますが、シャンパンはフランスのシャンパーニュ地方でのみ生産されたものにしか使用できない「名称」です。そこには非常に厳しい厳格なルールが定められています。従って、正確には「ワイン、スパークリングワイン」と言うべきでしょう。どうでもいいことですが、暴走し続けるトランプ氏に一矢を、と思った次第です。米国とEUとの「貿易戦争」がいよいよ激化するとの見方から、NY株式市場ではダウが大きく売られ、S&P500は「調整局面入りした」と報じられています。さらにこのままでは、4月2日からは「相互関税」が発動され、世界の国々でも混乱や報復の嵐が吹き荒れる可能性があります。

米国が提案しているロシア・ウクライナの停戦案は、ウクライナ側が受け入れたことで、ボールはロシア側にあります。ロシア側がどのような条件で受け入れるのか、あるいは受け入れないのかが焦点です。ロシアは停戦交渉を有利に進めるためか、ウクライナの西武クルスク州では、これまで以上に大規模な攻撃をしかけています。プーチン氏は13日停戦について、「考え事態は正しいものであり、われわれが支持しているのも確かだが、話合うべき問題がある。この件については米国およびパートナー諸国と協議する必要がある。おそらくトランプ大統領と電話で話し合うべきだろう。われわれは平和的な手段でこの対立を終結させるという考えを支持する」と話しています。ただ従来ロシアは、停戦にはウクライナ軍の完全撤収と、同国のNATOへの不参加を主張しており、この条件を譲歩するつもりはないようです。

昨日はECBの主要メンバーによるパネルディスカッションがありましたが、各国中銀総裁はトランプ氏の関税政策には一貫して反対する姿勢を見せていました。フランス中銀のビルロワドガロー総裁は、「トランプ政権は経済をボードゲーム『モノポリー』の世界版と捉えている。モノポリーはプレーヤーが不動産を建設してライバルから高い賃料を徴収して、対戦相手を破産に追い込むゲームだ」と話し、さらに、「われわれは米選挙について、経済に関する警鐘だと昨年指摘したが、正直なところ、その衝撃の激しさは予想をはるかに超えている。今起きていることは、まず何より米経済にとって悲劇だ」と述べ、ナーゲル・ドイツ連銀総裁も、「トランプ政権の政策は『経済版の恐怖の館(やかた)』からのものだ」と批判していました。

不透明で流動的な「トランプ関税」に振り回され、株式市場でのボラティリティが極めて大きくなっていますが、ドル円は上値を切り下げて来てはいるものの、一気に下値を崩して売り込む状況でもありません。おおむね146−149円のレンジ相場が続いています。足元の状況からこの先145円か150円のどちらかを抜けるとすれば、やはり、145円に軍配が上がりそうな気配かと思われます。

本日のドル円は146円50銭〜148円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
3/7 パウエル・FRB議長 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。
3/3 トランプ大統領 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 ドル円は149円台半ばから下落。
2/25 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレ率が当局目標の2%に戻りつつあるとの自信を深めるまで、やや景気抑制的な姿勢を維持することが理にかなっている。いんふれとの闘いは長期化していると認識しているが、われわれが断固たる姿勢を維持することが極めて重要だ」 --------
2/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「インフレ率が2%超にとどまる、ないし上昇するリスクが上方向に傾いているようだ。インフレが停滞するリスクは、労働市場が顕著に軟化するリスクよりも大きい」とし、その上で、「インフレ率が当局目標の2%へと順調に低下してきたことが明確になるまで、やや景気抑制的な金融政策を維持すべきだ」 --------
2/18 ウォラー・FRB理事 「昨年の場合と同様に、冬季の進展休止が一時的なものならば、一段の緩和策が適切になるだろう。しかし、その時期が明確になるまでは金利据え置きは望ましい」 ドル円は151円台から152円台に乗せる。
2/18 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 インフレ抑制の進展について落胆する理由はないと私は考えている。単に望まれているより長い時間がかかるだけだ」、(トランプ政権の政策の影響について)「時間をかけて判断すべきだ」 --------
2/17 ハーカー・フィラデルフィア連総裁 「具体的な時間的見通しは約束しないが、インフレは引き続き鈍化傾向にあり、金利は長期的に引き下げられると楽観している --------
2/17 ボーマン・FRB理事 「フェデラルファンド(FF)金利をより中立的な政策スタンスに近づけるプロセスは、新たな段階に入った。慎重で段階的なアプローチが好ましいと私が考えるのは、いくつか理由がある。現行政策のスタンスを考慮すると。1年前からの株高による金融環境の緩みが、ディスインフレの進行を遅らせたかもしれないと考えている」 --------
2/12 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「より明確に把握できるまでは、金融政策がどこに向かうのか、どのくらいの速度・ペースで進むべきかについて判断を下すことが不可能だ。従ってわれわれは動き出す前に、より多くの情報を入手する必要がある。われわれは十分な情報を得た時点で動くことになるだろう」 --------
2/12 パウエル・FRB議長 「1つや2つの良好なデータに興奮することはない。1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」、「インフレに関しては近いところだが、まだ到達はしていない。昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」 --------
2/11 サマーズ・元財務長官 「1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆しは、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っている。ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意をはらわなければならない」、「現在のサイクルでさらなる利下げ余地はない」 --------
2/11 パウエル・FRB議長 「政策スタンスは景気抑制の度合いが以前より顕著に弱まっており、経済は強さを維持している。よって政策スタンスの調整は急ぐ必要はない」、「政策による景気抑制の度合い低下が速過ぎ、ないし行き過ぎとなれば、インフレ面での進展を妨げる可能性がある。一方で遅過ぎ、または少な過ぎであれば、経済活動と雇用を過度に弱めかねない」、(トランプ政権が進めている関税の強化の不透明感が強まっている景気への影響に関しては)、「われわれは2大責務における両面のリスクに注意を払っている。政権はわれわれが直面するリスクと不確実性に対処する上で良い態勢にある」・・・・(上院議会証言で) --------
2/7 クーグラー・FRB理事 「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」 --------
2/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 --------
2/5 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 --------
2/4 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 --------
2/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 --------
2/3 コリンズ・ボストン連銀総裁 (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和