「ドル円祝日前、トランプ発言で上値を重くする」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- 米経済指標がおおむね予想通りだったこともあり、ドル円は終始148円台で推移。値幅も50銭強で小動き。
- ユーロドルは反落。1.0815まで売られおよそ10日ぶりの安値。スイス中銀が利下げを行い、ドルスイスが売られたことも影響。
- 株式市場は3指数がまちまち。ダウは372ドル買われ続伸したが、他の2指数は小幅安。
- 債券はほぼ横ばい。長期金利は4.23%台で推移。
- 金は8日続伸。原油も買われる。
3月フィラデルフィア連銀景況指数 → 12.5
新規失業保険申請件数 → 22.3万件
経常収支(10−12月) → −303.9b
2月景気先行指標総合指数 → −0.3%
2月中古住宅販売件数 → 426万件
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ドル/円 | 148.41 〜 148.95 |
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ユーロ/ドル | 1.0815 〜 1.0858 |
ユーロ/円 | 160.72 〜 161.59 |
NYダウ | +372.01 → 41,953.32 |
GOLD | +2.60 → 3,043.80ドル |
WTI | +1.10 → 68.26ドル |
米10年国債 | −0.006 → 4.237% |
本日の注目イベント
- 日 2月消費者物価指数
- 欧 ユーロ圏3月消費者信頼感指数(速報値)
- 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演
- 加 カナダ1月小売売上高
本日のコメント
19日の日米金融政策会合では、予想通り日銀、FRBはともに現行の政策金利を据え置きました。取り巻く経済環境では、「日銀は追加利上げ」、「FRBは追加利下げ」が出来る状況かと思われましたが、壁になったのはやはり「トランプ関税がもたらす不確実性」でした。植田総裁は会見で、「米国の関税政策の影響が及ぶ範囲や決定のスピードが、急速に広がったり上がったりしていると感じる」と述べ、「4月にならないとわからない。不確定なところが非常に大きい」と発言。4月2日に多くの貿易相手国を対象に発動される予定の「相互関税」を念頭に置いたと思われる発言をしていました。また、パウエル議長も関税政策によるインフレについて、「米金融当局が何もせず急速に解消し、一過性のものであるならば、拘泥しないのが適切な場合もある」と発言。こうしたシナリオを「基本ケース」とする一方で、「一時的なものになるかどうか、当局として実際のところ分からない」とも述べていました。
EUは20日、当初4月1日に発動予定だった米国産ウイスキーに課す予定の50%の関税を、4月中旬まで延期すると発表しました。米国による鉄鋼とアルミニウム関税に対する他の広範な対抗措置の導入と時期を合わせるための延期と見られています。上述のように、FRBは今回の会合で政策金利を据え置きましたが、これに対してトランプ氏は自身のSNSで、「米国の関税が経済に移行(緩和!)し始めたら、FRBは金利を引き下げた方がずっといい」と投稿しました。貿易相手国・地域への相互関税などの発表を予定している4月初めを念頭に、「正しいことをしよう。4月2日は米国の解放記念日だ!」とコメントしています。19日のNY市場ではドル円が一時150円台に乗せ、150円24銭まで買われましたが、この発言がそこから急落した一因にもなっていました。今後も事ある毎に、このような発言を行いFRBに圧力を掛ける場面は、決して少なくはないと思われます。インフレが進めば、利下げではなく、利上げを行わなければならないことくらい、トランプ氏も十分に理解していることと思いますが・・・。またそのうち、ドル円の水準に対してもより直接的に言及してくる可能性も十分あると考えます。
18日のコメントでも触れたように、「MACD」では、目先ドルが上昇しそうなサインを見せていました。ドル円は約2週間ぶりに150円台前半まで買われましたが、同時にこのレベルは、1月10日に記録した158円88銭を頂点とした「レジスタンスライン」にも接触しています。結局145―150円のレンジに再び押し戻された格好になっています。日米の金融政策会合を終え、再び焦点は「トランプ関税」の行方です。
本日のドル円は147円80銭〜149円80銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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3/19 | パウエル・FRB議長 | (関税性政策によるインフレについて)、「米金融当局が何もせず急速に解消し、一過性のものであるならば、拘泥しないのが適切な場合もある」、「一時的なものになるかどうか、当局として実際のところ分からない」 | -------- |
3/19 | トランプ大統領 | 「米国の関税が経済に移行(緩和!)し始めたら、FRBは金利を引き下げた方がずっといい」 | ドル円150円台前半から149円割れまで下落。 |
3/7 | パウエル・FRB議長 | 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 | 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。 |
3/3 | トランプ大統領 | 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 | ドル円は149円台半ばから下落。 |
2/25 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「インフレ率が当局目標の2%に戻りつつあるとの自信を深めるまで、やや景気抑制的な姿勢を維持することが理にかなっている。いんふれとの闘いは長期化していると認識しているが、われわれが断固たる姿勢を維持することが極めて重要だ」 | -------- |
2/20 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「インフレ率が2%超にとどまる、ないし上昇するリスクが上方向に傾いているようだ。インフレが停滞するリスクは、労働市場が顕著に軟化するリスクよりも大きい」とし、その上で、「インフレ率が当局目標の2%へと順調に低下してきたことが明確になるまで、やや景気抑制的な金融政策を維持すべきだ」 | -------- |
2/18 | ウォラー・FRB理事 | 「昨年の場合と同様に、冬季の進展休止が一時的なものならば、一段の緩和策が適切になるだろう。しかし、その時期が明確になるまでは金利据え置きは望ましい」 | ドル円は151円台から152円台に乗せる。 |
2/18 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | インフレ抑制の進展について落胆する理由はないと私は考えている。単に望まれているより長い時間がかかるだけだ」、(トランプ政権の政策の影響について)「時間をかけて判断すべきだ」 | -------- |
2/17 | ハーカー・フィラデルフィア連総裁 | 「具体的な時間的見通しは約束しないが、インフレは引き続き鈍化傾向にあり、金利は長期的に引き下げられると楽観している | -------- |
2/17 | ボーマン・FRB理事 | 「フェデラルファンド(FF)金利をより中立的な政策スタンスに近づけるプロセスは、新たな段階に入った。慎重で段階的なアプローチが好ましいと私が考えるのは、いくつか理由がある。現行政策のスタンスを考慮すると。1年前からの株高による金融環境の緩みが、ディスインフレの進行を遅らせたかもしれないと考えている」 | -------- |
2/12 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「より明確に把握できるまでは、金融政策がどこに向かうのか、どのくらいの速度・ペースで進むべきかについて判断を下すことが不可能だ。従ってわれわれは動き出す前に、より多くの情報を入手する必要がある。われわれは十分な情報を得た時点で動くことになるだろう」 | -------- |
2/12 | パウエル・FRB議長 | 「1つや2つの良好なデータに興奮することはない。1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」、「インフレに関しては近いところだが、まだ到達はしていない。昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」 | -------- |
2/11 | サマーズ・元財務長官 | 「1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆しは、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っている。ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意をはらわなければならない」、「現在のサイクルでさらなる利下げ余地はない」 | -------- |
2/11 | パウエル・FRB議長 | 「政策スタンスは景気抑制の度合いが以前より顕著に弱まっており、経済は強さを維持している。よって政策スタンスの調整は急ぐ必要はない」、「政策による景気抑制の度合い低下が速過ぎ、ないし行き過ぎとなれば、インフレ面での進展を妨げる可能性がある。一方で遅過ぎ、または少な過ぎであれば、経済活動と雇用を過度に弱めかねない」、(トランプ政権が進めている関税の強化の不透明感が強まっている景気への影響に関しては)、「われわれは2大責務における両面のリスクに注意を払っている。政権はわれわれが直面するリスクと不確実性に対処する上で良い態勢にある」・・・・(上院議会証言で) | -------- |
2/7 | クーグラー・FRB理事 | 「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」 | -------- |
2/5 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 | -------- |
2/5 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 | -------- |
2/4 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 | -------- |
2/3 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 | -------- |
2/3 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書