今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「カーニー加首相、総選挙を選択」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は朝方の148円61銭を底にジリ高の展開。売られていた株式市場がプラスに転じたこともあり再び149円台を回復。
  • ドルが買われたことでユーロドルは1.0795まで続落。
  • 株式市場では3指数が揃って小幅に上昇。ダウは前半売られたものの後半には買われ32ドル高。
  • 債券は小幅に売られ、長期金利は4.24%台で推移。
  • 金は9日ぶりに反落。原油は3日続伸。
ドル/円 148.61 〜 149.36
ユーロ/ドル 1.0795 〜 1.0861
ユーロ/円 160.72 〜 161.68
NYダウ +32.03 → 41,985.35
GOLD −22.40 → 3,021.40ドル
WTI +0.21 → 68.28ドル
米10年国債 +0.009 → 4.246%

本日の注目イベント

  • 独 独3月製造業PMI(速報値)
  • 独 独3月サービス業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏3月製造業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏3月サービス業PMI(速報値)
  • 英 英3月製造業PMI(速報値)
  • 英 英3月サービス業PMI(速報値)
  • 英 ベイリー・BOE総裁講演
  • 米 3月S&Pグローバル製造業PMI(速報値)
  • 米 3月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値)
  • 米 3月S&Pグローバル総合業PMI(速報値)

本日のコメント

トランプ政権は、ロシアとウクライナの停戦について4月20日をメドに合意を目指すようです。ロシア側は米国が提案した「30日間の停戦」を受け入れませんでしたが、条件次第では停戦に前向きな姿勢を維持しています。一方、ウクライナ側はホワイトハウスでゼンレンスキー大統領とトランプ大統領が決別して以来、関係修復を急いでいるようで、そのせいか、やや米国主導で事が進められている印象があります。米国のウイットコフ中東担当特使は21日、ウクライナがロシアとの和平合意のため「NATOへの加盟を事実上断念した」との認識をFOXテレビとのインタビューで示しました。特使は、ウクライナのゼレンスキー大統領について、「NATOに加盟できないことをほぼ認めた」と話していました。ゼレンスキー氏とすれば、やはり今後戦争が続くことを考えた場合、米国からの武器の供与なくしてロシアに勝てる可能性は少ないと考えているのか、国内の資源権益や、停戦後の大統領選も含めて、米国の意向を受け入れるようです。ロシアとの戦争を終結させることを最優先した格好になってきそうです。

ウクライナ問題を巡り、EUはこれまでの米国頼みからの脱却に舵を切り直しています。トランプ政権がロシア寄りということで、EUがこれまで課せられていた厳しい財政規律を破棄し、防衛費の増額を優先する計画であることは周知の事実です。その原資を国債で賄うというもので、すでにドイツ国債は大きく売られ、これらがユーロ高に一役買っている面もあります。ドイツは憲法に相当する基本法で財政赤字の膨張を防ぐ債務抑制策を定めてきました。その憲法を21日には上下両院で改正することを可決しました。これによりドイツが今後10年あまりで国防費やインフラ投資に充てる追加の財政支出は1兆ユーロ(約160兆円)規模に達する見込みです。次期首相に就任すると見られるキリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首は「わが国にとって重要な一歩で、画期的な改正だ」と述べています。ただ、世界でも数少ない「AAA」(トリプルA)格付けを維持してきたタガを外したことで、今後格下げにつながる可能性もあります。格付け会社フィッチ・レーティングスは「持続的な成長につながらなければ、ドイツの最高水準の信用格付けに長期的な圧力がかかる」とするコメントを発表していました。

カナダのカーニー首相は23日、議会を解散し4月28日に総選挙を実施すると発表しました。今月14日にトルドー前首相に後を任されたばかりで、やや唐突な感じもしますがブルームバーグは、「トランプ大統領は一方的に関税を発動し、カナダの国家主権を脅かすような発言を繰り返している。カーニー氏としては、有権者から明確な負託を得てトランプ氏に対抗したい考えだ」と突然解散した背景を分析していました。「カナダを米国の51番目の州にしたい」などと述べたトランプ氏に対して一歩もひかない決意を見せたように思えます。トランプ氏にとって、少なくともトルドー氏よりも手ごわい相手になりそうです。

先週20日のNYで150円台に乗せたドル円でしたが、トランプ氏の発言で148円台まで押し戻され、再び149円台半ばまで反発してきました。日足チャートでは、上方にある雲にはまだ距離があります。1月に記録したドルの高値である158円88銭から下方に伸びる「レジスタンス・ライン」が上昇を抑えている形になっています。現在、149円70−80銭近辺にあることから、150円台を回復するためには、先ずはここを上抜けする必要があります。

本日のドル円は148円50銭〜150円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
3/19 パウエル・FRB議長 (関税性政策によるインフレについて)、「米金融当局が何もせず急速に解消し、一過性のものであるならば、拘泥しないのが適切な場合もある」、「一時的なものになるかどうか、当局として実際のところ分からない」 --------
3/19 トランプ大統領 「米国の関税が経済に移行(緩和!)し始めたら、FRBは金利を引き下げた方がずっといい」 ドル円150円台前半から149円割れまで下落。
3/7 パウエル・FRB議長 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。
3/3 トランプ大統領 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 ドル円は149円台半ばから下落。
2/25 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレ率が当局目標の2%に戻りつつあるとの自信を深めるまで、やや景気抑制的な姿勢を維持することが理にかなっている。いんふれとの闘いは長期化していると認識しているが、われわれが断固たる姿勢を維持することが極めて重要だ」 --------
2/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「インフレ率が2%超にとどまる、ないし上昇するリスクが上方向に傾いているようだ。インフレが停滞するリスクは、労働市場が顕著に軟化するリスクよりも大きい」とし、その上で、「インフレ率が当局目標の2%へと順調に低下してきたことが明確になるまで、やや景気抑制的な金融政策を維持すべきだ」 --------
2/18 ウォラー・FRB理事 「昨年の場合と同様に、冬季の進展休止が一時的なものならば、一段の緩和策が適切になるだろう。しかし、その時期が明確になるまでは金利据え置きは望ましい」 ドル円は151円台から152円台に乗せる。
2/18 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 インフレ抑制の進展について落胆する理由はないと私は考えている。単に望まれているより長い時間がかかるだけだ」、(トランプ政権の政策の影響について)「時間をかけて判断すべきだ」 --------
2/17 ハーカー・フィラデルフィア連総裁 「具体的な時間的見通しは約束しないが、インフレは引き続き鈍化傾向にあり、金利は長期的に引き下げられると楽観している --------
2/17 ボーマン・FRB理事 「フェデラルファンド(FF)金利をより中立的な政策スタンスに近づけるプロセスは、新たな段階に入った。慎重で段階的なアプローチが好ましいと私が考えるのは、いくつか理由がある。現行政策のスタンスを考慮すると。1年前からの株高による金融環境の緩みが、ディスインフレの進行を遅らせたかもしれないと考えている」 --------
2/12 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「より明確に把握できるまでは、金融政策がどこに向かうのか、どのくらいの速度・ペースで進むべきかについて判断を下すことが不可能だ。従ってわれわれは動き出す前に、より多くの情報を入手する必要がある。われわれは十分な情報を得た時点で動くことになるだろう」 --------
2/12 パウエル・FRB議長 「1つや2つの良好なデータに興奮することはない。1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」、「インフレに関しては近いところだが、まだ到達はしていない。昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」 --------
2/11 サマーズ・元財務長官 「1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆しは、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っている。ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意をはらわなければならない」、「現在のサイクルでさらなる利下げ余地はない」 --------
2/11 パウエル・FRB議長 「政策スタンスは景気抑制の度合いが以前より顕著に弱まっており、経済は強さを維持している。よって政策スタンスの調整は急ぐ必要はない」、「政策による景気抑制の度合い低下が速過ぎ、ないし行き過ぎとなれば、インフレ面での進展を妨げる可能性がある。一方で遅過ぎ、または少な過ぎであれば、経済活動と雇用を過度に弱めかねない」、(トランプ政権が進めている関税の強化の不透明感が強まっている景気への影響に関しては)、「われわれは2大責務における両面のリスクに注意を払っている。政権はわれわれが直面するリスクと不確実性に対処する上で良い態勢にある」・・・・(上院議会証言で) --------
2/7 クーグラー・FRB理事 「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」 --------
2/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 --------
2/5 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 --------
2/4 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 --------
2/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 --------
2/3 コリンズ・ボストン連銀総裁 (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和