今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米相互関税に一部適用除外や軽減措置の可能性も」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円はNY市場で150円台を回復し、一時150円76銭まで上昇。トランプ大統領が「相互関税」で軽減措置を講じるとの見方が支えに。ドル円は3週間ぶりのドル高水準を付ける。
  • ユーロドルは小幅に続落。
  • 株式市場では3指数が揃って大幅に上昇。「相互関税」の適用国が減少する可能性が相場のセンチメントを好転させ、ナスダックは404ポイント上昇。
  • 債券は続落し、長期金利は4.33%台に。
  • 金は続落。原油は4日続伸。
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3月S&Pグローバル製造業PMI(速報値) → 49.8
3月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値) → 54.3
3月S&Pグローバル総合業PMI(速報値) → 53.5
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ドル/円 149.71 〜 150.76
ユーロ/ドル 1.0782 〜 1.0834
ユーロ/円 161.95 〜 162.82
NYダウ +597.97 → 42,583.32
GOLD −5.80 → 3,015.60ドル
WTI +0.83 → 69.11ドル
米10年国債 +0.088 → 4.335%

本日の注目イベント

  • 日 日銀金融政策決定会合議事録(2025年1月分)
  • 独 独3月ifo景況感指数
  • 米 1月ケース・シラ−住宅価格指数
  • 米 1月FHFA住宅価格指数
  • 米 2月新築住宅販売件数
  • 米 3月コンファレンスボード消費者信頼感指数
  • 米 3月リッチモンド連銀製造業景況指数
  • 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁、会議で開会挨拶

本日のコメント

ドル円は東京時間から底堅く推移し、NYでは昨日この欄でも触れた日足の「レジスタンス・ライン」を大きく上抜けし、3週間ぶりに150円76銭までドル高が進みました。4月2日に発動される「相互関税」では、一部の国に対して適用除外や軽減措置が講じられる可能性があることが「リスク回避」の流れを後退させました。株式が大きく買われ、債券が売られたことで金利が上昇。ドル円は金利上昇に反応し150円台後半まで買われました。

トランプ大統領はホワイトハウスで「多くの国に猶予措置を与えるかもしれない。これらの国は米国に非常に高い関税を課してきた。同水準に関税を課すのは恥ずかしいほどだ。それでもかなりの水準になるだろう。その詳細は4月2日に発表する」と話しています。また、「今後数日以内に自動車に対する関税を発表する」とも述べ、さらに半導体や医薬品についても、「そう遠くない将来のある時点で明らかにする」と語っています。このような結果はある程度予想されていましたが、これも、相手を恫喝し、その後落しどころを探る「トランプ流のディール」と言えます。全ての金融市場が4月2日に発表される「相互関税の強弱とその範囲」に左右される展開です。

アトランタ連銀のボスティック総裁は24日ブルームバーグとのインタビューで、今年の利下げ回数は2回ではなく、1回にとどまる公算が大きいと見ていると話していました。ボスティック総裁は、「1回にした理由は主に、インフレが非常に不安定になり、2%目標に向かって劇的かつ明確に動くことはないだろうと考えているからだ。その目標達成が遅れているため、政策を中立水準に戻す適切な道筋も遅れざるを得ないと考えている」と述べています。先週のFOMC前までは、「年内3回」の利下げを織り込む動きを市場は見せていましたが、FOMC会合では「年内2回」の見方が示され、さらに今回ボスティック総裁は「年内1回」の可能性を示唆してきました。政策金利を引き下げにくい状況が続くとすれば、ドルをサポートすることになりますが、同時に、高水準に偏っている投機筋の「円買い・ドル売り」ポジションも、何かのきっかけに巻き戻しが起これば、152〜153円程度までドル高が進む可能性もないとは言えません。現時点での日足の「雲の下限」は、153円72銭辺りにあります。

本日のドル円は149円50銭〜151円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
3/24 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「1回にした理由は主に、インフレが非常に不安定になり、2%目標に向かって劇的かつ明確に動くことはないだろうと考えているからだ。その目標達成が遅れているため、政策を中立水準に戻す適切な道筋も遅れざるを得ないと考えている」 --------
3/19 パウエル・FRB議長 (関税性政策によるインフレについて)、「米金融当局が何もせず急速に解消し、一過性のものであるならば、拘泥しないのが適切な場合もある」、「一時的なものになるかどうか、当局として実際のところ分からない」 --------
3/19 トランプ大統領 「米国の関税が経済に移行(緩和!)し始めたら、FRBは金利を引き下げた方がずっといい」 ドル円150円台前半から149円割れまで下落。
3/7 パウエル・FRB議長 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。
3/3 トランプ大統領 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 ドル円は149円台半ばから下落。
2/25 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレ率が当局目標の2%に戻りつつあるとの自信を深めるまで、やや景気抑制的な姿勢を維持することが理にかなっている。いんふれとの闘いは長期化していると認識しているが、われわれが断固たる姿勢を維持することが極めて重要だ」 --------
2/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「インフレ率が2%超にとどまる、ないし上昇するリスクが上方向に傾いているようだ。インフレが停滞するリスクは、労働市場が顕著に軟化するリスクよりも大きい」とし、その上で、「インフレ率が当局目標の2%へと順調に低下してきたことが明確になるまで、やや景気抑制的な金融政策を維持すべきだ」 --------
2/18 ウォラー・FRB理事 「昨年の場合と同様に、冬季の進展休止が一時的なものならば、一段の緩和策が適切になるだろう。しかし、その時期が明確になるまでは金利据え置きは望ましい」 ドル円は151円台から152円台に乗せる。
2/18 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 インフレ抑制の進展について落胆する理由はないと私は考えている。単に望まれているより長い時間がかかるだけだ」、(トランプ政権の政策の影響について)「時間をかけて判断すべきだ」 --------
2/17 ハーカー・フィラデルフィア連総裁 「具体的な時間的見通しは約束しないが、インフレは引き続き鈍化傾向にあり、金利は長期的に引き下げられると楽観している --------
2/17 ボーマン・FRB理事 「フェデラルファンド(FF)金利をより中立的な政策スタンスに近づけるプロセスは、新たな段階に入った。慎重で段階的なアプローチが好ましいと私が考えるのは、いくつか理由がある。現行政策のスタンスを考慮すると。1年前からの株高による金融環境の緩みが、ディスインフレの進行を遅らせたかもしれないと考えている」 --------
2/12 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「より明確に把握できるまでは、金融政策がどこに向かうのか、どのくらいの速度・ペースで進むべきかについて判断を下すことが不可能だ。従ってわれわれは動き出す前に、より多くの情報を入手する必要がある。われわれは十分な情報を得た時点で動くことになるだろう」 --------
2/12 パウエル・FRB議長 「1つや2つの良好なデータに興奮することはない。1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」、「インフレに関しては近いところだが、まだ到達はしていない。昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」 --------
2/11 サマーズ・元財務長官 「1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆しは、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っている。ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意をはらわなければならない」、「現在のサイクルでさらなる利下げ余地はない」 --------
2/11 パウエル・FRB議長 「政策スタンスは景気抑制の度合いが以前より顕著に弱まっており、経済は強さを維持している。よって政策スタンスの調整は急ぐ必要はない」、「政策による景気抑制の度合い低下が速過ぎ、ないし行き過ぎとなれば、インフレ面での進展を妨げる可能性がある。一方で遅過ぎ、または少な過ぎであれば、経済活動と雇用を過度に弱めかねない」、(トランプ政権が進めている関税の強化の不透明感が強まっている景気への影響に関しては)、「われわれは2大責務における両面のリスクに注意を払っている。政権はわれわれが直面するリスクと不確実性に対処する上で良い態勢にある」・・・・(上院議会証言で) --------
2/7 クーグラー・FRB理事 「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」 --------
2/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 --------
2/5 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 --------
2/4 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 --------
2/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 --------
2/3 コリンズ・ボストン連銀総裁 (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和