「米3月のCB消費者マインド大きく低下」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は反落。東京時間には150円95銭前後まで買われたドル円だったが、NYでは消費者マインドが大きく低下し、米金利が下がったことで149円55銭まで売られる。
- ユーロドルは小幅に反発。ドイツの経済指標が持ち直したことやドル安がユーロを支えた。
- 株式市場では3指数が小幅ながら3日続伸。ダウはほぼ横ばいで、ナスダックは83ポイント上昇。
- 債券は反落。長期金利は4.31%台に低下。
- 金は3日ぶりに反発し、原油は反落。
1月ケース・シラ−住宅価格指数 → 4.67%
1月FHFA住宅価格指数 → 0.2%
2月新築住宅販売件数 → 67.6万件
3月コンファレンスボード消費者信頼感指数 → 92.9
3月リッチモンド連銀製造業景況指数 → −4
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ドル/円 | 149.55 〜 150.17 |
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ユーロ/ドル | 1.0790 〜 1.0830 |
ユーロ/円 | 161.61 〜 162.47 |
NYダウ | +4.18 → 42,587.50 |
GOLD | +10.30 → 3,025.90ドル |
WTI | −0.11 → 69.00ドル |
米10年国債 | −0.021 → 4.313% |
本日の注目イベント
- 豪 豪2月消費者物価指数
- 日 1月景気先行指数(CI)(改定値)
- 日 1月景気一致指数(改定値)
- 英 英2月消費者物価指数
- 米 2月耐久財受注
- 米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、イベントを主催
- 米 ムサレム・セントルイス連銀総裁講演
本日のコメント
ドル円は昨日の東京時間に150円95銭近辺まで買われましたが、151円台乗せには失敗。NYではコンファレンスボード(CB)が発表した3月の消費者マインドが「92.9」と、2021年1月以来の低水準に落ち込んだことで米金利が低下し、ドル円は149円台半ばまで押し戻されました。同指数は2月が「98.3」の速報値から「100.1」へと上方修正されたこともあり、3月の同指数の落ち込みがサプライズでした。さらに今後6カ月の見通しを示す「期待指数」は10ポイント近く低下し、「65.2」でした。こちらは12年ぶりの低水準となります。トランプ大統領の関税政策を巡り、物価上昇や経済の先行きに対する懸念が消費者の間で広がっていることが浮き彫りになりました。「トランプ氏の関税によるインフレ再燃への懸念から同指数や、ミシガン大学消費者マインドは悪化傾向が鮮明になっている。企業は価格上昇と需要減退を警告しており、スタグフレーションとリセッションの可能性が高まっているとのエコノミスト予想と一致している」と、ブルームバーグは報じていました。
ホワイトハウスは声明で、「サウジアラビアでの3日間に及ぶロシア、ウクライナとの実務者協議で『黒海の安全な航行を確保する』合意が生まれた」と発表しました。協議ではロシア側が米国の望む全面的停戦を受け入れませんでしたが、エネルギー・インフラへの攻撃禁止を履行するメカニズムと上記案には合意に至っています。ウクライナのゼレンスキー大統領は、部分停戦を即時で履行すると発表しましたが、ロシア側は、黒海の安全な航行について合意があったことを確認したものの、「その履行は農業製品輸出に関連する銀行や企業の制裁緩和が条件になる」とクギを刺していました。
FRBのクーグラー理事は25日ワシントンでの講演で、「ここ数カ月に財のインフレが加速傾向にあるほか、ミシガン大学の調査データで短期・長期両方のインフレ期待が高まっている。トランプ大統領は貿易相手国に対して新たな関税を導入しているほか、さらなる関税を示唆しており、経済を巡る不確実性は強まっている」とした上で、「政策金利をしばらくの間、据え置くことを支持する」と述べています。ここでの「しばらく」がどの程度の期間になるのかには言及していませんが、前日のアトランタ連銀のボスティック総裁が「今年の利下げ回数は2回ではなく、1回にとどまる公算が大きいと見ている」と述べていたことと合致しています。今後もFOMCメンバーによる講演が多く予定されていると思われますが、いずれのメンバーの発言には、やはり「トランプ関税の不確実性」が大きな比重を占めていると予想されます。
ドル円は150円台を回復したものの、151円台テストには失敗し、NYではこの日の高値から1円40銭程押し戻されました。やや大きな値幅でしたので、短期な上昇パターンを示すチャートはやや形状を崩しています。筆者は、先週前半辺りまでは「145−150円のレンジ内では、先ず145円テストが先になる可能性が高い」と予想していましたが、外してしまいました。それまで売られていた日米の株価が急速に上昇に転じ、「リスク回避」の流れが後退したことや、米長期金利も下げ止まったことが背景でした。ドルはやや底堅さは見せているものの、このまま上昇傾向を維持出来るのかは予断を許しません。4月2日の「米国の解放の日」に、どのような内容が示されるのかが、カギを握っています。
本日のドル円は149円〜151円程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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3/25 | クーグラー・FRB理事 | 「ここ数カ月に財のインフレが加速傾向にあるほか、」ミシガン大学の調査データで短期・長期両方のインフレ期待が高まっている。トランプ大統領は貿易相手国に対して新たな関税を導入しているほか、さらなる関税を示唆しており、経済を巡る不確実性は強まっている」、「政策金利をしばらくの間、据え置くことを支持する」 | -------- |
3/24 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「1回にした理由は主に、インフレが非常に不安定になり、2%目標に向かって劇的かつ明確に動くことはないだろうと考えているからだ。その目標達成が遅れているため、政策を中立水準に戻す適切な道筋も遅れざるを得ないと考えている」 | -------- |
3/19 | パウエル・FRB議長 | (関税性政策によるインフレについて)、「米金融当局が何もせず急速に解消し、一過性のものであるならば、拘泥しないのが適切な場合もある」、「一時的なものになるかどうか、当局として実際のところ分からない」 | -------- |
3/19 | トランプ大統領 | 「米国の関税が経済に移行(緩和!)し始めたら、FRBは金利を引き下げた方がずっといい」 | ドル円150円台前半から149円割れまで下落。 |
3/7 | パウエル・FRB議長 | 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 | 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。 |
3/3 | トランプ大統領 | 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 | ドル円は149円台半ばから下落。 |
2/25 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「インフレ率が当局目標の2%に戻りつつあるとの自信を深めるまで、やや景気抑制的な姿勢を維持することが理にかなっている。いんふれとの闘いは長期化していると認識しているが、われわれが断固たる姿勢を維持することが極めて重要だ」 | -------- |
2/20 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「インフレ率が2%超にとどまる、ないし上昇するリスクが上方向に傾いているようだ。インフレが停滞するリスクは、労働市場が顕著に軟化するリスクよりも大きい」とし、その上で、「インフレ率が当局目標の2%へと順調に低下してきたことが明確になるまで、やや景気抑制的な金融政策を維持すべきだ」 | -------- |
2/18 | ウォラー・FRB理事 | 「昨年の場合と同様に、冬季の進展休止が一時的なものならば、一段の緩和策が適切になるだろう。しかし、その時期が明確になるまでは金利据え置きは望ましい」 | ドル円は151円台から152円台に乗せる。 |
2/18 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | インフレ抑制の進展について落胆する理由はないと私は考えている。単に望まれているより長い時間がかかるだけだ」、(トランプ政権の政策の影響について)「時間をかけて判断すべきだ」 | -------- |
2/17 | ハーカー・フィラデルフィア連総裁 | 「具体的な時間的見通しは約束しないが、インフレは引き続き鈍化傾向にあり、金利は長期的に引き下げられると楽観している | -------- |
2/17 | ボーマン・FRB理事 | 「フェデラルファンド(FF)金利をより中立的な政策スタンスに近づけるプロセスは、新たな段階に入った。慎重で段階的なアプローチが好ましいと私が考えるのは、いくつか理由がある。現行政策のスタンスを考慮すると。1年前からの株高による金融環境の緩みが、ディスインフレの進行を遅らせたかもしれないと考えている」 | -------- |
2/12 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「より明確に把握できるまでは、金融政策がどこに向かうのか、どのくらいの速度・ペースで進むべきかについて判断を下すことが不可能だ。従ってわれわれは動き出す前に、より多くの情報を入手する必要がある。われわれは十分な情報を得た時点で動くことになるだろう」 | -------- |
2/12 | パウエル・FRB議長 | 「1つや2つの良好なデータに興奮することはない。1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」、「インフレに関しては近いところだが、まだ到達はしていない。昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」 | -------- |
2/11 | サマーズ・元財務長官 | 「1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆しは、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っている。ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意をはらわなければならない」、「現在のサイクルでさらなる利下げ余地はない」 | -------- |
2/11 | パウエル・FRB議長 | 「政策スタンスは景気抑制の度合いが以前より顕著に弱まっており、経済は強さを維持している。よって政策スタンスの調整は急ぐ必要はない」、「政策による景気抑制の度合い低下が速過ぎ、ないし行き過ぎとなれば、インフレ面での進展を妨げる可能性がある。一方で遅過ぎ、または少な過ぎであれば、経済活動と雇用を過度に弱めかねない」、(トランプ政権が進めている関税の強化の不透明感が強まっている景気への影響に関しては)、「われわれは2大責務における両面のリスクに注意を払っている。政権はわれわれが直面するリスクと不確実性に対処する上で良い態勢にある」・・・・(上院議会証言で) | -------- |
2/7 | クーグラー・FRB理事 | 「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」 | -------- |
2/5 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 | -------- |
2/5 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 | -------- |
2/4 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 | -------- |
2/3 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 | -------- |
2/3 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書