今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円は150円台後半から反落」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は150円台後半から反落。米インフレ懸念が強まり株式市場が大きく売られたことで、ドル円は149円65銭まで下落。
  • ユーロドルは小幅に続伸。
  • 株式市場では経済指標の結果がインフレの再燃と景気の悪化を示唆したことで3指数が大幅安。S&P500は今年2番目の下げを記録。
  • 債券は大きく買われ、長期金利は4.24%台に急低下。
  • 金は続伸し3100ドル台に。原油は反落。
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2月個人所得 → 0.8%
2月個人支出 → 0.4%
2月PCEデフレータ(前月比) → 0.3%
2月PCEデフレータ(前年比) → 2.5%
2月PCEコアデフレータ(前月比) → 0.4%
2月PCEコアデフレータ(前年比) → 2.8%
3月ミシガン大学消費者マインド(確定値) → 57.0
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ドル/円 149.65 〜 150.95
ユーロ/ドル 1.0765 〜 1.0844
ユーロ/円 162.05 〜 162.93
NYダウ −715.80 → 41,583.00
GOLD +23.40 → 3,114.30ドル
WTI −0.56 → 69.36ドル
米10年国債 −0.11 → 4.249%

本日の注目イベント

  • 日 2月鉱工業生産
  • 中 3月中国製造業PMI
  • 中 3月中国サービス業PMI
  • 独 独2月輸入物価指数
  • 独 独2月小売売上高
  • 独 独3月消費者物価指数(速報値)
  • 英 英2月消費者信用残高
  • 米 3月シカゴ購買部協会景気指数

本日のコメント

2月の個人消費支出(PCE)統計では、FRBが重視するコア価格指数が市場予想の「2.7%」を上回る「2.8%」でした。(いずれも前年同月比)引き続きインフレの粘着性が意識されたうえ、同日に発表されたミシガン大学消費者マインドの改定値は「57.0」に下方修正され、こちらはおよそ2年ぶりの低水準でした。景気が後退する中、物価が上昇する「スタグフレーション」懸念が高まり、NY株式市場では主要3指数が大きく売られ、この日は債券が買われたため長期金利が低下し、前日151円台を示現したドル円は149円台半ばまで売られました。

カナダのカーニー首相は27日、「米国がもはや信頼できるパートナーでないことは明らかで、包括的な交渉で部分的な信頼回復は可能かもしれないが、後戻りは出来ない。次期政権以降の対米関係は根本的に異なるものになるだろう」と、これまでの米国との友好関係から決別する考えを示し、「われわれは引き下がらない。力強く対応する。わが国と労働者を守るため、いかなる選択肢も排除しない」と表明していました。カーニー氏は先に、「米国とカナダとの経済規模を考えたら、カナダが出来ることは限られる」と、経済学者らしく冷静な分析を行い、その上で、「米国に最大のダメージを与えるとともに、カナダには最少のダメージになるような方法を取る」と述べていました。同首相はその後28日にはトランプ大統領と電話で協議しましたが、改めて4月下旬に行われるカナダの総選挙後に会談を行うことで合意しています。

相変わらずトランプ氏の言動が話題になります。トランプ氏はNBCとのインタビューで、「私は頭にきた。ディールが成立しなければ、そしてそれがロシアのせいであると私が考えれば、二次的な制裁を加えるつもりだ」と述べています。これは、プーチン氏が最近の発言でウクライナのゼレンスキー大統領を排除し、新たな指導者を置くやり方を示唆したことに対しての発言かと思われます。今週2日(水曜日)には、トランプ氏が計画している「相互関税」が発動されます。関税の内容や適用品目は国によって異なるようですが、上記カナダを始め、EU、ブラジルなどは報復措置を取る構えです。ブラジルのルラ大統領は「WTOに提訴して、米国製品に高関税を課す」と述べており、EUは4月中旬にも報復関税を発動する予定です。このように考えると、日本の対応は極めて甘いと言えます。経済産業大臣などが、日本に対しては適用を除外するよう「お願い」するのみで、今のところ報復措置は考えていない模様です。その「お願い」も目下のところ門前払いの様相で、トランプ政権は例外を認めない姿勢です。30日に来日したヘグセス米防衛長官は中谷防衛大臣と会談しましたが、その後の会見で、日本に防衛費の増額を求めたのかとの質問には、「日本が必要な能力について正しい判断をするだろう」と答え、具体的に増額を要求しないまでも、暗に圧力を掛けられていました。今回の政権では、同盟国の日本でさえも「アメリカ・ファースト」の下、手を緩めることはないということのようです。中谷防衛大臣は、「米国の理解は得られた」と、やや曖昧な会見を行っていました。

本日のドル円は148円50銭〜150円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
3/27 IMF 「大規模な政策転換が発表されており、最新のデータでは経済活動が2024年の非常に強いペースから減速していることが示唆されている。ただし、リセッションはわれわれの基本シナリオには含まれていない」 --------
3/27 コリンズ・ボストン連銀総裁 「関税が短期的にインフレ率を押し上げるのは『不可避』と見受けられる」、「金利据え置きの長期化が適切になる公算が大きい」、「一段と広範にわたる関税賦課やそれに対する報復措置が講じられる状況では特に、インフレ期待が重要になる」 --------
3/26 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「向こう1,2年でインフレが低下して労働市場が引き続き堅調なら、金利をさらに引き下げることができるはずだ。住宅ローン金利に一定の効果があるだろう」、「このところの信頼感低下は関税を巡る不確実性を反映している面が大きい」 --------
3/26 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「関税による影響が一時的なものにとどまるかどうかは不透明だ。その二次的影響によって金融当局が金利をより長期にわたって据え置く可能性がある」 --------
3/25 クーグラー・FRB理事 「ここ数カ月に財のインフレが加速傾向にあるほか、」ミシガン大学の調査データで短期・長期両方のインフレ期待が高まっている。トランプ大統領は貿易相手国に対して新たな関税を導入しているほか、さらなる関税を示唆しており、経済を巡る不確実性は強まっている」、「政策金利をしばらくの間、据え置くことを支持する」 --------
3/24 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「1回にした理由は主に、インフレが非常に不安定になり、2%目標に向かって劇的かつ明確に動くことはないだろうと考えているからだ。その目標達成が遅れているため、政策を中立水準に戻す適切な道筋も遅れざるを得ないと考えている」 --------
3/19 パウエル・FRB議長 (関税性政策によるインフレについて)、「米金融当局が何もせず急速に解消し、一過性のものであるならば、拘泥しないのが適切な場合もある」、「一時的なものになるかどうか、当局として実際のところ分からない」 --------
3/19 トランプ大統領 「米国の関税が経済に移行(緩和!)し始めたら、FRBは金利を引き下げた方がずっといい」 ドル円150円台前半から149円割れまで下落。
3/7 パウエル・FRB議長 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。
3/3 トランプ大統領 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 ドル円は149円台半ばから下落。
2/25 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレ率が当局目標の2%に戻りつつあるとの自信を深めるまで、やや景気抑制的な姿勢を維持することが理にかなっている。いんふれとの闘いは長期化していると認識しているが、われわれが断固たる姿勢を維持することが極めて重要だ」 --------
2/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「インフレ率が2%超にとどまる、ないし上昇するリスクが上方向に傾いているようだ。インフレが停滞するリスクは、労働市場が顕著に軟化するリスクよりも大きい」とし、その上で、「インフレ率が当局目標の2%へと順調に低下してきたことが明確になるまで、やや景気抑制的な金融政策を維持すべきだ」 --------
2/18 ウォラー・FRB理事 「昨年の場合と同様に、冬季の進展休止が一時的なものならば、一段の緩和策が適切になるだろう。しかし、その時期が明確になるまでは金利据え置きは望ましい」 ドル円は151円台から152円台に乗せる。
2/18 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 インフレ抑制の進展について落胆する理由はないと私は考えている。単に望まれているより長い時間がかかるだけだ」、(トランプ政権の政策の影響について)「時間をかけて判断すべきだ」 --------
2/17 ハーカー・フィラデルフィア連総裁 「具体的な時間的見通しは約束しないが、インフレは引き続き鈍化傾向にあり、金利は長期的に引き下げられると楽観している --------
2/17 ボーマン・FRB理事 「フェデラルファンド(FF)金利をより中立的な政策スタンスに近づけるプロセスは、新たな段階に入った。慎重で段階的なアプローチが好ましいと私が考えるのは、いくつか理由がある。現行政策のスタンスを考慮すると。1年前からの株高による金融環境の緩みが、ディスインフレの進行を遅らせたかもしれないと考えている」 --------
2/12 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「より明確に把握できるまでは、金融政策がどこに向かうのか、どのくらいの速度・ペースで進むべきかについて判断を下すことが不可能だ。従ってわれわれは動き出す前に、より多くの情報を入手する必要がある。われわれは十分な情報を得た時点で動くことになるだろう」 --------
2/12 パウエル・FRB議長 「1つや2つの良好なデータに興奮することはない。1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」、「インフレに関しては近いところだが、まだ到達はしていない。昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」 --------
2/11 サマーズ・元財務長官 「1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆しは、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っている。ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意をはらわなければならない」、「現在のサイクルでさらなる利下げ余地はない」 --------
2/11 パウエル・FRB議長 「政策スタンスは景気抑制の度合いが以前より顕著に弱まっており、経済は強さを維持している。よって政策スタンスの調整は急ぐ必要はない」、「政策による景気抑制の度合い低下が速過ぎ、ないし行き過ぎとなれば、インフレ面での進展を妨げる可能性がある。一方で遅過ぎ、または少な過ぎであれば、経済活動と雇用を過度に弱めかねない」、(トランプ政権が進めている関税の強化の不透明感が強まっている景気への影響に関しては)、「われわれは2大責務における両面のリスクに注意を払っている。政権はわれわれが直面するリスクと不確実性に対処する上で良い態勢にある」・・・・(上院議会証言で) --------
2/7 クーグラー・FRB理事 「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」 --------
2/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 --------
2/5 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 --------
2/4 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 --------
2/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 --------
2/3 コリンズ・ボストン連銀総裁 (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和