今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「相互関税は例外なしか?」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円はボラティリティーが高まり、昨日の東京では株価の大幅下落を受け148円70銭前後まで下落。しかしNYでは、シカゴPMIが予想を上回ったことで150円台前半まで反発するなど、トランプ関税発動を前に乱高下。
  • ユーロドルはやや水準を切り下げたが、前日とほぼ同水準で推移。
  • 株式市場は下げ止まったものの、3指数はまちまちの展開。ダウは400ドルを超える上昇を見せたが、ナスダックは小幅安。
  • 長期債は買われ、長期金利は4.20%台に低下。
  • 金は続伸。原油も反発。
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3月シカゴ購買部協会景気指数 → 47.6
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ドル/円 149.38 〜 150.25
ユーロ/ドル 1.0784 〜 1.0821
ユーロ/円 161.40 〜 162.49
NYダウ +417.86 → 42,001.76
GOLD +36.00 → 3,150.30ドル
WTI +2.12 → 71.48ドル
米10年国債 −0.044 → 4.205%

本日の注目イベント

  • 豪 豪2月小売売上高
  • 豪 RBA、キャッシュターゲット
  • 日 2月失業率
  • 日 1ー3月期日銀短観・大企業非製造業業況判断
  • 中 3月財新製造業PMI
  • 独 独3月製造業PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏3月製造業PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏3月消費者物価指数(速報値)
  • 欧 ユーロ圏月失業率
  • 欧 ラガルド・ECB総裁、会議で開会の挨拶
  • 米 3月ISM製造業景況指数
  • 米 3月S&Pグローバル製造業PMI(改定値)
  • 米 2月雇用動態調査(JOLTS)求人件数

本日のコメント

トランプ大統領が4月2日発表の関税について、一貫性のない発言を行っていることで、投資家は厳しい対応を迫られています。今朝のブルームバーグは「関税疲れ」といったヘッドラインで、「現在の市場環境を一言で表現するのなら、『いら立ちと疲労』だ。どう動けばいいのか、明確な指針がない」といった意見を紹介しています。

昨日の日経平均株価は1500円を超える下げで、1日としては今年最大の下落に見舞われ、予想通りドル円は「リスク回避」の円買いが強まりました。149円台を割り込み、夕方には148円70銭辺りまでドルが売られました。「トランプ関税」の影響で世界的に景気が悪化するとの見方から、自動車や半導体などを中心にほぼ全面安の展開でした。トランプ氏は30日、大統領専用機の中で、「相互関税」は全ての国々を対象に開始を計画していると述べていました。日経新聞は今朝の報道で、「相互関税」が全ての国を対象に実施された場合、世界全体で110兆円を超えるGDPが消失するとの試算があることを紹介しています。日本貿易振興機構(ジェトロ)はこの結果、世界にどの程度の影響が出るのか分析した結果を公表しました。最もGDPを押し下げられるのは米国自身で、「−2.5%」、次いで中国の「−0.9%」で、日本は「+0.2%」でした。世界全体では「−0.6%」ですから、結局「トランプ関税」のツケを払うのは、「最終的には米国の消費者だ」と記されています。トランプ氏はこのような影響を理解しているのでしょうか。

昨日の報道にもあったように、トランプ氏は現行の米国憲法では2期目までと規定している大統領の任期を「3期目も可能だ。その方法もある。ジョークではない」といった趣旨の発言を行っていました。今の任期を終える時点では82歳になるトランプ氏ですが、3期目について「たくさんの人々がそう望んでいる」と話していました。どのような方法があるのか具体的には触れていませんでしたが、こうなると最早「独裁者」の様相を帯びていると言えるのではないでしょうか。このツケも結局、米国民に跳ね返ってくるのでしょう。「たくさんの人々がそう望んでいる」のかもしれませんが、「それ以上たくさんの人々がそう望んでいない」のも事実です。

NY連銀のウイリアムズ総裁はヤフー・ファイナンスとのインタビューで、「FOMC参加者の間では、インフレ見通しに上振れリスクがあるとの極めて幅広い見方が示された。それは私の個人的見解とも完全に一致している」と話し、その上で、「今後実施される関税などの政策に大きく左右され得る上振れリスクがあることは確かだ。関税が経済に与える影響はまだ明らかではない。最新のデータを注視していく」と述べていました。また、リッチモンド連銀のバーキン総裁は、「インフレは落ち着いた水準へと実際に鈍化していることから、そうした確信は得られる可能性が高い」と、やや楽観的な見方を示しています。ただ、トランプ氏の関税政策について、「政策判断への影響は、当局者らの見通しがより明確になるには時間がかかる」と話しています

足元のドル円は一進一退の動きですが、どちらかと言えば底堅く、上方に行きたがっているように感じます。米株価がどこまで売られるのかも、大きなポイントになります。

本日のドル円は149円〜151円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
3/31 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレは落ち着いた水準へと実際に鈍化していることから、そうした確信は得られる可能性が高い」、(トランプ氏の関税政策について)、「政策判断への影響は、当局者らの見通しがより明確になるには時間がかかる」 --------
3/31 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「FOMC参加者の間では、インフレ見通しに上振れリスクがあるとの極めて幅広い見方が示された。それは私の個人的見解とも完全に一致している」、「今後実施される関税などの政策に大きく左右され得る上振れリスクがあることは確かだ。関税が経済に与える影響はまだ明らかではない。最新のデータを注視していく」 --------
3/27 IMF 「大規模な政策転換が発表されており、最新のデータでは経済活動が2024年の非常に強いペースから減速していることが示唆されている。ただし、リセッションはわれわれの基本シナリオには含まれていない」 --------
3/27 コリンズ・ボストン連銀総裁 「関税が短期的にインフレ率を押し上げるのは『不可避』と見受けられる」、「金利据え置きの長期化が適切になる公算が大きい」、「一段と広範にわたる関税賦課やそれに対する報復措置が講じられる状況では特に、インフレ期待が重要になる」 --------
3/26 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「向こう1,2年でインフレが低下して労働市場が引き続き堅調なら、金利をさらに引き下げることができるはずだ。住宅ローン金利に一定の効果があるだろう」、「このところの信頼感低下は関税を巡る不確実性を反映している面が大きい」 --------
3/26 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「関税による影響が一時的なものにとどまるかどうかは不透明だ。その二次的影響によって金融当局が金利をより長期にわたって据え置く可能性がある」 --------
3/25 クーグラー・FRB理事 「ここ数カ月に財のインフレが加速傾向にあるほか、」ミシガン大学の調査データで短期・長期両方のインフレ期待が高まっている。トランプ大統領は貿易相手国に対して新たな関税を導入しているほか、さらなる関税を示唆しており、経済を巡る不確実性は強まっている」、「政策金利をしばらくの間、据え置くことを支持する」 --------
3/24 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「1回にした理由は主に、インフレが非常に不安定になり、2%目標に向かって劇的かつ明確に動くことはないだろうと考えているからだ。その目標達成が遅れているため、政策を中立水準に戻す適切な道筋も遅れざるを得ないと考えている」 --------
3/19 パウエル・FRB議長 (関税性政策によるインフレについて)、「米金融当局が何もせず急速に解消し、一過性のものであるならば、拘泥しないのが適切な場合もある」、「一時的なものになるかどうか、当局として実際のところ分からない」 --------
3/19 トランプ大統領 「米国の関税が経済に移行(緩和!)し始めたら、FRBは金利を引き下げた方がずっといい」 ドル円150円台前半から149円割れまで下落。
3/7 パウエル・FRB議長 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。
3/3 トランプ大統領 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 ドル円は149円台半ばから下落。
2/25 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレ率が当局目標の2%に戻りつつあるとの自信を深めるまで、やや景気抑制的な姿勢を維持することが理にかなっている。いんふれとの闘いは長期化していると認識しているが、われわれが断固たる姿勢を維持することが極めて重要だ」 --------
2/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「インフレ率が2%超にとどまる、ないし上昇するリスクが上方向に傾いているようだ。インフレが停滞するリスクは、労働市場が顕著に軟化するリスクよりも大きい」とし、その上で、「インフレ率が当局目標の2%へと順調に低下してきたことが明確になるまで、やや景気抑制的な金融政策を維持すべきだ」 --------
2/18 ウォラー・FRB理事 「昨年の場合と同様に、冬季の進展休止が一時的なものならば、一段の緩和策が適切になるだろう。しかし、その時期が明確になるまでは金利据え置きは望ましい」 ドル円は151円台から152円台に乗せる。
2/18 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 インフレ抑制の進展について落胆する理由はないと私は考えている。単に望まれているより長い時間がかかるだけだ」、(トランプ政権の政策の影響について)「時間をかけて判断すべきだ」 --------
2/17 ハーカー・フィラデルフィア連総裁 「具体的な時間的見通しは約束しないが、インフレは引き続き鈍化傾向にあり、金利は長期的に引き下げられると楽観している --------
2/17 ボーマン・FRB理事 「フェデラルファンド(FF)金利をより中立的な政策スタンスに近づけるプロセスは、新たな段階に入った。慎重で段階的なアプローチが好ましいと私が考えるのは、いくつか理由がある。現行政策のスタンスを考慮すると。1年前からの株高による金融環境の緩みが、ディスインフレの進行を遅らせたかもしれないと考えている」 --------
2/12 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「より明確に把握できるまでは、金融政策がどこに向かうのか、どのくらいの速度・ペースで進むべきかについて判断を下すことが不可能だ。従ってわれわれは動き出す前に、より多くの情報を入手する必要がある。われわれは十分な情報を得た時点で動くことになるだろう」 --------
2/12 パウエル・FRB議長 「1つや2つの良好なデータに興奮することはない。1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」、「インフレに関しては近いところだが、まだ到達はしていない。昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」 --------
2/11 サマーズ・元財務長官 「1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆しは、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っている。ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意をはらわなければならない」、「現在のサイクルでさらなる利下げ余地はない」 --------
2/11 パウエル・FRB議長 「政策スタンスは景気抑制の度合いが以前より顕著に弱まっており、経済は強さを維持している。よって政策スタンスの調整は急ぐ必要はない」、「政策による景気抑制の度合い低下が速過ぎ、ないし行き過ぎとなれば、インフレ面での進展を妨げる可能性がある。一方で遅過ぎ、または少な過ぎであれば、経済活動と雇用を過度に弱めかねない」、(トランプ政権が進めている関税の強化の不透明感が強まっている景気への影響に関しては)、「われわれは2大責務における両面のリスクに注意を払っている。政権はわれわれが直面するリスクと不確実性に対処する上で良い態勢にある」・・・・(上院議会証言で) --------
2/7 クーグラー・FRB理事 「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」 --------
2/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 --------
2/5 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 --------
2/4 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 --------
2/3 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 --------
2/3 コリンズ・ボストン連銀総裁 (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和