「相互関税発動前夜」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円はISM製造業景況指数が予想を下回り、米長期金利が低下したことで一時は149円を割り込む。その後は買い戻され149円台後半まで上昇。
- ユーロドルは小動きの中、1.08を挟んでもみ合う。
- 株式市場では前日買われたダウが下げたものの、他の2指数は小幅に上昇。「相互関税」発動を前に神経質な展開。
- 債券は3日続伸。長期金利はおよそ1カ月ぶりに4.16%台に。
- 金は4日ぶりに反落。原油も売られる。
3月ISM製造業景況指数 → 49.0
3月S&Pグローバル製造業PMI(改定値) → 50.2
2月雇用動態調査(JOLTS)求人件数 → 7568千件
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ドル/円 | 148.98 〜 149.73 |
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ユーロ/ドル | 1.0780 〜 1.0812 |
ユーロ/円 | 160.84 〜 161.66 |
NYダウ | −11.80 → 41,989.96 |
GOLD | −4.30 → 3,146.00ドル |
WTI | −0.28 → 71.20ドル |
米10年国債 | −0.036 → 4.169% |
本日の注目イベント
- 豪 豪2月住宅建設許可件数
- 米 3月ADP雇用者数
- 米 2月製造業受注
- 米 米、相互関税を賦課
本日のコメント
トランプ大統領が導入を予定している大規模な関税措置は、予定通り2日に発動される見通しです。ホワイトハウスのレビット報道官は「私の理解では、関税の発表は明日行われ、即時発動される見通しだ」と語っていました。さらにレビット氏は、警戒が高まっている金融市場については、「トランプ大統領の一期目と同じ様に、ウォール街は大丈夫だ」と述べ、政権の顧問らが関税の影響を見誤り、米経済に打撃を与える可能性についても、「彼らが間違うことはない。大統領に何十年にもわたりこの問題を研究してきた優秀なアドバイザー陣がついている」と言明していました。(ブルームバーグ)
関税発動を前に幾つかの動きが見られました。EUのフォンデアライエン委員長は欧州議会での演説で「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」と発言していました。フォンデアライエン氏は、基本的には「交渉による解決を目指す」としていますが、トランプ氏がEUからの自動車、鉄鋼、アルミニウムに対して25%の関税をかけるとみられることで、EUもすでに、最大260億ユーロ(約4兆2000億円)相当の米国製品に対する対抗措置を準備しています。また、カナダのカーニー首相は、メキシコのシェインバウム大統領と電話会談を行い、両氏は二国間の強固な貿易・投資関係をさらに発展させる重要性について協議したと伝えられています。米国内では、ブッカー上院議員が抗議の「マラソン演説」を行っており、現在も続いている模様です。ブッカー氏は3月31日の午後7時ごろから上院で演説を行い、トランプ政権の医療ケアと移民、国家安全保障などさまざまな政策について痛烈な批判を展開している模様です。「肉体が許す限り、上院の通常業務を混乱させる意図を持って私は立ち上がった。明日の夜まで持ちそうだ。私の足が耐えてくれれば」と、話しているそうです。
さらに注目されるのが、フロリダ州の下院補欠選挙の行方です。フロリダ州は、トランプ氏の豪邸「マールアラーゴ」があり、いわばトランプ氏の牙城です。ここで1日に補欠選挙が行われ、共和党候補と民主党候補が争っています。昨年11月の大統領選でもトランプ共和党が圧勝した地域ですが、補欠選では接戦のようです。フロリダ州のデサンティス知事は、「本来なら楽勝のはずの選挙を、接戦にしてしまった」と、トランプ氏を批判しているようです。ブルームバーグは、「今回の補欠選は、関税や移民に関するトランプ氏の政策、さらにはイーロン・マスク氏による連邦行政改革に対して、有権者がどのような審判を下すのか、初の試金石となりそうだ」と論評しています。先週の調査では、5ポイント未満の差で共和党候補がリードしていました。
米長期金利は昨日の債券市場で一時4.13%台まで低下し、約1カ月ぶりの低水準を付けました。本来なら、株が買われ、ドルが売られる動きが想定されますが、実際にはその逆に近い動きでした。「トランプ関税」が実施され、インフレが進むことを織り込む動きと、取れないこともありません。今朝はほぼ「トランプ関税に」関連する内容のみになってしまいましたが、発動後の各国の報復措置の内容も注目されます。
本日のドル円は148円50銭〜151円程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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4/1 | フォンデアライエン・欧州委員長 | 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 | -------- |
3/31 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「インフレは落ち着いた水準へと実際に鈍化していることから、そうした確信は得られる可能性が高い」、(トランプ氏の関税政策について)、「政策判断への影響は、当局者らの見通しがより明確になるには時間がかかる」 | -------- |
3/31 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「FOMC参加者の間では、インフレ見通しに上振れリスクがあるとの極めて幅広い見方が示された。それは私の個人的見解とも完全に一致している」、「今後実施される関税などの政策に大きく左右され得る上振れリスクがあることは確かだ。関税が経済に与える影響はまだ明らかではない。最新のデータを注視していく」 | -------- |
3/27 | IMF | 「大規模な政策転換が発表されており、最新のデータでは経済活動が2024年の非常に強いペースから減速していることが示唆されている。ただし、リセッションはわれわれの基本シナリオには含まれていない」 | -------- |
3/27 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 「関税が短期的にインフレ率を押し上げるのは『不可避』と見受けられる」、「金利据え置きの長期化が適切になる公算が大きい」、「一段と広範にわたる関税賦課やそれに対する報復措置が講じられる状況では特に、インフレ期待が重要になる」 | -------- |
3/26 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「向こう1,2年でインフレが低下して労働市場が引き続き堅調なら、金利をさらに引き下げることができるはずだ。住宅ローン金利に一定の効果があるだろう」、「このところの信頼感低下は関税を巡る不確実性を反映している面が大きい」 | -------- |
3/26 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「関税による影響が一時的なものにとどまるかどうかは不透明だ。その二次的影響によって金融当局が金利をより長期にわたって据え置く可能性がある」 | -------- |
3/25 | クーグラー・FRB理事 | 「ここ数カ月に財のインフレが加速傾向にあるほか、」ミシガン大学の調査データで短期・長期両方のインフレ期待が高まっている。トランプ大統領は貿易相手国に対して新たな関税を導入しているほか、さらなる関税を示唆しており、経済を巡る不確実性は強まっている」、「政策金利をしばらくの間、据え置くことを支持する」 | -------- |
3/24 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「1回にした理由は主に、インフレが非常に不安定になり、2%目標に向かって劇的かつ明確に動くことはないだろうと考えているからだ。その目標達成が遅れているため、政策を中立水準に戻す適切な道筋も遅れざるを得ないと考えている」 | -------- |
3/19 | パウエル・FRB議長 | (関税性政策によるインフレについて)、「米金融当局が何もせず急速に解消し、一過性のものであるならば、拘泥しないのが適切な場合もある」、「一時的なものになるかどうか、当局として実際のところ分からない」 | -------- |
3/19 | トランプ大統領 | 「米国の関税が経済に移行(緩和!)し始めたら、FRBは金利を引き下げた方がずっといい」 | ドル円150円台前半から149円割れまで下落。 |
3/7 | パウエル・FRB議長 | 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 | 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。 |
3/3 | トランプ大統領 | 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 | ドル円は149円台半ばから下落。 |
2/25 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「インフレ率が当局目標の2%に戻りつつあるとの自信を深めるまで、やや景気抑制的な姿勢を維持することが理にかなっている。いんふれとの闘いは長期化していると認識しているが、われわれが断固たる姿勢を維持することが極めて重要だ」 | -------- |
2/20 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「インフレ率が2%超にとどまる、ないし上昇するリスクが上方向に傾いているようだ。インフレが停滞するリスクは、労働市場が顕著に軟化するリスクよりも大きい」とし、その上で、「インフレ率が当局目標の2%へと順調に低下してきたことが明確になるまで、やや景気抑制的な金融政策を維持すべきだ」 | -------- |
2/18 | ウォラー・FRB理事 | 「昨年の場合と同様に、冬季の進展休止が一時的なものならば、一段の緩和策が適切になるだろう。しかし、その時期が明確になるまでは金利据え置きは望ましい」 | ドル円は151円台から152円台に乗せる。 |
2/18 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | インフレ抑制の進展について落胆する理由はないと私は考えている。単に望まれているより長い時間がかかるだけだ」、(トランプ政権の政策の影響について)「時間をかけて判断すべきだ」 | -------- |
2/17 | ハーカー・フィラデルフィア連総裁 | 「具体的な時間的見通しは約束しないが、インフレは引き続き鈍化傾向にあり、金利は長期的に引き下げられると楽観している | -------- |
2/17 | ボーマン・FRB理事 | 「フェデラルファンド(FF)金利をより中立的な政策スタンスに近づけるプロセスは、新たな段階に入った。慎重で段階的なアプローチが好ましいと私が考えるのは、いくつか理由がある。現行政策のスタンスを考慮すると。1年前からの株高による金融環境の緩みが、ディスインフレの進行を遅らせたかもしれないと考えている」 | -------- |
2/12 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「より明確に把握できるまでは、金融政策がどこに向かうのか、どのくらいの速度・ペースで進むべきかについて判断を下すことが不可能だ。従ってわれわれは動き出す前に、より多くの情報を入手する必要がある。われわれは十分な情報を得た時点で動くことになるだろう」 | -------- |
2/12 | パウエル・FRB議長 | 「1つや2つの良好なデータに興奮することはない。1つや2つの悪いデータに強く反応することもない」、「インフレに関しては近いところだが、まだ到達はしていない。昨年のインフレ率は2.6%だった。よって素晴らしい進展と言えるが、まだ達してはいない」 | -------- |
2/11 | サマーズ・元財務長官 | 「1月の雇用統計における賃金の大幅上昇など、労働市場のタイト化の兆しは、新政権による措置が講じられる前から、消費者物価が上昇する可能性がある背景がすでに整っている。ホワイトハウスから打ち出される政策が実行される前であっても、インフレに対して非常に注意をはらわなければならない」、「現在のサイクルでさらなる利下げ余地はない」 | -------- |
2/11 | パウエル・FRB議長 | 「政策スタンスは景気抑制の度合いが以前より顕著に弱まっており、経済は強さを維持している。よって政策スタンスの調整は急ぐ必要はない」、「政策による景気抑制の度合い低下が速過ぎ、ないし行き過ぎとなれば、インフレ面での進展を妨げる可能性がある。一方で遅過ぎ、または少な過ぎであれば、経済活動と雇用を過度に弱めかねない」、(トランプ政権が進めている関税の強化の不透明感が強まっている景気への影響に関しては)、「われわれは2大責務における両面のリスクに注意を払っている。政権はわれわれが直面するリスクと不確実性に対処する上で良い態勢にある」・・・・(上院議会証言で) | -------- |
2/7 | クーグラー・FRB理事 | 「軟化も過熱の兆候も見られない健全な労働市場と整合だ」、「トランプ大統領の新たな政策案の経済効果については、かなりの不確実性がある」 | -------- |
2/5 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「2025年にインフレ率が上昇したり、インフレでの進展が停滞したりする場合、米金融当局はインフレが過熱によるものか、または関税によるものかを見極める難しい立場に置かれている」 | -------- |
2/5 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「そうした不確実性がもう少し明瞭になるまで。成長や雇用、インフレに関して何が起きているのかを理解するのは非常に難しい」 | -------- |
2/4 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | 「米経済は良好な状態であり、トランプ政権が導入する政策にFRBとして即座に対応する必要はない」、「多くの不確実性がある。経済と政策変更のいずれに関しても、時間を取って今後の動向を見極めることが可能だ」、「FRBの意思決定において、予防的である必要はない」 | -------- |
2/3 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「昨年末までに実施した100ベーシスポイントの利下げが、経済にどのように反映されるのか確認したい」、「データの内容次第では、しばらく様子見になるかもしれない」 | -------- |
2/3 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | (ここ数日に発表されたような広範な関税が実施されれば、物価に影響を与える可能性が高いとしつつ、厳密な政策はまだ練られていない状況とし)、「影響の度合いを正確に予測するのは難しい」、「追加調整を行う緊急性はない。データ次第になる。いずれかの時点で、政策スタンスに関して一段の正常化が行われるのは確かだ」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書