今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円148円台に反発」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 上げ下げを頻繁に繰り返しているドル円は、現時点では144円台半ばが底堅く、NYでは米長期金利が大きく上昇したことで148円15銭まで反発。
  • ユーロドルは1.09台で推移。
  • 株式市場は大きく反発する場面もあったが、中国に対する関税引き上げ報道もあり、結局はまちまちの展開。ナスダックは小幅に上昇したが、他の2指数は続落。
  • 債券は大きく反落。長期金利は上昇し、4.18%台に。
  • 金は大きく売られ3日続落し、3000ドル台を割り込む。原油も3日続落し、一時は59ドル台を割り込み、2021年4月以来となる安値に。
ドル/円 146.40 〜 148.15
ユーロ/ドル 1.0900 〜 1.0992
ユーロ/円 160.38 〜 162.07
NYダウ −349.26 → 37,965.60
GOLD −61.80 → 2,973.60ドル
WTI −1.29 → 60.70ドル
米10年国債 +0.189 → 4.184%

本日の注目イベント

  • 豪 豪4月ウエストパック消費者信頼感指数
  • 豪 豪3月NAB企業景況感指数
  • 日 2月国際収支・経常収支
  • 日 3月景気ウオッチャー調査
  • 米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、討論会に参加

本日のコメント

昨日の夜9時ごろ、石破首相はトランプ大統領と電話会談を行いました。詳しい内容は不明ですが、首相は関税措置により日本企業の投資余力が減退することを強く懸念していると伝えた模様です。会談を経て日本に対する関税措置が緩和された風でもなく、両国は今後担当者を選び交渉を続けることで合意した模様です。ただ、トランプ氏は相変わらず、米国は日本車を受け入れているが、日本は米国車を受け入れていないと従来の主張を繰り返し、「厳しくも公正な枠組みが設定されつつある」とSNSに投稿。現時点では、日本に対する関税を変更する意志がないことを改めて示していました。

多少希望を持てると思われるのが、ベッセント財務長官がその後、米国との交渉を求める約70カ国・地域の中で、「日本は優先的なステータスを得る可能性が高い」と、FOXビジネスで述べていたことです。石破首相はこれまでにも議会で、「米国との対応には『パッケージ』として示して、1回で話を付けなければならない」と繰り返しており、さらに「売り言葉に買い言葉みたいなことをやるつもりはない」などと述べていました。自身が訪米し、直接対話を行うとも述べていましたが、「相互関税」実施まで残された時間はあと1日です。「パッケージ」の中身はまだ不明ですが、起死回生の妙案はあるのでしょうか。

昨日の東京市場でも、為替、株式、債券が大荒れでした。日経平均株価は一時3万1000円割れまで売られ、その後は下げ幅を縮小しましたが、引けにかけては再び売られ、結局2644円安で引けました。ドル円も144円台後半まで売られましたが146円台後半まで反発し、NYでは米長期金利が大きく上昇したことで、148円15銭まで買われました。トランプ氏が言葉を口にしたり、SNSに投稿する度に株価が大きく上下し、それに伴ってドル円も動く展開で、いわば「トランプ本位制」の様相です。トランプ氏は昨日、中国が米国製品に対する34%の報復関税を撤回しない場合、「50%の追加関税を課す」と警告しています。トランプ氏は、「中国がすでに長期にわたる貿易面での不正行為に上乗せする形で課した34%の関税を、明日2025年4月8日までに撤回しない場合、米国は50%の対中追加関税を9日から課す」とSNSで表明しています。この種の発言で、相場が右往左往している状況です。

JPモルガンのダイモンCEOやブラックロックのフィンクCEOは、ようやくトランプ政権の通商政策を批判し出しました。ダイモン氏は「トランプ大統領が打ち出した関税措置による不確実性により、米国が長く築いてきた経済的な結びつきが悲惨に分断されるリスクがある」と投資家に宛てた書簡で述べ、さらに「米国第一主義は結構だが、米国の孤立で終わってはならない」とも述べていました。両氏の警告は、もっと早く出されるべきだったと思います。金融市場に極めて大きな影響力を持つ両氏は、長い間金融市場と対峙してきました。相場の動きが想定以上に混乱し運用に影響が出そうだから、重い腰をあげたように、筆者には思えてなりません。

MLBの昨年覇者である「ドジャース」がホワイトハウスにトランプ氏を表敬訪問しました。もちろん大谷選手もおり、大谷選手がトランプ氏と固い握手を交わしている姿が報道されています。この日の朝方、トランプ氏は石破首相と電話会談を行っており、首相は「交渉のためにトップチームを派遣する」と述べていました。その後での訪問だっただけに、「トップチームの一人は、大谷選手だったのでは?」とのジョークもあったようです。その可能性はないと思いますが、少なくもトランプ氏は石破首相よりも大谷選手に好印象を持ったはずです。

本日は日本株もようやく下げは一服しそうです。日経平均株価の反発が大きいようだと、ドル円も148円台を回復し、上値を試す可能性がありそうです。

本日のドル円は146円〜149円程度でしょうか。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
4/4 クルーズ・米上院議員 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 --------
4/4 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 --------
4/4 ベッセント・米財務長官 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 --------
4/3 ジェファーソン・FRB副議長 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 --------
4/3 クック・FRB理事 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 --------
4/2 トランプ・米大統領 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 --------
4/1 フォンデアライエン・欧州委員長 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 --------
3/31 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレは落ち着いた水準へと実際に鈍化していることから、そうした確信は得られる可能性が高い」、(トランプ氏の関税政策について)、「政策判断への影響は、当局者らの見通しがより明確になるには時間がかかる」 --------
3/31 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「FOMC参加者の間では、インフレ見通しに上振れリスクがあるとの極めて幅広い見方が示された。それは私の個人的見解とも完全に一致している」、「今後実施される関税などの政策に大きく左右され得る上振れリスクがあることは確かだ。関税が経済に与える影響はまだ明らかではない。最新のデータを注視していく」 --------
3/27 IMF 「大規模な政策転換が発表されており、最新のデータでは経済活動が2024年の非常に強いペースから減速していることが示唆されている。ただし、リセッションはわれわれの基本シナリオには含まれていない」 --------
3/27 コリンズ・ボストン連銀総裁 「関税が短期的にインフレ率を押し上げるのは『不可避』と見受けられる」、「金利据え置きの長期化が適切になる公算が大きい」、「一段と広範にわたる関税賦課やそれに対する報復措置が講じられる状況では特に、インフレ期待が重要になる」 --------
3/26 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「向こう1,2年でインフレが低下して労働市場が引き続き堅調なら、金利をさらに引き下げることができるはずだ。住宅ローン金利に一定の効果があるだろう」、「このところの信頼感低下は関税を巡る不確実性を反映している面が大きい」 --------
3/26 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「関税による影響が一時的なものにとどまるかどうかは不透明だ。その二次的影響によって金融当局が金利をより長期にわたって据え置く可能性がある」 --------
3/25 クーグラー・FRB理事 「ここ数カ月に財のインフレが加速傾向にあるほか、」ミシガン大学の調査データで短期・長期両方のインフレ期待が高まっている。トランプ大統領は貿易相手国に対して新たな関税を導入しているほか、さらなる関税を示唆しており、経済を巡る不確実性は強まっている」、「政策金利をしばらくの間、据え置くことを支持する」 --------
3/24 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「1回にした理由は主に、インフレが非常に不安定になり、2%目標に向かって劇的かつ明確に動くことはないだろうと考えているからだ。その目標達成が遅れているため、政策を中立水準に戻す適切な道筋も遅れざるを得ないと考えている」 --------
3/19 パウエル・FRB議長 (関税性政策によるインフレについて)、「米金融当局が何もせず急速に解消し、一過性のものであるならば、拘泥しないのが適切な場合もある」、「一時的なものになるかどうか、当局として実際のところ分からない」 --------
3/19 トランプ大統領 「米国の関税が経済に移行(緩和!)し始めたら、FRBは金利を引き下げた方がずっといい」 ドル円150円台前半から149円割れまで下落。
3/7 パウエル・FRB議長 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。
3/3 トランプ大統領 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 ドル円は149円台半ばから下落。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和