今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「トランプ氏、自動車部品の関税軽減を示唆」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 東京市場で142円20銭前後まで売られたドル円はNYでは反発。トランプ大統領が自動車部品の関税軽減を検討していると伝えられたことが背景。
  • ユーロドルも小幅に反落し、1.1296まで売られる。
  • 株式市場では、3指数が揃って続伸。トランプ関税の軽減が好感され、アップルなどが大幅高に。
  • 債券は大きく反発。長期金利は4.37%台へと急低下。
  • 金は5日ぶりに反落し、原油は小幅高。
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NY連銀、3月消費者インフレ期待 → 3.58%
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ドル/円 142.80 〜 144.07
ユーロ/ドル 1.1296 〜 1.1388
ユーロ/円 162.08 〜 163.11
NYダウ +312.08 → 40,741.00
GOLD −18.30 → 3,226.30ドル
WTI +0.03 → 61.53ドル
米10年国債 −0.116 → 4.374%

本日の注目イベント

  • 豪 RBA、金融政策会合議事要旨公表
  • 独 独4月ZEW景気期待指数
  • 欧 ユーロ圏2月鉱工業生産
  • 英 英3月失業率
  • 英 英ILO失業率(12−2月)
  • 米 4月NY連銀製造業景況指数
  • 米 3月輸入物価指数
  • 米 3月輸出物価指数
  • 米 2月鉱工業生産
  • 米 決算発表 → ジョンソンエンドジョンソン、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ

本日のコメント

トランプ大統領の関税政策が二転三転することで翻弄されるドル円。昨日も17日の赤沢・ベッセント会談では「為替が議題に上がる」可能性のあることが意識され、東京時間夕方には142円20銭近辺までドルが売らましたが、NYではトランプ氏が自動車部品への関税軽減を検討しているとの報道で144円台まで反発するなど、荒っぽい動きでした。翻弄されているのは為替だけではありません。株式・債券市場ではさらに激しい動きが見られます。NYダウの1日の値幅は1000ドルを超えることも珍しくはなく、もはや500ドル高や500ドル安では驚きはありません。債券市場も昨日は債券が買われ、長期金利は11bp以上の大幅な低下を見せました。先週は、週間での利回り上昇がここ20年余りで最大の上昇を見せていました。

トランプ氏は大統領執務室で「自動車メーカーを支援する何らかの措置を検討している」と記者団に述べ、具体的な内容は述べていませんでしたが、自動車メーカーが米国内の製造体制を整えられるよう時間的猶予を与えるために行うようです。一方で、半導体と医療品の輸入品への関税賦課計画を前進させるため、商務省主導の調査を開始したことを発表しています。ブルームバーグは、「トランプ大統領は長らく、医療品や半導体の海外生産を国家安全保障上の脅威と批難し、それらの製品の米国製造を復活させるため輸入品に関税を賦課する可能性を示唆してきた。だが、関税はサプライチェーンの混乱や米国民のコスト増加を招く恐れがある」と指摘しています。

上述のように、昨日は米長期債が買われ金利は大きく低下しましたが、今月7日には4%を割り込む水準まで長期債が買われていました。先週から急激に売られた背景には、米中貿易戦争の激化から中国が保有している米長期債を売っているのではないかという臆測が市場で語られていました。ベッセント財務長官は訪問先のブエノスアイレスで、外国勢が保有する米国債を投げ売りしているとの憶測をはねつけ、最近の国債相場下落の深刻度について否定的な考えを示しました。また、「必要に応じて市場の乱調に対処する手段が財務省にはある」とも、述べていました。米国債の動きが一方的で、「米国売り」の様相とも取れる状況になっていることで、今朝の日経新聞でもこの件に関する記事が掲載されています。

記事によると、中国はピーク時には1兆3000億ドル(約186兆円)の米国債を保有していましたが、今年1月末時点では7608億ドルまで41%も減少しています。前年同月比でも369億ドル減らしており、この保有高の推移を見る限り、中国は米国債をかなり売っているのは事実です。貿易戦争に限らず台湾問題など、中国が米国との関係を悪化させていることで「米国債離れ」を明確にし、売った代金で「金」を買っているという構図が想定されます。因みに、日本が保有する米国債は今年1月末時点では1兆793億ドルとなっています。イエレン前財務長官も米国債の下落についてCNBCの番組で意見を述べています。イエレン氏は、「市場で流動性が完全に枯渇するという意味での機能不全ではなく、米経済政策に対する信頼の喪失を示唆する動きが見られると思う」と話し、「この動きは、非常に憂慮すべきだ」と述べていました。トランプ政権としても、世界で最も安全で流動性の高い米国債が大きく売られということは避けたいはずで、同債券がさらに売られると、1兆ドル以上保有している日本や日本の機関投資家の含み損が拡大することになります。

17日の関税交渉までは荒っぽい動きの中、一進一退の展開かもしれません。本日のドル円は142円〜144円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
4/4 クルーズ・米上院議員 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 --------
4/4 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 --------
4/4 ベッセント・米財務長官 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 --------
4/3 ジェファーソン・FRB副議長 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 --------
4/3 クック・FRB理事 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 --------
4/2 トランプ・米大統領 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 --------
4/1 フォンデアライエン・欧州委員長 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 --------
3/31 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレは落ち着いた水準へと実際に鈍化していることから、そうした確信は得られる可能性が高い」、(トランプ氏の関税政策について)、「政策判断への影響は、当局者らの見通しがより明確になるには時間がかかる」 --------
3/31 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「FOMC参加者の間では、インフレ見通しに上振れリスクがあるとの極めて幅広い見方が示された。それは私の個人的見解とも完全に一致している」、「今後実施される関税などの政策に大きく左右され得る上振れリスクがあることは確かだ。関税が経済に与える影響はまだ明らかではない。最新のデータを注視していく」 --------
3/27 IMF 「大規模な政策転換が発表されており、最新のデータでは経済活動が2024年の非常に強いペースから減速していることが示唆されている。ただし、リセッションはわれわれの基本シナリオには含まれていない」 --------
3/27 コリンズ・ボストン連銀総裁 「関税が短期的にインフレ率を押し上げるのは『不可避』と見受けられる」、「金利据え置きの長期化が適切になる公算が大きい」、「一段と広範にわたる関税賦課やそれに対する報復措置が講じられる状況では特に、インフレ期待が重要になる」 --------
3/26 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「向こう1,2年でインフレが低下して労働市場が引き続き堅調なら、金利をさらに引き下げることができるはずだ。住宅ローン金利に一定の効果があるだろう」、「このところの信頼感低下は関税を巡る不確実性を反映している面が大きい」 --------
3/26 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「関税による影響が一時的なものにとどまるかどうかは不透明だ。その二次的影響によって金融当局が金利をより長期にわたって据え置く可能性がある」 --------
3/25 クーグラー・FRB理事 「ここ数カ月に財のインフレが加速傾向にあるほか、」ミシガン大学の調査データで短期・長期両方のインフレ期待が高まっている。トランプ大統領は貿易相手国に対して新たな関税を導入しているほか、さらなる関税を示唆しており、経済を巡る不確実性は強まっている」、「政策金利をしばらくの間、据え置くことを支持する」 --------
3/24 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「1回にした理由は主に、インフレが非常に不安定になり、2%目標に向かって劇的かつ明確に動くことはないだろうと考えているからだ。その目標達成が遅れているため、政策を中立水準に戻す適切な道筋も遅れざるを得ないと考えている」 --------
3/19 パウエル・FRB議長 (関税性政策によるインフレについて)、「米金融当局が何もせず急速に解消し、一過性のものであるならば、拘泥しないのが適切な場合もある」、「一時的なものになるかどうか、当局として実際のところ分からない」 --------
3/19 トランプ大統領 「米国の関税が経済に移行(緩和!)し始めたら、FRBは金利を引き下げた方がずっといい」 ドル円150円台前半から149円割れまで下落。
3/7 パウエル・FRB議長 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。
3/3 トランプ大統領 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 ドル円は149円台半ばから下落。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和