今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「17日の日米関税交渉待ち」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は方向感もなく、142円台から143円台で一進一退。17日の日米関税交渉を控え、動きにくい中依然としてドルの上値が重い展開。
  • ユーロドルは緩やかに下値を切り下げる展開となり、1.1264まで下落。
  • 株式市場では、3指数が小幅ながら揃って下落。二転三転するトランプ関税の行方を見極めるまでは不安定な動きが続く。
  • 債券は続伸。長期金利は4.33%へと低下。
  • 金は反発し、原油は反落。
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4月NY連銀製造業景況指数 → −0.8
3月輸入物価指数 → −0.1%
3月輸出物価指数 → 0.0%
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ドル/円 142.61 〜 143.27
ユーロ/ドル 1.1264 〜 1.1340
ユーロ/円 161.29 〜 162.00
NYダウ −155.83 → 40,368.96
GOLD +14.10 → 3,240.40ドル
WTI −0.20 → 61.33ドル
米10年国債 −0.041 → 4.333%

本日の注目イベント

  • 中 中国3月小売売上高
  • 中 中国3月鉱工業生産
  • 中 1−3月GDP
  • 欧 ユーロ圏2月経常収支
  • 欧 ユーロ圏3月消費者物価指数(確定値)
  • 英 英3月消費者物価指数
  • 米 3月小売売上高
  • 米 3月鉱工業生産
  • 米 3月設備稼働率
  • 米 4月NAHB住宅市場指数
  • 米 パウエル・FRB議長講演
  • 米 メスター・クリーブランド連銀総裁、質疑応答
  • 米 シュミッド・カンザスシティー連銀総裁、ダラス連銀総裁と討論
  • 加 カナダ中銀政策金利発表

本日のコメント

昨日のNY市場は久しぶりに落ち着いた動きで、ドル円の値幅もわずか66銭でした。明日17日には日米関税交渉が行われることとなっており、米国側は早期の妥結を望んでいるとの見方もありますが、日本への要求内容がはっきりとはしておらず、「為替」が議題に上がる可能性もいまだ否定出来ない状況です。交渉にあたる赤沢経済再生相は、ベッセント財務長官から為替に関する議論が提起されたら応じる考えを示していました。同大臣は、「しっかり信頼関係をつくり、日米双方がウィンウィンになるような形を全力で模索してほしい」と、石破首相から指示を受けたと話しています。米国とすれば、対日赤字を減らすには為替相場が円高に振れることで、ある程度の効果が見込めるものと考えているふしもあります。自動車大手の「ホンダ」は主力車種の生産をカナダとメキシコから米国へ移管する検討に入ったと今朝の経済紙が伝えており、そうなれば米国での販売台数の9割を米国で生産することになるそうです。また米エヌビディアも米国での生産に回帰することを表明しており、トランプ大統領の「関税引き上げによる圧力」は、じわじわとその効果を見せ始めています。「売られたケンカは買う」姿勢を見せている中国だけは例外で、トランプ氏の脅しには「最後まで闘う」と述べています。中国政府は国内航空会社に対して、米ボーイング社の航空機の追加購入を一切受け付けないよう指示したとブルームバーグは報じています。この指示は、米国が中国製品に課した最大145%の関税への報復と見られ、ボーイング社の株価は時間外取引で4.6%下落しているようです。「関税の導入により、米国製の航空機や部品のコストは2倍以上になるため、中国の航空会社がボーイング社の航空機を受け入れることは、非現実的になる」とブルームバーグは論じていました。

解決の糸口の見えない中国に対して、ホワイトハウスのレビット報道官は、トランプ氏が口述したという声明を読み上げ、「ボールは中国側にある。中国はわれわれと取引を行う必要がある。われわれには彼らと取引を行う必要はない」と述べていたそうです。中国の朱元財務次官は、米国の指導者からの敬意が示されない限り、中国は米国と協議に応じないとの見方を示しています。2010年から18年まで財務次官を務めた朱氏は、「もし米国が中国に対し、全面的な条件受け入れを望んでいるのであれば、交渉の余地はないと思われる」と述べ、その上で、「トランプ大統領の相互関税を巡る話し合いは、相互尊重や平和共存、ウィンウィンの考え方に基づくべきだ」と語っていました。中国は極端だとしても、トランプ関税に関してはEUへの風当たりにも、強いものがあります。EUは今週、米国と貿易交渉を行ったものの、意見の相違を埋められず、ほとんど進展は得られていません。EUの欧州委員で通商担当者は、14日にワシントンで約2時間にわたり、ラトニック商務長官とグリアUSTR代表と会談しましたが、「米国の狙いを見極めるのに苦慮した」と述べていました。

ロシアとウクライナの戦争に関して「私なら、24時間以内にやめさせることが出来る」と、昨年11月の大統領選の時点で豪語していたトランプ氏が久しぶりにウクライナ戦争に言及していました。トランプ氏は、ウクライナ戦争の責任は3人にあるとし、「プーチンが最初だとしよう。自分が何をするべきか全く把握していなかったバイデンが2番目で、そしてゼンレンスキーだ」と述べ、続けて、「バイデンとゼレンスキーはそれを妨げたし、プーチンはそれを始めてはならなかった」と主張していました。そして、「私は死を止めたい。その点でわれわれはうまくやっていると考える」と話し「近く、非常に良い提案があるはずだ」と、含みを持たせていました。

上でも述べたように、17日の交渉の内容次第では円高が急激に進む可能性があります。米国では債券と株が売られていることから、さらにドルが売られることは望まないとの見方もあるようですが、予断を許しません。本日はパウエル議長がシカゴのエコノミッククラブで講演を行います。トランプ関税による米経済への影響について言及があるかもしれません。

本日のドル円は142円〜144円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
4/4 クルーズ・米上院議員 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 --------
4/4 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 --------
4/4 ベッセント・米財務長官 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 --------
4/3 ジェファーソン・FRB副議長 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 --------
4/3 クック・FRB理事 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 --------
4/2 トランプ・米大統領 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 --------
4/1 フォンデアライエン・欧州委員長 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 --------
3/31 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレは落ち着いた水準へと実際に鈍化していることから、そうした確信は得られる可能性が高い」、(トランプ氏の関税政策について)、「政策判断への影響は、当局者らの見通しがより明確になるには時間がかかる」 --------
3/31 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「FOMC参加者の間では、インフレ見通しに上振れリスクがあるとの極めて幅広い見方が示された。それは私の個人的見解とも完全に一致している」、「今後実施される関税などの政策に大きく左右され得る上振れリスクがあることは確かだ。関税が経済に与える影響はまだ明らかではない。最新のデータを注視していく」 --------
3/27 IMF 「大規模な政策転換が発表されており、最新のデータでは経済活動が2024年の非常に強いペースから減速していることが示唆されている。ただし、リセッションはわれわれの基本シナリオには含まれていない」 --------
3/27 コリンズ・ボストン連銀総裁 「関税が短期的にインフレ率を押し上げるのは『不可避』と見受けられる」、「金利据え置きの長期化が適切になる公算が大きい」、「一段と広範にわたる関税賦課やそれに対する報復措置が講じられる状況では特に、インフレ期待が重要になる」 --------
3/26 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「向こう1,2年でインフレが低下して労働市場が引き続き堅調なら、金利をさらに引き下げることができるはずだ。住宅ローン金利に一定の効果があるだろう」、「このところの信頼感低下は関税を巡る不確実性を反映している面が大きい」 --------
3/26 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「関税による影響が一時的なものにとどまるかどうかは不透明だ。その二次的影響によって金融当局が金利をより長期にわたって据え置く可能性がある」 --------
3/25 クーグラー・FRB理事 「ここ数カ月に財のインフレが加速傾向にあるほか、」ミシガン大学の調査データで短期・長期両方のインフレ期待が高まっている。トランプ大統領は貿易相手国に対して新たな関税を導入しているほか、さらなる関税を示唆しており、経済を巡る不確実性は強まっている」、「政策金利をしばらくの間、据え置くことを支持する」 --------
3/24 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「1回にした理由は主に、インフレが非常に不安定になり、2%目標に向かって劇的かつ明確に動くことはないだろうと考えているからだ。その目標達成が遅れているため、政策を中立水準に戻す適切な道筋も遅れざるを得ないと考えている」 --------
3/19 パウエル・FRB議長 (関税性政策によるインフレについて)、「米金融当局が何もせず急速に解消し、一過性のものであるならば、拘泥しないのが適切な場合もある」、「一時的なものになるかどうか、当局として実際のところ分からない」 --------
3/19 トランプ大統領 「米国の関税が経済に移行(緩和!)し始めたら、FRBは金利を引き下げた方がずっといい」 ドル円150円台前半から149円割れまで下落。
3/7 パウエル・FRB議長 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。
3/3 トランプ大統領 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 ドル円は149円台半ばから下落。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和