今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「トランプ大統領、交渉で『大きな進展』」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は続落。142円前後では底堅い動きが続いていたドル円は日米関税交渉を前に株価が急落したこと受け、141円64銭まで売られる。
  • ユーロドルは反発。1.14台を回復し、1.1413まで上昇。
  • 株式市場では3指数が揃って大幅安。ダウは700ドル近く下げ、ナスダックは3%を超える下落。
  • 債券は続伸。長期金利は4.27%台に低下。
  • 金は大きく買われ、3300ドル台に乗せる。原油は買われる。
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3月小売売上高 → 1.4%
3月鉱工業生産 → −0.3%
3月設備稼働率 → 77.8%
4月NAHB住宅市場指数 → 40
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ドル/円 141.64 〜 142.86
ユーロ/ドル 1.1340 〜 1.1413
ユーロ/円 161.52 〜 162.28
NYダウ −699.57 → 39,669.39
GOLD +106.00 → 3,346.40ドル
WTI +1.14 → 62.47ドル
米10年国債 −0.056 → 4.277%

本日の注目イベント

  • 豪 豪3月雇用統計
  • 日 3月貿易統計
  • 独 独3月生産者物価指数
  • 欧 ECB政策金利発表
  • 欧 ラガルド・ECB総裁記者会見
  • 米 株式・債券市場、短縮取引
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 3月住宅着工件数
  • 米 3月建設許可件数
  • 米 4月フィラデルフィア連銀景況指数
  • 米 決算発表 → ブラックストン、ネットフリックス

本日のコメント

これまでの動きでは、142円前後では底堅さを見せていたドル円でしたが、NYでは昨年9月以来となる141円64銭まで売られています。昨日のNY時間には多くの材料が出ましたが、結局ドル売りで反応していました。

パウエル議長はシカゴでの講演で、「長期のインフレ期待をしっかり抑制し続け、物価水準の一時的上昇が継続的インフレ問題にならないよう確実に対処することが、われわれの責務だ」と述べ、さらに「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」と指摘し、「物価安定」が「景気減速」よりも優先されるとの認識を示し、これまで通り、政策金利の変更は急がないことを示唆しました。この発言自体は「ドル買い材料」でしたが、株価の下落に伴う金利低下とリスク回避の流れには抗えなかったようです。また、クリーブランド連銀のハマック総裁も、「二重の責務の両面から圧力がかかることが想定される状況下では、インフレのさらなる高止まりのリスクと労働市場の減速に伴うリスクとの間でバランスを保つため、金融政策を現状維持とする根拠は強いと考える」と指摘。「明確さを得るのが困難な場合には、追加データを待つことが今後の道筋を見極める一助となるだろう」と語っていました。利下げを急がないという点では、パウエル議長とほぼ同意見かと思います。

驚いたのは昨日夜9時前に入ったニュースでした。トランプ大統領が、日米関税交渉の席に自分も出席するとSNSに投稿したことです。赤沢経済再生相とベッセント財務長官、さらにグリアUSTR代表との協議に出席し、直接話し合いたいという意向のようでした。すでに協議を終えている模様ですが、詳しい内容は現時点では明らかにされていません。トランプ氏はSNSで、日本の代表団との間で、「大きな進展があった」と投稿しています。日本時間午前中には、その内容も明らかにされると思われます。

日米関税交渉の開始を控え、NY株式市場では再び株価が大きく下げ、リスク回避の流れが強まりました。ダウは700ドルに迫る下げで、ナスダックも3%を超える下落でした。安全資産の債券は買われ、金利低下に反応してドル円が141円台半ばまで売られました。また安全資産の一角にある「金」も100ドルを超える上昇を見せ、初の3300ドル台を示現しています。これで、140円の節目が視野に入ってきました。140円を割り込むと「ストップロス」のドル売りも入りそうです。

産経新聞が14日午後に行った植田日銀総裁との単独インタビューの内容を報じていました。総裁は、「米関税政策は、2月以降は悪いシナリオの方に来ている」と指摘し、「そこまで悪いことは起きないだろうという淡い期待感が消えた。米関税政策が国内経済に対する下押し圧力となった場合は、政策的対応が必要になるかもしれないが、情勢の変化に応じて適切に判断する」と語っていました。景気次第では利上げ基調を調整するという意味合いなのかどうかは明確ではありませんが、株価の大幅下落など、金融市場の予想外の混乱を考慮すれば、追加利上げのタイミングが遠のいたことになると見られます。

カリフォルニア州のニューサム知事は16日、トランプ大統領の関税措置を阻止する訴訟を起こすと発表しました。知事は、「トランプ氏の違法な関税は、カリフォルニアの家庭や企業、経済に混乱をもたらし、物価を上昇させ、雇用を脅かしている」と訴訟理由をあげています。カリフォルニア州は伝統的に民主党の地盤で、ニューサム氏は2028年大統領選での民主党の有力候補とみられています。昨日のコメントでウクライナ戦争に関連してトランプ氏が、バイデン前大統領を厳しく批判したことに触れましたが、バイデン氏も久々に公の前に姿を現し反論していました。バイデン氏は、「100日足らずで新政権は多くの被害と破壊をもたらした。アメリカを他の国とは一線を画す存在にしているのは何でしょう?私の考えでは、基本的なアメリカの価値観です。誰も『王』ではなく、誰も『ボス』ではない。誰にでもチャンスがあるのです」と述べ、「これほど国が分断した状態ではやっていけない。私も長くやってきたが、ここまで分断した状態ではなかった。団結すればアメリカに出来ないことは何もない」と訴えていました。政権最後には、自身の息子に恩赦を与えるなど、批判もありましたが、トランプ氏よりは正統派だと考えます。

本日のドル円は140円50銭〜143円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
4/16 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「二重の責務の両面から圧力がかかることが想定される状況下では、インフレのさらなる高止まりのリスクと労働市場の減速に伴うリスクとの間でバランスを保つため、金融政策を現状維持とする根拠は強いと考える」、「明確さを得るのが困難な場合には、追加データを待つことが今後の道筋を見極める一助となるだろう」 --------
4/16 パウエル・FRB議長 「長期のインフレ期待をしっかり抑制し続け、物価水準の一時的上昇が継続的インフレ問題にならないよう確実に対処することが、われわれの責務だ」、「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」 --------
4/4 クルーズ・米上院議員 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 --------
4/4 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 --------
4/4 ベッセント・米財務長官 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 --------
4/3 ジェファーソン・FRB副議長 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 --------
4/3 クック・FRB理事 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 --------
4/2 トランプ・米大統領 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 --------
4/1 フォンデアライエン・欧州委員長 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 --------
3/31 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレは落ち着いた水準へと実際に鈍化していることから、そうした確信は得られる可能性が高い」、(トランプ氏の関税政策について)、「政策判断への影響は、当局者らの見通しがより明確になるには時間がかかる」 --------
3/31 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「FOMC参加者の間では、インフレ見通しに上振れリスクがあるとの極めて幅広い見方が示された。それは私の個人的見解とも完全に一致している」、「今後実施される関税などの政策に大きく左右され得る上振れリスクがあることは確かだ。関税が経済に与える影響はまだ明らかではない。最新のデータを注視していく」 --------
3/27 IMF 「大規模な政策転換が発表されており、最新のデータでは経済活動が2024年の非常に強いペースから減速していることが示唆されている。ただし、リセッションはわれわれの基本シナリオには含まれていない」 --------
3/27 コリンズ・ボストン連銀総裁 「関税が短期的にインフレ率を押し上げるのは『不可避』と見受けられる」、「金利据え置きの長期化が適切になる公算が大きい」、「一段と広範にわたる関税賦課やそれに対する報復措置が講じられる状況では特に、インフレ期待が重要になる」 --------
3/26 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「向こう1,2年でインフレが低下して労働市場が引き続き堅調なら、金利をさらに引き下げることができるはずだ。住宅ローン金利に一定の効果があるだろう」、「このところの信頼感低下は関税を巡る不確実性を反映している面が大きい」 --------
3/26 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「関税による影響が一時的なものにとどまるかどうかは不透明だ。その二次的影響によって金融当局が金利をより長期にわたって据え置く可能性がある」 --------
3/25 クーグラー・FRB理事 「ここ数カ月に財のインフレが加速傾向にあるほか、」ミシガン大学の調査データで短期・長期両方のインフレ期待が高まっている。トランプ大統領は貿易相手国に対して新たな関税を導入しているほか、さらなる関税を示唆しており、経済を巡る不確実性は強まっている」、「政策金利をしばらくの間、据え置くことを支持する」 --------
3/24 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「1回にした理由は主に、インフレが非常に不安定になり、2%目標に向かって劇的かつ明確に動くことはないだろうと考えているからだ。その目標達成が遅れているため、政策を中立水準に戻す適切な道筋も遅れざるを得ないと考えている」 --------
3/19 パウエル・FRB議長 (関税性政策によるインフレについて)、「米金融当局が何もせず急速に解消し、一過性のものであるならば、拘泥しないのが適切な場合もある」、「一時的なものになるかどうか、当局として実際のところ分からない」 --------
3/19 トランプ大統領 「米国の関税が経済に移行(緩和!)し始めたら、FRBは金利を引き下げた方がずっといい」 ドル円150円台前半から149円割れまで下落。
3/7 パウエル・FRB議長 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。
3/3 トランプ大統領 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 ドル円は149円台半ばから下落。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和