「トランプ氏、パウエル議長を解任か?」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- 昨日の朝方には141円台半ばまで売られたドル円は、赤沢経済再生相の「為替は出なかった」との発言で急上昇。一時は143円台に乗せたがNYでは上下はあったものの、142円台半ばで落ち着く。
- ユーロドルは1.13台で推移。ECBは予想通り政策金利を引き下げ、6会合連続での利下げを断行。
- 株式市場ではダウが大幅に続落したものの、S&P500は小幅高とまちまち。
- 債券は反落し、長期金利は4.32%台に上昇。
- 前日大きく買われた金は反落。原油は大幅に続伸。
新規失業保険申請件数 → 21.5万件
3月住宅着工件数 → 132.4万件
3月建設許可件数 → 148.2万件
4月フィラデルフィア連銀景況指数 → −26.4
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ドル/円 | 141.90 〜 142.71 |
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ユーロ/ドル | 1.1336 〜 1.1385 |
ユーロ/円 | 161.23 〜 162.06 |
NYダウ | −527.16 → 39,142.23 |
GOLD | −18.00 → 3,328.40ドル |
WTI | +2.21 → 64.68ドル |
米10年国債 | +0.048 → 4.325% |
本日の注目イベント
- 日 3月全国消費者物価指数
- 米 グッドフライデー(聖金曜日)の祝日で米、欧州、英国など休場
- 米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁講演
本日のコメント
金融市場が、日米関税交渉の行方を見守る中、昨日の朝方、「為替は出なかった」という赤沢経済再生相のコメントが伝わり、これで一気にドル円は142円台を回復。東京と欧州市場の狭間の時間帯には143円台に乗せる場面もありました。東京株式市場でも株価は上昇し、交渉は一応成功裏に終わったとの印象が市場に安心感を与えた一日でした。
協議の詳しい内容は明らかになっていませんが、協議を終えた赤沢経済再生相に、記者団から為替や安全保障への言及があったのかと聞かれて、赤沢氏は「この言い方をすると分かってしまうが、為替は出なかった」と答えていました。明らかに、安全保障問題は議題に上がり、日本の防衛費負担増を求められたものと思われます。また、為替は議題には出なかったとは言うものの、通貨問題は基本的には日米とも財務省マターであることから、本番は今月下旬に訪米する加藤財務相とベッセント財務長官が改めて話しあう予定になっており、まだ予断は許しません。それにしても、突然「関税交渉に出席する」と、SNSに投稿したトランプ大統領でしたが、昨日放映された内容を見ると、ホワイトハウスの執務室でトランプ氏と机を挟んで対面に座り、後方にはベッセント財務長官、ラトニック商務長官、さらにはグリアUSTR代表が身構えている中での交渉でした。執務室には赤沢氏と日本側の通訳の二人で、完全に多勢に無勢の状況でした。見方を変えれば、「監禁」されていたとも見えなくはありません。余程強心臓の持ち主でない限り「ビビる」のが普通でしょう。最後に満面の笑みを浮かべてトランプ氏と二人で「はい、チーズ」。記念写真を撮り、トランプ氏の象徴でもある「赤いキャップ」を土産にもらっていました。これらは全て「トランプ流ディール」の一環であり「一流の演出」であることは言うまでもありません。赤沢経済再生相はご自身の人柄なのか、トランプ氏との面会について「(自身は)格下も格下、直接話してくださったことに感謝しています」と、そこまでへりくだらなくてもいいのにと思うようなコメントをしていました。
一難去ってまた一難・・・・。
トランプ氏はSNSで、パウエルFRB議長を猛烈に批判しました。トランプ氏は、「対応が遅すぎる。FRBは今年これまでに利下げしておくべきだったし、いずれにせよ今すぐ利下げすべきだ」と投稿しました。そして「FRB議長の解任は一刻も早く実現すべきだ」としていました。さらに、トランプ氏は大統領執務室で、「(パウエル氏に)辞めるよう要求すれば、出て行くだろう」と話し、「彼の仕事ぶりには不満だ。そう彼には伝えた」と述べていました。FRBとしても利下げしたいのは、やまやまですが、それを妨げているのは、トランプ氏自身であることなど全く無視しています。そしてこの件も朝令暮改です。トランプ氏は大統領就任時には、「パウエル議長には任期までやってもらう」と話していたのが、この変わりようです。筆者は、「このような事態は、必ずどこかの時点である」と予想していましたが、やや早かったようです。FRBの独立性など、どこ吹く風といった状況で、すでに後任の議長の名前も上がっています。
利下げを急がないFRBとは対照的に、ECBは昨日の理事会で政策金利である、中銀預金金利を0.25%引き下げることを全会一致で決めました。これで「6会合連続」の利下げで、昨年6月に金融緩和政策へと舵を切ってからは7回目となり、合計で1.75%の利下げになります。トランプ関税の影響で、定着して来たインフレ指標が再燃すリスクもある中での決定でした。優先したのは、トランプ関税による景気の下振れです。ラガルド総裁は「貿易摩擦の激化が輸出を抑え、投資や個人消費に重荷になる」と指摘しながらも、「世界的な貿易混乱の拡大は、インフレ見通しの不確実性を高めている」と述べ、インフレ再燃へ警戒感も残していました。政策金利の引き下げ発表後ユーロドルは売られましたが、その後再び同水準に戻っています。
一時143円台を回復したドル円ですが、依然として株式市場が不安定なこともあり、ドルの上値は重い展開が続きそうです。
本日のドル円は141円〜143円程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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4/17 | ラガルド・ECB総裁 | 「貿易摩擦の激化が輸出を抑え、投資や個人消費に重荷になる」、「世界的な貿易混乱の拡大は、インフレ見通しの不確実性を高めている」 | -------- |
4/16 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「二重の責務の両面から圧力がかかることが想定される状況下では、インフレのさらなる高止まりのリスクと労働市場の減速に伴うリスクとの間でバランスを保つため、金融政策を現状維持とする根拠は強いと考える」、「明確さを得るのが困難な場合には、追加データを待つことが今後の道筋を見極める一助となるだろう」 | -------- |
4/16 | パウエル・FRB議長 | 「長期のインフレ期待をしっかり抑制し続け、物価水準の一時的上昇が継続的インフレ問題にならないよう確実に対処することが、われわれの責務だ」、「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」 | -------- |
4/4 | クルーズ・米上院議員 | 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 | -------- |
4/4 | ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 | 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 | -------- |
4/4 | ベッセント・米財務長官 | 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 | -------- |
4/3 | ジェファーソン・FRB副議長 | 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 | -------- |
4/3 | クック・FRB理事 | 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 | -------- |
4/2 | トランプ・米大統領 | 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 | -------- |
4/1 | フォンデアライエン・欧州委員長 | 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 | -------- |
3/31 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「インフレは落ち着いた水準へと実際に鈍化していることから、そうした確信は得られる可能性が高い」、(トランプ氏の関税政策について)、「政策判断への影響は、当局者らの見通しがより明確になるには時間がかかる」 | -------- |
3/31 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「FOMC参加者の間では、インフレ見通しに上振れリスクがあるとの極めて幅広い見方が示された。それは私の個人的見解とも完全に一致している」、「今後実施される関税などの政策に大きく左右され得る上振れリスクがあることは確かだ。関税が経済に与える影響はまだ明らかではない。最新のデータを注視していく」 | -------- |
3/27 | IMF | 「大規模な政策転換が発表されており、最新のデータでは経済活動が2024年の非常に強いペースから減速していることが示唆されている。ただし、リセッションはわれわれの基本シナリオには含まれていない」 | -------- |
3/27 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 「関税が短期的にインフレ率を押し上げるのは『不可避』と見受けられる」、「金利据え置きの長期化が適切になる公算が大きい」、「一段と広範にわたる関税賦課やそれに対する報復措置が講じられる状況では特に、インフレ期待が重要になる」 | -------- |
3/26 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「向こう1,2年でインフレが低下して労働市場が引き続き堅調なら、金利をさらに引き下げることができるはずだ。住宅ローン金利に一定の効果があるだろう」、「このところの信頼感低下は関税を巡る不確実性を反映している面が大きい」 | -------- |
3/26 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「関税による影響が一時的なものにとどまるかどうかは不透明だ。その二次的影響によって金融当局が金利をより長期にわたって据え置く可能性がある」 | -------- |
3/25 | クーグラー・FRB理事 | 「ここ数カ月に財のインフレが加速傾向にあるほか、」ミシガン大学の調査データで短期・長期両方のインフレ期待が高まっている。トランプ大統領は貿易相手国に対して新たな関税を導入しているほか、さらなる関税を示唆しており、経済を巡る不確実性は強まっている」、「政策金利をしばらくの間、据え置くことを支持する」 | -------- |
3/24 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「1回にした理由は主に、インフレが非常に不安定になり、2%目標に向かって劇的かつ明確に動くことはないだろうと考えているからだ。その目標達成が遅れているため、政策を中立水準に戻す適切な道筋も遅れざるを得ないと考えている」 | -------- |
3/19 | パウエル・FRB議長 | (関税性政策によるインフレについて)、「米金融当局が何もせず急速に解消し、一過性のものであるならば、拘泥しないのが適切な場合もある」、「一時的なものになるかどうか、当局として実際のところ分からない」 | -------- |
3/19 | トランプ大統領 | 「米国の関税が経済に移行(緩和!)し始めたら、FRBは金利を引き下げた方がずっといい」 | ドル円150円台前半から149円割れまで下落。 |
3/7 | パウエル・FRB議長 | 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 | 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。 |
3/3 | トランプ大統領 | 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 | ドル円は149円台半ばから下落。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書