今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「日米通商交渉、為替は議題に上がらず」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は141円台後半から143円台半ばまで急伸。ベッセント財務長官が日米通商交渉で「通貨目標」を求めないと述べたことでドルが買い戻された。
  • ユーロドルは続落し、1.1311レベルまで下落。
  • 株式市場では3指数が前日に続き大幅高。トランプ大統領が対中関税の大幅引き下げを示唆したことで貿易戦争懸念が後退。
  • 債券も続伸。長期金利は4.38%台に低下。
  • 金は125ドル安と続落。ドルが買われ、貿易戦争リスクの後退が利益確定の売りにつながる。原油は反落。
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3月新築住宅販売件数 →  72.4万件
4月S&Pグローバル製造業PMI(速報値) → 50.7
4月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値) → 51.4
4月S&Pグローバル総合業PMI(速報値) → 51.2
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ドル/円 141.59 〜 143.57
ユーロ/ドル 1.1311 〜 1.1419
ユーロ/円 161.57 〜 162.46
NYダウ +419.59 → 39,606.57
GOLD −125.30 → 3,294.10ドル
WTI −1.40 → 62.27ドル
米10年国債 −0.020 → 4.381%

本日の注目イベント

  • 独 独4月ifo景況感指数
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 3月耐久財受注
  • 米 3月中古住宅販売件数
  • 米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁講演
  • 米 決算発表 → インテル、ペプシコ、P&G、メルク

本日のコメント

「通貨目標は一切ない」・・・・。ベッセント財務長官のこの一言が効きました。

前日にトランプ大統領が「パウエル議長を解任する意図はない」と発言したことが、リスク回避の流れを後退させ、昨日の東京市場の朝方には143円台までドル円が買われる動きもありましたが、その後は日経平均株価の上昇にもかかわらずドル円はじり安の展開。結局、141円台半ばまで押し戻されましたが、NYでは上記発言に加え、トランプ氏が中国に対しても関税率を下げることを示唆したこともあり、NY株が大幅に続伸。これが円売りを後押ししました。ドル円はNYで143円57銭辺りまで買われています。前日同様、株と債券とドルが買われ、これまでに大きく買われてきた金が125ドル安と、大きく売られました。今週史上初の3500ドル台乗せを見せた金も、やや投機的な動きとなっています。中国を中心に「外貨準備」として金を購入しているようですが、「外貨準備」として基軸通貨であるドルを持てば、米国債を購入することで、「金利」を得ることが出来ますが、金利のつかない金については「キャピタルゲイン」のみで勝負するしかありません。米中貿易戦争の激化も予想され、一歩も引き下がる気配を見せない中国。保有する米国債を売り、その売却代金で金を購入している姿は想像に難くありません。

ベッセント財務長官は、日本との通商交渉で為替水準の直接的な是正を促す目標を求めるのかという質問に対して「通貨目標は一切ない」と言明し、「G7合意を尊重することを日本に期待している」と答えました。本日から始まる予定の交渉では「為替問題」が議題に上がる可能性があるとの見方がくすぶっており、これがドルの上値を押さえてきましたが、これでやや安心感が広がってきました。後は交渉で日本に対する関税率がどの程度に収まるのかが次の焦点になります。もっとも、この点についても「朝令暮改」を基本とするトランプ氏ですが、今日は楽観的な見方が支配的になってきました。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は23日、ホワイトハウス当局者の間で、対中関税の引き下げが検討されていると報じました。トランプ氏は23日午後、「米政権として対中追加関税率を現行の145%からいつ変更するかは中国次第だ」と語りながらも、「中国に対する新たな関税率を今後2−3週間に発表する可能性がある」と話しています。この報道にNYダウは一時1000ドルを超える上昇を見せましたが、その後は上げ幅を大きく縮小しています。ベッセント氏が、「トランプ氏が対中関税引き下げを一方的な形で提案したことはない」と説明したことや、ホワイトハウスのレビット報道官も、「トランプ大統領は中国に対するスタンスを軟化させているわけではない」と発言したことが材料視されました。

「トランプ関税」に振り回されていることから、やや関心が削がれているウクライナ戦争も、重大な局面に差しかかっています。トランプ政権はウクライナに対して、ロシアが支配するクリミア半島の奪回を断念する形で、仲介案を提示している模様です。ウクライナのゼレンスキー大統領はこの提案に対して難色を示していますが、ウクライナを支援する欧州も米国に対して、「領土交渉を含む和平合意をロシアと結ぶ前に停戦を成立させ、ウクライナに提供する安全保障を明確にすべきだ」と伝えています。トランプ氏は先週、ウクライナが米国の仲介案を受け入れないのであれば、「米国は仲介から手を引く」と、ウクライナを恫喝するような発言を行っていました。また、クリミアをロシア領としてウクライナが認めることはないとのゼレンスキー大統領の声明を「交渉の有害だ」と批難し、「このような挑発的な声明が、戦争の解決をひどく難しくしている」と、ゼレンスキー氏に対して厳しい言葉を発していました。ゼレンスキー氏は「戦闘停止」か、「領土割愛」かの、厳しい選択を迫られている状況です。

本日のドル円は142円〜144円程度でしょうか。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
4/23 ベッセント・財務長官 (日米通商交渉での)「通貨目標は一切ない」、「G7合意を尊重することを日本に期待している」 ドル円は141円台後半から143円57銭まで買われる。
4/17 ラガルド・ECB総裁 「貿易摩擦の激化が輸出を抑え、投資や個人消費に重荷になる」、「世界的な貿易混乱の拡大は、インフレ見通しの不確実性を高めている」 --------
4/16 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「二重の責務の両面から圧力がかかることが想定される状況下では、インフレのさらなる高止まりのリスクと労働市場の減速に伴うリスクとの間でバランスを保つため、金融政策を現状維持とする根拠は強いと考える」、「明確さを得るのが困難な場合には、追加データを待つことが今後の道筋を見極める一助となるだろう」 --------
4/16 パウエル・FRB議長 「長期のインフレ期待をしっかり抑制し続け、物価水準の一時的上昇が継続的インフレ問題にならないよう確実に対処することが、われわれの責務だ」、「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」 --------
4/4 クルーズ・米上院議員 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 --------
4/4 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 --------
4/4 ベッセント・米財務長官 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 --------
4/3 ジェファーソン・FRB副議長 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 --------
4/3 クック・FRB理事 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 --------
4/2 トランプ・米大統領 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 --------
4/1 フォンデアライエン・欧州委員長 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 --------
3/31 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレは落ち着いた水準へと実際に鈍化していることから、そうした確信は得られる可能性が高い」、(トランプ氏の関税政策について)、「政策判断への影響は、当局者らの見通しがより明確になるには時間がかかる」 --------
3/31 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「FOMC参加者の間では、インフレ見通しに上振れリスクがあるとの極めて幅広い見方が示された。それは私の個人的見解とも完全に一致している」、「今後実施される関税などの政策に大きく左右され得る上振れリスクがあることは確かだ。関税が経済に与える影響はまだ明らかではない。最新のデータを注視していく」 --------
3/27 IMF 「大規模な政策転換が発表されており、最新のデータでは経済活動が2024年の非常に強いペースから減速していることが示唆されている。ただし、リセッションはわれわれの基本シナリオには含まれていない」 --------
3/27 コリンズ・ボストン連銀総裁 「関税が短期的にインフレ率を押し上げるのは『不可避』と見受けられる」、「金利据え置きの長期化が適切になる公算が大きい」、「一段と広範にわたる関税賦課やそれに対する報復措置が講じられる状況では特に、インフレ期待が重要になる」 --------
3/26 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「向こう1,2年でインフレが低下して労働市場が引き続き堅調なら、金利をさらに引き下げることができるはずだ。住宅ローン金利に一定の効果があるだろう」、「このところの信頼感低下は関税を巡る不確実性を反映している面が大きい」 --------
3/26 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「関税による影響が一時的なものにとどまるかどうかは不透明だ。その二次的影響によって金融当局が金利をより長期にわたって据え置く可能性がある」 --------
3/25 クーグラー・FRB理事 「ここ数カ月に財のインフレが加速傾向にあるほか、」ミシガン大学の調査データで短期・長期両方のインフレ期待が高まっている。トランプ大統領は貿易相手国に対して新たな関税を導入しているほか、さらなる関税を示唆しており、経済を巡る不確実性は強まっている」、「政策金利をしばらくの間、据え置くことを支持する」 --------
3/24 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「1回にした理由は主に、インフレが非常に不安定になり、2%目標に向かって劇的かつ明確に動くことはないだろうと考えているからだ。その目標達成が遅れているため、政策を中立水準に戻す適切な道筋も遅れざるを得ないと考えている」 --------
3/19 パウエル・FRB議長 (関税性政策によるインフレについて)、「米金融当局が何もせず急速に解消し、一過性のものであるならば、拘泥しないのが適切な場合もある」、「一時的なものになるかどうか、当局として実際のところ分からない」 --------
3/19 トランプ大統領 「米国の関税が経済に移行(緩和!)し始めたら、FRBは金利を引き下げた方がずっといい」 ドル円150円台前半から149円割れまで下落。
3/7 パウエル・FRB議長 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。
3/3 トランプ大統領 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 ドル円は149円台半ばから下落。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和