今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米3月の貿易収支は過去最大の赤字」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 先週金曜日には145円90銭前後まで買われたドル円は大きく反落。「トランプ関税」の見通しが依然として不透明なことに加え、3月の貿易収支が過去最大の赤字額を記録したことなどから、ドル円は142円36銭まで下落。
  • ユーロドルはドイツのメルツ氏が首相に選出されなかったことで売られたが、2回目投票で首相に選出され1.1380まで反発。
  • 株式市場では3指数が揃って下落。「トランプ関税」への不安は根強くダウは389ドル安。
  • 債券は買われ、長期金利は4.29%台に低下。
  • 金は100ドルを超える上昇。原油は地政学的リスクの高まりから2ドルに迫る上昇。
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3月貿易収支 → −1405億ドル
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ドル/円 142.36 〜 143.02
ユーロ/ドル 1.1317 〜 1.1380
ユーロ/円 161.57 〜 162.14
NYダウ −389.83 → 40,829.00
GOLD +100.50 → 3,422.80ドル
WTI +1.96 → 59.09ドル
米10年国債 −0.049 → 4.295%

本日の注目イベント

  • 中 中国4月外貨準備高
  • 独 独3月製造業新規受注
  • 欧 ユーロ圏3月小売売上高
  • 米 3月消費者信用残高
  • 米 FOMC 政策金利発表
  • 米 パウエル議長記者会見
  • 米 決算発表 → アーム・ホールディングス、ウーバー

本日のコメント

ドル円は先週金曜日の朝方には146円に迫る水準まで買われましたが、昨日のNYでは再びドルが売られ、142円台前半まで押し戻される展開でした。「トランプ関税」の先行きが見通せないことが大きな理由で、加えて昨日発表された米3月の貿易収支では赤字額が1405億ドル(約20兆円)と、過去最大の赤字額でした。「トランプ関税」実施を前に輸入が急拡大したものと見られますが、「過去最大の赤字額」は、再びトランプ大統領の関税に対する気持ちを硬化させることにもつながりそうです。

トランプ氏は昨日ホワイトハウスでカナダのカーニー首相と関税について会談を行いましたが、言葉の応酬はあったものの、目立った進展はなく、むしろ後味の悪い印象を残しました。トランプ氏は、「われわれは非常に公正な数字を提示し、これが米国が望むものだと示すつもりだ」と述べ、譲歩する意志は見せませんでした。また、「関税水準を決めるのは自分だ」とも発言し、「米国は中国と貿易をしなくても『失うものは何もない』」と話していました。ただ今朝の最新の情報では、「ベッセント財務長官とグリアUSTR代表が今週スイスで、中国の何立峰副首相と貿易交渉を開始する」との一報が入り、ドル円は142円台半ばから143円台に上昇しています。

ドイツでは6日の連邦議会でキリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首が1回目の投票では過半数を得られず、首相に選出されませんでしたが、2回目の投票ではメルツ氏が630議席中25票を獲得し、首相に選出されました。新首相候補が最初の投票で議会の支持を得られなかったのは、第2次世界大戦後初めてで、ドイツ政界には衝撃が走りました。ドイツでもフランスと同様に極右政党である「ドイツのための選択肢」(AfD)が支持を拡大しており、メルツ首相は、国内の景気低迷やウクライナ問題もあり厳しい船出となりました。

市場では依然として「トランプ関税」の行方を読み切れない状況が続いています。トランプ氏もベッセント氏も、最終的には軟着陸する見方を示唆していますが、上記カナダのカーニー首相との会談や、過去最大の貿易赤字額を考えると、関税率が低く抑えられ状況が好転する可能性は低そうです。トランプ氏は自動車に加え、自動車部品にも25%の関税を掛ける意向です。日経新聞の調査によると、米国で生産されている車の部品の輸入依存度は高く、日本車でも40―60%程度となっており、中でも日産の輸入割合は59%と、最も高くなっています。米国のメーカーでもGMとフォードは60%と高く、日本車の平均よりも高いのが実情です。最も高いのはドイツのメルセデスで、90%でした。このままでは、いずれも販売価格が大幅に引き上げられることとなり、今後米国内のインフレ率の上昇に跳ね返ってくるはずです。部品メーカーが米国での生産移転に踏み切れば、今度は人件費のコストが大幅に上がることとなり、これも簡単ではなさそうです。このように考えると、「トランプ関税」が予定通り実施されれば、FRBが追加利下げを行える機会は徐々に失われそうだと見ていますが、どうでしょう。

本日はFOMC会合がありますが、政策金利は据え置かれると予想しています。パウエル議長が「トランプ関税」の影響に対してどのようなスタンスで臨むのかが焦点です。本日のドル円は142円〜144円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
4/24 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「6月までに明確かつ説得力のあるデータが得られ、その時点で進むべき正しい方向について判断できれば、委員会が動く可能性がある」 --------
4/24 ウォラー・FRB理事 「特に大規模な関税が再導入された場合、この先レイオフの増加や失業率の上昇が見られ始めても意外ではない。労働市場の悪化が顕著になれば、FRBの最大雇用の責務に基づき措置を講じることが重要だと考えられる」 --------
4/23 ベッセント・財務長官 (日米通商交渉での)「通貨目標は一切ない」、「G7合意を尊重することを日本に期待している」 ドル円は141円台後半から143円57銭まで買われる。
4/17 ラガルド・ECB総裁 「貿易摩擦の激化が輸出を抑え、投資や個人消費に重荷になる」、「世界的な貿易混乱の拡大は、インフレ見通しの不確実性を高めている」 --------
4/16 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「二重の責務の両面から圧力がかかることが想定される状況下では、インフレのさらなる高止まりのリスクと労働市場の減速に伴うリスクとの間でバランスを保つため、金融政策を現状維持とする根拠は強いと考える」、「明確さを得るのが困難な場合には、追加データを待つことが今後の道筋を見極める一助となるだろう」 --------
4/16 パウエル・FRB議長 「長期のインフレ期待をしっかり抑制し続け、物価水準の一時的上昇が継続的インフレ問題にならないよう確実に対処することが、われわれの責務だ」、「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」 --------
4/4 クルーズ・米上院議員 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 --------
4/4 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 --------
4/4 ベッセント・米財務長官 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 --------
4/3 ジェファーソン・FRB副議長 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 --------
4/3 クック・FRB理事 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 --------
4/2 トランプ・米大統領 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 --------
4/1 フォンデアライエン・欧州委員長 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 --------
3/31 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレは落ち着いた水準へと実際に鈍化していることから、そうした確信は得られる可能性が高い」、(トランプ氏の関税政策について)、「政策判断への影響は、当局者らの見通しがより明確になるには時間がかかる」 --------
3/31 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「FOMC参加者の間では、インフレ見通しに上振れリスクがあるとの極めて幅広い見方が示された。それは私の個人的見解とも完全に一致している」、「今後実施される関税などの政策に大きく左右され得る上振れリスクがあることは確かだ。関税が経済に与える影響はまだ明らかではない。最新のデータを注視していく」 --------
3/27 IMF 「大規模な政策転換が発表されており、最新のデータでは経済活動が2024年の非常に強いペースから減速していることが示唆されている。ただし、リセッションはわれわれの基本シナリオには含まれていない」 --------
3/27 コリンズ・ボストン連銀総裁 「関税が短期的にインフレ率を押し上げるのは『不可避』と見受けられる」、「金利据え置きの長期化が適切になる公算が大きい」、「一段と広範にわたる関税賦課やそれに対する報復措置が講じられる状況では特に、インフレ期待が重要になる」 --------
3/26 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「向こう1,2年でインフレが低下して労働市場が引き続き堅調なら、金利をさらに引き下げることができるはずだ。住宅ローン金利に一定の効果があるだろう」、「このところの信頼感低下は関税を巡る不確実性を反映している面が大きい」 --------
3/26 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「関税による影響が一時的なものにとどまるかどうかは不透明だ。その二次的影響によって金融当局が金利をより長期にわたって据え置く可能性がある」 --------
3/25 クーグラー・FRB理事 「ここ数カ月に財のインフレが加速傾向にあるほか、」ミシガン大学の調査データで短期・長期両方のインフレ期待が高まっている。トランプ大統領は貿易相手国に対して新たな関税を導入しているほか、さらなる関税を示唆しており、経済を巡る不確実性は強まっている」、「政策金利をしばらくの間、据え置くことを支持する」 --------
3/24 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「1回にした理由は主に、インフレが非常に不安定になり、2%目標に向かって劇的かつ明確に動くことはないだろうと考えているからだ。その目標達成が遅れているため、政策を中立水準に戻す適切な道筋も遅れざるを得ないと考えている」 --------
3/19 パウエル・FRB議長 (関税性政策によるインフレについて)、「米金融当局が何もせず急速に解消し、一過性のものであるならば、拘泥しないのが適切な場合もある」、「一時的なものになるかどうか、当局として実際のところ分からない」 --------
3/19 トランプ大統領 「米国の関税が経済に移行(緩和!)し始めたら、FRBは金利を引き下げた方がずっといい」 ドル円150円台前半から149円割れまで下落。
3/7 パウエル・FRB議長 「多くの指標が労働市場は堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」、(追加利下げについては)、「急ぐ必要はなく、(政権の動向などが)より明確になるまで待つことができる」、(米経済の現状について)、「不確実性の高まりにもかかわらず、米経済は良好な状態が続いている」 株が買われ、債券が売られ金利が上昇。ドル円は147円割れから148円台前半まで上昇。
3/3 トランプ大統領 「日本と中国が通貨安政策を取るなら、米国は不当に不利な立場に立たされる」 ドル円は149円台半ばから下落。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和