「ドル円1カ月ぶりに146円台に」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は大幅に続伸。トランプ政権が英国との貿易協定に合意したことでリスク回避の流れが後退。米金利が上昇し、株価も上昇したことでドル円は146円17銭まで買われた。
- ユーロドルは続落。ドル高の流れから1.1212まで売られる。
- 米英の貿易協定合意を好感し、株式市場では3指数が揃って続伸。
- 債券は大きく売られる。長期金利は4.37%台まで上昇。
- 金は続落し、原油は反発。
新規失業保険申請件数 → 22.8万件
NY連銀1年インフレ期待(4月) → 3.63%
************************
ドル/円 | 144.45 〜 146.17 |
---|---|
ユーロ/ドル | 1.1212 〜 1.1320 |
ユーロ/円 | 163.29 〜 163.90 |
NYダウ | +254.48 → 41,368.45 |
GOLD | −89.50 → 3,306.00ドル |
WTI | +1.84 → 59.91ドル |
米10年国債 | +0.109 → 4.378% |
本日の注目イベント
- 日 3月景気先行指数(CI)(速報値)
- 日 3月景気一致指数(CI)(速報値)
- 中 中国 4月貿易統計
- 米 NY連銀総裁、クーグラー理事、バー理事、基調講演(レイキャビク)
- 米 ウォラー理事、ボウマン理事、セントルイス連銀総裁、クリーブランド連銀総裁、パネル討論会に参加
本日のコメント
改めて「関税」がキ−ワードであることが確認された格好でした。
トランプ政権が英国との間で貿易協定に合意したと発表したことで、これまでの動きの巻き戻しが起こり、ドル円は1カ月ぶりに146円17銭まで上昇しました。今回の合意は4月2日に「相互関税」を発表して以来、最初の貿易相手国との合意になります。リスク回避の流れが後退したことで、株が買われ債券が売られ、米長期金利は大きく上昇し、これがドルを押し上げました。また、金は大きく売られています。日経平均先物も500円程買われていることから、今日の日経平均株価も大幅な上昇が見込まれます。
この動きは昨日の朝方にはすでに予見されていました。トランプ大統領がSNSで「非常に尊敬を集めている大国の代表との主要な貿易合意について、明日の朝発表する」と、国名は明かさずに投稿していました。ドル円は、この報道直後に142円台後半から143円台半ばまで買われています。結局、昨日1日だけで3円以上もドル高が進んだこととなり、筆者の個人的な想定に沿った動きとなり安心しているところです。ただ、このままドルが一本調子で上昇することはありません。筆者は上記SNSへの投稿では、相手国は「EU」ではないかと考えました。EUが8日に対米への報復関税の詳細を発表すると述べていたこともあり、その日に合わせて米国が合意したものと考えましたが、「非常に尊敬を集めている大国」との言葉を聞いて、EUではないと確信しました。トランプ氏とEUとの関係は、かつてないほど悪化しているからです。トランプ氏がEUに対して「尊敬」などといった言葉を使うはずもありません。
EUの執行機関である欧州委員会は昨日、予定通りトランプ政権との貿易交渉が決裂した場合の案を公表しました。およそ950億ユーロ(約15兆4800億円)規模の報復措置のリストです。その内容は、ボーイングの航空機、米国製自動車、バーボンなど、当初リストからは削除されていた工業製品を特に標的としています。フォンデアライエン欧州委員長は声明で、「米国との友好的な合意を目指す」としつつも、「あらゆる可能性に備えて準備を続ける」と強調していました。欧州委員会は、今週、米国との交渉を本格化させ、「トランプ関税」に対する友好的な解決策を探る方針ですが、米国とEUとの協議は今のところほとんど進展しておらず、米国の関税の大部分が維持される可能性が高いと見られています。
ロシアを訪問している中国の習近平国家主席は8日、モスクワでプーチン大統領と会談し、米国主導の世界秩序に対抗すべく、両国の同盟関係の強さをアピールしていました。ロシア大統領府に掲載された「世界の戦略的安定」に関する共同声明では、「中露は、『戦略的分野で蓄積された問題や困難が爆発寸前のところまで来ており、核戦争のリスクは増した』」と警告。「核大国は国際的な安全保障を確保するため建設的な関係を維持するべきだ」と呼び掛けていた。(ブルームバーグ)と伝えられています。ロシアは9日に第二次世界大戦の戦勝80周年を記念する式典を行う予定で、習氏以外にもブラジルのルラ大統領など20カ国以上の首脳が参列する模様です。
ドル円は戻りの節目である145円を大きく超えてきました。本日の東京時間でのドル円は、日本の株価も上昇すると思われることから底堅い動きを見せると予想します。今夜のNYでも145円以上で引けるようなら、これまでの140−145円のレンジから145−150円のレンジへと移行する足掛かりになるかもしれません。本日のドル円は144円80銭〜146円80銭程度を予想します。
佐藤正和の書籍紹介
![]() これだけ! FXチャート分析 三種の神器 |
![]() チャートがしっかり読めるようになるFX入門 |
What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
---|---|---|---|
5/7 | パウエル・FRB議長 | 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 | ドル円は143円台から144円まで上昇。 |
5/7 | FOMC声明文 | 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 | -------- |
4/24 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「6月までに明確かつ説得力のあるデータが得られ、その時点で進むべき正しい方向について判断できれば、委員会が動く可能性がある」 | -------- |
4/24 | ウォラー・FRB理事 | 「特に大規模な関税が再導入された場合、この先レイオフの増加や失業率の上昇が見られ始めても意外ではない。労働市場の悪化が顕著になれば、FRBの最大雇用の責務に基づき措置を講じることが重要だと考えられる」 | -------- |
4/23 | ベッセント・財務長官 | (日米通商交渉での)「通貨目標は一切ない」、「G7合意を尊重することを日本に期待している」 | ドル円は141円台後半から143円57銭まで買われる。 |
4/17 | ラガルド・ECB総裁 | 「貿易摩擦の激化が輸出を抑え、投資や個人消費に重荷になる」、「世界的な貿易混乱の拡大は、インフレ見通しの不確実性を高めている」 | -------- |
4/16 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「二重の責務の両面から圧力がかかることが想定される状況下では、インフレのさらなる高止まりのリスクと労働市場の減速に伴うリスクとの間でバランスを保つため、金融政策を現状維持とする根拠は強いと考える」、「明確さを得るのが困難な場合には、追加データを待つことが今後の道筋を見極める一助となるだろう」 | -------- |
4/16 | パウエル・FRB議長 | 「長期のインフレ期待をしっかり抑制し続け、物価水準の一時的上昇が継続的インフレ問題にならないよう確実に対処することが、われわれの責務だ」、「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」 | -------- |
4/4 | クルーズ・米上院議員 | 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 | -------- |
4/4 | ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 | 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 | -------- |
4/4 | ベッセント・米財務長官 | 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 | -------- |
4/3 | ジェファーソン・FRB副議長 | 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 | -------- |
4/3 | クック・FRB理事 | 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 | -------- |
4/2 | トランプ・米大統領 | 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 | -------- |
4/1 | フォンデアライエン・欧州委員長 | 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書