今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米中協議進展」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は144円台後半から145円台前半で小動き。ウイリアムズNY連銀総裁の発言も材料にはならず。
  • ユーロドルは1.12台でもみ合い。
  • 株式市場はまちまち。ナスダックはほぼ横ばいの中、他の2指数は小幅安。
  • 債券相場は変わらず。長期金利は前日と同じく4.37%台で推移。
  • 金と原油は買われる。
ドル/円 144.83 〜 145.36
ユーロ/ドル 1.1246 〜 1.1293
ユーロ/円 163.30 〜 163.64
NYダウ −119.07 → 41,249.38
GOLD +38.00 → 3,344.00ドル
WTI +1.11 → 61.02ドル
米10年国債 ±0 → 4.378%

本日の注目イベント

  • 日 3月貿易収支
  • 日 3月国際収支・経常収支
  • 日 4月景気ウオッチャー調査
  • 米 4月財政収支
  • 米 クーグラー・FRB理事講演 (ダブリン)

本日のコメント

先週末のNYでは145円30銭辺りで引けたドル円が、今朝は大きく上方に窓を開け146円台に乗せて取引が始まりました。

米国と中国が11日まで2日間にわたってスイスで開催した貿易協議で「大きな進展」があったことが報じられ、これがドルを押し上げています。詳しい内容はまだ分かっていませんが、ベッセント財務長官とグリアUSTR代表が協議を終えた後記者団に「米中協議で著しい進展があった」と述べました。詳細についてはスイス時間12日に説明するとしています。中国の何立峰副首相も「今後の協議に向けた枠組みを設けることで、両国が一致した」と述べ、共同声明の発表も約束していました。また、中国商務省の李次官もジュネーブでの会見で、「中国には『料理がおいしければ、出される時間は問題ではない』という表現がある。発表のタイミングがいつであれ、世界にとって朗報になるだろう」と話していました。(ブルームバーグ)トランプ大統領もすでに協議の始まる前に、「関税率は80%ほどになる」ことを示唆していました。米中は100%を大きく超える関税率の応酬を続けていましたが、そもそもこの関税率は現実的ではなく、いずれ双方が歩み寄ってくると思われていました。果たして80%で合意したのか、あるいはそれ以下の水準になるのか、今夜には判明しそうです。

ウクライナ問題にも、やや明るさが出てきました。「3日間の停戦」を提案したロシアのプーチン大統領に対して、「30日間の停戦が必要」とウクライナのゼレンスキー大統領が答えていましたが、今度はプーチン氏が「15日にトルコのイスタンブールで、いかなる前提条件もなく直接協議を行う」ことを提案しています。これに対してゼレンスキー氏は「15日にトルコでプーチン氏を待っている」とSNSに投稿しています。ただ依然としてウクライナではロシアによる攻撃で甚大な被害が出ている中、積極的にウクライナ支援を続けているイギリスやフランスなどは、「まずは停戦合意が先」と直接の協議には消極的です。ここでもトランプ氏が関与しており、トランプ氏は「直ちに会談を」とSNSで訴えています。一触即発の状況にあったインドとパキスタンとの衝突も、突然両国が停戦に合意しました。これもトランプ氏の働き掛けがあった模様で、この点は大いに評価したいと思います。3年以上続いたウクライナ戦争も、そろそろ停戦を迎えることが出来るかもしれません。

ドル円は今朝146円29銭まで上昇し、先週8日に記録した146円17銭を、わずかですが上回りました。日足チャートではまだ一目均衡表の「雲の下限」(147円90銭)には道のりがありますが、わずかですがドル上昇の「兆候」は見られます。今朝の時点では転換線(144円22銭)が基準線(144円08銭)を上回る「好転」が実現しています。過去9日間の高値と安値の真ん中のレートである転換線が、同じく過去26日間のレートを上回るということは、直近のレートが上昇していることを表しています。145−150円の新しいレンジに入ったかどうかは、まだ分かりませんが、基本的には投機筋など「ショート筋のドル買戻し」によるものだと考えています。ドルが上昇すれば、輸出筋などが確実にドル売りを持ち込む動きはまだ変わっていないと思われます。

本日のドル円は145円〜147円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
5/7 パウエル・FRB議長 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 ドル円は143円台から144円まで上昇。
5/7 FOMC声明文 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 --------
4/24 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「6月までに明確かつ説得力のあるデータが得られ、その時点で進むべき正しい方向について判断できれば、委員会が動く可能性がある」 --------
4/24 ウォラー・FRB理事 「特に大規模な関税が再導入された場合、この先レイオフの増加や失業率の上昇が見られ始めても意外ではない。労働市場の悪化が顕著になれば、FRBの最大雇用の責務に基づき措置を講じることが重要だと考えられる」 --------
4/23 ベッセント・財務長官 (日米通商交渉での)「通貨目標は一切ない」、「G7合意を尊重することを日本に期待している」 ドル円は141円台後半から143円57銭まで買われる。
4/17 ラガルド・ECB総裁 「貿易摩擦の激化が輸出を抑え、投資や個人消費に重荷になる」、「世界的な貿易混乱の拡大は、インフレ見通しの不確実性を高めている」 --------
4/16 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「二重の責務の両面から圧力がかかることが想定される状況下では、インフレのさらなる高止まりのリスクと労働市場の減速に伴うリスクとの間でバランスを保つため、金融政策を現状維持とする根拠は強いと考える」、「明確さを得るのが困難な場合には、追加データを待つことが今後の道筋を見極める一助となるだろう」 --------
4/16 パウエル・FRB議長 「長期のインフレ期待をしっかり抑制し続け、物価水準の一時的上昇が継続的インフレ問題にならないよう確実に対処することが、われわれの責務だ」、「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」 --------
4/4 クルーズ・米上院議員 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 --------
4/4 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 --------
4/4 ベッセント・米財務長官 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 --------
4/3 ジェファーソン・FRB副議長 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 --------
4/3 クック・FRB理事 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 --------
4/2 トランプ・米大統領 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 --------
4/1 フォンデアライエン・欧州委員長 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和