今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米4月CPI予想を下回る」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は反落。前日148円台半ばまで買われたドル円は米4月のCPIが予想を下回ったことで147円38銭まで下落。
  • ユーロドルは小幅に反発し、1.1194まで上昇。ユーロは対円でも165円20銭まで買われ、昨年11月上旬以来の高値に。
  • 株式市場はまちまち。ダウは269ドル下げたが、ナスダックは買われ、1万9000ポイントの大台を回復。
  • 債券はほぼ横ばいで、長期金利は4.46%台で推移。
  • 金は反発。原油は4日続伸。
****************
4月消費者物価指数 → 0.2%
****************
ドル/円 147.38 〜 148.26
ユーロ/ドル 1.1107 〜 1.1194
ユーロ/円 164.33 〜 165.20
NYダウ −269.67 → 42,140.43
GOLD +19.80 → 3,247.80ドル
WTI +1.72 → 63.67ドル
米10年国債 −0.006 → 4.465%

本日の注目イベント

  • 豪 豪第1四半期賃金指数
  • 独 独4月消費者物価指数(改定値)
  • 米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、座談会に参加
  • 米 ウォラー・FRB理事講演
  • 米 ジェファーソン・FRB副議長講演
  • 加 カナダ3月住宅建設許可件数

本日のコメント

「トランプ関税」を巡っては、米英に続き、米中でもポジティブ・サプライズを持って合意に達したことで、日米ではリスク資産の株式が大きく買われ、昨日の日経平均株価は3万8000円台を回復。これでほぼ「トランプ関税ショック」前の水準に戻しました。リスクオンが強まったことで、ドル円も148円台半ばまで戻し、これまでの140−145円のレンジを切り上げてきました。足元では新しいレンジに入った可能性もあります。

ただ、昨日は「米4月の消費者物価指数(CPI)」が市場予想ほど伸びていなかったことで、FRBによる利下げ観測がやや高まり、147円38銭まで売られています。4月のCPIは前月比で「0.2%」と、市場予想の「0.3%」を下回り、これで3か月連続で予想を下回ったことになります。今回のCPIでは、関税引き上げの影響を受ける項目では、予想されたような物価上昇は見られませんでした。これは、「輸入業者や小売り業者が一部の追加コストを吸収していることに加え、現在販売されている輸入品の多くが、主に中国に対する関税が本格的に発動される前に到着していたことを示唆する」(ブルームバーグ)ことにあるようです。一方で消費者は、旅行や娯楽といったサービス分野では、支出を抑えていることも明らかになっていました。「トランプ関税」が当初発表されたほど高税率ではなかったことで安心感は出てきたものの、まだ高い不確実性は払拭されていません。

トランプ大統領は昨日から中東歴訪に向かいました。最初の訪問国のサウジアラビアでは、サルマン皇太子と会談を行い、サルマン氏はそれまでサウジが米国に6000億ドル(約88兆5000億円)の投資を行うとしていたものを、1兆ドルに引き上げることを約束した模様です。サウジは10社余りの米防衛企業から戦闘装備などを購入することになると、ホワイトハウスは説明しています。トランプ氏はこの歴訪の中で、トルコを訪れロシアとウクライナの停戦協議に参加し、存在感をアピールする意向も示しています。市場の関心はこの後、日米通商交渉がどのような決着を見せるのかに集まっています。ただ、ここにきて米国との関税協議は時間がかかるとの見方が出てきました。ラトニック商務長官はブルームバーグとのインタビューで、「日本や韓国との間では多大な時間が必要で、取引は早急にはまとまらないだろう」と述べていました。また赤沢大臣は米中が合意に達したことに触れ、「各国の立場や状況はまちまち。協議のスケジュールや合意の内容が異なるのは自然。(米国は)我が国を非常に重要と考えている。現時点で米国の認識は変わっていないと理解している」と話しています。次回の協議は米国側の外交事情もあり、5月下旬以降になると見られています。ただ、トランプ氏は日本だけを「特別扱いはしない」ことを示唆していました。

本日のドル円は146円30銭〜148円30銭程度を予想します。

佐藤正和の書籍紹介

これだけ! FXチャート分析 三種の神器

これだけ! FXチャート分析 三種の神器
著者:佐藤正和
出版社:クロスメディア・パブリッシング

チャートがしっかり読めるようになるFX入門

チャートがしっかり読めるようになるFX入門
著者:佐藤正和
出版社:翔泳社

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
5/7 パウエル・FRB議長 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 ドル円は143円台から144円まで上昇。
5/7 FOMC声明文 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 --------
4/24 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「6月までに明確かつ説得力のあるデータが得られ、その時点で進むべき正しい方向について判断できれば、委員会が動く可能性がある」 --------
4/24 ウォラー・FRB理事 「特に大規模な関税が再導入された場合、この先レイオフの増加や失業率の上昇が見られ始めても意外ではない。労働市場の悪化が顕著になれば、FRBの最大雇用の責務に基づき措置を講じることが重要だと考えられる」 --------
4/23 ベッセント・財務長官 (日米通商交渉での)「通貨目標は一切ない」、「G7合意を尊重することを日本に期待している」 ドル円は141円台後半から143円57銭まで買われる。
4/17 ラガルド・ECB総裁 「貿易摩擦の激化が輸出を抑え、投資や個人消費に重荷になる」、「世界的な貿易混乱の拡大は、インフレ見通しの不確実性を高めている」 --------
4/16 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「二重の責務の両面から圧力がかかることが想定される状況下では、インフレのさらなる高止まりのリスクと労働市場の減速に伴うリスクとの間でバランスを保つため、金融政策を現状維持とする根拠は強いと考える」、「明確さを得るのが困難な場合には、追加データを待つことが今後の道筋を見極める一助となるだろう」 --------
4/16 パウエル・FRB議長 「長期のインフレ期待をしっかり抑制し続け、物価水準の一時的上昇が継続的インフレ問題にならないよう確実に対処することが、われわれの責務だ」、「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」 --------
4/4 クルーズ・米上院議員 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 --------
4/4 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 --------
4/4 ベッセント・米財務長官 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 --------
4/3 ジェファーソン・FRB副議長 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 --------
4/3 クック・FRB理事 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 --------
4/2 トランプ・米大統領 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 --------
4/1 フォンデアライエン・欧州委員長 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 --------
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和