「米4月のPPI予想以上に低下」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円はじり安の展開。4月の米PPIが予想以上に低下していたことで、金利が急低下。ドル円は145円42銭まで売られる。
- ユーロドルは小幅に続伸し、1.1223まで上昇。
- 株式市場はまちまちの展開。配当利回りの高い銘柄が買われ、ダウは271ドル高。
- 債券は買われ、長期金利は4.43%台へと急低下。
- 金は反発し、原油は続落。
新規失業保険申請件数 → 22.9万件
4月生産者物価指数 → −0.5%
4月小売売上高 → 0.1%
5月NY連銀製造業景況指数 → −9.2%
5月フィラデルフィア連銀景況指数 → −4.0
4月鉱工業生産 → 0.0%
4月設備稼働率 → 77.7%
5月NAHB住宅市場指数 → 34
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ドル/円 | 145.42 〜 146.26 |
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ユーロ/ドル | 1.1170 〜 1.1223 |
ユーロ/円 | 162.74 〜 163.58 |
NYダウ | +271.69 → 42,322.75 |
GOLD | +38.30 → 3,226.60ドル |
WTI | −1.53 → 61.62ドル |
米10年国債 | −0.105 → 4.431% |
本日の注目イベント
- 日 1−3月GDP(速報値)
- 日 3月鉱工業生産(確定値)
- 欧 ユーロ圏3月貿易収支
- 米 4月住宅着工件数
- 米 4月建設許可件数
- 米 4月輸入物価指数
- 米 4月輸出物価指数
- 米 5月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
- 米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、大学でスピーチ
本日のコメント
米4月の生産者物価指数(PPI)が予想外の低下でした。前月比で「−0.5%」(市場予想は−0.2%)と、5年ぶりの大幅な落ち込みでした。前年同月比では「2.4%」の上昇になりますが、これも市場予想を下回っています。ブルームバーグは今回の統計からは、「米国の製造・サービス業が現時点では関税引き上げの影響を価格に転嫁することを控えている様子がうかがえる。生産者は関税により輸入原材料などで打撃を受けているが、消費者への影響はこれまでのところ限定的だ」と分析しています。先に発表されたCPIも予想を下回る結果を示しおり、今後「トランプ関税」がどこまで影響するのか不透明な部分はありますが、FRBによる「年内2回の利下げ」というメインシナリオは、現時点では維持されそうです。
注目されたトルコでのロシアとウクライナの停戦に向けた協議では、結局プーチン大統領は姿を見せず、ロシアは代表団を送り込んだだけでした。プーチン氏はゼレンスキー大統領に自分から15日にトルコで会うと言っておきながら、出席を見送りました。これに関してトランプ大統領は「私とプーチン氏が会うまでは、何も起こらない。プーチン氏は行くつもりだったが、私が行くと思ったのだろう。私が行かなければ、プーチン氏も行かない」とUAEに向かう大統領専用機の中で話していました。ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアの代表団について、「見せかけだ」と一蹴し、「無条件の停戦などは、首脳が直接会談して決定することが必要だ。自分はここにいる。われわれには直接交渉の用意がある」と話していました。今週に入り、両国の首脳会談の機運が高まり、3年以上も続いている戦争も停戦合意の可能性が高まっていましたが、両首脳の会談が実現しなかったことで、停戦の可能性は大きく後退してきました。
今朝の経済紙には、今回のトランプ氏の中東歴訪について「米国とイスラエルとの関係に変化が見られる」といった記事がありました。第一次トランプ政権では、中東歴訪時の最初の訪問国はサウジアラビアで今回と同様でしたが、次に向かったのはイスラエルでした。今回2番目に訪問した国はクウェートでイスラエルに立ち寄る予定はないそうです。どうやら、米国は強硬姿勢を維持しているイスラエルが中東の不安要因になることを懸念しているようです。とりわけイスラエルが、イランの核関連施設を攻撃する可能性を排除していない点を重視している模様です。イスラエルのネタニヤフ首相も、強い後ろ盾になっている米国が同国と距離を置くようだと、ガザに対する対応にも変化が出てくるかもしれません。
日本の米国との関税交渉は米国の外交的日程から、今月下旬から来月にかけて行われると見られていましたが、赤沢経済財政・再生相が、来週の20−22日にカナダで開催される「G7」会合に合わせて「第3回目の交渉」を行う方向で調整しているようです。「G7」を終えて米国に帰国するベッセント財務長官に合わせて、農産物の輸入拡大などの交渉カードを用意し、米政府による関税引き下げを求めるようです。「G7」では、加藤財務相もベッセント財務長官と為替に関する協議を行いたいとしており、ベッセント財務長官は今まさに、日本にとっての「意中の人」になっています。ただ、第1回目会談と同じように、トランプ氏の「介入」もあるかもしれません。そうなれば、「日本だけを特別扱いはしない」と述べているだけに、交渉も簡単ではないかもしれません。
本日のドル円は144円50銭〜146円50銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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5/7 | パウエル・FRB議長 | 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 | ドル円は143円台から144円まで上昇。 |
5/7 | FOMC声明文 | 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 | -------- |
4/24 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「6月までに明確かつ説得力のあるデータが得られ、その時点で進むべき正しい方向について判断できれば、委員会が動く可能性がある」 | -------- |
4/24 | ウォラー・FRB理事 | 「特に大規模な関税が再導入された場合、この先レイオフの増加や失業率の上昇が見られ始めても意外ではない。労働市場の悪化が顕著になれば、FRBの最大雇用の責務に基づき措置を講じることが重要だと考えられる」 | -------- |
4/23 | ベッセント・財務長官 | (日米通商交渉での)「通貨目標は一切ない」、「G7合意を尊重することを日本に期待している」 | ドル円は141円台後半から143円57銭まで買われる。 |
4/17 | ラガルド・ECB総裁 | 「貿易摩擦の激化が輸出を抑え、投資や個人消費に重荷になる」、「世界的な貿易混乱の拡大は、インフレ見通しの不確実性を高めている」 | -------- |
4/16 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「二重の責務の両面から圧力がかかることが想定される状況下では、インフレのさらなる高止まりのリスクと労働市場の減速に伴うリスクとの間でバランスを保つため、金融政策を現状維持とする根拠は強いと考える」、「明確さを得るのが困難な場合には、追加データを待つことが今後の道筋を見極める一助となるだろう」 | -------- |
4/16 | パウエル・FRB議長 | 「長期のインフレ期待をしっかり抑制し続け、物価水準の一時的上昇が継続的インフレ問題にならないよう確実に対処することが、われわれの責務だ」、「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」 | -------- |
4/4 | クルーズ・米上院議員 | 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 | -------- |
4/4 | ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 | 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 | -------- |
4/4 | ベッセント・米財務長官 | 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 | -------- |
4/3 | ジェファーソン・FRB副議長 | 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 | -------- |
4/3 | クック・FRB理事 | 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 | -------- |
4/2 | トランプ・米大統領 | 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 | -------- |
4/1 | フォンデアライエン・欧州委員長 | 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書