今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ムーディーズ、米国債を格下げ」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 米長期金利が上昇したことでドル円は146円台に乗せる場面があったものの、その後下落。ムーディーズが米国債の格付けを引き下げたことも重石に。
  • ユーロドルは1.11台から反発。
  • 株式市場では3指数が揃って上昇。ダウは331ドル買われ、S&P500も41ポイント高。
  • 債券は売られ、長期金利は4.47%台に上昇。
  • 金は反落し、原油は反発。
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4月住宅着工件数 → 136.1万件
4月建設許可件数 → 141.2万件
4月輸入物価指数 → 0.1%
4月輸出物価指数 → 0.1%
5月ミシガン大学消費者マインド(速報値) → 50.8
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ドル/円 145.40 〜 146.08
ユーロ/ドル 1.1131 〜 1.1205
ユーロ/円 162.53 〜 163.10
NYダウ +331.99 → 42,654.74
GOLD −39.40 → 3,187.20ドル
WTI +0.87 → 62.49ドル
米10年国債 +0.045 → 4.477%

本日の注目イベント

  • 中 中国4月小売売上高
  • 中 中国4月鉱工業生産
  • 欧 ユーロ圏4月消費者物価指数(改定値)
  • 米 4月景気先行指標総合指数
  • 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁、開会挨拶
  • 米 ローガン・ダラス連銀総裁、パネル討論会で司会
  • 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁、討論会で発言
  • 米 ジェファーソン・FRB副議長講演

本日のコメント

先週ドル円は一時148円台半ばまで買われ、筆者はこれで新しいレンジである145−150円に入った可能性も意識していましたが、格付け会社、「ムーディーズ・レーティングス」が16日、米国の長期発行体格付けと無担保優先債格付けを最上位の「Aaa」(トリプルA相当)から「Aa1」(ダブルAクラス)に1段階引き下げたと発表したことで、上値を重くしてきました。すでにS&Pなどが、米国債の格付けを最上級から引き下げており、この格下げ自体に驚きはありませんが、タイミングはサプライズでした。ムーディーズは格下げの理由を、「歴代の米政権と議会は、巨額の年間財政赤字と金利負担の増加傾向を反転させる措置で合意できなかった。米国が持つ経済・財政の著しい強さは認識しているが、これらの強みだけで財政指標の悪化をもはや完全に埋め合わせることはできない」としています。

これに対してベッセント財務長官は18日のNBCの番組で、「ムーディーズは遅行指標だ。それが格付け会社に対する一般的な見方だ」と述べ、「米経済は過去100日でここに至ったわけではない。この状況にしたのはバイデン政権とその4年間の支出であり、われわれはそれを引き継いだ」と主張し、さらに「現政権は歳出を削減し、経済を成長させる決意だ」と述べていました。(ブルームバーグ)長年続いている米国の財政赤字を、バイデン前政権だけのせいすることはできないと思いますが、因みに1985年の「プラザ合意」の前提にもなった「米国の双子の赤字」では、財政赤字の規模は2100億ドルでしたが、2024年にはこれが1兆8000億ドルと桁違いに増加しています。ムーディーズが指摘したように、これは歴代政権と議会の怠慢と言わざるを得ません。

ウクライナとロシア両首脳を欠いたトルコでの停戦に向けた協議は、やはり目立った進展は見られませんでした。ロシアの代表団は停戦の条件として、「危機の根本的な原因を取り除くものでなければならない」と、自国に有利な条件を主張し、ウクライナはこれを「時間かせぎだ」と批判していました。今回の協議はロシアのプーチン大統領が言い出したことです。プーチン氏が欠席した理由はよく分かりませんが、仮にプーチン氏が出席していたら、トランプ大統領も同席した可能性が高く、停戦に向けた協議は進展していた可能性もあります。ただ、今朝の情報ではトランプ氏は19日朝にプーチン氏とウクライナ戦争をどう終結させるかについて電話会談を行うとのことです。また、ゼレンスキー大統領は今月新教皇に選出されたレオ14世の就任を祝うミサに参列したことに合わせて、米国のバンス副大統領と会談しています。ウクライナ戦争の終結は依然として不透明ですが、状況から判断してイスラエルとハマスの戦いよりは早期に終結すると見ていますが、どうでしょう。

本日は、上記ムーディーズによる米国債の格下げを受けて市場がどのように反応するのか、見たいと思います。ややドルの上値は重く、NY市場まで見るのであればドルが売られる展開を予想しています。レンジ予想は144円〜146円程度といったところでしょうか。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
5/7 パウエル・FRB議長 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 ドル円は143円台から144円まで上昇。
5/7 FOMC声明文 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 --------
4/24 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「6月までに明確かつ説得力のあるデータが得られ、その時点で進むべき正しい方向について判断できれば、委員会が動く可能性がある」 --------
4/24 ウォラー・FRB理事 「特に大規模な関税が再導入された場合、この先レイオフの増加や失業率の上昇が見られ始めても意外ではない。労働市場の悪化が顕著になれば、FRBの最大雇用の責務に基づき措置を講じることが重要だと考えられる」 --------
4/23 ベッセント・財務長官 (日米通商交渉での)「通貨目標は一切ない」、「G7合意を尊重することを日本に期待している」 ドル円は141円台後半から143円57銭まで買われる。
4/17 ラガルド・ECB総裁 「貿易摩擦の激化が輸出を抑え、投資や個人消費に重荷になる」、「世界的な貿易混乱の拡大は、インフレ見通しの不確実性を高めている」 --------
4/16 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「二重の責務の両面から圧力がかかることが想定される状況下では、インフレのさらなる高止まりのリスクと労働市場の減速に伴うリスクとの間でバランスを保つため、金融政策を現状維持とする根拠は強いと考える」、「明確さを得るのが困難な場合には、追加データを待つことが今後の道筋を見極める一助となるだろう」 --------
4/16 パウエル・FRB議長 「長期のインフレ期待をしっかり抑制し続け、物価水準の一時的上昇が継続的インフレ問題にならないよう確実に対処することが、われわれの責務だ」、「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」 --------
4/4 クルーズ・米上院議員 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 --------
4/4 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 --------
4/4 ベッセント・米財務長官 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 --------
4/3 ジェファーソン・FRB副議長 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 --------
4/3 クック・FRB理事 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 --------
4/2 トランプ・米大統領 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 --------
4/1 フォンデアライエン・欧州委員長 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和