「ムーディーズによる格下げの影響は限定的」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ムーディーズによる米国債の格下げの影響もありドル円は東京時間に144円台半ばまで下げたが影響は限定的。NYでは144円台後半から145円台前半の狭い範囲で推移。
- ユーロドルは1.12台の半ばを中心に上下25ポイントで推移。
- 株式市場は下落して取引が始まったが、3指数は揃って小幅高。ダウは137ドル高と3日続伸。
- 債券は買われ、長期金利は4.44%台に低下。
- 金は大幅に反発し、原油は小幅に続伸。
4月景気先行指標総合指数 → −1.0%
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ドル/円 | 144.79 〜 145.22 |
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ユーロ/ドル | 1.1224 〜 1.1273 |
ユーロ/円 | 162.72 〜 163.36 |
NYダウ | +137.33 → 42,792.07 |
GOLD | +46.30 → 3,233.50ドル |
WTI | +0.20 → 62.69ドル |
米10年国債 | −0.030 → 4.447% |
本日の注目イベント
- 豪 RBA、キャッシュターゲット
- 独 独4月生産者物価指数
- 欧 ユーロ圏3月経常収支
- 欧 ユーロ圏5月消費者信頼感指数(速報値)
- 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁、開会挨拶
- 米 ムサレム・セントルイス連銀総裁講演
- 米 バーキン・リッチモンド連銀総裁講演
- 米 ローガン・ダラス連銀総裁とデーリー・サンフランシスコ連銀総裁、基調講演
- 加 G7(カナダ、バンフ、23日まで)
本日のコメント
先週末のムーディーズによる米国債の格下げで、ドル円は一時144円台半ばまで売られ、NY株式市場も寄り付き後下げる場面がありましたが、大きな影響はなかったようです。結局、ドル円は144円台後半から145円台で推移し、NY株式市場は3指数が小幅高。債券市場では債券がやや買われ、金利が低下して取引を終えています。ただ、ドルの代替品としての金は大きく買われました。
トランプ大統領は19日、ロシアのプーチン大統領と電話会談後、ロシアとウクライナが停戦に向けた交渉を「即時」開始するとSNSに投稿しました。「より重要なことは戦争を終結させることだ。その条件は両国間で協議されることになる」と述べています。プーチン氏との2時間超に及ぶ電話会談の内容については、欧州の首脳にも説明したと述べ、さらにバチカンが交渉の仲介を申し出ていることも明らかにしています。プーチン氏も会談終了後にソチで「率直かつ有意義な話し合いだった」と述べ、一定の条件が整えばウクライナとの停戦協議を進める可能性を示唆していました。ただ今回の会談では今後の具体的な計画は示されておらず、停戦が実現するのかどうかは依然として不透明です。欧州からも「米ロ会談には失望」との声も上がっていました。
FOMCメンバーの講演や発言がありましたが、いずれも足元の不確実性を考えると、しばらく様子を見る必要があるとの見方で一致していました。アトランタ連銀のボスティック総裁は、「経済は非常に流動的で、政策も流動的だ。不確実性が非常に高い。事態の落着き先が見えて来るまで3―6カ月は待つ必要があるだろう」と述べ、NY連銀のウィリアムズ総裁も、「何が起きているのかをわれわれが理解するのは、6月でも7月でもないだろう」と述べ、「現行の米金融政策はやや景気抑制的であり、良い位置にある」との認識を示していました。また、ジェファーソンFRB副議長も、「現在直面している不確実性の大きさを踏まえると、今後の政策の展開やその影響を見極めるために静観するのが適切だ」と発言し、「物価水準の上昇が持続的なインフレにつながらないようにするのがFRBにとって重要だ」と話していました。
石破首相は昨日の参院予算委員会で、日本の財政事情は極めて悪く、消費税など減税財源を国債の発行で確保するとの主張には賛同できないとの考えを改めて示していました。首相は、「金利のある世界の恐ろしさをよく認識する必要がある」とし、「日本の財政状況は間違いなく極めてよろしくない。ギリシャよりよろしくない状況だ」と予算委員会で述べていました。おそらく財務省の筋書通りに答えたものと思われますが、かつて「ユーロ危機」の際に、これと似た発言があったことを思い出しました。「ユーロ危機」が拡大し、ギリシャやポルトガル、フランスなどの国債までもが大きく売られた時でした。ギリシャよりも財政状況が悪い日本も、ギリシャのように国債が売られ金利が急騰するリスクはないのかといった懸念に対して政府は、「日本は世界最大の債権国だ。ギリシャとは全く異なり、懸念する必要はない」といった回答でした。消費税をゼロもしくは5%に引き下げ、その財源を国債で賄うという野党の「楽観論」に対して反論したものですが、ギリシャをうまく使い分けているような印象もします。「消費税」は、この夏の参院選を巡る大きな焦点の一つです。
本日のドル円は144円〜145円80銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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5/7 | パウエル・FRB議長 | 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 | ドル円は143円台から144円まで上昇。 |
5/7 | FOMC声明文 | 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 | -------- |
4/24 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「6月までに明確かつ説得力のあるデータが得られ、その時点で進むべき正しい方向について判断できれば、委員会が動く可能性がある」 | -------- |
4/24 | ウォラー・FRB理事 | 「特に大規模な関税が再導入された場合、この先レイオフの増加や失業率の上昇が見られ始めても意外ではない。労働市場の悪化が顕著になれば、FRBの最大雇用の責務に基づき措置を講じることが重要だと考えられる」 | -------- |
4/23 | ベッセント・財務長官 | (日米通商交渉での)「通貨目標は一切ない」、「G7合意を尊重することを日本に期待している」 | ドル円は141円台後半から143円57銭まで買われる。 |
4/17 | ラガルド・ECB総裁 | 「貿易摩擦の激化が輸出を抑え、投資や個人消費に重荷になる」、「世界的な貿易混乱の拡大は、インフレ見通しの不確実性を高めている」 | -------- |
4/16 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「二重の責務の両面から圧力がかかることが想定される状況下では、インフレのさらなる高止まりのリスクと労働市場の減速に伴うリスクとの間でバランスを保つため、金融政策を現状維持とする根拠は強いと考える」、「明確さを得るのが困難な場合には、追加データを待つことが今後の道筋を見極める一助となるだろう」 | -------- |
4/16 | パウエル・FRB議長 | 「長期のインフレ期待をしっかり抑制し続け、物価水準の一時的上昇が継続的インフレ問題にならないよう確実に対処することが、われわれの責務だ」、「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」 | -------- |
4/4 | クルーズ・米上院議員 | 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 | -------- |
4/4 | ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 | 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 | -------- |
4/4 | ベッセント・米財務長官 | 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 | -------- |
4/3 | ジェファーソン・FRB副議長 | 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 | -------- |
4/3 | クック・FRB理事 | 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 | -------- |
4/2 | トランプ・米大統領 | 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 | -------- |
4/1 | フォンデアライエン・欧州委員長 | 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書