「日米財務相、為替は市場が決めるとの認識で一致」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- 東京時間に143円台半ばまで売られたドル円は、NYでは一旦下値を試したが143円30銭止まり。
- ユーロドルは続伸し、1.1362まで上昇。
- 株式市場は米財政懸念から3指数が大きく下落。ダウは816ドル下げ、ナスダックは270ポイント安。
- 債券は大幅に続落。20年債入札が不調に終わったことをきっかけに、10年債も売られ、長期金利は一時4.6%台まで急騰。
- 金は大幅に続伸。原油は続落。
ドル/円 | 143.30 〜 143.80 |
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ユーロ/ドル | 1.1315 〜 1.1362 |
ユーロ/円 | 162.60 〜 163.11 |
NYダウ | −816.80 → 41,860.44 |
GOLD | +28.90 → 3,313.50ドル |
WTI | −0.46 → 61.57ドル |
米10年国債 | +0.112 → 4.599% |
本日の注目イベント
- 日 野口日銀審議委員、宮崎県金融経済懇談会で講演
- 独 独5月ifo景況感指数
- 独 独5月製造業PMI(速報値)
- 独 独5月サービス業PMI(速報値)
- 欧 ユーロ圏5月製造業PMI(速報値)
- 欧 ユーロ圏5月サービス業PMI(速報値)
- 欧 ECB議事要旨
- 英 英5月製造業PMI(速報値)
- 英 英5月サービス業PMI(速報値)
- 米 5月S&Pグローバル製造業PMI(速報値)
- 米 5月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値)
- 米 5月S&Pグローバル総合PMI(速報値)
- 米 4月中古住宅販売件数
- 米 新規失業保険申請件数
- 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁、基調講演
- 米 バーキン・リッチモンド連銀総裁、座談会に出席
本日のコメント
昨日の東京時間からドルの上値は重く、144円を割り込み、東京時間内ですでに143円台半ばまでドル安が進んでいました。NYでは金利が大幅に上昇したものの、ドルへの支援材料とはならず、結局、株と債券とドルが売られる「トリプル安」の様相を見せました。
きっかけは米20年債の入札でした。普段、20年債は投資家からの関心も低く、市場の話題に上ることもほとんどありません。昨日の20年債の入札(160億ドル相当)の入札が不調だったことで、その流れが10年債にも波及し、10年債が大きく売られ長期金利は急騰しました。米金利が上昇したことで、その影響は株式市場にも及び、ダウは800ドルを超える大幅安でした。金利高にもかかわらずドルも売られ、4月2日の「相互関税」発表以降に見られた「米国売り」の様相が再現した形になりました。ただ、NYでは143円30銭まで売られたドル円でしたが、今朝の早い時間に加藤財務相とベッセント財務長官との会談の内容が報じられたことで、ドル円は143円台半ばから144円40銭近辺まで反発しています。両財務相がカナダのバンフで会談し、「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」と、米財務省が声明で明らかにしたことがその背景です。もっとも、この内容は想定通りで、「為替は市場で決定されるべき」との考えは両者で一致していました。ドル安への要求がなかったことは「ほっと」しますが、織り込み済みと言えるでしょう。
先週、格付け会社ムーディーズによる米国債の格下げが発表されて以来、米国の財政状況にも市場の目が注がれてきましたが、そんな中、トランプ大統領が掲げる税制改革法案で、州・地方税(SALT)控除上限を4万ドル(約575万円)に引き上げる案で共和党が合意に達し、ハードルが一つクリアされました。これが財政悪化につながる懸念があることで20年債の入札不調にもつながったとの見方です。「最近の市場で米国債利回りと円相場との乖離が見られる。これが米財政リスクの拡大を示す最も重要な指標だ。慎重な外国人投資家は米国債から資金を引き上げている兆候だ」といった声があることをブルームバーグは紹介しています。
ロシアとウクライナの戦争終結の可能性が取りざたされる中、イスラエルとハマスとの闘いはむしろ過激化しているようです。イスラエルのネタニヤフ首相はハマスに対してさらに強硬な姿勢を見せ、米国による支援など不要と思えるほどの強行姿勢に変わってきました。昨日は、イスラエル軍の兵士が、ヨルダン川西岸のジェニンを訪問していたEUや英国など各国・地域の外交団に対し、誤って警告射撃を行うという事態がありました。イスラエル国防軍によると、外交団は事前に承認されたルートを逸脱しており、現場は「戦闘中の地域」とされていたようです。幸い負傷者はいなかったようですが、外交団には日本の代表も含まれているとのことです。
本日のドル円は142円50銭〜144円50銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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5/20 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 | -------- |
5/20 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 | 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。 |
5/7 | パウエル・FRB議長 | 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 | ドル円は143円台から144円まで上昇。 |
5/7 | FOMC声明文 | 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 | -------- |
4/24 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「6月までに明確かつ説得力のあるデータが得られ、その時点で進むべき正しい方向について判断できれば、委員会が動く可能性がある」 | -------- |
4/24 | ウォラー・FRB理事 | 「特に大規模な関税が再導入された場合、この先レイオフの増加や失業率の上昇が見られ始めても意外ではない。労働市場の悪化が顕著になれば、FRBの最大雇用の責務に基づき措置を講じることが重要だと考えられる」 | -------- |
4/23 | ベッセント・財務長官 | (日米通商交渉での)「通貨目標は一切ない」、「G7合意を尊重することを日本に期待している」 | ドル円は141円台後半から143円57銭まで買われる。 |
4/17 | ラガルド・ECB総裁 | 「貿易摩擦の激化が輸出を抑え、投資や個人消費に重荷になる」、「世界的な貿易混乱の拡大は、インフレ見通しの不確実性を高めている」 | -------- |
4/16 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「二重の責務の両面から圧力がかかることが想定される状況下では、インフレのさらなる高止まりのリスクと労働市場の減速に伴うリスクとの間でバランスを保つため、金融政策を現状維持とする根拠は強いと考える」、「明確さを得るのが困難な場合には、追加データを待つことが今後の道筋を見極める一助となるだろう」 | -------- |
4/16 | パウエル・FRB議長 | 「長期のインフレ期待をしっかり抑制し続け、物価水準の一時的上昇が継続的インフレ問題にならないよう確実に対処することが、われわれの責務だ」、「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」 | -------- |
4/4 | クルーズ・米上院議員 | 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 | -------- |
4/4 | ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 | 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 | -------- |
4/4 | ベッセント・米財務長官 | 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 | -------- |
4/3 | ジェファーソン・FRB副議長 | 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 | -------- |
4/3 | クック・FRB理事 | 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 | -------- |
4/2 | トランプ・米大統領 | 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 | -------- |
4/1 | フォンデアライエン・欧州委員長 | 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書