今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ミランCEA委員長、ドル高を支持」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 上値の重い展開のドル円は、東京市場の終了時には142円80銭前後まで下落。ただその後は欧州市場でドルは買い戻され、NYでは144円33銭と、大幅反発。
  • ユーロドルは1.13台前半まで買われたが、その後反落。
  • 株式市場はまちまち。ナスダックは小幅に上昇したが、他の2指数は小幅安。
  • 債券は反発。長期金利は一時4.62%台まで上昇後大幅に低下。
  • 金は4日ぶりに反落。原油は小幅に続落。
  • 5月S&Pグローバル製造業PMI(速報値) → 52.3
  • 5月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値) → 52.3
  • 5月S&Pグローバル総合PMI(速報値) → 52.1
  • 4月中古住宅販売件数 → 4.00百万件
  • 新規失業保険申請件数 → 22.7万件
ドル/円 143.27 〜 144.33
ユーロ/ドル 1.1255 〜 1.1315
ユーロ/円 161.81 〜 162.62
NYダウ −1.35 → 41,859.09
GOLD −18.50 → 3,295.00ドル
WTI −0.37 → 61.20ドル
米10年国債 −0.070 → 4.529%

本日の注目イベント

  • 日 4月消費者物価指数
  • 独 独1−3月期GDP(改定値)
  • 英 英4月小売売上高
  • 米 4月新築住宅販売件数
  • 米 ムサレム・セントルイス連銀総裁、シュミッド・カンザスシティー連銀総裁討論会に参加
  • 米 クック・FRB理事講演
  • 加 カナダ3月小売売上高

本日のコメント

昨日の夕方、上値の重い展開が続いていたドル円は、欧州勢が参入したせいなのか、それまで維持していた143円台を割込み、142円80銭前後まで売られました。ただその勢いは続かず、欧州市場では143円台半ばを回復し、NYでは144円33銭までドルが買われました。

NYでドルが買い戻された理由の一つは、米大統領経済諮問委員会(CEA)のミラン委員長の発言でした。ミラン氏はブルームバーグとのインタビューで、「米国は強いドル政策を維持している」と発言。国際的なドル安協定の憶測について、「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」と述べ、米政府が密かにドル安誘導の国際的取り決めを画策しているとの見方を否定し、強いドルの利点を強調しました。米政府高官から「ドル高を支持する」との発言が出たことは、トランプ政権では初めてのことと思います。ただ、発言者がCEA委員長であるという点には注意が必要です。基本的には、為替に関するイッシューは財務省の所管であり、従ってベッセント財務長官がその最高責任者だからです。また、トランプ大統領自身、ドル安を示唆すような発言をたびたび行っていることもあり、この発言が米国政府を代表する発言とは捉えられないと考えます。その証拠に、発言を受けてドルは買い戻されましたが、その勢いは限定的であって、結局昨日の早朝、日米財務相会談では「為替は市場で決められるべきだとの認識で一致」との一報が入り、ドルが買われた水準である144円40銭を抜くことはありませんでした。市場参加者は冷静に対処したということになります。

ワシントンのユダヤ博物館前で21日夜、イスラエル大使館の職員2人が襲撃されましたが、犯人はシカゴ出身の白人でした。「反ユダヤ主義」に基づいた襲撃とみられていますが、ネタニヤフ首相の強硬な姿勢に対する抗議の意味合いもありそうです。トランプ大統領も直ちにSNSでコメントしていましたが、イスラエルが孤立化に向かっていることを象徴するような事件です。ネタニヤフ首相はイランの核施設を攻撃する準備もしていると伝えられていますが、イラン政府は、同国の施設をイスラエルが攻撃した場合には「壊滅的」な報復措置を取るとし、米国にも「法的責任を負わせる」と警告しています。

野口日銀審議委員は22日宮崎県で講演を行い、「政策金利を一段引き上げるごとに相応の時間をかけてその経済への影響を確認し、さらにその時々の上下リスクを十分に点検した後に次の利上げを決める」と、前進的なアプローチが必要と説明していました。さらに、物価基調はまだ目標地点には到達していないとしつつも、「さまざまな指標はそこに着実に近づいていることを示唆している」とも述べていました。

米国との関税協議を行うため本日羽田を飛び立つ赤沢経済再生担当相は、「これまでと変わらず粘り強く交渉にあたる」と述べていましたが、今朝の情報では、日本時間24日に行われる第3回目の協議後に一旦帰国し、再び訪米してベッセント財務長官と第4回目の協議に臨む意向だと報じられています。結局今回の交渉でのキーパーソンはベッセント氏であり、トランプ氏に最も近いのは同氏だと日本側は考えているようです。今回の協議でも最終的な関税率などは決まらず、市場には依然として不透明感が続くことになります。

本日のドル円は143円〜144円80銭程度を予想します。

佐藤正和の書籍紹介

これだけ! FXチャート分析 三種の神器

これだけ! FXチャート分析 三種の神器
著者:佐藤正和
出版社:クロスメディア・パブリッシング

チャートがしっかり読めるようになるFX入門

チャートがしっかり読めるようになるFX入門
著者:佐藤正和
出版社:翔泳社

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
5/22 ミラン・米大統領経済諮問委会(CEA)の委員長 「米国は強いドル政策を維持している」、(国際的なドル安協定の憶測について)「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」 ドル円は143円台半ばから144台前半まで買われる。
5/21 米財務省声明文 「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」(日米財務相会談を終えて) ドル円は143円台半ばから144円40銭まで上昇
5/20 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 --------
5/20 ムサレム・セントルイス連銀総裁 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。
5/7 パウエル・FRB議長 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 ドル円は143円台から144円まで上昇。
5/7 FOMC声明文 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 --------
4/24 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「6月までに明確かつ説得力のあるデータが得られ、その時点で進むべき正しい方向について判断できれば、委員会が動く可能性がある」 --------
4/24 ウォラー・FRB理事 「特に大規模な関税が再導入された場合、この先レイオフの増加や失業率の上昇が見られ始めても意外ではない。労働市場の悪化が顕著になれば、FRBの最大雇用の責務に基づき措置を講じることが重要だと考えられる」 --------
4/23 ベッセント・財務長官 (日米通商交渉での)「通貨目標は一切ない」、「G7合意を尊重することを日本に期待している」 ドル円は141円台後半から143円57銭まで買われる。
4/17 ラガルド・ECB総裁 「貿易摩擦の激化が輸出を抑え、投資や個人消費に重荷になる」、「世界的な貿易混乱の拡大は、インフレ見通しの不確実性を高めている」 --------
4/16 ハマック・クリーブランド連銀総裁 「二重の責務の両面から圧力がかかることが想定される状況下では、インフレのさらなる高止まりのリスクと労働市場の減速に伴うリスクとの間でバランスを保つため、金融政策を現状維持とする根拠は強いと考える」、「明確さを得るのが困難な場合には、追加データを待つことが今後の道筋を見極める一助となるだろう」 --------
4/16 パウエル・FRB議長 「長期のインフレ期待をしっかり抑制し続け、物価水準の一時的上昇が継続的インフレ問題にならないよう確実に対処することが、われわれの責務だ」、「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」 --------
4/4 クルーズ・米上院議員 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 --------
4/4 ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 --------
4/4 ベッセント・米財務長官 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 --------
4/3 ジェファーソン・FRB副議長 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 --------
4/3 クック・FRB理事 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 --------
4/2 トランプ・米大統領 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 --------
4/1 フォンデアライエン・欧州委員長 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 --------
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和