「トランプ大統領、EUに対する50%の関税賦課を延期」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は上値を重くし小動きの中、142円43銭まで売られる場面があった。トランプ大統領がEUに対して50%の関税を課すことを示唆したことが重荷に。
- ユーロドルは買われ、1.13台後半まで上昇。
- 株式市場では3指数が揃って下落。トランプ大統領のEUに対する高関税で再び貿易戦争の懸念が高まる。
- 債券は買われ、長期金利は小幅に低下。
- 金は大幅に反発。原油も小幅に上昇。
4月新築住宅販売件数 → 74.3万件
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ドル/円 | 142.43 〜 142.89 |
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ユーロ/ドル | 1.1299 〜 1.1370 |
ユーロ/円 | 161.07 〜 162.06 |
NYダウ | −256.00 → 41,603.07 |
GOLD | +70.80 → 3,365.80ドル |
WTI | +0.33 → 61.53ドル |
米10年国債 | −0.018 → 4.511% |
本日の注目イベント
- 日 3月景気先行指数(CI)(改定値)
- 日 3月景気一致指数(改定値)
- 欧 ラガルド・ECB総裁講演
- 独 独6月GFK消費者信頼調査
- 欧 ユーロ圏5月消費者信頼感(確定値)
- 英 LDN市場休場(バンクホリデー)
- 米 NY市場休場(メモリアルデー)
本日のコメント
トランプ大統領が仕掛けた関税について、ブルームバーグの委託で「ハリス・ポール」が実施した世論調査では、米国の成人の56%が、関税が発動されていなければ、家計状況はもっとよかっただろうと答えていました。また、約束されている関税の利益は、経済的な代償に見合わないとの回答も全体の52%に達していました。消費者の49%が、関税が経済に悪影響を及ぼすと予想し、経済的な恩恵になるとの回答比率は30%にとどまっていることも明らかになりました。「アメリカ・ファースト」を掲げて行った関税の大幅引き上げも、多くの米国人が、その効果を疑問視していることになります。
その関税ですが、トランプ氏はEUに対して再び強硬な姿勢を見せています。トランプ氏は23日、EUが貿易交渉で譲歩しなければ6月1日から「50%の関税を課すべきだ」と表明しました。EUの執行機関である欧州委員会はすでに米国に対する報復関税を公表しています。1000億ユーロ(約16兆円)規模の対象品目には、自動車や航空機といった製品の他に、バーボンウイスキーや冷凍オレンジジュースといった米国の特産品も含まれていました。EUは回避に向け米国と集中的に協議するものの、交渉が決裂に終われば、報復関税の発動も視野に入れている模様です。ドイツの財務相は、「真剣な交渉が必要だ。米国の関税は、少なくともドイツや欧州経済と同様に米経済をも危険にさらしている。この貿易対立は誰にとっても悪影響になる。早急に終結させなければならない」と、独ビルト紙で述べています。またトランプ氏は、中国やインドで生産しているアップルのiPhoneに対しても、米国外で生産した場合、25%の関税をかけることを示唆しています。ただ、今朝の最新の情報では、トランプ氏がフォンデアライエン欧州委員長と電話で会談し、EUに対する50%の関税を7月9日まで延長すると話しており、交渉には時間的余裕が出てきました。
ロシアとウクライナは予定通りに捕虜の交換を行い、両国が今月合意した3日間にわたるプログラムが完了しました。25日には両国とも303人ずつの捕虜を交換し、3日間では合意の通り合計1000人ずつと、戦争開始以来最多となっています。ただ一方でロシアは、ウクライナの首都キーウへの攻撃を強めています。ウクライナの発表によると、この攻撃で少なくとも12人が死亡しています。ゼレンスキー大統領は、「米国の沈黙、世界中の他の国々の沈黙は、プーチンを助長するだけだ」とし、対ロシア制裁強化を改めて訴えています。停戦協議への扉が開かれると期待していましたが、トルコでの両国の協議にプーチン氏が出席しなかったことで、再びその可能性が遠のいています。
ドル円は、トランプ氏がEUに対する関税を延期するとの報道で、一時143円08銭まで買われましたが、再び142円台に戻っています。先週金曜日に米国へ飛び、グリアUSTR代表らとの会談を終えて昨日帰国した赤沢経済再生相は、結局進展がないままだったようです。次回のベッセント財務長官との会談のタイミングを探ることになるようですが、一体何のために訪米したのか、よくわかりません。対EUの関税がどのように決着するのかわかりませんが、ドル円にとっては、それ以上に日本の関税がどのようになるのかが重要です。
本日のドル円は142円30銭〜143円80銭程度を予想します。
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明日27日(火)の「アナリストレポート」は、LDN、NYともに休場のためお休みとさせていただきます。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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5/22 | ミラン・米大統領経済諮問委会(CEA)の委員長 | 「米国は強いドル政策を維持している」、(国際的なドル安協定の憶測について)「われわれが密かに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」 | ドル円は143円台半ばから144台前半まで買われる。 |
5/21 | 米財務省声明文 | 「為替レートは市場で決定されるべきで、ドル円相場は現時点ではファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認した」(日米財務相会談を終えて) | ドル円は143円台半ばから144円40銭まで上昇 |
5/20 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「米国債市場のボラティリティにより、すでに高い不確実性がさらに高まる可能性があるが、市場の機能は現時点ではリスクになっていない」、「さらに不確実性が.加わることになれば、より正常なスタンスに戻るまでの時間が長引くと想定する必要が生じるだろう。なぜなら、状況の収束に今以上の時間がかかると考えるからだ」 | -------- |
5/20 | ムサレム・セントルイス連銀総裁 | 「米中が関税の大幅引き下げで合意して、5月12日に対立激化が和らいだ後でも、関税は短期的な経済見通しに大きな影響をもたらすように思える」、「今はインフレとの闘い継続に対する国民の信頼を維持すべき時だ。当局はインフレ期待を注視すべきだ」 | 利下げ観測の後退により、ややドルが買われる。 |
5/7 | パウエル・FRB議長 | 「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」、「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまる」、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」、「やることはこれまでと変わらない」、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」 | ドル円は143円台から144円まで上昇。 |
5/7 | FOMC声明文 | 「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっている」、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」 | -------- |
4/24 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「6月までに明確かつ説得力のあるデータが得られ、その時点で進むべき正しい方向について判断できれば、委員会が動く可能性がある」 | -------- |
4/24 | ウォラー・FRB理事 | 「特に大規模な関税が再導入された場合、この先レイオフの増加や失業率の上昇が見られ始めても意外ではない。労働市場の悪化が顕著になれば、FRBの最大雇用の責務に基づき措置を講じることが重要だと考えられる」 | -------- |
4/23 | ベッセント・財務長官 | (日米通商交渉での)「通貨目標は一切ない」、「G7合意を尊重することを日本に期待している」 | ドル円は141円台後半から143円57銭まで買われる。 |
4/17 | ラガルド・ECB総裁 | 「貿易摩擦の激化が輸出を抑え、投資や個人消費に重荷になる」、「世界的な貿易混乱の拡大は、インフレ見通しの不確実性を高めている」 | -------- |
4/16 | ハマック・クリーブランド連銀総裁 | 「二重の責務の両面から圧力がかかることが想定される状況下では、インフレのさらなる高止まりのリスクと労働市場の減速に伴うリスクとの間でバランスを保つため、金融政策を現状維持とする根拠は強いと考える」、「明確さを得るのが困難な場合には、追加データを待つことが今後の道筋を見極める一助となるだろう」 | -------- |
4/16 | パウエル・FRB議長 | 「長期のインフレ期待をしっかり抑制し続け、物価水準の一時的上昇が継続的インフレ問題にならないよう確実に対処することが、われわれの責務だ」、「物価の安定がなければ、全ての米国民に恩恵をもたらすような長期にわたる力強い労働市場環境の実現は不可能だ」 | -------- |
4/4 | クルーズ・米上院議員 | 「政権が進める関税引き上げは、米経済にとって『巨大なリスク』となっており、来年の中間選挙で共和党が惨敗する恐れがある」、「世界各国からの輸入品に関税を課せば、国内の雇用は崩壊し、米経済に」深刻な打撃を与えることになる」 | -------- |
4/4 | ハセット・国家経済会議(NEC)委員長 | 「関税により米国の消費者物価が『幾分上昇するかもしれない』」、「エコノミストやFRB当局者、一部議員による懸念は行き過ぎだ」 | -------- |
4/4 | ベッセント・米財務長官 | 「新たな関税は必要な措置だ。リセッションを織り込まなければならない理由は見あたらない」 | -------- |
4/3 | ジェファーソン・FRB副議長 | 「政策金利のさらなる調整を急ぐ必要はない、というのが私の見解だ」 | -------- |
4/3 | クック・FRB理事 | 「現時点ではインフレは上振れ、成長は下振れするリスクがあるというシナリオをより重視している。インフレ率が上昇し成長は鈍化するというシナリオは、金融当局に困難な課題をもたらす可能性がある」 | -------- |
4/2 | トランプ・米大統領 | 「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが、今後われわれが繁栄する番だ」 | -------- |
4/1 | フォンデアライエン・欧州委員長 | 「必ずしも報復したいわけではないが、必要であれば、強力な報復策を用意しており、それを用いる」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書